ベクター決算説明会 梶並社長「スマホ向けゲームの自社開発に向け調整中」 ローカライズ中心路線を一部転換

ベクター<2656>は1月28日、都内で2014年3月期第3四半期(3Q、2013年10~12月)の決算説明会を開催した。説明会で梶並伸博社長は、スマートフォン向けゲームについて「自社オリジナルタイトルの開発に着手することに向けて調整している」と語り、海外ゲームのローカライズ路線からの転換方針を示した。海外開発ではスピード感のある運営が難しいためと説明した。(以下、かぎ括弧内は梶並社長の発言)
 

■4Qも売上減、赤字継続を予想


ベクターは1月24日に3Qの連結決算を発表(関連記事)。オンラインゲーム事業の収益が想定を下回り、10~12月の売上高は5.52億円と前四半期(7~9月)から3.8%減った。9四半期連続の営業赤字だが、赤字幅は0.59億円と前四半期(0.61億円)からわずかに縮小。不採算ゲームの終了を進めたことで、4~6月以降、いったん赤字幅の拡大に歯止めがかかった。
 

もっとも、売上高の低迷は続いている。4~12月累計の売上高は16.67億円と、会社の予想を4.7憶円下回っている。コスト削減効果で赤字幅は会社予想より縮小したものの、本格的に業績が改善しているとは言えない状況だ。第4四半期(4Q、1~3月)の業績予想は売上高が3Q比で7%減の5.1億円、営業赤字幅も9800万円に拡大するとの見通しを示した。
 

■スマホ向け自社ゲーム開発で調整中


梶並社長は4Qに向けた施策を説明。「スマホのオリジナルゲーム開発に着手する方向で社内外で調整している」と発言した。そのほか、いくつか新規事業の開発も進めており、「まだ社外秘の段階だが来期1Qまでには公表したい」と述べた。「キャッシュ(現預金と有価証券)は16億円ほどあり、オリジナルタイトルや新規事業の開発余力はある」という。(写真は説明会の梶並社長)

これまでオンラインゲーム事業は海外タイトルのローカライズを中心とする戦略をとり、スマホ向けにもローカライズ作品の『アルカナ・マギア』や『ポケットヴァルキリー』をリリースしてきた。なぜ自社開発方針に転換したのか。それは費用面のメリットがあるとは言いにくいなか、運営や改修の対応の遅さというデメリットが顕在化しているためだ。

梶並社長はまず「日本でリリースする場合、ゲームタイトルは自分で作った方が安いのか、他社から買ってきたほうが安いのか」というコスト面から解説した。「PC向けは開発費で数億円以上かかるため、自社開発するよりも海外からライセンスを買ってきた方が安い。コンシューマー向けはもっと高く、日本で作ったものを日本市場だけで費用を回収するのは難しい。撤退した初期ガラケー(フィーチャーフォン)のゲーム開発は数百万程度と安いため、自社開発でやっていた」という。

だが、スマホ向けは現在、ライセンスを買う時の金額と開発費がたいたい同程度で「どちらが安いか判断するのが難しい境界線上にある」という。1~2年という運用を考え、継続的にロイヤリティ払うとすれば、自社開発のほうが安くなることも考えられる。

海外ローカライズの費用面でのメリットが見えにくいなか、開発・運営を海外に委ねることのデメリットが浮上。「イベントや改修の対応が遅く、思ったようなタイミングでできない」点だ。「日本のスマホゲームは世界一のレッドオーシャン(競争の激しい市場)。さらに海外と違い、コンシューマーゲームメーカが本気でやっている」と指摘。競争の激しいスマホ向けゲームとして、スピード感のある運営ができないことは厳しいとの考えに至ったという。

『アルカナ・マギア』もプロモーションで売上は伸びたが、「正直なところ期待したほどではない。問題点の改修対応なども遅い」と話していた。説明会の会場からは「自社開発に見切りをつけたはずでは?」という質問が出たが、この説明を繰り返した。

なお、自社開発方針はスマホ向けゲーム分野のみ。ゲーム以外の新規事業では企画は自社、開発は外部とする方針。PC向けゲームも海外からライセンスを買ってくる方針は変わらないと説明していた。
 

■『ポケットヴァルキリー』はAndroid版と同時に本格攻勢、設立25周年キャンペーンも


新作のiOSアプリ『ポケットヴァルキリー』(関連記事)については、現在、KPI(評価指標)を確認中で、まだ本格プロモーション段階ではないと指摘。「今期中、調整終了後に本格的にプロモーションをかけ、同時にAndroid版を出すだろう」と話した。また、今年2月3日がベクターの設立25周年であるため(1989年2月3日設立)、ベクター全体でいくつかのキャンペーンを実施していくという。
 
▼『ポケットヴァルキリー』のイメージ

 

■『アステルゲート』は「期待が高すぎた」、PCブラウザゲームは一部ポータルが弱体化?


会場からは、前回の説明会で梶並社長が紹介したPCブラウザゲーム『創星紀アステルゲート』の状況について、質問が出た。『アステルゲート』は自社運営ポータルサイト「Vector Game」のほか、「mixiゲーム」「Yahoo!Mobage」など複数のソーシャルゲームプラットフォーム/ポータルサイトで配信したが、「期待が高すぎた」という。

梶並社長は『アステルゲート』について「想定していたユーザー獲得数が未達となったポータル、プラットフォームがあった」と指摘。「自社でプロモーションしたところ(Vector Game)はほぼ計画通りだったが、弱体化したのではと思えるような他社ポータルがあった。我々が想定していた従来ほどの獲得数がなく、予想外だった。プラットフォーム自体が弱体化したのかどうかはわからないが、タイトル自体の弱さだけでは説明しきれない面もあった」と述べた。


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株式会社べクターホールディングス
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会社情報

会社名
株式会社べクターホールディングス
設立
1989年2月
代表者
代表取締役社長 渡邊 正輝/代表取締役副社長 加藤 彰宏
決算期
3月
上場区分
東証スタンダード
証券コード
2656
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