ボルテージ決算説明会 横田社長「来期に米子会社の単月黒字化目指す」 今期業績を上方修正…「ネイティブは勝手が違うので保守的計画」

ボルテージ<3639>は1月31日、2014年6月期第2四半期(2Q、13年10~12月)の連結決算を発表し、都内で決算説明会を開いた。2Qの売上高は前四半期(7~9月)比11%増の25.44億円、営業利益は3.77億円の黒字(前四半期は1.12億円の赤字)と、ともに四半期として過去最高を記録。広告効率化が増益につながった。同時に14年6月期通期の業績予想も上方修正し、売上高は100億円の大台を見込む。

説明会で横田晃洋社長は、上方修正後の業績予想について「ネイティブアプリはウェブと勝手が違うこともあり、保守的に見積もっている」と指摘。ネイティブアプリの売上比率も「まだ伸ばしていける」と今後の成長余地を示した。また、米国子会社の来期黒字化を目指す計画を明らかにした。なお、IP(知的財産)を活用したタイトルについての考えを聞かれた際、「IPによる短期的な収益よりも、社内でゼロからつくる力を育てていく」といい、オリジナルタイトル志向を示した。(以下、かぎ括弧内は横田社長の発言)
 

 
 

■広告効率化で大幅増益、キャリア公式向け広告を抑制


四半期ごとの業績は売上、営業利益ともに13年4~6月を底に上昇傾向にある。上期(7~12月)累計の業績も売上高は前年同期比5%増の48.37億円、営業利益は同3.6倍の2.65億円と改善した。上期の業績改善は生産性の向上によるもの。具体的には広告宣伝費が約15億円から約9億円に減ったにも関わらず、売上が伸びたことが大きい。1Q(7~9月)に大規模テレビCMを打った一方で、モバイル向け広告宣伝費の効率化を進めた。10月以降は大規模CMを打っていないが、売上を増やしている。
 


会場からは、広告宣伝費を減らしたのに売上高が伸びたと理由は何か、という質問が出た。横田社長は「売上高で5%増というのは、それほどでもない成長率だとみている。前年同期と同じだけ広告費をかければ、売上はもっと上がっただろう」と述べた。モバイル向け広告の効率化は「キャリア公式サイト向けの広告を削減した」とのこと。「キャリア公式サイト向けの売り上げは落ちたが、OS(iOS、Android)向けで補って伸ばしている」という。
 
 

■1月はCM効果好調…引き上げた業績予想は「保守的」「ネイティブ勝手違う」


1月は大規模テレビCMを実施。「CMで紹介したもの以外のコンテンツも全体的に底上げされている」とのことだ。CM費用の回収見通しに対して楽観的かどうかについては、「なんとかこの程度いけばいいかな、というギリギリになりそう。諸手を上げて(大丈夫)という感じではない」と述べた。なお、広告費のポリシーについては「シンプルで、1年でどれだけ回収できるかを考えている。今期の業績に対して、というよりは、来期回収できるなら先行投資でやっていく」と話した。

下期について、大規模CMをかける計画にもかかわらず、それほど売上が伸びる予想を出していないとの質問が出た。横田社長は「業界全体の傾向でウェブ系(コンテンツ)を主体にしていたところは、ネイティブで勝手が違うため苦戦しており、業績を下方修正しているところもある。我々も保守的にみている」とネイティブ展開を手探りで進めている状況を述べた。「ネイティブのサービスインは難しい。ウェブとはやや勝手が違う」という。
 

 

■ネイティブ比率4割は「まだ伸ばしていける」


同社の恋愛ドラマアプリは、個人でドラマを楽しむ「パーソナル」と友人と交流しながらドラマを楽しむ「ソーシャル」の2種類がある。「パーソナル」はApp StoreやGoogle Playなどで「エンターテインメント」カテゴリーに含まれている。現在は、CMを打った『吉祥寺 恋色デイズ』が好調に推移しているほか、全般にランキング推移が好調。国内の「エンターテインメント」分野は「寡占手前という状況」と語った。
 

稼ぎ頭のタイトルは何か、との質問に対して『ゴシップガール』や『誓いのキスは突然に』、『吉祥寺恋色デイズ』などが人気と答えつつ、「それぞれ1アプリの売り上げは月に数千万円程度で、ARPPU(有料会員一人当たりの平均売上高)も幅があるが月数千円程度。大ヒットを出すというよりは、色々なタイトルを楽しんでもらって、全体で収益を上げる方針」と述べた。

同社の売上高に占めるスマートフォン比率はおおむね8割近く。ただ、今期のネイティブの割合について「ネイティブはまだ半分までいっておらず、4割くらい」と述べた。「逆に言えばもっと伸ばしていける」と前向きに捉えていた。
 
 

■男性向けに「不良物、スポコン物」も?

「ソーシャル」のOS系(iOS/Android端末向け)は「第2世代として新しい仕組みを入れていく」予定。また、従来の「男女向けコンテンツ」については「サスペンスドラマアプリ」と改称し、この3Q内に新作を投入していく方針だ。
 

男性向けコンテンツの配信方針については「もともと男女問わずにアプリを提供していく方針で、たまたま女性向けの恋愛ドラマアプリが先行している状況。今後は冒険物、不良物、スポコン物もありうるかもしれない」と可能性を示した。
 

■海外:SFスタジオの単月黒字化を目指す英語以外の展開は「難しい」


海外事業における翻訳・ローカライズは、サンフランシスコで外国人が作るタイトルと、日本でリリースしたものの翻訳の2方向で進めている。「後者は基本的には日本のストーリに沿ったもので、日本の文化をそのまま提供している。後者のほうが(収益面で)先行している」という。

上期の営業黒字額が個別(4.13億円)から連結(2.65億円)で減少するのは、SF(サンフランシスコ)スタジオ(米国子会社)の赤字によるものという。このSFスタジオについては「来期に単月営業黒字とする計画をたて、1月から実行を始めた」とのこと。USオリジナルタイトルの制作を進めるほか、英語翻訳版をSFスタジオに移管することで、黒字化を目指す。

なお、SFスタジオのオリジナル作品『TO Love & Protect』がセールの効果などで、一時的に海外エンターテインメントカテゴリー4位にランクインした。今後、どれだけ海外発のヒットタイトルを出せるかに注目したい。
 

また、英語以外の言語への対応については「英語は採算が取れると考えてはいるが、さまざまな面を考慮すると、英語の次の言語は未定。選定はかなり難しい。ストーリー主体の作品なので翻訳文字数が多い。恋愛作品なので翻訳も伝わればいいというものではなく、微妙なコミュニケーションが必要」と難しさを語った。
 

■オリジナル作品志向「短期収益より、社内でゼロからつくる力を育てる」


競合他社の成長を懸念する声が出た。「国内ではサイバードさん、海外でNTTソルマーレさんがそれぞれ成長している。 ボルテージが後塵を拝しているところもある。ボルテージが経営資源をGREE向け中心に展開していたところ、先行してOS系に取り組んだサイバード さんが先行した面はある」と認めつつ、「コンテンツの品質では負けているつもりはない。切磋琢磨して追い抜いていきたい」と述べた。

自社タイトル間でユーザーの取り合いはあるのかという質問には、「あるにはある。その結果として、作品のレベルが上がり、ユーザーを引き付けることができる」と答えた。

IP(知的財産)を活用したタイトル展開の方針を聞かれた際には、「基本的にオリジナルものに取り組んでいく。IPタイトルで短期的に収益が出るより、社内でゼロからつくる力を育てていくことを考えている」と述べた。「ゴシップガール」というIPを活用しているが、「巨大なIPで、かつボルテージがストーリーやイラストも主導権を持てたので手掛けた」と話していた。


■関連リンク

決算説明会資料
株式会社ボルテージ
http://www.voltage.co.jp/

会社情報

会社名
株式会社ボルテージ
設立
1999年9月
代表者
代表取締役社長 津谷 祐司
決算期
6月
直近業績
売上高42億5700万円、営業損益8400万円の赤字、経常損益6300万円の赤字、最終損益3900万円の赤字(2023年6月期)
上場区分
東証スタンダード
証券コード
3639
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