【インタビュー】コロプラ馬場社長が振り返る上半期のスマホゲーム市場~コロプラの取り組みと展望も聞く

6月がまもなく終わろうとしているが、2014年上半期のスマートフォンアプリ・ソーシャルゲーム市場を振り返っておきたい。Social Game Infoでは、今回、コロプラの馬場功淳社長にインタビューを行い、上半期のアプリ市場について振り返ってもらうとともに、コロプラとしての取り組みについても話を聞いた。

まず、インタビューに入る前に、2013年と2014年上半期の状況を簡単にまとめておきたい。2013年のスマートフォン・ソーシャルゲーム市場は、ブラウザゲームが引き続き縮小する一方、ネイティブアプリが伸び、市場拡大をけん引した。その一方、バンダイナムコゲームスやセガといった大手ゲーム会社が存在感を増したほか、ガンホーやLINE、コロプラ、エイリム、アカツキ、アソビズムといったディベロッパーが市場でのポジションを高めた。

続く2014年上半期は、2014年1~3月期の決算発表を見る限り、市場拡大は続いているかにみえるが(関連記事)、トップディベロッパーの顔ぶれに変化がみられた。その話題を独占したのは、なんといっても『モンスターストライク』を引っさげて登場したミクシィである。そして、人気ブラウザゲーム『剣と魔法のログレス』をスマートフォンアプリに仕立てたマーベラスAQLとAimingの活躍も目覚ましかった。馬場社長は、上半期の市場をどう見ているのか。


 

■上半期のアプリ市場を総括


―――:上半期のスマートフォンアプリ市場についてどう見ていますか?

複数の調査にあるように、スマートフォンアプリの市場規模については、日本はもちろんですが、世界的に拡大が続いています。先日の決算発表でも、トップディベロッパーが引き続き売り上げと利益を伸ばす状況が続いています。

―――:市場拡大の要因についてはどうお考えでしょうか?

フィーチャーフォンからスマートフォンに乗り換えた人が引き続き多かったこと、そしてこれまでフィーチャーフォンでゲームを遊んでいなかった人が新しい体験をしてスマートフォンのゲームユーザーになったことによるものとみています。またブラウザゲームからネイティブアプリ中心に切り替えた人も市場拡大を押し上げる要因になったでしょう。

ただ、端末の販売台数が伸び悩んでいるという話もあります。端末販売とアプリ市場とではその伸びに数年のタイムラグがあると考えていますが、とはいえいつかは、市場の伸びは少しずつ鈍化していく可能性があると見ています。そうなると、市場での競争はこれまで以上に厳しいものになるでしょう。

 

―――:市場が拡大する一方、競争の激化に伴い、求められるゲームのクオリティが向上し、開発費などの高騰も指摘されるようになってきました。体力のない会社では厳しくなるかもしれませんね。

開発費はたしかに上がっていますが、問題はそれだけではありません。ゲームの開発規模が大きくなると、プロジェクト管理やゲームの作り込みが難しくなります。いまの市場環境では、1億円、2億円といった資金調達は上場・未上場を問わず可能ですが、後者の問題はお金だけでは決して解決しません。

また現在の市場環境では、ゲームに求められる作り込みの水準が非常に上がっています。開発中に他社から同じようなゲームがリリースされると、ゲームの内容を変更せざるを得ないときもあります。ゴールが見えないマラソンをしている気分です(笑)

体力がないと1本を1ラインで作ることになり、並列で複数のタイトルが作れません。入魂のタイトルが失敗すると、また1からつくらなくてはなりません。これがすごくしんどいです。かといって、並列で複数のタイトルをつくるのも人的・資金的な負担が大きいです。結局、正攻法しかなくて、頑張ってゲームを作って稼いで、さらに作るということに尽きます。ゲーム会社がゲームを作るという当たり前のことなんですが、それをやりきれることが重要です。


―――:気になったタイトルはありますか?

商業的に成功したのはミクシィさんの『モンスターストライク』でしょう。カテゴリーとして目立ったのはIPものです。代表的な例が「ジョジョ」や「ワンピース」ですね。IPの特徴をうまくとらえたアプリで、クオリティの高いゲームだと感じました。あのレベルでのモノづくりができるのはすごいことです。あとは、LINEさんですね。「LINE」で告知しながらテレビCMを打っていますが、きちんと売れているのはしっかりとしたモノづくりができているからです。ゲームとして面白いと思ったのは、コナミさんの『ドラゴンコレクションRPG~少年と神狩りの竜』です。こちらもゲームとしてしっかりと面白く作られていると感じました。
 

▲モンスターストライクのゲーム画面▲

―――:注目しているディベロッパーは?

上位に位置している会社全てです。その中でもどこかと言われると、コンスタントに複数のヒットタイトルを輩出している会社です。単発ではなく、タイトルを複数当てるのは難しいことです。その観点からすると、LINEさんやバンタイナムコゲームスさんなどが該当します。バンダイナムコゲームスさんの「ワンピース」はすごく良くできています。ドリコムさんが開発を担当されていますが、細かいところまでびっくりするほど作りこまれていて、色々と勉強になりました。両社ともプロデュースがメインですが、他社さんの力を借りて作りこんだゲームを出すのもすごいことです。自社で開発しても、外部の会社さんと組んでも、ユーザーさまにとっては関係ないですからね。


 

■コロプラの立ち位置


―――:競争戦略の話で、拡大する市場で収益を伸ばすフェーズと、停滞する市場でシェアを伸ばすフェーズがありますが、状況としては後者になりつつあるということでしょうか。そういう状況の中で、コロプラの展開を振り返っていかがでしょうか?

まだまだ前者のフェーズだと考えています。そうしたなか弊社の競争戦略は一貫しています。それは、アプリポートフォリオと呼ぶアプリ運営戦略です。簡単にいえば、多くのタイトルをリリースして、複数のジャンルやモチーフのタイトルを出して収益を出すようにしたい、ということです。ひとつのタイトルの収益が厳しくなっても他のタイトルでカバーできるようにするためです。ひとつのタイトルに過度に依存すると運営に無理をさせて、タイトルの寿命を縮めることになりかねませんから。このスタイルはフェーズが後者、つまり市場が成熟し停滞し始めた状況でも有効です。市場が成熟するとユーザニーズは細分化します。アプリポートフォリオ運営を行うと、そうした個々のニーズにも対応できますから、シェアは自然に拡大するという流れです。

―――:第1四半期にリリースした『ほしの島のにゃんこ(にゃんこ)』と『スリングショットブレイブズ(スリブレ)』は好調ですね。

『スリブレ』はヘビーユーザー向け、『にゃんこ』は子ども向けのアプリとして制作しましたが、いずれもお客様に楽しんでいただけています。コロプラとして初めて取り組んだ分野のアプリでしたが、「コロプラはこの分野でも十分勝負できる」という手応えをつかみました。

―――:『ほしの島のにゃんこ』はここまでに成長するとは予想されていましたか?

いえ、全く(笑) 子ども向けのアプリですので、あくまでサービスと思っていたのですが、大人の方にも遊んでいただけているようです。

―――:好調の要因としてどういったことがあると考えていますか?

ねこをモチーフにしたことと、ゲームの作りこみに力を入れたことです。2012年4月新卒入社の社員がプロジェクトマネージャーを務める開発チームに作ってもらったのですが、チームが一丸となって改善に取り組みました。もうひとつ強調したいのは、子どもからのレビューにも取り組んだことです。当社にお越しいただいたり、逆に幼稚園などに出向いたりして、100人を超える子どもに遊んでもらい、誰でも遊べるように仕上げたことが結果として、大人の方にも受け入れられたのかもしれません。経営陣から100回以上ダメ出しをされるだけでなく(笑)、子どもからもダメ出しを受けて、開発チームは大変だったと思いますが、がんばって乗り越えてくれました。
 

 
―――:子どもはだいぶはっきりと示してくれるのではないですか?

そうですね。子どもは大人と違い、直接的にわからない、つまらないと言ってくれます。そこで話を聞いたり、遊んでいる様子をじっと観察したりして、子どもがどこで困っているのか、わからないのかを突き止め、改善してまた遊んでもらう、わかってもらうまで作りなおす、というプロセスを繰り返しました。

―――:なるほど。また、年初のインタビューでリアルタイム通信が2014年のトレンドになると予想されていましたが、見通しに沿った状況になりつつありますね(関連記事)。

それに近しい状況になりつつあります。『スリブレ』にリアルタイム対戦機能を付けていますし、『蒼の三国志』にも同様の機能を追加しました。ユーザーさまは新しい遊び方を求めていると思います。これは当社だけに限ったことでなく、ミクシィさんの『モンスターストライク』や、マーベラスAQLさんとAimingさんの『剣と魔法のログレス』が成功されているように、「みんなと遊ぶ」ということがカギになるのではないでしょうか。当社もほぼすべての新作アプリにオンライン系の機能が実装されます。もちろん、1人で遊びたいという方向けの機能もつけておかなくてはなりません。

―――:リアルタイム通信が受け入れられる背景にはどういったことがあると考えていますか?

人は1人ではなく、集団で生きるものです。画面の向こう側で他の人が遊んでいることを想像するだけですが、人と何かをやるというのは本質的に重要だと思います。そこがリアルタイム通信が重視される要因でしょう。スマートフォンを通して誰かとコミュニケーションをとるのも、ゲームを通して誰かとコミュニケーションを取るのも文脈としてそれほど変わりません。スマートフォンがヒットする要素として、「LINE」のように手軽にコミュニケーションが取りたい、自分でビデオを作って公開したい、ツイキャスなどのような生放送したいといったニーズが大きいかと思います。

―――:『蒼の三国志』ではオンライン対戦機能を盛り込みましたよね。状況はいかがですか。

多くのユーザーさまに遊んでいただけていると実感しています。実は6月7日より、オンライン対戦を遊ぶ際に使用する「消費飯(スタミナ)」をゼロにするキャンペーンを行っておりまして、いくらでも遊べるようになっていることも大きいですね。われわれも実験をしながら、手を替え品を替えていますが、いまの形はうまくいっていると感じています。

 

▲蒼の三国志で導入されたリアルタイム対戦機能▲
 

―――:そういえば、マーベラスさんに取材した際(関連記事)、『剣と魔法のログレス』でスタミナの概念がないことが多くのユーザーにお得なゲームとして受け止められているという話を聞きました。

おそらく「スタミナ」にお金を取るのは、特殊な時代背景によってできたものです。フィーチャーフォンのモバイルゲームで課金ポイントがなかったため、「ここまでは無料で遊べます。待っていただければ遊べますが、今遊びたい場合はお金をください」といったコンテキストから生まれたものです。それが成功を収めたため、モバイルゲームとはそういうものだという認識になりました。

しかし、振り返ってみると、ゲームで遊ぶために待つのはストレスでしかありません。今後、検証する必要がありますが、それだったら気が済むまで遊んでいただいた方がいいと考えています。当社の次回作、『白猫プロジェクト(白猫)』でもスタミナの概念がありませんので、オンラインもシングルも好きなだけ遊べます! とはいえ、既存タイトルでスタミナの概念をなくしたとき、ゲームバランスのチューニングをどうするかなど、別の問題も生まれますので悩ましいところですね。


―――:決算説明会で既存タイトルにリアルタイム通信を入れるとのことでしたが、『クイズRPG 魔法使いと黒猫のウィズ(ウィズ)』に入れる予定はあるのでしょうか?

あります。しっかり作り込んでいるので少し開発期間が伸びていますが、まもなく出ると思います。クイズゲームにリアルタイム通信を入れるのは王道ですよね。皆で協力するものとなります。

―――:あと『ウィズ』で課金を抑えてDAUを上げる施策を取ったとのことですが、どういったことでしょうか?

お客様に長く遊んでいただくためには、お金を取り過ぎてはいけないと考えています。無料で遊んでいただく期間と、ビジネスですから売り上げを立てる期間とに分けて、メリハリの効いた運営を行うように心がけています。「クリスタル」(有料の仮想通貨)が無料でもらえる機会を増やす取り組みも行っています。


 

■7月以降の取り組みについて


―――:今後の取り組みを教えて下さい。

これまでと変わらないです。今作っているゲームをきちんと作りこんで出していくことです。当社もそろそろ1位を狙えるようなゲームを作りたいですね。これまでも狙ってきたことですが…。『白猫』は、われわれの考える最新の要素を盛り込んでいます。見た目もきれいですし、UIや絵作り、その他要素も様々、色々と考えて入れていますので、気持ちが前に出すぎているという意見もありますが、コロプラらしい1本になるのではないかと思います。

―――:話題になった「ぷにコン」ですが、これまでああいった形の操作方法のゲームでヒットしたものは少ないですよね。それにあえて取り組んで理由は。

ちゃんと作れば受け入れられると考えています。ぷにコンは、既存タイトルに導入されているものとは似て非なるものです。キャラクターを動かすことができて、攻撃やスキルも親指一本で出せます。多少の慣れが必要ですが、慣れると全てできます。ユーザーさまにとって新しい体験を提供できるのではないかと思います。新しい概念は賭けになる部分もありますが、「こうあるべきだよね」ということを考えてものづくりを行っていますから、少しとんがったものにしました(開発者インタビューはこちら)。

 


―――:思えば『ウィズ』を出した時、アプリストアの上位にクイズゲームがなかったですし、『軍勢RPG 蒼の三国志』の時も似たような印象を持ちました。新しい遊び方の提案は必要なんですね。

我々としては、新しい技術や遊び方を取り入れたゲームを出したいですし、逆に、いま流行っているものもやりたいと思っています。それをやるにはアプリの数が必要です。だから頑張って複数のタイトルを並列で作っています。「ぷにコン」は受け入れられれば、当社の強みになるでしょう。逆に受け入れられなかったら「どうしよう!」となりますが(笑)

―――:『白猫』は期待していいと。

正確に言えば、期待していいくらい頑張って作っている、ということです。そして、それにふさわしい一本になりつつあると考えています。あとは、あれだけ綺麗に作るとデータ容量をどう調整するか、ですね。データ容量のせいでうまくいかなかったタイトルは少なくありません。重すぎてもいけないし、かといって軽すぎると新しいことができない。インターフェースも片手で遊べるようにしています。そういった要素を考慮しながらうまく作れている気がします。

今後出す予定のタイトルにも数々の新しい要素と考え方を取り入れており、「コロプラもこんなゲームが出せるのか」と思ってもらえるのではないかと期待しています。『スリブレ』以降、われわれのモノづくりのやり方が変わり、クオリティも高くなりました。そこでユーザーさまから支持をいただければ、きちんと勝負できるのではないかと思います。

―――:ところで今後、ますます海外マーケットが注目されるかと思います。昨年から日本のメーカーの活躍が目立ってきましたが、コロプラとしての取り組みは。

地味にやっています(笑) 『にゃんこ』や『スリブレ』などをリリースしましたが、ユーザーさまの反応を見ながらチューニングしている状況です。会社として多額のマーケティング費用を使ってアプリを当てに行くことは、現時点ではまだ時期尚早であると思っています。モノづくりがうまくなってきましたので、そう遠くないうちに、攻めに転じることもあるでしょうが、いまはまだその時期ではないということです。我々はプラットフォーマーではありませんから、ユーザーの囲い込みをする必要はありません。ゲームの場合、参入時期による有利不利はあまりないので、焦らずに海外のユーザ動向や広告手法などを注視しながらじっくりとやっていきたいと思っています。

―――:先ほどの総括で、IPを使ったタイトルの台頭をあげていましたが、コロプラでIPを使ったタイトルには興味があるのですか?

もちろんです。ただ、会社の性格的にIPを使ったタイトルがあまり得意ではないので、慎重に検討しなくてはなりません。アプリポートフォリオでIPを使ったタイトルが薄いのは事実ですので、やりたいとは思っています。こればかりは縁ですね。

―――:M&Aについては。

M&Aについては、相思相愛であることが絶対条件ですので、そういうところがあればやりたいです。「パブリッシングには自信がないけど、きちんとした開発力がある」という会社さまとご一緒できればと考えています。ご一緒したい会社さまをみるとき、プロダクトはもちろん、ゲームを作る力、売上と利益もきちんとチェックします。恋い焦がれて悪い条件でM&Aをする場合は良い結果を生まないと考えています。期待値が大きくなりお互いにプレッシャーが大きくなります。M&Aは、ヒットタイトルを作るよりも難しいですから、これもやはりご縁があるかどうかでしょうね。

―――:ありがとうございました。


 
株式会社コロプラ
https://colopl.co.jp/

会社情報

会社名
株式会社コロプラ
設立
2008年10月
代表者
代表取締役会長 チーフクリエイター 馬場 功淳/代表取締役社長 宮本 貴志
決算期
9月
直近業績
売上高309億2600万円、営業利益28億5800万円、経常利益32億7600万円、最終利益18億9300万円(2023年9月期)
上場区分
東証プライム
証券コード
3668
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