明けましておめでとうございます。ソーシャルゲームインフォ株式会社の長谷部です。いつもソーシャルゲームインフォをご覧いただきありがとうございます。2014年も引き続き、変わらぬご愛顧のほどお願い申し上げます。
さて、年初ということもあり、あらためてモバイルゲーム業界につきまして、2013年の振り返りと2014年の展望について簡単に述べてみたいと思います。2013年のモバイルゲーム業界を一言で申すならば、「ネイティブの台頭」に要約できるかと思います。
例えばPVランキング2位の「Googleランキングゲーム売上TOP50:データで見る、一気に開花したネイティブソーシャルゲーム市場とこれから(6/24)」では、前年同月である2012年6月との大きな差異についてデータに基づいて詳細に解説しています。曰く、昨年上位にいなかったパブリッシャーが上位を占めるようになった、上位のパブリッシャーが固まり始めた、海外パブリッシャー比率が減少した、家庭用ゲームパブリッシャーが参入し始めた、などです。もはや「昨年とは完全に違う市場である」と締めくくっています。
決算や株式市場に類した記事もネイティブに関連したものが上位を占めました。ガンホーやコロプラ、また業界全体をまとめた決算記事が複数ランクインするなど数多くの人に読まれました。業績や株式市場に関連する記事がPVランキングの上位を占めるようになったのもソーシャルゲームインフォにおける2013年の特徴と言えます。
決算や株式市場関連で最もPV数が多かったのが、5位につけた「コロプラとDeNAの時価総額が逆転 コロプラが上回る(10/2)」は、コロプラが提供しているネイティブアプリ「クイズRPG 魔法使いと黒猫のウィズ」の累計ダウンロード数が800万件を超えた(9/29)ことで業績成長を期待した買いが入ったのではないかとの記事です。株価が明白に動意付いたのは9月3日からですが、これは前日の2日に「全スマホアプリ累計ダウンロード数4,000万件突破」、翌日の4日に「黒猫のウィズ累計500万ダウンロード突破」など、TVCM(8/19開始)の大きな効果を株式市場が確認できたことでの「買い」であったことが推察されます。
ガンホーやコロプラに見られたTVCMの成功により、各社TVCMへの注力を始めています。2014年はTVCM戦略の成否が、各社の明暗を大きく分けることになりそうです。ガンホーやコロプラのようにそれまであまり目立っていなかった企業が台頭するきっかけとなったり、資本力のあるSNSゲームプラットフォーマーや大手ゲーム事業者が大量にTVCMを打つことで、反転攻勢のきっかけになることも十分にあるのでは、と考えています。
反転攻勢という目線では、PV15位の「グリー、13年6月期は営業益41%減の486億円…課金収益低迷と人件費が収益圧迫、155億円の減損も 海外事業が急成長(8/14)」も要チェックの記事でした。厳しかった決算を中心にまとめているのですが、USスタジオの単月黒字化など海外の成長についても触れています。
グリーはこれまで象徴的な海外買収を2件行っています。2011年のOpenFeint社と2012年のFunzio社です。グリーの事業モデルはプラットフォーマーとアプリパブリッシャーの二つの側面がありますが、OpenFeintは前者、Funzioは後者です。前者は2012年に閉鎖されました。そして後者は現在大変うまく本体と噛み合っている印象です。グリーのみならずディー・エヌ・エーといったSNSプラットフォーマーがアプリパブリッシャーとしての性格をより先鋭化させ、海外展開を行うならば、2014年は海外から目を離せなくなりそうです。
日本のアプリマーケットは、この両タイトルのヒットから二つの気付きを得たように感じています。一つは、キャンディークラッシュのようなカジュアルゲームでも、十分な売上を得ることができるということ、もう一つはクラッシュ・オブ・クランのような海外で流行ったミッドからハードコアといった作りこんだゲームが日本でも受け入れられるようになった、ということです。
特に前者は、「LINE」と絡めて考察しても良いかもしれません。2013年のアプリマーケットの大きな特徴の一つはLINE系アプリの台頭です(最大の特徴と言っても良いかもしれません)。多くがカジュアルゲームながら、Google Play売上ランキング上位を最も多く占めているのが、LINE系アプリ群なのです。
スマホ普及率は2013年中におそらく50%を超えたと思われます。これからスマホを持つユーザはマジョリティ層ではあってもレイトマジョリティ層です。初期のマジョリティ層はアーリーマジョリティと呼ばれますが、別名ブリッジピープル(新製品や新サービスを一般層にブリッジ=橋渡しする人たち)とも呼ばれ、慎重ながらも伝播力もある層でした。しかしながら、レイトマジョリティ層は、別名フォロワーズと呼ばれ、周りが購入・利用しているのを見てから消極的に参画する層です。
その目線でいけば、周りみんながやっているLINE、周りから招待されたLINEアプリ、というのは、レイトマジョリティ層の人たちに対し、とてもマッチした性格・特徴を有していることが分かります。それを鑑みれば、LINEとどう組むのか、エイチームのような提携スタイルが好ましいのか、など2014年のモバイルアプリ事業者は大変頭を悩ますことになりそうです。また「2014年には上場するのでは?」との観測報道も出ており、色々な意味で今年もLINEから目が離せないことになるでしょう。
ガンホーの「パズル&ドラゴンズ(パズドラ)」を例に挙げることによって、ゲーム業界は、いとも簡単に「下剋上」が起こる(=長続きしない)といった趣旨の論調をたびたび目にすることがあります。しかしながら過去を振り返ってみると、そうした下剋上は必ずと言って良いほど、インフラや端末の普及初期に起こっています。なぜならば、先ほど記した普及率15%を超えた頃から出現し始めるアーリーマジョリティ=ブリッジピープルを押さえた商品・サービスこそが、社会現象とも言える商品・サービスへと昇華しているからです。インフラや端末それ自身が広がることと、ブリッジピープルによる拡散、この二つが「下剋上」を起こすのです。
現状は…といえば、すでにスマホ普及率が50%を超えたと思われる水準です。インフラが普及し切ってしまい、新規利用者の主力は受け身のレイトマジョリティ層となってきています。こうしたステージで、大ヒットを目指すには「力技」が必須となってきます。すなわち「お金にモノを言わせた施策」です。あたかもローテーションのように第二のパズドラが出現することはまず考えられず、それがあるとするならば、相当緻密な戦略、大規模な開発投資、そして莫大なTVCM費用が必要となってくると思われます。それに気づいた企業の一部は、再度ブラウザに回帰したり、ミドルヒットを複数狙う方向に向かうかもしれません。
ダイナミックな2013年に比べ、2014年は経営力や戦略といったより地味な部分が重要になってくるかもしれません。一方で期待もあります。米国でのPCは1人1台、文字通り「パーソナルな」広がりとなりました。米国における1人1台というPC保有の規模こそが、世界に類を見ない斬新なウェブサービスを数多く生み出した下地となりました。そして日本でもようやく1人1台、本当の意味での「パーソナルな」コンピュータがスマホと言う名前で広がろうとしているのです。ゲームも含めた全く新しいかつて見たこともないようなサービスが日本においても生まれる土壌がようやく整ったのです。2014年はそうしたサービスが大手企業のみならずスタートアップ企業からも生まれることを期待したいと考えています。
さて、年初ということもあり、あらためてモバイルゲーム業界につきまして、2013年の振り返りと2014年の展望について簡単に述べてみたいと思います。2013年のモバイルゲーム業界を一言で申すならば、「ネイティブの台頭」に要約できるかと思います。
■ネイティブ一色だった2013年
2013年ソーシャルゲームインフォ記事別PVランキングを見ても、ネイティブに関連した記事が上位を占めています。例えばPVランキング2位の「Googleランキングゲーム売上TOP50:データで見る、一気に開花したネイティブソーシャルゲーム市場とこれから(6/24)」では、前年同月である2012年6月との大きな差異についてデータに基づいて詳細に解説しています。曰く、昨年上位にいなかったパブリッシャーが上位を占めるようになった、上位のパブリッシャーが固まり始めた、海外パブリッシャー比率が減少した、家庭用ゲームパブリッシャーが参入し始めた、などです。もはや「昨年とは完全に違う市場である」と締めくくっています。
決算や株式市場に類した記事もネイティブに関連したものが上位を占めました。ガンホーやコロプラ、また業界全体をまとめた決算記事が複数ランクインするなど数多くの人に読まれました。業績や株式市場に関連する記事がPVランキングの上位を占めるようになったのもソーシャルゲームインフォにおける2013年の特徴と言えます。
決算や株式市場関連で最もPV数が多かったのが、5位につけた「コロプラとDeNAの時価総額が逆転 コロプラが上回る(10/2)」は、コロプラが提供しているネイティブアプリ「クイズRPG 魔法使いと黒猫のウィズ」の累計ダウンロード数が800万件を超えた(9/29)ことで業績成長を期待した買いが入ったのではないかとの記事です。株価が明白に動意付いたのは9月3日からですが、これは前日の2日に「全スマホアプリ累計ダウンロード数4,000万件突破」、翌日の4日に「黒猫のウィズ累計500万ダウンロード突破」など、TVCM(8/19開始)の大きな効果を株式市場が確認できたことでの「買い」であったことが推察されます。
■TVCMの有効性が改めて評価へ
そのTVCMですが、PVランキングにおいてもTVCMに関連したものが複数上位を占めました。1位は「Mobage『アヴァロンの騎士』のTVCMが本日より放送開始…平野綾さんがアーサー王役で登場!(2/22)」と依然として根強い平野綾人気がうかがえます。それ以外でも、著名な映画監督がCM監修を…などTVCMはやはり話題になりやすいという印象でした。ガンホーやコロプラに見られたTVCMの成功により、各社TVCMへの注力を始めています。2014年はTVCM戦略の成否が、各社の明暗を大きく分けることになりそうです。ガンホーやコロプラのようにそれまであまり目立っていなかった企業が台頭するきっかけとなったり、資本力のあるSNSゲームプラットフォーマーや大手ゲーム事業者が大量にTVCMを打つことで、反転攻勢のきっかけになることも十分にあるのでは、と考えています。
■大手ゲーム事業者、SNSプラットフォーマー、反転攻勢の兆し
実際、2013年のPVランキングでも大手ゲーム事業者に関する記事が数多くランクインされています。特にセガは、「ぷよぷよ!!クエスト」や「チェインクロニクル」のヒットにより、大手ゲーム事業者の中でも一頭地を抜いた感があります。これまでの大手ゲーム事業者によるネイティブアプリは、①売上上位になるもののその維持が難しい、②過度なIP依存、との印象が強かったこともあり、「チェインクロニクル」については今後の試金石という観点からも注目しています。反転攻勢という目線では、PV15位の「グリー、13年6月期は営業益41%減の486億円…課金収益低迷と人件費が収益圧迫、155億円の減損も 海外事業が急成長(8/14)」も要チェックの記事でした。厳しかった決算を中心にまとめているのですが、USスタジオの単月黒字化など海外の成長についても触れています。
グリーはこれまで象徴的な海外買収を2件行っています。2011年のOpenFeint社と2012年のFunzio社です。グリーの事業モデルはプラットフォーマーとアプリパブリッシャーの二つの側面がありますが、OpenFeintは前者、Funzioは後者です。前者は2012年に閉鎖されました。そして後者は現在大変うまく本体と噛み合っている印象です。グリーのみならずディー・エヌ・エーといったSNSプラットフォーマーがアプリパブリッシャーとしての性格をより先鋭化させ、海外展開を行うならば、2014年は海外から目を離せなくなりそうです。
■海外アプリとLINEの台頭
その一方で、先行者メリットで売上ランキング上位にいた海外パブリッシャーの多くが2013年にはラング外へと姿を消しました。その中で、King.com社の「キャンディークラッシュ」、Supercell社の「クラッシュ・オブ・クラン」が、売上上位常連の地位を確保しました。海外でも大ヒットしているこの2タイトルですが、キャンディークラッシュはカジュアル、クラッシュ・オブ・クランは、ミッドコアからハードコアとその性格は大きく異なります。日本のアプリマーケットは、この両タイトルのヒットから二つの気付きを得たように感じています。一つは、キャンディークラッシュのようなカジュアルゲームでも、十分な売上を得ることができるということ、もう一つはクラッシュ・オブ・クランのような海外で流行ったミッドからハードコアといった作りこんだゲームが日本でも受け入れられるようになった、ということです。
特に前者は、「LINE」と絡めて考察しても良いかもしれません。2013年のアプリマーケットの大きな特徴の一つはLINE系アプリの台頭です(最大の特徴と言っても良いかもしれません)。多くがカジュアルゲームながら、Google Play売上ランキング上位を最も多く占めているのが、LINE系アプリ群なのです。
スマホ普及率は2013年中におそらく50%を超えたと思われます。これからスマホを持つユーザはマジョリティ層ではあってもレイトマジョリティ層です。初期のマジョリティ層はアーリーマジョリティと呼ばれますが、別名ブリッジピープル(新製品や新サービスを一般層にブリッジ=橋渡しする人たち)とも呼ばれ、慎重ながらも伝播力もある層でした。しかしながら、レイトマジョリティ層は、別名フォロワーズと呼ばれ、周りが購入・利用しているのを見てから消極的に参画する層です。
その目線でいけば、周りみんながやっているLINE、周りから招待されたLINEアプリ、というのは、レイトマジョリティ層の人たちに対し、とてもマッチした性格・特徴を有していることが分かります。それを鑑みれば、LINEとどう組むのか、エイチームのような提携スタイルが好ましいのか、など2014年のモバイルアプリ事業者は大変頭を悩ますことになりそうです。また「2014年には上場するのでは?」との観測報道も出ており、色々な意味で今年もLINEから目が離せないことになるでしょう。
■ベクトルからボリュームへ ~2014年のモバイルゲーム戦略は?~
2014年のモバイルゲーム市場は、上述したようにスマホの普及率も50%を超えたことで、「普及率の伸び=ベクトル」から「普及率の高さ=ボリューム」に着目した戦略が必要になると考えています。「みんなが持ち始めた」ことから「みんなが持っている」ことを意識した戦略です。あわせてスマホの性能向上がさらに進んでいることから、ネイティブアプリの開発費高騰が確実に顕在化してきています。さらに言えば、これも上述したようにユーザ獲得手法においてはTVCMが主力になることは現時点においてもほぼはっきりしています。これら3点を勘案して出る答えは一つ。そう、『大きなお金が必要となってくる』です。ガンホーの「パズル&ドラゴンズ(パズドラ)」を例に挙げることによって、ゲーム業界は、いとも簡単に「下剋上」が起こる(=長続きしない)といった趣旨の論調をたびたび目にすることがあります。しかしながら過去を振り返ってみると、そうした下剋上は必ずと言って良いほど、インフラや端末の普及初期に起こっています。なぜならば、先ほど記した普及率15%を超えた頃から出現し始めるアーリーマジョリティ=ブリッジピープルを押さえた商品・サービスこそが、社会現象とも言える商品・サービスへと昇華しているからです。インフラや端末それ自身が広がることと、ブリッジピープルによる拡散、この二つが「下剋上」を起こすのです。
現状は…といえば、すでにスマホ普及率が50%を超えたと思われる水準です。インフラが普及し切ってしまい、新規利用者の主力は受け身のレイトマジョリティ層となってきています。こうしたステージで、大ヒットを目指すには「力技」が必須となってきます。すなわち「お金にモノを言わせた施策」です。あたかもローテーションのように第二のパズドラが出現することはまず考えられず、それがあるとするならば、相当緻密な戦略、大規模な開発投資、そして莫大なTVCM費用が必要となってくると思われます。それに気づいた企業の一部は、再度ブラウザに回帰したり、ミドルヒットを複数狙う方向に向かうかもしれません。
■本当の意味でのパーソナルコンピュータ=スマホの普及が新時代を切り拓く!
ソフトバンク、ガンホーによるSupercell社買収も規模=力技を意識したものです。2014年は国内においてもM&Aや合従連衡が進むと予想しています。資金調達に成功した企業とそうでない企業とでは、「事業リスクをどれだけ取れるか?」、すなわち力技の度合いという点において大きな差が出ることでしょう。広告ひとつ取っても、単なる広告宣伝費の規模だけでなく(それだけでも大変なのですが…)、それをどうプランニングしどう効果を精査するのか…それらを実施可能な組織構築までもが求められてきています。非開発部門にそこまで投資を行える=リスクが取れるスタートアップ企業は稀です。リスクを取れない企業の一部は、先行したネイティブアプリ事業者と緩やかな提携を結ぶところも出てくることでしょう。ダイナミックな2013年に比べ、2014年は経営力や戦略といったより地味な部分が重要になってくるかもしれません。一方で期待もあります。米国でのPCは1人1台、文字通り「パーソナルな」広がりとなりました。米国における1人1台というPC保有の規模こそが、世界に類を見ない斬新なウェブサービスを数多く生み出した下地となりました。そして日本でもようやく1人1台、本当の意味での「パーソナルな」コンピュータがスマホと言う名前で広がろうとしているのです。ゲームも含めた全く新しいかつて見たこともないようなサービスが日本においても生まれる土壌がようやく整ったのです。2014年はそうしたサービスが大手企業のみならずスタートアップ企業からも生まれることを期待したいと考えています。
ソーシャルゲームインフォ株式会社
代表取締役社長 長谷部潤
代表取締役社長 長谷部潤