ドリコム決算説明会 内藤社長「『フルボッコ』事前登録ガチャは想定以上の効果」 大型IP「ジョジョ」「ワンピース」に関心集まる

ドリコム<3793>は1月30日、2014年3月期第3四半期(2013年10~12月)の連結決算を発表し、都内で決算説明会を開催した。10~12月の売上高は17.13億円と前四半期(7~9月、16.81億円)比で4四半期ぶりに増加に転じ、営業赤字幅も9100万円(前四半期は2.32億円)に縮小した。ブラウザゲームの減収ペースが和らぐなか、スマートフォン向け広告事業の成長が全体の売上をけん引。費用削減も進んだ。ドリコムの内藤裕紀社長は、前回の説明会で公開できなかった、「ジョジョ」と「ワンピース」という大型IP(知的財産)タイトル2本を紹介。すでにiOS版をリリースした『フルボッコヒーローズ』を含め、「新作全てを売上トップ10タイトルに育て、業績を伸ばしていきたい」との意気込みを語った。説明会参加者の関心は大型IPに集中した。(以下、かぎ括弧内は内藤社長の発言)
 

■スマホ広告事業が成長、ブラウザゲームも底堅い


10~12月の売上高、利益ともに前年同期(1年前)と比べると見劣りするが、前四半期比較(QonQ)では会社計画を上回る改善を見せた。計画では売上高は16億円、営業赤字3億円を見込んでいた。各種費用を想定より抑えられたほか、既存のブラウザゲームが底堅く推移した。ブラウザゲームはサポート改善でコアユーザー向けに注力したという。「dゲーム」など多プラットフォーム対応も進めた。

スマホ向けの広告事業が早期に立ち上がっており、同事業を含む「アドソリューション」事業の売上高は前四半期比9割増の1.91億円と、ドリコム全体のQonQでの増収は広告事業がけん引した。ソーシャルラーニング事業は依然開発段階とのこと。
 


内藤社長は「引き続きネイティブ開発のスケジュール管理に課題がある」としつつ、『フルボッコヒーローズ』を含めて4本出てくるネイティブゲームを育て、売上を伸ばしていきたいと語った。
 
 

■『フルボッコヒーローズ』、事前登録ガチャで「自身も驚き」の集客果たす


事前登録手法が話題となった『フルボッコヒーローズ』について、内藤社長は説明の時間を多く割いた。本作では「事前登録ガチャ」という、リリース前からガチャが引ける施策を実施。業界や市場関係者の注目の高い施策だった。(写真は説明会での内藤社長)

内藤社長はまず、ネイティブアプリにおける「リセットマラソン」(リセマラ)というユーザーの行為が業界全体的に流行している点を説明。ネイティブアプリゲームでは、ダウンロード後、初回の1回だけ無料でガチャをひけるようにしているものが多い。初回のガチャで良いカードが引けなかった場合、削除して再インストールし、もう一度ガチャを引く。良いカードが手に入るまでダウンロードしては削除の繰り返し。これが「リセマラ」だ。「リセマラ」によって単純なダウンロード数は水増しされる。

内藤社長は、リセマラを逆手にとって、「それならリリース前の事前登録時に、良いカードが出るまで何回でもガチャを引いてもらおう」と考えたという。事前登録で5回までは普通にガチャが引け、ツイッターでシェアすれば無限に回せるというように「ガチャを回せば回すほど作品の情報がバイラル(口コミ)で拡散する仕組み」を提供したという。リセマラを利用した情報拡散を狙ったことになる。

結果は「想定を上回る集客で、(獲得カードを確定すると発行される)シリアルコードの数だけでは35万を超えた。通常、事前登録数は最初に伸びた後は横ばいとなるが、今回はどんどん伸びた」という。なお、実際のユニークユーザーは「集計できる手法でやっていなかったのでわからない」とのこと。リリース後の広告宣伝費はゼロで10万ダウンロードを達成しており、「リリースからまだ数日しか経過していないが、順調な滑り出しだとみている」という。
 

 
『フルボッコ』の売上ランキングは、現在、伸び悩んでいる。今後の推移について、「ソーシャルゲームのシステムは、ガチャを使って手に入れた強力なカードを最初から全部デッキに組み込めるタイプと、組み込みコストの制限を付けてレベル上がったら組み込めるタイプの2種類がある。前者はガチャが最初からどんどん回る。後者は徐々にユーザがガチャを回していく。今回はコスト制限を入れているため、売上が急に立ち上がるのではなく、徐々に立ち上がるものとして設計している」と説明。「KPI(評価指標)も想定より良い感じで推移している。徐々に売上が伸びていくように、プロモーションをやっていく」という。

『フルボッコ』はこれまでのソーシャルゲームではあまり見かけなかった、敵が徐々に近づいてくるタイプのシューティングゲームだ。なぜこのようなゲームシステムを採用したのかという質問に、「スマホで新しいゲームシステムを考える際に、社内でキーワードになったのはファミコン。ファミコンのゲームのように、説明書を読まなくても感覚的に遊べる簡単なゲームシステムは何か、と考えた。フルボッコはインベーダーゲームから発想を得た」と答えた。
 

■「ジョジョ」と「ワンピース」という2大IPを獲得、説明会参加者の関心高く


もうひとつ、参加者の関心事は「ジョジョ」と「ワンピース」という2大IPを獲得できたこと。ドリコムはバンダイナムコゲームスと共同で、スマホ向けに『ジョジョの奇妙な冒険 スターダストシューターズ』『ONE PIECE トレジャークルーズ』という2つのゲームをリリースする予定だ。
 

ドリコムにおける、この2本のタイトルの売上計上方法は、グロス(総額)ではなく、決済手数料とバンナムとのレベニューシェア(収益分配)を除いたネット計上とのこと。それ以外については「契約内容は一切お答えできない」という。それでも説明会参加者から質問が相次いだが、「2つの大きなIPをとれたことは、バンダイナムコさんと良い関係が築けていることの表れ」と述べるにとどめた。

ほかにもドリコムは、ギルドバトルRPG『征戦!エクスカリバー』など複数の人気ソーシャルゲームを提供するバンク・オブ・イノベーションと共同で、スマホ向けゲーム『ノブナガ・ザ・フール』を今春から提供する予定だ。なお、ドリコムは現在放映中のアニメ「ノブナガ・ザ・フール」の製作委員会に入っている。
 

■スマホ広告は自社経験を活用、ソーシャルラーニングには協業の引き合いも


好調なスマホ向け広告事業については、自社経験を活用したことが奏功しているもよう。「App Storeなどのランキングは集計ロジックの変更が多く、ゲームを提供している側として変更に追いつくのが難しいと感じていた。ランキングによるユーザー流入は多いので、自社の問題点を解決していった。他社も苦労しているという話を伺ったので、自社のノウハウを踏まえたうえで広告商品を作ったところ、好評を得ている」とのことだ。
 

ソーシャルラーニング分野にIPを活用する計画はないか、という質問に対しては「ソーシャルラーニングでも、いろいろな会社からいっしょにやりませんかという問い合わせはある。ゲームでなければIPを出してもいい、というところも多い」と指摘。たが、現時点ではまだ事業も開発段階にあり「中立的」と述べるにとどめた。
 

■業績見通しは据え置き、新作は「全て売上トップ10入り目指す」


今期の業績見通しについて、「2つの大型IP(ジョジョとワンピース)はそこまで大きく盛り込んでいない。すでにリリースのスケジュールが確定しているものをベースに作っている」という。リリースしたばかりの『フルボッコ』を含めて、新作の状況が不透明であるため、見通しは据え置いた。リリース時期が変動する可能性も残る。
 

なお、今後の広告宣伝費は「状況次第。アプリが順調に立ち上がれば立ち上がるほど、前倒しでかける可能性はある」という。『フルボッコ』を含む今後リリース予定の新作については「短期的な実をとりにいくという判断はしていない。全部が売上ランキングで10位内に入ることを目指す気持ちでやっている。未来の大きな実をとる判断で、広告宣伝費もかけていきたい」と述べた。

人員については「ブラウザ型のソーシャルゲームは毎回イベントをゼロから作って提供していたので人員が必要だったが、ネイティブアプリは(アプリ内に)イベントが組み込まれているので、リリース後の大幅な増員を想定していない」と述べた。


■関連リンク(PDFファイル)

決算説明会資料
 
株式会社ドリコム
http://www.drecom.co.jp/

会社情報

会社名
株式会社ドリコム
設立
2001年11月
代表者
代表取締役社長 内藤 裕紀
決算期
3月
直近業績
売上高108億円、営業利益22億8100万円、経常利益21億9200万円、最終利益11億5900万円(2023年3月期)
上場区分
東証グロース
証券コード
3793
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