【CEDEC2013】「正直“これはゲームじゃない”と反発もあった」…LINEの森川社長が語る累計1億5000万ダウンロード「LINE GAME」の強み

2013年8月21日~23日に、パシフィコ横浜(神奈川県)で国内最大のゲーム開発者向けカンファレンス「コンピュータ・エンターテインメント・デベロッパーズ・カンファレンス 2013」(以下、CEDEC 2013)が開催された。

CEDECとは、コンピュータエンターテインメント業界内外の有識者が開発者に新たな知見をもたらす基調講演と特別招待セッションが行われるほか、ワークショップ、ゲーム開発やビジネスに関して公募を中心とした発表の場。

開催3日目には、無料通話・無料メールスマートフォンアプリ『LINE』で展開するゲームプラットフォーム「LINE GAME」について、LINE株式会社の代表取締役社長・森川亮氏が登壇した。

現在「LINE GAME」は、約30タイトルを提供し、累計ダウンロード数(iPhone/Androidアプリ総計)は、サービス公開から約10ヶ月となる6月3日時点で1億5000万ダウンロードを突破している。

カンファレンスでは、「LINE GAME」のこれまでの実績とともに、「LINE GAME」が提唱した新しい価値、ユーザー同士のコミュニケーションをより活性化していくための取り組みとして、今後どのような展開を行っていくのかなどを、森川氏が語ってくれた。

本稿では、8月21日に行われた『LINE』のビジネスカンファレンス<関連記事>で発表された内容に加えて、ゲーム開発者・業界人が集まる「CEDEC」だからこそ同氏が吐露した、「LINE GAME」の立場と強みについてもお伝えしていこう。

 

目指すは年内に3億ダウンロード

“身近な人と繋ぐコミュニケーションツール”として開発された、無料通話・無料メールスマートフォンアプリ『LINE』は、2011年6月23日に登場した。その後は、手軽な通話・メール操作や愉快なスタンプ機能なども手伝って、配信開始わずか19ヵ月で世界1億ダウンロードを突破。そして、最新のダウンロード数は2億3000万を記録している。

 

▲去年8月の世界ユーザー数は5000万のため約460%成長。1時間ごとに増える新規率は約6万3000人。

 

 

はじめに森川氏は、「国や地域、言語という垣根を越えて、人々に愛されるコミュニケーションツールに成長しました」と話して、『LINE』のダウンロード数が多い国順に、各国の普及率と特徴を交えて紹介してくれた。

1位:日本(4700万ダウンロード)

2位:タイ(1800万ダウンロード)

3位:台湾(1700万ダウンロード)

4位:スペイン(1500万ダウンロード)

3位:インドネシア(1400万ダウンロード)

『LINE』が誕生した国ということもあり、日本のダウンロード数は頭ひとつに飛び抜けて第1位。この4700万という数字は、国内のスマートフォンを利用しているほとんどが、端末上にダウンロードされていることになる。

次点でタイと台湾が続く。また、台湾の人口が約2300万に対して、ダウンロード数が1700万ということもあり、一番普及率があると言える。そしてスペインでは、名門バルセロナのメッシ選手も使用しており、国民の間でも一般的に広まっているようだ。インドネシアは、人口が2億人を超えているということもあり、普及率としては少ないようだが、現在急激にユーザー数が伸びていると森川氏は語る。

 

▲現在は17カ国に対応。また、世界では『LINE』上で一日70億回のコミュニケーションが行われているほか、一日10億回もスタンプが利用されている。

 

 

何故『LINE』がここまで愛されるようになったのか

森川氏はヒットの要因のひとつに「デバイスとコミュニケーションの変化にうまくマッチングできた」ことを挙げた。

デバイスはPC・携帯電話からスマートフォンへ、そしてコミュニケーションは電子メールからSNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)へと変化。この大きな転換期に、単純にメッセージや画像を送るだけではなく、無料通話・メッセンジャーとスタンプなどの多種多様なコンテンツと連携した“マルチコミュニケーションアプリ”として『LINE』を開発し、広く浸透していったのだ。

「デバイスはもちろん、いまはコミュニケーションにも革命が起こっている」と森川氏は語る。時代のニーズに合わせて進化してきた『LINE』は、その流れのなかで『LINE 占い』や『LINE マンガ』、『LINE 天気』など様々なコンテンツを提供して、よりコミュニケーションを活性化させた。

さらに『LINE』は“マーケティングプラットフォーム”としても大きな成長を遂げており、企業による公式アカウントやスポンサードスタンプなどが非常に好調だと語る。

じつは実績の一例として森川氏は「ロッテさんのお菓子『コアラのマーチ』のスタンプを開始したのですが、それが結果的にコンビニエンスストアの売上が14%上がった」と話した。それ以外の企業も無料のスタンプがきっかけで売上が軒並み上がっているという実績も。

また先日、ローソン社の公式アカウントのフレンド数が1000万を超えたとのこと。好調の要因として「高校生が学校帰りの途中で、“唐揚げ”が値引きとなるクーポンを受け取り、そのままコンビニエンスストアに訪れる…」と、例え話を交えて話した。さらにTV業界の方からは“視聴率7%”に値すると言われたそうだ。こうしたアプリが視聴率換算されるのは、いまだかつて無かったことだろう。

 

「LINE GAME」は課金率よりも継続率

続いて「LINE GAME」について。今年4月時点で「LINE GAME」は、世界のゲームトップパブリッシャーランキング(出典:App Annie)で、iOS-10位、Android-4位という実績が出ている。

「カジュアルで分かりやすく誰もが楽しめるゲームを目指している」と森川氏は「LINE GAME」の定義を唱えた。前述した通り『LINE』のコンセプトは、電話帳に登録している家族や友人、恋人などの身近な人たちと気軽にコミュニケーションがとれるツールということもあり、何よりも『LINE』の価値を高めることが、森川氏が目指すゲームの方向性なのだ。

さらに「LINE GAME」に搭載されているランキング機能について、「身近な人同士で競い合うからこそ、興奮・白熱が生まれる」と語る森川氏は続けた。

同氏が言うように、ランキング機能を1週間でリセットさせるのは、継続率が高い要因であろう。当然ゲームをやり込んでいくと、ランキングの上位が動かずに、ついつい諦めてゲームをやめてしまうケースがある。これらをリセットすることで、さまざまなドラマが生まれてくるというのも人気の秘訣なのかもしれない。

そんなコンセプトのもと生まれたのが『LINE POP』、『LINE バブル』だ。ふたつともシンプルなパズルゲームではあるが、『LINE』に登録されている友人と得点を競い合って、“エキサイティング”と“コミュニケーション”を無限に作っていくことに成功した。

しかし、こんな開発秘話があった。『LINE POP』と『LINE バブル』は、同社(当時:NHN JAPAN)の内部で制作されたのだが、スタッフのひとりが「これはゲームじゃない」と反発する人が居たことを森川氏は明かした。

「今日CEDECに伺うにあたって、じつは緊張していました。CEDECに訪れるゲームクリエイターの皆様が、我々が手掛ける「LINE GAME」をどう見ているのか……」と続けた。たしかに全てとまではいかないが、他のプラットフォームで手掛けるクリエイターたちに、どのような印象が持たれているのかは気になるもの。

とはいえ、世界中で多くのユーザーに楽しんでもらえているのは事実。森川氏も作り手として一番重要なことに「多くの方たちに楽しんでもらえることである」と語った。そういう意味では、結果的に万人向けとなる簡単でシンプルなゲームシステムは、成るべくしてなったと言える。

 


 

現在『LINE POP』は3300万ダウンロード(8月2日時点)、売上は累計43億円(7月31日時点)を突破し、『LINE バブル』は2500万ダウンロード(7月31日時点)、売上は累計15億円(7月31日時点)を突破した。

そして近々の売上にあたる2013年7月の「LINE GAME」全体の月間売上は26億円。母数を考えると課金率が若干低い印象も見受けられるが、これに対して森川氏は「課金率は低いですが、継続的に遊ばれている作品ばかりでランキングも上位を占めています」と言葉を添えた。

前述している通り「LINE GAME」の立ち位置とは、『LINE』におけるコミュニケーションの価値を高めることになる。そういう意味では、単純にコア化して売上を上げることよりも、幅広い人たちにゲームを長く楽しんでもらうことが、何よりも重要なのだろう。

 

▲現在「LINE GAME」は36種。最近人気の『LINE ポコパン』は、公開2カ月で1000万ダウンロードを記録。

 

 

 

初心者でも純粋に楽しめる作品を増やしていきたい

「LINE GAMEを世界中に広げて行きたい」と森川氏。いま『LINE』がグローバルプラットフォームとして成長するなかで、当然「LINE GAME」も世界を視野に入れて開発するべきのようだ。

まだ各国では、日本のようにゲームの課金率は低いが、今後の同社の成長を考えると市場も大きくなっていくと同時に、ゲームのビジネスをする上でも大きなチャンスに繋がることもあるだろう。

また、「LINE GAME」は競い合うのはもちろん、協力性や招待性などの要素も楽しまれている要因となっている。親しい友人たちと遊ぶ際には、つねに肌感覚を意識しながらプレイに励むため、匿名の人たちと遊ぶよりも臨場感が味わえるのだ。

「ゲームの苦手意識を打破するため、初心者でも純粋に楽しめる作品を増やしていきたい」と語る森川氏。ユーザーが離れていく原因としては、ルールが分からない作品も当然だが、時として説明ばかりのチュートリアルに疲れてやめてしまうケースも多くはない。そのため森川氏は「あえてはじめは課金率は上げずに」と語り、継続率を伸ばしていくことに重要性を唱えた。

さらにグローバルを視野に入れる「LINE GAME」の今後について、世界中で楽しんでもらえるように日本語・英語のほか、アジア圏内の細かい言語にも対応していくと話した。また、ソーシャル要素を広げるために、外国人同士で対戦・協力ができる新しい発想についても言及した。

最後に森川氏は「これから多くの企業様にLINE GAMEの考え方をご理解いただき、ビジネス交渉ができたらと思っています。そして『LINE』が世界の共通語になることを目指していきます」という言葉で講演を締めくくった。

 

年内目標を「3億ユーザー突破」と大きく掲げるLINE社。驚異的なスピードで成長を続ける『LINE』だが、ゲームコンテンツを展開する際には、カジュアルでコミュニケーションに繋がる内容ではないと、いくら母数の多いプラットフォームで展開してもヒットの道は遠くなるようだ。

また、森川氏は講演中に「ゲームの歴史がカジュアルからコア化に流れるサイクルが続くと、ゲームを遊ぶ人が減ってしまう」と繰り返すように話してくれた。そういう意味でも「LINE GAME」は、ゲーム業界の間口を最大限に広げたプラットフォームであるのだろう。

 

2013年の秋以降に順次配信予定のLINE GAMEタイトル(五十音順)

・LINE シェイク・スピア(制作:Alawar Entertainment)

・LINE ソニックダッシュ(制作:株式会社 セガ)

・LINE ドングリっス(制作:Boomlagoon Limited)

・LINE パズルボブル(制作:株式会社タイトー)

・LINE フィッシュアイランド(制作:NHN PlayArt株式会社)

・LINE Modoo Marble(制作:CJ E&M Corp. & N2Play)

・LINE レインボーチェイサー(制作:NHN&OrangeCrew)

・LINE レヴァナントゲート(制作:NHN PlayArt株式会社)

・LINE レッツ!ゴルフ(仮)(制作:ゲームロフト株式会社)

・LINE IRONSLAM(制作:WeMade Entertainment)

・LINE MapleStory Village(制作:株式会社 ネクソン)

 

■関連サイト

・『LINE POP』iOSダウンロードAndroidダウンロード

・『LINE バブル』iOSダウンロードAndroidダウンロード

・『LINE ポコパン』iOSダウンロードAndroidダウンロード

 

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LINE株式会社
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会社情報

会社名
LINE株式会社
設立
2019年12月
代表者
代表取締役社長 出澤 剛/代表取締役 慎 ジュンホ
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