【ドリコムセミナーレポート】『フライングゲットガチャ』はなぜ成功したのか? マーケティング担当者がその秘訣を語る。

ドリコム<3793>は、2月25日、東京都目黒区にあるドリコム本社で、「業界大注目!『フライングゲットガチャ』の効果」と題するスマートフォンアプリのマーケティングセミナーを開催した。業界内でも注目を集めた『フルボッコヒーローズ』で実施した「フライングゲットガチャ」の事例として、より効果的なプロモーションや良質なユーザーを獲得するための手法やノウハウが数字も公開された。

セミナーを聞いた印象としては、大きな成功を収めたのは、事前登録とリセットマラソン、ソーシャルメディアを使ったバイラル要素を組み合わせた「フライングゲットガチャ」をいちはやく設計し、そして実施したことが大きい。しかし、それだけでなく、メディアへの情報発信やゲームの魅力を伝えるプロモーション動画、わかりやすい公式サイト、そしてソーシャルメディアを使ったユーザーとの関係構築といった地道な取り組みもかなり大きな影響を与えたことが伺えた。

また、セミナーでは、ドリコムが新たに「フライングゲットガチャ」のシステムを外部のアプリディベロッパーに販売することも明らかにした。いち早く「フライングゲットガチャ」を実施したノウハウでサービス開始前のプロモーションをサポートするだけでなく、メディアへの情報発信や広告出稿などのマーケティング活動全般のサポートも行う。

今回の記事では、『フライングゲットガチャ』の成功要因に関するセミナーの模様を中心にお伝えしていきたい。

 

■意図的にバイラルを起こしてインストールを最大化


ドリコムマーケティング部部長の土倉康平氏が登壇し、『フルボッコヒーローズ』における「フライングゲットガチャ」を中心とする事前プロモーションに関する紹介を行った。簡単に自己紹介したあと、『フルボッコヒーローズ』の事前登録者数が48万5000件を超えていたおとを明らかにした。また、サービス開始後、ユーザーの倒した敵の撃破数も10億ボッコ(10億体)を突破した。アプリのダウンロード数も100万ダウンロードを突破したことも明らかにしている。






(1)フライングゲットガチャとは

いままでのプロモーションは、良質なコンテンツとネット広告を組み合わせたものだったが、今回は、それに加えて事前登録とともに意識的にバイラルを狙った施策を取り入れたという。その中心は「フライングゲットガチャ」だった。誕生の経緯は、ユーザーに喜んでもらうため、いちいちインストールして削除を繰り返す、面倒なリセマラ(リセットマラソン)を楽にできるものはないかと考えたときに生まれたものだったという。リリース前の事前登録時に良いカードが出るまで何回でもガチャを引いてもらうわけだ。





さて、ご存じの方も多いだろうが、その仕組みは、ゲームの公式サイトに訪れて登録すると、シリアルコードが発行される。そのとき、「フラゲガチャに参加する」のボタンを押し、SNS認証を終えると、ガチャを引くことができ、満足するものができたとき、確定して終了となる。

しかし、ガチャの結果に満足できなかった場合、SNSで拡散すれば、さらにまわすことができる。そして、そのユーザーの拡散が別のユーザーの関心を呼び、新しくゲーム公式サイトを訪れて、事前登録してガチャを回す…といったような好循環が生まれた。信じがたい規模の事前登録者数につながったわけだ。





ただ、この仕組みを入れるための工数は予想外に大きく、企画開発、デザインでそれぞれ2人月かかっているだけでなく、アプリ制作チームやインフラチームの稼働も発生したため、「かなりの工数がかかった」(土倉氏)とのことだった。



(2)フライングゲットガチャの効果

では、こうした施策を行ったところ、どういった結果になったのか。土倉氏は、可能な限りの数字データを示しながら、結果についてコメントした。まず、「フライングゲットガチャ」の回転数は約996万回転で、1日あたり20万回転だった。リリース時には1000万回転を目指していたが、やや及ばなかった。





続いてTwitterの認証数は約10万件で、#フルボッコ、#フラゲというハッシュタグを付けたツイート数が140万件、そして、つぶやいたユーザーのフォロワー数の累計は常時30~50万人にもなった。すさまじいバイラル効果を発揮したといえよう。





リリース後の状況については、プロモーションを行わなかったが、iOSでは無料ランキング5位、Androidについても同様に20位まで上昇した。

ちなみに、その後のメディア向けに行った質疑応答で、プロモーション施策については、Androidについては新着無料への掲載期間の関係上、プロモーションを行ったが、iOS版についてはアプリに問題があるため、プロモーションを止めているとのことだった。アプリの問題点が改修され次第、本格的なプロモーションを行っていく予定だ。

事前登録者数については48万人だったが、この施策を通じて、実際にインストールしたユーザー数についてははっきり確認できるのは5万人だけで、それ以外はよくわからないとのことだった。シリアルコードのキャプチャーを撮り忘れたり、紛失したりした人が多かっただけでなく、Twitter経由で登録した人には通知されたDMに気づかない人が多かったためだ。

この件に関して、ユーザーから問い合わせが殺到し、カスタマーサポートがパンクしてしまう状態だったようだ。この点は反省点だが、ノンプロモーションでランキングが上がったことから、「フライングゲットガチャ」が初期のユーザーの獲得で大きな意味があったと考えているという。





他社の予約サービスも組み合わせて行ったが、継続率については概して高く、プロモーション施策上の事前登録サービスの有効性も確認できたと語った。ここで自社と他社サービスの継続率のデータを公開した。それによると、他社のサービスが1日後継続率が80%、3日が57%、7日が40%だったのに対し、事前登録+フラゲガチャユーザーの1日が96%、3日が85%、7日後には65%と驚異的な数字となっていた。この点について、土倉氏は、「ほしいキャラが出るまでガチャを回した人はゲームでも試してみたいと思うはずで非常に熱量の高いユーザーが獲得できたのではないか」と指摘した。





また課金率については数字の公開はなかったが、事前登録+フラゲガチャの効果が非常に大きなものであることを示すものとなった。事前登録+フラゲガチャのユーザーは、自然流入のユーザーの約6倍となり、さらに他社の予約サービスの約2倍になるという。事前予約サービス経由のユーザーの課金率は非常に高いことが知られているが、それをさらに上回るものだった。予約サービスに「フラゲガチャ」を組み合わせることのメリットが強調された。





同様に「招待コード入力数÷各経路インストールユーザー数」で計算した招待率では、「事前登録+フラゲガチャ」が自然流入の約13倍、予約サービス経由のユーザーの約2.4倍となった。





このほか、バイラル経由で広がったため、海外からのアクセスも非常に多かったことも特徴だった。23時間で事前登録者数が1万人突破というニュースを最初に出したが、そのニュースはまたたくまに海外にも広がり、海外メディアでも取り上げられるようになった。この結果、国内向けサービスにもかかわらず、公式サイトへの海外メディア経由での来訪が多かったという。リリース前にもかかわらず、海外のパブリッシャー30社以上からライセンス契約のオファーがあったそうだ。



(3)形だけ真似をしてもうまくいかない

また今回のフラインゲットガチャが効果を発揮したことを受けて、他社でも実施するケースが増えているが、ドリコムのガチャ回転数には遠く及ばない。それはなぜなのか。フライングゲットガチャ以外の施策についても公開した。





土倉氏は、形式的にフライングゲットガチャの真似をしても回転数は伸びないとコメントし、背景にある成功した秘訣を紹介した。第一に当たり前の話なのだが、新規性があり、キャラクターに魅力があるなどプロダクトが良いことが条件だ。そして、公式サイトについては、問題は多々あったものの、丁寧に作って「目的地に導くユーザー動線を引いたサイト設計」にしたことも大きかった。そして非常に大きな影響を持ったのは、サイバーコネクトツーが制作したプロモーション動画だった。動画のできが素晴らしく、10万回以上再生された。ひと目でどんなゲームかわかるようになっており、かつゲームも面白そうと思ってもらえたのではないかと振り返った。





その一方で、メディア展開にも力を入れた。対戦系の記事やフライングゲットガチャを引いてみたという企画、ゲームの期待感を高めるコンテンツ、プレイ動画の紹介、事前登録者数と回転数をアピールするPR活動も展開した。媒体特性を意識した記事内容をだし、ユーザーを飽きさせないよう、タイミングも設計して公開したことが奏功したとしている。





またメディアでの掲載数と新規登録者数には強い相関が見られた。土倉氏は、メディアでの掲載に関しては、「メディアにいかに面白い情報を提供できるかが重要」と語った。





ソーシャルメディアについては、ツイッター公式アカウントの運用に力を入れた。アプリ側と連動して新鮮な情報を提供すること、フォロワーが楽しめる施策も実施した。フォロワーがゲーム内通貨をもらえるような企画などを考えて実施した(関連記事)とのことだった。これ以外にも、メディアに取り上げてもらった時に公式アカウントで紹介したり、ニコ生での番組などユーザーが多い場所での活動なども行ったりした。頻繁にユーザーに返信してユーザーとの距離を近づけるような取り組みや、海外ユーザーへの返信なども積極的に行っていった。





最後に、「今までにないプロモーション手法でバイラルを狙って起こし、インストールを最大化させる」という当初のミッションは完了したとまとめた。さらに、土倉氏は、現在、どこも企画していないような、新しいマーケティング手法についても鋭意準備していることも明らかにした。こちらについてもどういったマーケティング手法が飛び出していくるのか、非常に楽しみである。


 

■「フライングゲットガチャ」も広告商品として提供 アプリマーケティング全般を支援


続いてドリコムの広告営業部長の柄本真吾氏が登壇し、「フライングガチャ」の商品概要を紹介した。事前登録とガチャコンテンツをメインとして提供する事前登録サービスだ。土倉氏から紹介があったように、自然流入のユーザーに比べて継続率で3倍、課金率で6倍と熱量の高いユーザーを大量に獲得できた実績があり、同社の提供するサービスでも同じ状況が期待できるという。

事前登録部分のサービスの仕組みは、いわゆる既存の事前予約サービスと同じで、トップページに案件がずらりと並び、ユーザーが気になった案件をタップするとその画面に移動し、事前登録ができるようになる。

「フライングガチャ」の特徴は、そこから「ガチャトップ」のページに移動し、Twitterの認証を経て、ガチャが引けるようになる点にある。ガチャを回す回数が上限に到達すると、ソーシャルメディアに拡散することで再度、ガチャが回せるようになるのは「フライングゲットガチャ」と同じだ。






「フライングゲットガチャ」でシリアルコードを紛失したり、ツイッターでの通知に気づかない人が多数発生した問題についてはすでに解決策がでており、同様の問題が発生することはないとのことだった。また「フライングガチャ」に関するユーザーからの問い合わせについてもドリコムで対応するという。

なお、料金はガチャ確定数による成功報酬で、通常、1件あたり300円だが、3月31日までの期間限定で200円にするとのこと。

このほか、「フライングガチャ」の提供と合わせて、ゲーム系メディアへの掲載サービスや攻略サイトの準備、動画制作、バイラルの準備、広告代理店フリーのSDKの提供、リワード広告の提供など、リリース前のプロモーション準備から中長期の広告運用までアプリマーケティングに関する支援も行うという。







■関連サイト

フライングガチャ
 
株式会社ドリコム
http://www.drecom.co.jp/

会社情報

会社名
株式会社ドリコム
設立
2001年11月
代表者
代表取締役社長 内藤 裕紀
決算期
3月
直近業績
売上高108億円、営業利益22億8100万円、経常利益21億9200万円、最終利益11億5900万円(2023年3月期)
上場区分
東証グロース
証券コード
3793
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