【決算まとめ】主要上場SAPの1~3月、QonQで営業増益は8社…コロプラとガンホーが最高益 全体の費用は減少に転じる

株式を上場している主要モバイルゲーム企業・SAP(ソーシャルアプリプロバイダー)11社の2014年1~3月期(一部12~2月期)決算が出そろった。本業の儲けを示す営業損益が前四半期比(QonQ)で改善したのは、対象とする11社中8社と、前回決算時の3社から増加。増収(売上増)の企業も7社と前回の6社から増えた。特筆すべき点はコスト削減や広告宣伝費の抑制が進み、減収減益の企業が無くなったことだ。11社合計の四半期費用も増加基調が途切れ、減少に転じている。

11社の決算内容を以下に一覧とした。参考として、Cygamesなどを含むサイバーエージェント(CA)<4751>のゲーム(旧SAP)事業、 gloopsなどを含むネクソン<3659>のモバイル事業の売上高も掲載した。(※KLabは前四半期が4カ月の変則決算だったため、3ヵ月換算した数値との比較となる)
 
▲売上規模順に並べた。前四半期との比較(QonQ)で、%表示のないものは実績
 
売上高と営業利益の増減別に分けると、以下のようになる。
(※以下、KLabは3か月換算した数字との比較を用いる)

増収増益…ガンホー<3765>、KLab<3656>※、ケイブ<3760>、コロプラ<3668>
増収減益…オルトプラス<3672>、ドリコム<3793>、ボルテージ<3639>
減収増益…アクセルマーク<3624>、enish<3667>、クルーズ<2138>、モブキャスト<3664>
 

■売上高:過去最高が4社、コロプラが初めてCAのゲーム事業を上回る

四半期として過去最高の売上高を達成したのは、コロプラ、ボルテージ、ガンホー、オルトプラスの4社だ。ネイティブアプリの本格的な業績寄与が遅れているクルーズとenishは、売上の増加基調が途切れた。
 

こ の四半期の売上高で注目したいのは、コロプラ(123億円)が初めてCAのゲーム事業(118億円)を追い抜いた点だ。ネイティブアプリシフトに先行して成功したガンホーとコロプラの2社が、売上規模でもリードしている。
 

■営業利益:ガンホーとコロプラが最高益更新

四半期として過去最高の営業利益を達成したのは、ガンホーとコロプラの2社のみ。売上が四半期として最高を更新したオルトプラスはベトナム法人への先行投資、ボルテージはテレビCMなどの費用が、利益の圧迫要因になった。
 

ガンホー、コロプラ、クルーズを除くと、各社数億円以下の利益か赤字という状況だ。これまでの主力タイトルだったブラウザゲームの売上減少や、ネイティブアプリなど新作の開発負担、他社IP(知的財産)タイトル(収益分配型)の依存度増加などが、各社の利益率を圧迫しているもよう。
 

■ネイティブアプリの寄与で明暗…減収企業もコスト管理で増益確保

1~3月は、ネイティブアプリへのシフトに苦戦している企業の業績鈍化が目立った四半期となった。ネイティブアプリの業績寄与度が大きくないクルーズ、アクセルマーク、モブキャストは売上高が減少している。ガンホー、コロプラはもちろん、ケイブ、ドリコム、ボルテージ、KLabは徐々に、ネイティブアプリが業績の支えとなってきた。

一方、もうひとつの特徴は経費の削減だろう。enish、クルーズ、アクセルマーク、モブキャストと、減収企業も増益を確保。決算内容を見ると、広告宣伝費や売上原価の減少が利益を支えた。前期に大幅な最終赤字に落ち込んだKLabもコスト削減を進めた。

後述するが、上場11社合計の費用は減少に転じている。業界全体が「売上増→プロモーションや開発、採用に積極投資」というサイクルに戻るには、やはり各社、ネイティブアプリ市場で売上基盤を構築する必要がありそうだ。

以下、各社の状況を個別に見ていこう。
 

■増収増益組

ガンホー<3765>
『パズル&ドラゴンズ』の成長続く。第1四半期(1~3月)の売上高は前四半期比7%増の499億円、営業利益は27%増の287億円と増収増益で、売上・利益ともに四半期として過去最高を記録。『パズドラ』のMAU(月間アクティブユーザー)が増加を続け、3DS向けソフト『パズドラZ』を発売した昨年10~12月を上回る売上高となった。App Storeの売上ランキングで一時的に首位の座を明け渡したことが話題になっており、「過去最大級」の大型コラボの効果を見極めたい。
 
【四半期業績の推移、単位:億円】

 
KLab<3656>
『ラブライブ!』依存脱却へ正念場。第1四半期(1~3月)の売上高は、3ヵ月換算の前四半期比で7%増の44.25億円、営業損益も9600万円の黒字(前四半期は2.2億円の赤字)に転換した。200万ダウンロードを達成した『ラブライブ!スクールアイドルフェスティバル』が、アニメ2期開始の追い風もあって好調。売上に寄与した『天空のクラフトフリート』や『テイルズオブアスタリア』など、新作アプリの成長で収益源の多角化なるか。
 
【四半期業績の推移、単位:億円】(※13年9~12月は4カ月の数値)

ケイブ<3760>
ネイティブアプリがじわり寄与。第3四半期(2013年12月~14年1月)の売上高は5.01億円(前四半期比18%増)、営業損益7900万円の赤字(同1.09億円の赤字)と、増収・赤字縮小となった。『ハローキティのパズルチェイン』や『ドン★パッチン』などのアプリが収益に寄与したが、開発費や運営体制構築費など先行投資が利益を圧迫。今後、資金を投入していく『ジャグラー×モンスター』の動向に注目したい。
 
【四半期業績の推移、単位:億円】

コロプラ<3668>
厳しい時期でも成長継続。第2四半期(1~3月)の売上高は前四半期12%増の123億円、営業利益は9%増の53億円と、年末商戦の反動や野球のシーズンオフという逆風を乗り切り、増収増益を達成。売上・利益ともに四半期で過去最高を更新した。『スリングショットブレイブズ』『ほしの島のにゃんこ』や、リアルタイム対戦機能が登場した『蒼の三国志』、今後配信予定の『白猫プロジェクト』など新作の成長に期待。
 
【四半期業績の推移、単位:億円】 
 

■増収減益組

オルトプラス<3672>
ブラウザゲーム主体だが健闘。第2四半期(1~3月)の売上高は前四半期比9.6%増の7.65億円、営業利益は0.9%減の8300万円だった。既存ゲームの堅調さや運営移管などが売上に寄与したが、ベトナム法人への先行投資などもあり微減となった。他社有力IPタイトルやハイブリッドアプリ(側ネイティブ)のリリースで通期計画達成を目指す。
 
【四半期業績の推移、単位:億円】

ドリコム<3793>
ネイティブシフトも終盤戦。第4四半期(1~3月)の売上高は0.9%増の17.29億円、営業利益は1.22億円の赤字(同9200万円の赤字)だった。ブラウザゲームや広告事業が健闘し、売上は微増を確保。バンダイナムコと共同開発したネイティブアプリ『ジョジョの奇妙な冒険 スターダストシューターズ』『ONE PIECE トレジャークルーズ』の寄与で黒字化目指す。
 
【四半期業績の推移、単位:億円】

ボルテージ<3639>
着実に成長中。第3四半期(1~3月期)の売上高は前四半期比3%増の26.14億円、営業利益は45%減の2.06億円と増収減益。アプリ売上は好調だが、テレビCMや、アプリ比率の上昇によるプラットフォーム手数料の増加が利益減の要因だ。通期業績予想に対する進捗率は高いが、ネイティブアプリの開発・収益見通しが立てづらく据え置き。
 
【四半期業績の推移、単位:億円】
 

■減収増益組

アクセルマーク<3624>
効率化で増益。第2四半期(1~3月)の売上高は前四半期比3%減の8.44億円、営業利益は5割増の4000万円だった。モバイルゲーム事業は既存のブラウザゲームの売上が安定的に推移するなか、運営と開発の効率化を進め、増収増益。一方、コンテンツ事業においてフィーチャーフォン向けの売上高が落ち込んだ。ネイティブゲームアプリを開発する子会社Interrapsを4月に設立。
 
【四半期業績の推移、単位:億円】

enish<3667>
既存タイトルが堅調。第1四半期(1~3月)の売上高は前四半期比0.6%減の17.63億円、営業利益は3.5倍の2.2億円だった。新規作品のリリースは無いが、『ガルショ☆』など既存タイトル堅調。広告宣伝費の効率化で増益を確保した。業績計画の達成に向けて、今後リリース予定のネイティブアプリタイトルで追い上げていく方針だ。
 
【四半期業績の推移、単位:億円】

クルーズ<2138>
ゲームとネット通販がともに減収。第4四半期(1~3月)の売上高は前四半期比14%減の52.64億円、営業利益は同21%増の9.73億円。ブラウザゲームの落ち込みやネット通販の季節的な不振で売上が減ったが、広告宣伝費の抑制で増益を確保した。オンライン対戦機能の開発が完了したiOS版『ACR DRIFT』などネイティブアプリでゲーム事業を再成長軌道に乗せることができるか。
 
【四半期業績の推移、単位:億円】

モブキャスト<3664>
コスト抑制で黒字を確保。第1四半期(1~3月)の業績は、売上11.07億円(前四半期比13%減)、営業損益は1.65億円の黒字(同3.01億円の赤字)に転換した。4年目に突入した同社の人気作『モバプロ』の売上が9割程度に落ち込んだものの、コスト削減と広告費抑制で黒字化果たす。『モバノブ』など新作や、サーカーゲーム世界大会などで巻き返しを狙う。

【四半期業績の推移、単位:億円】

 
 

■業績集計:全体で増収増益に…ガンホーとコロプラが寄与、全体の費用は減少に転じる

最後に、各社の売上高と営業利益の合計額を記載し、業界全体の方向感をつかんでおきたい。

ネクソンのモバイル事業とCAのSAP事業を加えた13社の合計売上高は986億円と、前四半期に比べて4%増加した。ガンホーとコロプラの売上増加がけん引した。ネイティブアプリの売上高が増加傾向にあるCAのゲーム事業も寄与。なお、ガンホーとコロプラの2社以外の合計売上高は2%減った。
 
 
数値が判明している11社の営業利益を合計すると357億円で、前四半期から28%増えた。ガンホーを除いた10社の合計は69億円と同31%増。こ ちらはガンホーの増益に加え、コロプラやクルーズの利益改善も寄与した。
 
 
費用面では売上原価、販売費及び一般管理費ともに増加基調が途切れた。原価と販管費の11社合計額は455億円で、前四半期の506億円から10%減った。減少に転じるのは2014年4月以降では初めてだ。
 

原価は7%減、販管費は17%減。原価減が目立ったのは人員削減を進めたKLabのほか、クルーズ、モブキャストなど。販管費減が目立ったのは広告宣伝費を減らしたモブキャストやクルーズなど。ガンホーも。前四半期に計上した社員向けの一時報酬や、3DSソフト『パズドラZ』発売に伴う広告費が減少したため、原価、販管費ともに減った。