コロプラ決算説明会 馬場社長「私たちもびっくり」の急成長 斬新な新作タイトル投入で「ガンホー・スーパーセル」連合超え目指す

コロプラ<3668>は11月6日、株式上場後初の本決算となる2013年9月期決算を発表し、都内で決算説明会を開催した。期中に3度の上方修正をはさみながら、13年9月期の売上高は前期比3.3倍の167億円、営業利益も3.8倍の57億円と大きな成長を示して着地。14年9月期の売上高と利益が倍増する計画も示した。説明会に臨んだ馬場功淳社長は新作『蒼の三国志』の好調なスタートや「我々が作ったことのないゲーム、誰も見たことのないゲーム」と表現する開発中タイトルへの期待を示し、先行きの自信を示した。ソフトバンク、ガンホー・オンライン・エンターテイメント、スーパーセルという世界で圧倒的な存在感を誇るスマートフォンゲーム連合が誕生したことについて、「幸運だ。孫(正義)さんと戦える日が来た」と意気込み、世界1位のスマホゲーム企業を目指す方針を再確認した。(以下、断りが無ければ、かぎ括弧内は馬場社長の発言)

 

▲説明会の馬場社長


■「私たちもびっくり」の急成長、ネイティブ市場の拡大を享受 スマホネイティブの売上比率は9割

早期にスマートフォン向けとネイティブアプリへの注力を決めたことが奏功し、「ネイティブアプリ市場の拡大を一身に享受できた」通期決算となった。説明会資料に「私たちもびっくり」と記載するほどの好決算だった。テレビCM効果で大きく成長した『クイズRPG 魔法使いと黒猫のウィズ』をはじめ、提供する全てのオンラインアプリが3Q(4~6月)に続いて4Q(7~9月)にも過去最大の四半期売上高を更新するなど、幅広いアプリが好調。テレビCMで広告宣伝費が膨らんだものの、高い営業利益率を保つなど、コストコントロールも維持。自社コンテンツである『黒猫のウィズ』が伸びたことで、ロイヤリティ費用の対売上高比率も久しぶりに10%を割り込んだという。
 


7~9月の売上構成をみると、好調なスマホネイティブアプリがついに9割まで上昇。一方、位置ゲームプラットフォーム事業は前年同期比で増収基調は続いた(7~9月は7%増収)が、LAP(位置情報アプリケーションを提供する外部デベロッパー)アプリの売上高が前四半期比で初の減少に転じるなど、全体に頭打ち感が出ており、売上比率は1割に減少した。


集客用のライトアプリ群「Kuma tha Bear」も、累計ダウンロード数が2700万件と増加を続けながら、MAU(月間アクティブユーザー数)も300万件台で高い水準を維持している。なお、『一瞬のスキマ』のヒットでMAUは5月に一時的に急上昇している。
 

■「テレビCMを使いこなせた」 ユーザー増加もARPPU低下は限定的

4Qには初の全国展開テレビCMを実施。「特にこの四半期はテレビCMを使いこなせるようになったことが大きい成果」という。CM効果で『黒猫のウィズ』の人気が上昇し、全体のQAU(ダウンロードから7日以上経過したユーザーを対象に集計した四半期アクティブユーザー数)が約235万に急拡大したが、QAUあたりの売上高(ARPQU)は前四半期比12.8%減の2400円強と高い水準を維持した。通常、広告宣伝による急激なユーザー数の増加はARPPUの低下を招きやすいが、「12%程度の低下にとどまった」という。「新規ユーザーの早期課金と、CMによる既存ユーザーの活性化の、両面が機能した」との見方を示した。


説明会の会場からは、テレビCMで既存ユーザーのARPPUの上昇を先食いし、ゲームの賞味期限を早めているのではないか、との質問が出た。取締役CSO(最高戦略責任者)兼経営企画部長の長谷部潤氏は「既存ユーザーのARPPUは確かに上がっており、もちろん多少先食いにはなる可能性はある」としつつ、「『黒猫のウィズ』のARPPUはもともと、『秘宝探偵キャリー』『恐竜ドミニオン』といった既存作品と比べて3分の1程度と低い。時間経過とともに既存作品のARPPU水準に向けて一次関数のように上がってくるとみている。『黒猫』のローンチは今年3月で、この上昇線上にいるところでCMを打ち、多少上がったという感じ」と説明。むしろ「既存ユーザーの活性化は想定外の良いことだった」と述べた。
 

■今期計画は売上・利益ともに倍増  『蒼の三国志』は『黒猫』以上のスタート

2014年3月期は売上高、利益のいずれも13年3月期からほぼ倍増の計画だ。KPIのうちDAUは保守的に見積もった一方、ARPPUは上昇傾向を考慮して策定したという。4Q後半にリリースした『蒼の三国志』も好調で、10月単月の売上高は1億円を超えたという。「リリース25日間での比較では、DAUは『黒猫のウィズ』比25%増、期間売上高は2.3倍増と、『黒猫』以上の立ち上がりで、すばらしいスタート」(馬場社長)という。10月も好調な出だしとなっているようだ。
 

テレビCMを軸に、広告宣伝費を対売上高比で10%以内にとどめながら、効果的な広告を展開していく方針だ。「集客用の『Kuma tha Bear』でリリースし、軌道に乗ったところでweb広告を実施、ある程度のDAUの母数や固まりができたところで、一定の社内条件をクリアすればテレビCMを打つ」という構図を完成したという。 「ノリやイメージで広告を出さず、Web広告のマーケティングチームをテレビCMにも活用し、100近いパラメータを駆使して分析したうえでやっていく」 と述べた。

新規アプリの投入計画については9月に2本、10月に2本という予定だったが、実際には10月までに2本のリリースにとどまった。『蒼の三国志』が急速に立ち上がったため、10~12月は広告宣伝費を『蒼の三国志』に注力することが合理的だと判断。10~12月に ローンチ予定だった新作の投入を後ろ倒しにした。「後ろ倒しで開発に時間的余裕ができ、広告宣伝費も効率的に投入できる」とのこと。
 

■「ミルフィーユ」型の業績成長

アプリごとの今期業績への寄与のイメージについて、長谷部氏は「ゲームは立ち上がりの翌期におおきく伸びる傾向がある。13年9月期に大きく伸びた12年9月期リリースタイトルについては、今期微増を見込んでいる」と話した。12年9月期リリースタイトルの動向については、2012年1月にリリースした『秘宝探偵』は「(長期に運用していることもあって)どうしてもDAUが落ちてしまう。DAUはリリースから半年後がピークで、これまでARPPUや課金率の向上で補って売上を伸ばしてきたが、そろそろ補いきれないかな、と考えている」と指摘。一方、『プロ野球PRIDE』は「驚くべきことに、DAUを含めすべてのKPIが依然、最高値を更新している状況」と話し、『恐竜ドミニオン』を含めた12年3月期リリース3タイトルを相殺して「若干増収というイメージ」だと回答した。

前期に立ち上がった『黒猫のウィズ』と、前期にぎりぎり滑り込んだ『蒼の三国志』については、「今期は大きく伸びるだろう」と期待を示した。「社内でミルフィーユでたとえて計画を説明しているが、層が重なっていくように、そしてたまに『イチゴ』(のようなヒット作)が入り、売上高が伸びるようなイメージでみている」と回答した。なお、新規事業は「複数検討・展開しているが、スマホゲームからかけ離れた新規事業は考えていない」「位置情報の活用も収益はまだ期待できるものではない」(長谷部氏)とのこと。
 


 

■単一アプリへの依存は危険、「効率的フロンティア」目指す 『黒猫』チームの新作も「楽しみ」

馬場社長は、想定するKPIや作品モチーフなどの異なる性格のアプリを複数展開し、新規ユーザーの受け入れ間口を広げつつ、リスクを分散する「アプリポートフォリオ戦略」がうまく機能できたと主張した。「ソーシャルゲーム以降、かつてのコンソールゲームのようにシリーズで継続的な売上高を得る手法を使えなくなったため、一つのアプリを長持ちさせるかが重要になる。だが、ひとつのアプリへの依存は危険。そのアプリに無理をさせてしまうし、そのアプリが厳しくなったときに手の打ちようがなくなる。『コロニーな生活』を3年間運用してきた経験によるものだ。アプリの分散を進めることが大切」と指摘。「証券理論で(最適な資産配分状態を示す)『効率的フロンティア』という言葉があると聞いているが、こういった手法で最大のリターンを実現していきたい」と述べた。
 


今期投入予定の新作アプリは、ポートフォリオ内でどういう位置づけか、という質問が出た。経営会議で承認された開発中作品は現在6本で、それぞれを「歴史物」「スマホならではのライトで、かつハイエンドに作りこまれたもの」「ARPUは低いが、dauは高いような、かなりライト」「『黒猫のウィズ』チームが企画作成中のもの」「ゲームだが、少し軸足をずらしたリアル連動で、『育て』ゲームのユーザー層を変えたもの」「いまヒットしているゲームと同じモチーフを使った、男の子心がくすぐられるもの」と表現。どれだけマス向けな商材か、どれだけ高ARPPUな商材かのバランスをとってアプリを作っているという。なお、『黒猫』チームが作成中のものは、「特にすばらしい出来で、リリースが楽しみ」と期待をにじませた。

ゲームごとのユーザーの”かぶり”はどういう状況か、という質問が出た。「集客用の『Kuma tha Bear』から収益源のオンラインアプリに向かった導線は設定しているが、オンラインアプリ間の導線は設定していない。ヒット作間の横移動はしにくい状況になっている。またKPIなどでアプリの性質を分けてゲームを位置づけている。CMでコロプラ全体の知名度は上がり、ゲーム間の横移動はあるかもしれないが、一般的にいう『かぶり』は少ないのではないかなと思っている」(長谷部氏)とのこと。


■コアアクションとモチーフの組み合わせを網羅 「誰も見たことのないゲームを作る」

ゲーム企画に関する馬場社長の判断基準に関しても質問が出た。馬場社長は「スマホゲームはコアアクション(どう遊ばせるか)とモチーフの組み合わせ。この掛け算でアプリの価値が決まると考えている。有史以来のゲームのモチーフとコアアクションを抜き出し、それを組み合わせたものを眺め『どんな組み合わせが面白いか』『まだやっていないのはどれか』を頭に入れ、そこから新しい遊びを考えていく。この点を企画段階に詰め、コアアクションと仮組みを作り、面白いと判断すれば経営会議にかけて、予算を承認するというのが最近の流れで、しばらくこの流れでやっていく」と話した。最近の話として「ダブルコアアクションというのも議論に加わっている」という。

また「既存の仕組みをそのまま使いまわすというのは、最近は通用しない。比較的不調だった『トライレギオン』は過去のやり方を引きずったアプリで、ユーザー受けがよくない。ユーザーは新しい遊びを求めている。いま作成段階のゲームは、いままで我々が全く作ったことのない、そのうちいくつかは誰も見たことのないゲームを作っている」と説明した。

人員は14年3月期末に446人と、コストコントロールを意識しつつ、前期末から140名の増員を見込む。「446人のうち350人くらいは開発者と考えてもらっていもいい」とのこと。1アプリあたりの開発人数については、「我々はスモールチームを標榜しており、最大10人くらいとしている。開発の佳境時は15~20人くらいだが、開発後は10人くらいで運用する」「アプリ一本あたり、だいたい50人月くらいが目標だが、最近は増加傾向にあるため、もう少し高い数字になっている」と述べた。
 


■海外展開は「模索」、「日本でヒットしても、海外でヒットするわけではない」

海外展開についての質問には「正直ベースで言えば、模索している」と回答した。「場所として効率の良い市場は日本。世界一のアプリはパズドラ(『パズル&ドラゴンズ』)、世界一の(スマホゲーム)企業はガンホー。日本でヒットすれば、結果的に世界ナンバー1という状況だ。日本市場で手を緩めるわけにはいかない」という。日本市場でヒットしたタイトルの海外展開を考えているものの「『黒猫のウィズ』も良い作品だが世界が取れるような状況にはなっていない」「歴史物はアメリカに受けないなど、日本でヒットしても、海外でヒットするわけではない。開発中の6本のうち4~5本は海外で出す方針だが、これはいけるだろうというのは1、2本くらい」と述べた。

長谷部氏は海外展開について、「決済システムや広告商材など整っている国は自前で、そうでない国はライセンスでやっていく、という基本方針は変わってない」と述べた。『秘宝』や『恐竜』はライセンス、『黒猫のウィズ』は自前で英語版、韓国版を出しており、海外での売り上げは「月でだいたい数千万円」とのこと。「決済や広告の整っている国の代表的なの例は米国だが、それでも広告商材の種類低く、広告効率やユーザーアクティビティはだいぶ低い。市場がきっちり整ったところで、より多くの広告宣伝費を注ぎ込み、日本と同じスタイルでやっていければいいなと考えている」という。


■「孫さんと戦える日が来た」 ソフトバンク×ガンホー×スーパーセル連合超えを意識

どのような成長イメージを抱いているか、という質問も出た。馬場社長は、スマホゲームでは世界1位がガンホー、2位がスーパーセル、3位グループとしてLINE、コロプラ、(米国)Kabamなどが混在し、ガンホーとスーパーセルの連合が圧倒的1位と現状を概観。「我々は1位になりたい。市場規模の半分くらいはとりたい」と目標を語った。ガンホーとともにスーパーセルを買収したソフトバンクの孫正義社長が「ゲームを制するものがスマホコンテンツを制する」と語ったことについて、「これは幸運だ。ついに孫さんと戦える日がきたと、社内は沸いている」と意気込んだ。

今後の成長性については、「ゲーム市場はアーケード、コンシューマー、携帯ゲーム機、PC、モバイル・スマホの5種類があったが、今後は携帯ゲーム機とコンシューマーの市場が縮小し、これがPCとスマホに取り込まれていくとみている。コアゲーマー層はPC、ライトゲーマー層はスマホに向かう。もともとのゲーム市場の一部がスマホに取り込まれることで、より成長できるのではないか」との見方を示した。長谷部氏も「従来型ゲームからスマホへの移行に加え、各レジャーからゲームへの移行も十分出てくると考えている。スマホがこれまでのゲームインフラと違う点は、スマホは生活に必須のインフラであり、ひとりひとりが24時間持つということ。取り込みうる市場の広さはこれまでにない」と長期の成長可能性について触れた。


■関連リンク
決算説明会資料
株式会社コロプラ
https://colopl.co.jp/

会社情報

会社名
株式会社コロプラ
設立
2008年10月
代表者
代表取締役会長 チーフクリエイター 馬場 功淳/代表取締役社長 宮本 貴志
決算期
9月
直近業績
売上高309億2600万円、営業利益28億5800万円、経常利益32億7600万円、最終利益18億9300万円(2023年9月期)
上場区分
東証プライム
証券コード
3668
企業データを見る