【大手ゲーム会社決算まとめ】バンナム、スクエニ中心に総じて好調 存在感高めるスマホアプリ

ゲームソフト大手6社の第1四半期(4~6月期)の決算が出そろった。本業のもうけを示す営業利益が前年同期を上回ったのは6社中、5社だった。昨年は、コーエーテクモとセガサミーのみが増益だったが、コーエーテクモ、バンダイナムコ、スクウェア・エニックス、カプコン、コナミが増益となるなど総じて良好だったといえよう(持株会社のホールディングスは省略)。

このなかでもとりわけ目立ったのは、スクウェア・エニックスだった。『ドラゴンクエストX』や『ファイナルファンタジー14』などオンラインゲームに加え、『ドラゴンクエストモンスターズ スーパーライト』や『スクールガールストライカーズ』などが寄与した。他の会社も同様、程度の差こそあれ、モバイル分野への取り組みが業績拡大に弾みとなっていることは確かだろう。バンダイナムコも「妖怪ウォッチ」や「アイカツ!」などの大ヒットコンテンツを抱える玩具事業とも相まって、他社を圧倒する収益を稼いだ。

また、減益となったセガサミーは、遊技機事業の不振に加え、ゲーム関連事業が営業赤字になったことによる。ただ、家庭用ゲームソフトやスマートフォンアプリの販売不振などが原因ではなく、広告宣伝費など先行投資によるものだ。第2部がスタートした主力タイトル『チェインクロニクル』も好調な出足となっていることが伺え、第2四半期以降、巻き返してくるものとみられる。

 
【大手ゲーム各社の2014年3月期の業績】
(※)コナミは米国会計基準のため経常利益はない。


いずれの会社も遊技機や出版、玩具など、ゲームソフト以外の事業を抱えているため、今回も、さらに各社のゲーム関連事業の売上高・営業利益を以下の表にまとめてみた(※1)。これをみると6社中、5社が営業増益だった。増益だったのは、コーエーテクモ、バンダイナムコ、スクウェア・エニックス、カプコン、コナミだった。他方、前年同期に黒字となったセガは、2ケタの増収を達成したものの、2億8200万円の営業赤字に転落した。これは広告宣伝費が増加したためとのこと。

 
【大手ゲーム各社の2014年3月期におけるゲーム関連事業の売上高・営業利益】
(※)セガサミーHDには玩具やアニメ関連の売上高も含まれる。
(※)バンダイナムコHDには業務用ゲームやアニメ関連の売上高も含まれる。
(※)コナミには業務用ゲーム機やトレーディングカードの売上高も含まれる。



さらに、ゲームソフト事業に占めるモバイルコンテンツの売り上げをピックアップしたのが以下の表である(※2)。データの確認できたコーエーテクモ、セガサミー、バンダイナムコ、カプコンのいずれも売上に占めるモバイルゲームの比率が上がった。セガサミーに至っては60%を超えた点は注目される。第1四半期は、家庭用ゲームソフトの新作リリースが少なく、モバイルコンテンツの比率が高くなるが、全体としてはスマートフォンアプリの存在感が高まっていることが伺える。

 
【ゲーム大手6社のオンラインコンテンツの売上高とゲーム事業に占めシェア】
(※)コナミとスクウェア・エニックスは開示されていないため、掲載していない



■売上高・営業利益の比較

ゲーム大手6社のゲーム関連事業の売上高と営業利益を比較したものが以下のグラフとなる。青が2014年4~6月期、赤が2013年4~6月期の数字を示している。すでに掲載した表でもわかるが、グラフにすると、バンダイナムコが売り上げと営業利益双方で他社を圧倒していることがあらためてわかる。そして、スクウェア・エニックスが売り上げ・利益ともに前年から倍以上に拡大し、バンダイナムコに続く2位となった。スクウェア・エニックスは、最も高い伸び率を示した。『ドラゴンクエストモンスターズ スーパライト』や『スクールガールストライカーズ』などスマートフォンアプリのほか、「ファイナルファンタジーXIV」、「ドラゴンクエストX」の運営が堅調に推移した。
 

【大手ゲーム6社のゲーム関連事業の売上高比較(単位:億円)】



【大手ゲーム6社のゲーム関連事業の営業利益比較(単位:億円)】
 
 
上記グラフにガンホー・オンライン・エンターテイメント<3765>とコロプラ<3668>を加えたものが以下のグラフとなる。繰り返すが、ゲーム大手の収益は下半期に集中する傾向にあるため、この比較でどうこういうのはフェアではないだろう。あくまで参考程度とみてほしい。

 
【大手ゲーム6社のゲーム関連事業+ガンホー、コロプラの売上高比較(単位:億円)】



【大手ゲーム6社のゲーム関連事業+ガンホー、コロプラの営業利益比較(単位:億円)】



■コーエーテクモ
【全体】
売上高63.2億円(前年同期比3%減)、営業利益4.7億円(同959.1%増)だった。ゲームソフト事業の伸び悩みが売上減に響いたものの、オンライン・モバイル事業が第1四半期としてコーエーとテクモの経営統合後で最高の利益を上げ、業績を支えた。

【ゲームソフト事業】
売上高は35億円(前年同期比14%減)、セグメント利益は1億円(同33%減)と減収減益。前年同期には『討鬼伝』(PSVita、PSP)、『エスカ&ロジーのアトリエ ~黄昏の空の錬金術士~』(PS3)などが好調で、その反動が出たもよう。

【オンライン・モバイル事業】
売上高16億円(同18%増)、セグメント利益3億円(同72%増)と増収増益で、第1四半期としては経営統合以来、最高の売上と利益になった。ソーシャルゲーム事業では、スマートフォン向け合戦パズルRPG「ぐんたま~軍師の魂~」をリリース。モブキャストと共同開発した携帯合戦シミュレーションゲーム「モバノブ」や、「100万人のWinning Post」など「100万人」シリーズも堅調。「大航海時代Ⅴ」も「Yahoo!Mobage」にて正式サービスを開始した。海外では引き続き「のぶニャがの野望」をはじめとした各タイトルが計画を上回って推移した。



■セガサミー
【全体】
売上高883億円(前年同期比3%減)、営業利益93億円(同42%減)だった。パチンコやパチスロ機器などの遊技機事業の減収減益となったほか、コンシューマ事業が赤字となったことが響いた。

【コンシューマ事業】
売上高214億円(同13%増)、営業損益2.82億円の赤字(前年同期は3900万円の黒字)と増収ながら赤字に転落。主力タイトル『ファンタシースターオンライン2』のほか、『チェインクロニクル』や『ぷよぷよ!!クエスト』などデジタルオンラインゲームが堅調だったものの、広告宣伝費等の増加により赤字となった。



■バンダイナムコ
【全体】
売上高1225億円(前年同期比15.7%増)、営業利益168億円(同26.2%増)だった。アミューズメント施設事業が赤字となったものの、トイホビー事業が好調だった。「機動戦士ガンダム」や「烈車戦隊トッキュウジャー」、「仮面ライダー鎧武/ガイム」などの定番IPや、新規IP「妖怪ウォッチ」や女児向けIP「アイカツ!」が好調だった。

【コンテンツ事業】
売上高657億円(同15.2%増)、セグメント利益133億円(同10.5%増)だった。ソーシャルゲームやスマートフォン向けアプリゲームの主力タイトルが安定的に推移するとともに、「ジョジョの奇妙な冒険 スターダストシューターズ」、「ONE PIECE トレジャークルーズ」などのアプリゲームの新規タイトルが好調だった。



■スクウェア・エニックス
【全体】
売上高377億円(前期比56.8%増)、営業利益50億円(同634.9%増)だった。ゲームを中心とするデジタルエンタテインメント事業を中心に、アミューズメント事業、ライツ・プロパティ事業、出版事業がいずれも伸びた。

【デジタルエンタテインメント事業】
売上高234億円(同102.6%増)、営業利益45億(同242.0%増)だった。家庭用ゲームソフト「マーダード 魂の呼ぶ声」を欧米向けに発売したほか、昨年度発売したタイトルのリピート販売が好調だった。ブラウザゲーム「戦国IXA」やスマートフォン向けゲーム「ドラゴンクエストモンスターズ スーパーライト」が引き続き順調に推移したほか、「スクールガールストライカーズ」が好調なスタートを切った。「ファイナルファンタジーXIV」、「ドラゴンクエストX」の運営も堅調に推移した。



■カプコン
【全体】
売上高95億7500万円(前年同期比45.1%減)、営業利益12億6800万円(同75.3%増)だった。コンシューマにおける新作有力タイトルの不在などにより前年同期比で大幅な減収となったものの、売上原価の低減や販売費および一般管理費の抑制に努めるなど収益性の改善を推し進めた結果、営業利益では前年比75.3%の大幅な増益となった。貸借対照表をみると、ゲームソフト仕掛品が前年同期の103億円から130億円に増加。目立った新作タイトルがないことから、売上原価が費用計上されず、新作のリリースに付随して発生する広告宣伝費なども計上されなかったためと見られる。

【デジタルコンテンツ事業】
売上高55億円(同55.8%減)、営業利益11億3100万円(同167.6%増)だった。『逆転裁判123 成歩堂セレクション』が底堅い売行きを示したほか、前期にミリオンセラーを達成した『デッドライジング3』が堅調だったものの、目玉タイトル不在の商戦を余儀なくされた。『モンスターハンターポータブル 2nd G for iOS』も順調に推移した。



■コナミ
【全体】
売上高及び営業収入486億円(前年同期比6.6%増)、営業利益31億9100万円(同113.5%増)だった。家庭用ゲームソフトやスマートフォンアプリなどを提供するデジタルエンタテインメント事業が好調だったことが主な要因。カジノ事業も増収増益となり、収益を押し上げた。

【デジタルエンタテインメント事業】
売上高及び営業収入204億2000万円(同2.1%増)、営業利益33億7300万円(同101.1%増)だった。家庭用ゲームソフトでは「ワールドサッカー ウイニングイレブン2014 蒼き侍の挑戦」を国内で発売し、「METAL GEAR SOLID V: GROUND ZEROES」のリピート販売が好調に推移した。このほか、「ドラゴンコレクション」や「ワールドサッカーコレクション」シリーズなどをはじめとするモバイルゲームも引き続き堅調に推移したという。



(※1)ただし、ゲーム関連のセグメントの中に玩具や映像ソフトなどの収益が含まれている会社もあるため、比較には限度がある。この点はご了承いただきたい。
(※2)こちらもモバイルゲームだけでなく、PCオンラインゲームも含まれる。