enish決算説明会 杉山社長、韓国展開「国内向けネイティブ開発も予定」 『ドラタク』など既存タイトルは好調 

enish<3667>は10月31日、都内で2013年12月期第3四半期(7~9月)の決算説明会を開いた。7~9月期は既存タイトルが堅調に推移したことから、売上高が17億円と前年同期比51%増、前四半期(4~6月)比でも10%増え、過去最高の四半期売上高を達成。営業利益も前四半期に比べて5.6%増の3.2億円だった(関連記事)。説明会に臨んだ杉山全功社長は年内に投入するネイティブアプリについて「先行投資で広告費をかけていく」と述べた。すでにリリースした同社初のネイティブアプリ『ドラゴンタクティクス∞(インフィニティ)』を含め、年内3本のネイティブアプリを投入する予定だ。広告の効果が想定しにくく、全体の売り上げも保守的に見積もっているため、通期業績予想の修正は見送った。なお、韓国でも現地パブリッシャーと提携して年内にネイティブアプリを投入する予定だが、「今後の国内向けに投入するネイティブの開発も、韓国の開発会社とやっていく予定」との方針も示した。(以下、かぎ括弧内は杉山社長の発言)
 

▲説明会の杉山社長


■リリース1年経過の『ドラゴンタクティクス』の売上が過去最高、『ガルショ☆』人気も根強い

ブラウザゲームのドラゴンタクティクスは、イベントのモチーフを(ユーザーの支持を得られるよう)改善した結果、月次、四半期ベースで過去最高の売上高を達成し、同社の看板タイトルである『ぼくのレストラン2』に並んだ。「リリースから1年以上経過し、よくブラウザ全体、特にバトルゲームが沈んでいるといわれているなか、順調に売り上げを伸ばせることができた」と自信を持って紹介した。ポケットダンジョンは緩やかな減少傾向が続いているため、「売り上げを伸ばすというよりは、運用体制や広告などを見直し、効率を高め、利益率向上に努めていく」と話した。4~6月にリリースした男塾は順調に売り上げを伸ばし、ポケットダンジョンを上回った。『ガルショ☆』は地味ながら、前月比1%程度と順調に伸びているという。
 

なお、各作品のMAUの状況については、『ぼくのレストラン』についてはほとんど変化なく4Qも走っている一方、ガルショはプラットフォームのキャンペー ンや広告で伸び、ドラゴンタクティクスも盛り返しのトレンドが続きそうだという。男塾はリリース当初にプロモーションを打ったので15万~16万まで上昇 し、そこをピークとして若干下げ基調に入っているが、売上に大きな影響を与えるような兆候はみえないとのこと。

 

■売上構成の分散進む、ユーザー女性比率7割は変わらず

この1年間で経営シミュレーションゲームの売上高が6%増、バトルゲームの売上高が275%増えた。この結果、同社の売上構成において、バトルゲームの比率が44%まで上がったが、ユーザーの女性比率は変わらず7割強をキープしている。『ぼくのレストラン2』の比率は3割を切り、7割近くあったGREE向けの比率も5割を割り込むなど、事業の分散が進んでいる。スマートフォン向けの構成比率もちょうど半分の50%まで伸びた。

 

 


 

 
 


■初のネイティブアプリ投入、先行投資で広告費「結果は想定しづらい」

既存のタイトルを着実に育てていく一方、10月に同社初のネイティブアプリとなる『ドラゴンタクティクス∞』、Ameba独占のブラウザタイトル『ドラゴンタクティクスレガリア』をリリースした。年内にあと2本のネイティブアプリをリリースする予定だ。

『ドラゴンタクティクス∞』は同社にとって初のネイティブ作品なので、広告宣伝費をかけていく予定だ。ネイティブに関しては、売上見合いの広告ではなく、先行投資でいく予定で、『ドラゴンタクティクス∞』もその戦略をとっているという。「極端な話だが、ネイティブ市場では、ただApp StoreやGoogle Playにローンチしただけだと、まったくと言っていいほどインストールはない。売り上げがゼロの段階から広告費をかけていく」という。なお、ネイティブは3タイトル合計で4Q(10~12月)に3億円程度の売り上げを見込んでいるとのこと。
 

■通期予想の修正見送り、売り上げを「保守的」に見積もる

2013年12月期通期の業績計画に対して、1~9月累計売上高の進捗率は72%となった一方、営業利益は128%と3ヶ月を残して3割近く超過している。業績予想を引き上げずに据え置いた理由として、7~9月に持ち直したドラゴンタクティクスなど各タイトルの動向踏まえつつも、「売り上げはさらに下がるという計画として保守的に見積もっている」という。来年度に向けたタイトル開発のほか、初めてのネイティブタイトルで広告費をかけた結果が想定しづらいことも指摘した。六本木ヒルズへのオフィス移転(関連記事)費用については10~12月にざっくり約1億円かかるといい、計画には盛り込まれていると述べた。なお、東証のガイドラインに留意しながら適時開示の運用をしていくとのこと。
 
 

■韓国でネイティブ投入、当初は現地企業と提携 国内向けも韓国開発会社と協力予定

4Qから韓国でネイティブアプリを投入する予定で、現地の子会社設立する(関連記事)。韓国でのリリースタイトルだけでなく「今後の国内向けに投入するネイティブアプリの開発も、韓国の開発会社とやっていく予定」とのこと。「海外では、最初の段階では現地パブリッシャーとタイアップした形の展開を考えている。ゆくゆくは自社でリスクをとってやっていくことも考えられるが、当初は現地のパブリッシャーに、極端なことを言えば、ネイティブの開発コードわたして、ローカライズからパブリッシングまでやってもらい、当社にとってのリスクを排除していく。現地で人員をとり、プロモーションリスクもとって、というのはなかなか大変だなと思う。韓国も中国もパブリッシャーが発展してきている」と話していた。なお、海外事業は年内は売上ゼロで見込んでいる。
 

■上場市場の変更、「相応しい体制が整えば拒む理由はない」

現在、従業員数は年内に達成予定であった165名を実現しているが、「さらに若干名、10人を超えることはないが、来年度に向けて採用する可能性はある」という。人員獲得の動向については「(年収高騰などの関係で)2年ほど前はエンジニアさんが取れないという状況があったが、ピークアウトしてきている。今年に入り、上場した部分や業績の部分で、この業界で割と安定感があるという期待値を持って応募する方が多くなっており、良好な方かなと思っている」と回答した。
 
 
▲人員を増やしているが、売上高に対する原価率は60~70%におさまっている


現在、東証マザーズ市場に上場しているが、上場市場の変更の可能性について質問があった。「それに相応しい会社の体制が整えば拒む理由はない」としつつ、「現時点では未定」と述べた。

コロプラと提携して進めているO2O分野の利益貢献や将来像についても質問が出た。「収益面については現時点で微々たるもの。事業計画全体にとって些少として組み込んでいる。将来に向けての布石」「O2Oマーケットは日本ではまだ小さい」「事業化という観点から、(O2O事業は)年間で億単位の収益ベースで目指していきたい」と回答した。

10~12月から提供を開始する予定の知育アプリについても、年内の売り上げはゼロで見込んでいる。


■関連リンク
決算説明会資料
株式会社enish
http://www.enish.jp/

会社情報

会社名
株式会社enish
設立
2009年2月
代表者
代表取締役社長 安徳 孝平
決算期
12月
直近業績
売上高35億800万円、営業損益12億600万円の赤字、経常損益12億6500万円の赤字、最終損益13億7400万円の赤字(2023年12月期)
上場区分
東証スタンダード
証券コード
3667
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