【インタビュー】世界最大級のアバターコミュニティサービスへと成長した『LINE PLAY』人気の起爆剤とは。同作を統括するLINE執行役員の佐々木大輔氏に聞く


先日、LINEが提供するアバターコミュニティサービス『LINE PLAY』が、全世界1,500万ユーザーを突破した。本サービスは2012年11月21日にオープンして以降、サービス公開から1年で、日本国内のみならず世界210の国と地域で利用され、世界最大級のアバターコミュニティへと成長。さらに2014年4月には、大規模(20人同時)アバターチャットが楽しめる新機能「スクエア」の提供も開始され、さらなるユーザー間での交流で賑わいを見せている。

そこで本稿では、『LINE PLAY』の運営を統括するLINE執行役員の佐々木大輔氏に、本サービスの現状をはじめ、今後の機能拡充や海外展開、そしてアバターサービスにおける可能性など、様々な視点からインタビューしてきた。

 

■そもそも『LINE PLAY』とは


『LINE PLAY』は、ユーザーが作成したアバターやマイルームを装飾してコミュニケーションが楽しめる「LINE」の公式アバターコミュニティサービス(アプリ)。目・鼻・口など任意のパーツを組み合わせて好みのアバターを作成できるだけでなく、自分の顔をカメラで撮影して自分そっくりのアバターを自動作成することも可能だ。

 

「ショップ」では、10,000種類以上のファッション・インテリアアイテムを販売する。それらはマイルームや友だちのルームで食事・入浴・睡眠・水やりなどのアクションを通じて取得できる仮想通貨「ジェム」を利用して購入可能だ。オーソドックスな定番アイテムに加え、クリスマスやお正月など季節にあわせた限定アイテムや、LINEで人気のキャラクターをモチーフとしたアイテムを毎週200点以上追加・更新されている。

これらのアイテムで着飾ったアバターは、『LINE PLAY』内のさまざまな場面で使用される。ラウンジチャット、ダイアリーといった基本機能のほか、ゲームのなかでもこのアバターを使うことで、愛着をもって楽しむことができる。

 

■配信開始日
iOS版:2012年11月21日
Android版:2012年11月21日
 
 

iOS版ダウンロード




 

■世界最大級のアバターコミュニティサービスの舞台裏

 

LINE株式会社 執行役員
佐々木大輔


――:本日はよろしくお願いします。月並みな質問で恐縮ですが、はじめに『LINE PLAY』の立ち上がり経緯について教えてください。

『LINE PLAY』の企画・開発・運営スタッフのなかには、従来のアバターサービスやコミュニティサービスを経験してきたメンバーが多く、アバターコミュニティサービスさまざまなノウハウが蓄積されていました。そうした背景のなか、いま一度スマートフォンで素晴らしいサービスを提供したいという想いのもと、本プロジェクトが立ち上がりました。私は「livedoor」(現運営:LINE)から合流してきたメンバーでしたが、ブログや掲示板などの運営経験も活かして企画・運営を行ってきました。


――:何か開発においてコンセプトはあったのでしょうか。

弊社のコミュニケーションアプリ「LINE」上で展開するため、コミュニケーションの点において「LINE」とは違った“差別化”のポイントについて意識しました。「LINE」は、家族や友達といった親しい関係をベースにして、よりコミュニケーションを深めていけるサービスです。一方『LINE PLAY』は、アバターという仮想の自分を通して、新しい人間関係を広げていけるサービスです。そうした特徴を強みにして、初めて話す人とも会話が弾むような工夫をしたり、仕草やアクションでコミュニケーションできたり、といった機能を提供するようにしています。


――:なるほど。それで先日、大規模アバターチャットが楽しめる新機能「スクエア」が実装されたのですね。

はい。「スクエア」は、ひとつの部屋で最大20人まで同時にコミュニケーションをはかれる、『LINE PLAY』上の仮想広場で、同じ空間を共有する他ユーザーのアバターの表情・動作を見ながら会話をすることができるのが特徴です。


▲「スクエア」機能


――:かなり緻密に手掛けられていると思いますが、それと同じくして開発にもご苦労があったことでしょう。

「スクエア」は、かなり以前から実装を予定していた機能でしたが、ストレスなく快適に操作できるようにするため、技術的な面で開発時間を要しました。また、面白いコミュニケーションが本当に成り立つかどうかは、実際にリリースしてからではないと予想できないこともありました。

しかし、おかげさまでリリース直後から『LINE PLAY』の機能のなかでも一番よく使われる機能に成長しました。やはり、「アバターコミュニケーション」と聞いて最初にイメージするのは、みんなが同時にログインして、動き回りながら会話を楽しめるものだと思うので、その期待に応えられる土台がやっと整ってきたかなと思っています。


――:愚問かもしれませんが、PC向けの展開は考えなかったのですか。

いまのところ、考えておりません。世界で1,500万人の『LINE PLAY』ユーザーのうち、海外ユーザーはちょうど半数です。この1年間で海外ユーザーの数を順調に伸ばせてきたのは、やはりiOSとAndroidのプラットフォームに絞ってサービスを提供してきたからだと思っています。開発のリソースもそこに集中させることができましたし、ストアを通じたマーケティングの恩恵も受けました。

もちろん、前提として「LINE ID」で認証するサービスですので、PC向けのサービスを提供してもそのLINEの強みがいかせないという状況もありました。それらの結果として、スマートフォンで遊べるアバターコミュニティサービスのファーストチョイスとして、多くのユーザーに楽しんでもらうことができたと思っています。


――:分かりました。そして『LINE PLAY』上には、ゲームも導入されていますよね。

現在は『つりとも』をはじめとして、『フルモン』というパズルゲームなど4タイトルがあります。中でも『つりとも』は、自身のアバターを使うからこそ楽しめるような世界観になっています。ちなみにゲームの開発は、NHN PlayArtさんが担当しています。
 


――:いまおっしゃったゲームはもちろんですが、サービスの世界観を構築していくにあたり、アバターデザインも相当意識されたかと思います。

弊社のデザイナーが、素晴らしい仕事をしてくれました。リリース初期の状態では、開発するサービスの品質はもちろん重要ですが、やはり、アバターのデザインのテイストがユーザーに受け入れられるかどうかが、決定的に重要だったと思います。印象的だったのは、リリース前のβ版のテストで実際にユーザーさんに遊んでもらったときのことです。そのときの「かわいい!」という反応が非常によかったんですね。それを見たとき、非常に手応えを感じたことを覚えています。


――:ファッションアイテムも途切れることなく追加されていますが、現在どのくらいありますか。 

数万点という、途方もない数ですね(笑)。毎週200点以上が追加されますし、イベントごとの限定のアイテムなどもたくさんあります。私も、見慣れないアイテムについては、一般のユーザーに「それどこで手に入れたの?」などと聞いたりしています(笑)。
 

▲多彩なファッションアイテムで身を包むアバター


 

■『LINE PLAY』の文化を作るのは、ユーザー自身


――:『LINE PLAY』の収益は、おもに仮想通貨(ジェム)の購入でしょうか。 

そうですね。ジェムを用いてガチャでファッション・インテリアアイテムを手に入れたりするほか、『つりとも』などのゲームでも使用されます。そのほか一部広告モデルとして、『LINE PLAY』との企業タイアップで収益を得ることがあります。

また、『LINE PLAY』で特徴的なのは、どんなアイテムも必ず無料で手に入るように配慮していることです。他のアプリなどによくあるシステムとしては、「レア」まではがんばれば無料で手に入るけれど、「スーパーレア」は有償の仮想通貨を購入してからじゃないと手に入らない、といったものがあると思います。

『LINE PLAY』は、課金しないで楽しもうと思えば、それが実際に可能です。やはり、コミュニケーションが一番楽しんでほしい部分なので、それ以外のところでなるべくつまずいてほしくないため、現在はそのような仕組みを採用しています。


――:『LINE PLAY』を遊ぶ方は、どのようなユーザー層ですか。

原則「LINE」のサービスでは個人情報をとらないため、男女比や年齢層など細かい属性は分かっていません。アバターの性別はわかりますが、それが利用者本人の性別とは限りませんし。それに、男性・女性の他に動物も選べますしね。ただ、運営側としてさまざまな書き込みの利用状況を見ていると、やはり女性が多いと感じますね


――:ユーザーの声などは、実際に聞かれたりしますか。

はい、実際にいちユーザーとして、「スクエア」の中などでウロウロ歩きまわっています(笑)。Twitterやアプリのレビューに書き込まれるものも見るのですが、やはりダイアリーやスクエアでの書き込みが、雰囲気がわかって一番参考になりますね。そこでさりげなく意見を聞いたり、ユーザーが感じていることを調べたりしています。


――:ちなみにユーザーは、どういった遊び方をされていますか。

自身のダイアリーを訪れた際に、ゾロ目や“10000”といった数字がきれいに並ぶキリ番をゲットした人に対して、画像をプレゼントするという文化ができていました。

ガラケーの時代には、「プロフ」(自己紹介サイト)を自身のホームページのようにカスタマイズすることで、そこを中心としたコミュニケーションが生まれていましたが、『LINE PLAY』でもそれに近しい遊びが展開されているようです。デバイスがガラケーからスマートフォンに変わっても、ユーザーさん同士で築き上げた文化はこうして根強く残っていくみたいですね


――:そうだったんですね。ユーザーが独自で文化を築いていく……。無いとは思いますが、近い将来『LINE PLAY』のなかでユーザー自身が商業することも可能なのかなぁと。

現状、そういう機能はありませんが、「スクエア」内にあるカフェで“カフェごっこ”をしているユーザーさんはいます。ついついそういう「ごっこ遊び」をしたくなるような雰囲気は大事にしたいですね。さきほどのキリ番の画像交換もそうでが、こうしてユーザー自身が遊びを発見していく余地があると、サービスにすごく愛着もわきますし、多くのユーザーを惹きつけていく引力になると思うので、その点をもっと掘り下げていければと思っています。


――:ここからは海外展開についてお聞きします。海外ユーザーが750万人とのことでしたが、おもにどの地域が多いのでしょうか。

現在は台湾とタイが多いです。ここは「LINE」のユーザー数が多いので、その影響が強くあります。次いでアメリカ。韓国語対応をしてからは、韓国もすごく伸びています。直近では、2014年5月8日にはタイ語版をリリースしました。日本語、英語、中国語(繁体字)、韓国語、タイ語と5か国語目となります。


――:昨今、コミュニティサービスにおける健全性が取り沙汰されています。『LINE PLAY』の運営では、何か対策はとられていますか。 

これに関しては、チーム一同つねに注意深く考えています。サービス内のルールも厳しく規定を決めています。たとえば、つい先日も、友だち同士による1対1チャットにおいて画像を添付できる機能の提供を中止しました。楽しく使っていたユーザーさんからは不満の声もあがりましたが、一部のユーザーがこの機能を悪用して他のユーザーに迷惑を掛けるのを防ぐため、停止という判断をしました。

しかし、そのことをザーさんに対して丁寧に説明したところ、運営側の意図を理解してこの変更を支持する好意的な反応がたくさん返ってきました。『LINE PLAY』というサービスを楽しいものにするため、ユーザーさんと協力し合いながら一緒になって作り上げている感じがして、とてもうれしい気持ちになりました。本当にありがたいことです。


――:それでは、最後に『LINE PLAY』における今後の展開をお願いします。

コミュニケーション要素を強化するため、先日実装した「スクエア」に続いて、今後もいくつかの機能追加を予定しています。サービス開始当時は、アバターの着せ替えや部屋の模様替えを中心としたサービスでしたが、いまでは多くの方と会話を楽しめるコミュニティサービスへと成長しました。より多くの人に楽しんでもらえるサービスを提供して、ますます『LINE PLAY』を盛り上げていきます。


――:本日はありがとうございました。

 


■関連サイト

『LINE PLAY』公式サイト

「LINE」企業サイト


© LINE Corporation
LINE株式会社
http://linecorp.com/

会社情報

会社名
LINE株式会社
設立
2019年12月
代表者
代表取締役社長 出澤 剛/代表取締役 慎 ジュンホ
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