「コアゲーマーに次世代機が浸透」「北米モバイル市場はすでに二極化」…米系証券がE3の示唆と北米モバイル市場の変化についてリポート


 
米国で6月10~12日に開催された世界最大のコンピューターゲーム関連の見本市「E3」(Electronic Entertainment Expo)。今回も据置型ゲーム、モバイルゲームで多くの大型タイトルの情報が公開されたほか、ヘッドマウントディスプレイの「Oculus Rift」や、歩行動作を通じてゲームキャラクターを操作する「Virtuix Omni」など、新たな技術の展示も話題となった。

米系のゴールドマン・サックス証券は6月18日に発行したリポートで、今回のE3について「静かなE3に見えるが、 環境変化を示唆」と指摘している。また、北米のモバイルゲーム市場の変化や、今回のE3で任天堂が発表したNFC(近距離無線通信)対応フィギュア「amiibo」についても触れていた。株式市場がE3をどう受け止めたのか、という視点の参考として、同リポートの内容を一部紹介したい。
 

■欧米コアゲーマー層に見られる3つの変化


同証券のリポートは、欧米コアゲーマー層に見られる3つの変化として、「欧米のハードコアゲーマーに(据置型の)次世代機が浸透」「プレイ動画の共有が広がる」「新しいテクノロジーでより没入的に」の3点に注目する。

「次世代機」については、日本での立ち上がりはまだ低調だが、海外ではプレイステーション4(PS4)が650万台程度、Xbox One(日本未発売)が450万台程度販売されており、「次世代機でのソフト販売が海外各社で想定以上に進捗している」と指摘。次世代機へのソフト対応は海外メーカーが大きく先行しているとみる。

また「プレイ動画の共有の広がり」についても説明。次世代機の設計やスマートフォンの普及による視聴環境の改善が、コアゲーマーに「共有」を促しているとの見解だ。

「Oculus Rift」「Virtuix Omni」など、ゲーム体験をより実体験化するデバイスにも注目。これらの新技術で操作がより直感的になれば、難易度の高いゲームの操作が容易になり、結果としてコアユーザー層の拡大が期待できるとみる。これらの新技術は「没入感が高く、オンライン性が強いゲームは強いネットワーク効果を発揮するため、タイトル当たりに使われる消費者の時間や投資額は増え、上位のゲームにユーザーの時間とお金が集中する傾向が続く」と予想する。
 

■北米モバイルゲームは「極端な二極化」へ


リポートでは、北米モバイルゲーム市場の現状にも触れた。北米市場は人口が多く、成長余地が大きい一方、アイテム課金制ゲームが出現したタイミングなどから、消費者の課金に対する順応度やコンテンツの難易度は日本に対して1.5年ほど遅行していると指摘する。

また、北米トップゲームであるSupercellの『Clash of Clans』やKingの『Candy Crush Saga』について、 米国での1日平均売上高は1億円程度というThink Gaming社の推計(関連リンク)を紹介し、日本の上位ゲームに匹敵する水準だとみる。確かに、日本のApp Store売上ランキングで首位に立つこともあるミクシィの『モンスターストライク』について、会社側は今期の月商ベースで25億円程度を見込んでいる(関連記事)。だいたい日商1億円弱のペースと言えよう。

同証券は、北米のモバイルゲーム市場全体が黎明期である一方、上位ゲームの規模が日本と同等になりつつある点に着目。「ARPU(活動ユーザー1人当たりの課金額)が上昇し、(広告宣伝などに)お金をかけてユーザーを取得しても利益が出る市場になる前に、上位とそれ以外のゲームの売上規模の差が大きく開いてしまったため、黎明期の日本市場と比べて参入障壁が高くなっている」と指摘する。

リポートでは、Think Gaming社のサイトで公開されているデータから、横軸をランキング、縦軸を日商推計値として、以下のようなグラフを示している。Think Gaming社のデータを信頼するなら、確かにトップ3に売上の5割が集中する構図となっている。
 
 

■NFC玩具ビジネスは活況、任天堂の「amiibo」は…


ゴールドマン・サックス証券は、『Call of Duty』で知られるアクティビジョン社のNFC玩具を使ったゲーム「Skylanders」が利益貢献している例を紹介。ただ、任天堂の展開する「amiibo」は、「Wii U」にしか対応していない点がネックとみていた。

なお、「amiibo」については、同じく米系のJPモルガン証券もリポートで触れていた。アクティビジョンの「Skylanders」の成功例を踏まえ、今後の対応ソフトの増加や3DSへの対応に伴い、一定の収益インパクトは期待できると指摘。Wii Uの活性化策やIP(版権)の活用策として、ポテンシャル(潜在能力)は注目に値するとみていた。
 
今回のE3を挟んで、ゲーム企業の株価はそれほど大きく変動は見せていない。ただ、市場は、次世代機の浸透、新技術の登場、NFC玩具の拡大、北米モバイル市場の構造変化といった、中長期的な環境変化に注目しているようだ。

なおゴールドマン・サックス証券はリポート内で、こうした変化への対応に先行する海外企業を紹介しながら、日本企業の次世代機対応が遅れていると指摘。海外売上比率の高いタイトルでは、次世代機対応が行われる「次回作が正念場」と位置付けていた。
任天堂株式会社
http://www.nintendo.co.jp/

会社情報

会社名
任天堂株式会社
設立
1947年11月
代表者
代表取締役社長 古川 俊太郎/代表取締役 フェロー 宮本 茂
決算期
3月
直近業績
売上高1兆6016億円、営業利益5043億円、経常利益6010億円、最終利益4327億円(2023年3月期)
上場区分
東証プライム
証券コード
7974
企業データを見る