2013年9月11日にApp Annie Japan・Tapjoy Japan・GaiaXによる3社共催セミナー「アプリマーケットのグローバルトレンドとこれからの成功の秘訣」が開催された。本稿では、アプリマーケットの市場調査や分析を行う企業「App Annie」のCountry Director・桑水悠治氏の講演内容をお届け。
正確なマーケットデータを提供することで、企業の大切な意思決定のサポートをしている同社。常日頃から全アプリのダウンロード数や売上データを追っているからこそ、世界のトレンドや成功事例などにも敏感になってくるものだ。
それでは、数多くのアプリ開発企業が利用している「App Annie」のサービス概要をはじめ、同社のシステムで桑水氏が提示した緻密で意外性の飛んだアプリ市場の片鱗を、マーケットのランキングと併せて紹介していこう。
■ 「App Annie」公式サイト
「App Annie」が誇る3つのサービス
はじめに「App Annie」で中心的に利用されている「Store Stats」「Analytics」「Intelligence」という3つのサービスの説明があった。「Store Stats」は、260万以上のアプリをトラッキングする最大級のアプリデータベース。これはTOP100パブリッシャーの90%の方が使用されているサービスであり、ID登録するだけで無料で使用できる。
各国別でiPhoneなどの総合カテゴリのランキングを見られるサービスなのだが、思えば、直接ストア上で調べられる情報であることが分かる……。しかし、ストア上には現時点のランキングしかないのに対して、本サービスは半年前や1年前など過去の情報をさかのぼって調べられるのだ。
さらには、特定のアプリを選ぶことで、より詳細な情報を確認できるとのこと。たとえば「Daily Ranks」では、国別で今日時点のランキング推移を一覧で確認できるほか、「Rank History」では指定した日付でランキング推移が確認できる。日付の箇所を「All Time」として検索すれば、ローンチされた日付はおろか、飛躍的に伸びを見せた日にちも確認できるということだ。当サイト「Social Game Info」をご覧の方は、よく目にする機能だと思う。
「Analytics」は、自社で運営しているアプリ内の情報を、まとめて綺麗に可視化できるサービスである。開発者が見られるiTunes ConnectやGoogle Developer Consoleなどで、毎日売上ダウンロード数を確認するものだが、それぞれ管理画面にログインしなければならいないほか、使い勝手もイマイチのところが多い。
これら双方の開発プラットフォームとApp AnnieのIDアカウントを紐づけることで、iOS・Google playのダウンロード数や売上データを容易に1画面で確認できるということだ。
なかでも桑水氏は、各国別にまとめられているアプリに対するレビューを一覧で見られる点を勧めた。たとえば、各国のレビューをiTunes上で確認するとなると、わざわざ国を切り替えて、アプリ名を検索、レビューをクリック、そして別の国を調べる際に、またトップ画面に戻されて……。
こうした面倒な作業も瞬時に切り替えて調べることができ、言うなれば1ページで全世界のレビューが見られるということになる。また、厳しいコメントを集めて改善に活かしたい場合は評価:★1の情報を抽出できるほか、評価:★5だけを一覧にしてテンションを上げることも手軽にできるようだ。
「Intelligence」では、アプリマーケットに関する最も正確なマーケットデータが確認できる。こちらは有料のマーケットデータではあるが、すべてのアプリのダウンロード数や売上の推定値を出して、対象アプリの国別売上・ダウンロード数を、より緻密なデータとして表示させられるサービスだ。企業は、この「Intelligence」をベースに市場規模やトレンドなどを抽出して調べていくそうだ。
そのほか「Index」では、毎月の売上やダウンロード数などのランキングデータを、アプリ市場の動向をレポートしている。また、IDC社との共同レポートとして、iOS・Google playと携帯ゲーム機の市場規模が、地域ごとにどのように変化してきているのかを、四半期ごとに1回発表している。
ゲームカテゴリーの位置づけ
続いて桑水氏は、ストア全体に占めるゲームカテゴリーの割合を通して、ゲームアプリ市場の現状を提示した。ゲームカテゴリーは、周知の通り売り上げが最も大きいカテゴリーとして、今なお成長を続けている。なお、Google playの売上は、iOS以上にゲームカテゴリーの全体に占める割合が高いようだ。
そして、アプリ内課金のビジネスモデルが増えるとともに、その傾向はゲームカテゴリーでより顕著になっている。下部の右グ画像のグラフを例とすると、2012年9月を100として、色が塗りつぶしてあるのがアプリ内課金の売上で、下の白い箇所が有料アプリとなっている。見ると有料アプリの規模は横ばいであり、アプリ内課金が伸びているのが分かる。市場全体が「Free to Play」の波に乗っているということもあるが、やはり買い切りの有料アプリで成功していくのは、非常に難しいのが現状である。
■ 国別のゲームダウンロード数 2013年6月
こちらのグラフを見ると、アメリカと中国がiOSのゲームダウンロード数が、市場の約半分を占めているのが分かる。大手携帯企業である中国移動通信(チャイナ・モバイル)がiPhoneを取り扱い始めたのを機に、最近になって中国でダウンロード数が非常に伸びてきているようだ。
とはいえ、多くの国ではGoogle Playのゲームダウンロード数がiOSを上回っているため、今後の成長次第では、逆転する可能性も無きにしも非ずだろう。なお、中国のGoogle Playデータが極端に少ないのは、同国にはオフィシャルマーケットが存在しないからである。App Annieのデータは、マーケット上のデータのみを抽出しているため、必然的にこうした少ないグラフとして表示されている。
■ 国別のゲーム売上 2013年6月
ダウンロード数に対して、ガラッと変わったのが分かる。国別の売上ランキングでは、上位からアメリカ、日本、韓国と続き、こちらの3ヵ国が全世界のゲームアプリ市場の売上の約80%を占めている。売上が高いのは、多くの国においてiOSであるが、例外としてサムスン電子のある韓国では、Google Playが圧倒的な数値を誇っている。ただ現状は日本と韓国、そしてアメリカに対応していれば、全世界の市場の80%は取れるようだ。
市場が急上昇している国もいくつか
■ iOS App Storeのゲームカテゴリーのダウンロード数と売上の上位国(2013年6月)
ダウンロード数ランキング |
|
売上ランキング |
2013年6月 |
国名 |
2012年9月 |
|
2013年6月 |
国名 |
2012年9月 |
1 |
アメリカ |
- |
|
1 |
アメリカ |
- |
2 |
中国 |
- |
|
2 |
日本 |
- |
3 |
イギリス |
- |
|
3 |
中国 |
↑3 |
4 |
日本 |
- |
|
4 |
イギリス |
↓1 |
5 |
ロシア |
↑4 |
|
5 |
オーストラリア |
↓1 |
6 |
カナダ |
↑1 |
|
6 |
カナダ |
↓1 |
7 |
フランス |
↓1 |
|
7 |
フランス |
↑1 |
8 |
オーストラリア |
↓3 |
|
8 |
ドイツ |
↓1 |
9 |
ドイツ |
↓1 |
|
9 |
ロシア |
- |
10 |
サウジアラビア |
↑3 |
|
10 |
韓国 |
↑1 |
上記はセミナー中の公開スライドを、「Social Game Info」でリスト化した内容である。ダウンロード数を見てみると、2012年9月から比べるとロシアの市場が成長してきているのが分かる。そのほか、現在ではサウジアラビアもTOP10圏内に入っている。対して売上ランキングでは、中国が飛躍的に数字を伸ばした。売上で見ると、韓国は圧倒的にGoogle Playのマーケットだが、それでもiOSでは全世界のTOP10に入る規模があるようだ。
■ Google Playのゲームカテゴリーのダウンロード数と売上の上位国(2013年6月)
ダウンロード数ランキング |
|
売上ランキング |
2013年6月 |
国名 |
2012年9月 |
|
2013年6月 |
国名 |
2012年9月 |
1 |
アメリカ |
- |
|
1 |
日本 |
↑1 |
2 |
韓国 |
- |
|
2 |
韓国 |
↑1 |
3 |
ロシア |
↑2 |
|
3 |
アメリカ |
↓2 |
4 |
インド |
- |
|
4 |
イギリス |
- |
5 |
ブラジル |
↑2 |
|
5 |
ドイツ |
- |
6 |
日本 |
↓3 |
|
6 |
フランス |
↑1 |
7 |
ドイツ |
↓1 |
|
7 |
オーストラリア |
↓1 |
8 |
メキシコ |
↑7 |
|
8 |
台湾 |
N/A |
9 |
タイ |
↑3 |
|
9 |
香港 |
↑9 |
10 |
イタリア |
↑1 |
|
10 |
カナダ |
↑1 |
Google Playでは、ダウンロード数で大きな成長を見せつけのがメキシコとタイ。そして売上では、日本と韓国が上位にくい込む。また、2013年2月にGoogle Playの課金が再開した台湾が8位。ちなみに、これを2013年7月のデータで出してみると、わずか1ヵ月で台湾は4位に急上昇しているとのことだ。とてつもない勢いで成長している市場であり、世界のデベロッパーからも注目されている国でもある。
iPadの底力と今後の可能性…
これまでスマートフォンありきの話をしてきたが、じつはPCタブレット市場も決して見逃せない規模を持つとのこと。というのも世界全体のiOS App storeにおけるゲームカテゴリの売上のうち、じつは約3分の1をiPadが占めているのだ。
しかし、iPadの売上は世界全体で40%もアメリカがリードしているほか、日本のスマートフォンとiPadの比率がかけ離れているため、まだ日本では現実味を帯びない話であろう。とはいえ、その他の国は、双方の比率はかなり近く、ロシアとサウジアラビアにいたっては、iPadのほうがダウンロード数や売上が多いとのことだ。
日本のマーケットにPCタブレットがどのように成長していくのかは未知数だが、桑水氏は「個人的に企業が力を入れていくと非常に面白い市場になる」と語ってくれた。
企業別のランキングで見えてくる意外なデベロッパー
■ iOS App Store トップパブリッシャー 2013年6月 ゲームダウンロード数ランキング(日本)
ダウンロード数ランキング |
2013年6月 |
開発社名 |
2013年5月 |
国名 |
アプリ数 |
1 |
LINE |
- |
日本 |
93 |
2 |
ゲームロフト |
↑5 |
フランス |
208 |
3 |
セガ |
↓1 |
日本 |
109 |
4 |
Goodia |
↓1 |
日本 |
94 |
5 |
あくのそしき |
↑1000+ |
日本 |
6 |
6 |
サイバーエージェント |
↓1 |
日本 |
106 |
7 |
ガンホー |
↓1 |
日本 |
11 |
8 |
コロプラ |
↓4 |
日本 |
77 |
9 |
Supercell |
↑115 |
フィンランド |
2 |
10 |
Makoto Yamada |
↑1 |
日本 |
63 |
続いて日本のアプリストアにおける企業別のダウンロード数ランキングを提示。LINEが首位を獲得したあとに、『UNO&Friends』や『怪盗グルーのミニオンラッシュ』で人気を博すフランスの企業・ゲームロフトが2位に入った。そのほか、5位のあくのそしきは『この星を消す…ッ!!』でお馴染み。9位のSupercellは『Clash of Clans』の日本語版をリリース後、飛ぶ鳥を落とす勢いで数値を伸ばしている。
■ Google Play トップパブリッシャー 2013年6月 ゲームダウンロード数ランキング(日本)
ダウンロード数ランキング |
2013年6月 |
開発社名 |
2013年5月 |
国名 |
アプリ数 |
1 |
LINE |
- |
日本 |
80 |
2 |
ガンホー |
↑1 |
日本 |
12 |
3 |
コロプラ |
↓1 |
日本 |
87 |
4 |
あくのそしき |
↑224 |
日本 |
6 |
5 |
Goodia |
↓1 |
日本 |
40 |
6 |
yunayuna apps |
↑228 |
日本 |
4 |
7 |
セガ |
↑5 |
日本 |
40 |
8 |
GREE |
↓3 |
日本 |
133 |
9 |
サイバーエージェント |
↑12 |
日本 |
48 |
10 |
(株)面白革命capsule+ |
↑1 |
日本 |
14 |
あくのそしきがGoogle Playでもランクイン。なお、これらの集計は子会社も含んでいるランキングとなる。
■ iOS App Store トップパブリッシャー 2013年6月 ゲーム売上ランキング(日本)
売上ランキング |
2013年6月 |
開発社名 |
2013年5月 |
国名 |
アプリ数 |
1 |
ガンホー |
- |
日本 |
11 |
2 |
LINE |
- |
日本 |
93 |
3 |
GREE |
- |
日本 |
123 |
4 |
コロプラ |
- |
日本 |
77 |
5 |
バンダイナムコゲームス |
- |
日本 |
155 |
6 |
サイバーエージェント |
- |
日本 |
106 |
7 |
セガ |
↑1 |
日本 |
109 |
8 |
Klab |
↓1 |
日本 |
17 |
9 |
アソビズム |
- |
日本 |
3 |
10 |
D2C |
- |
日本 |
35 |
■ Google Play トップパブリッシャー 2013年6月 ゲーム売上ランキング(日本)
売上ランキング |
2013年6月 |
開発社名 |
2013年5月 |
国名 |
アプリ数 |
1 |
ガンホー |
- |
日本 |
12 |
2 |
LINE |
- |
日本 |
80 |
3 |
コロプラ |
- |
日本 |
87 |
4 |
GREE |
- |
日本 |
133 |
5 |
ナムコネットワークス |
- |
日本 |
173 |
6 |
GMO GameCenter |
- |
日本 |
253 |
7 |
Klab |
↑5 |
日本 |
7 |
8 |
Donuts |
↓1 |
日本 |
2 |
9 |
Ateam |
↑7 |
日本 |
150 |
10 |
セガ |
- |
日本 |
40 |
売上ランキングでは、ガンホーが長く首位をキープしている。ちなみに、こちらのデータは2013年6月のため、7月のランキングに置き換えれば、もしかすると『Clash of Clans』のSupercellが唯一海外企業として上位に入る可能性もあるだろう。なお、Google Playもおおむね変わらないが、KLabの『ラブライブ!スクールアイドルフェスティバル』の成功で順位を伸ばしている。
日本企業による海外展開アプリだけの売上では…
■ iOS App Store + Google Play 国内パブリッシャー 2013年6月 ゲーム売上ランキング(日本以外)
売上ランキング(2013年6月時点) |
ランク |
開発社名 |
1 |
DeNA |
2 |
GREE |
3 |
カプコン |
4 |
ガンホー |
5 |
セガ |
6 |
サイバーエージェント |
7 |
LINE |
8 |
Ateam |
9 |
スクウェア・エニックス |
10 |
Drecom |
最後に桑水氏は、面白いランキングを提示してくれた。国内パブリッシャーによる“海外展開したアプリの売上だけ”でランキングを作ってくれたのだ。海外展開を行うゲームで、一番売上を伸ばしている日本のパブリッシャーはDeNAとなった。そのほかAteamの『ダークサマナー』、ドリコムの『Reign of Dragons』、サイバーエージェントの子会社アプリボットの『レジェンド オブ モンスターズ』など、ダークファンタジー系のカードバトルが海外でも人気を呼んでいるようだ。
しかし、ランクインしている会社でも日本と海外の売上比率を考えてみると、当然日本のほうが圧倒的に大きい。「今後は日本でリリース後、同アプリを如何にして素早く海外でも展開させるのがポイントである」と同氏は語った。全世界でヒットしている『Candy Crush Saga』や『Clash of Clans』のようなメガヒットアプリが、今年の終わりにかけて日本でも出てくるのかは注目である。
講演の終わりには「とはいえ、2、3カ月後には全く違うランキングになってるかと思います」と、改めてアプリ市場が想像しえない早さで展開していることに言及して、桑水氏はマイクを置いた。
同氏が語るように、劇的に変化を続ける市場だからこそ、多種多様なサービスを用いて、アプリのトレンドや動向を把握する必要があるのだろう。我々「Social Game Info」でも常日頃から利用させていただいている「App Annie」というサービスを通して、市場動向の把握に少しでも貢献できれば幸いだ。
■ 関連サイト
・
「App Annie」公式サイト
・
「Tap joy」公式サイト
・
「GaiaX」公式サイト
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