【CEDEC2014】音楽ヒットチャートの最大手・オリコンが提示する「本当に面白いスマホゲームランキング」とは。顧客満足度がもたらす新たなKPI分析にも注目

2014年9月2日~4日に、パシフィコ横浜(神奈川県)で国内最大のゲーム開発者向けカンファレンス「コンピュータ・エンターテインメント・デベロッパーズ・カンファレンス 2014」(以下、CEDEC 2014)が開催。

初日(9月2日)は、音楽ヒットチャートのほか様々なジャンルでランキングを提供する「オリコン」<証券コード:4800>が登壇し、同社が考える“本当に面白いスマホゲームの測り方”をテーマにした講演が実施された。本稿では、顧客満足度がもたらす新たなKPI分析とプロモーションの可能性についてレポートしていこう。

 

■会場は超満員…オリコンはスマホゲーム市場に何を思う


講演に登壇したのは、オリコン株式会社の執行役員副社長・染谷 光廣氏。染谷氏は、過去にトレンドマイクロで『ウイルスバスター』立ち上げ時から責任者を経験した後、ゲーム業界へと転身してきた。

ゲーム業界では、NC JapanでMMORPG『リネージュ』の事業責任者を務めたほか、セガでオンラインマーケティング部の立ち上げや、ストリーミングゲーム『Gクラスタ』のコンテンツ責任者、さらにエイチーム<3662>でモバイルコンテンツの執行役員として事業責任者を歴任。そして現在はオリコンの執行役員副社長として、グループの様々な事業に携わっている。

“オリコンがスマホゲームについて講演する”と一見して畑違いなところもあるかと思うが、染谷氏はモバイルゲームに関しても知見のある人物のため、どのようにしてオリコンが持つノウハウとスマホゲームが絡んでいくのかが講演の肝となろう。そうした期待感もあってか、当日会場には入場が困難になるほど多くの聴講者で溢れかえった。

さて、そもそもオリコンとは、48年間続く音楽部門のほか、多彩な業種でランキングを発表する企業グループの持株会社である。音楽のヒットチャートランキングなどが有名だが、このほかに映像や書籍のランキング、ニュース配信事業、ビッグデータ活用事業、ソーシャルゲーム事業など、グループ9社が多種多様な事業を打ち出している。

このように同社は、様々な業種において、ユーザーに価値ある本当に良いモノを可視化するために、ランキング提供を事業として続けているのだ。
 
 

■「本当に面白いゲームアプリのランキングを作る」


ここで講演はアプリ市場に関する話題に。止めど無く幾多のアプリゲームが登場し続ける昨今、染谷氏は「ユーザーはどのような指標を持ってアプリを選んでいるのか…」と疑問を口にした。レビューやクチコミ、コミュニティの書き込み、はたまたマーケットのランキングなど、ダウンロードに繋がるきっかけはいくつも存在するが、「それらは果たして信頼できる情報群なのか?」と染谷氏は指摘した。

たとえば、レビューも自社スタッフによるサクラ行為かもしれないし、前述したマーケットのランキングの露出にいたっては、リワードを利用したブースト広告として一時的にも上位にランクインさせることが容易に行えてしまう。それが決して面白くないゲームでも、お金でランキングを買えてしまえるのが現状だ。

そこでオリコン・染谷氏は、ほかの様々なジャンルと同じように、自社の顧客満足度調査を駆使して“本当に面白いスマホゲームアプリのランキング”を作ることを明らかにした。
 


その前に、そもそもオリコンのランキングは、本当に信用できるのか……。これに関して染谷氏は、「さすがにランキングに関しては、うるさいです。当然どんなにお金を積まれてもランキングは動きません。信憑性や透明性を担保するために、日々努力をしている」と、ランキングにかける情熱は桁違いであることをあらわにした。

ここで染谷氏は、実際にオリコン顧客満足度調査の概要と精度の高さについて語ってくれた。

■オリコンの顧客満足度調査
(1). 概要 2006年より毎年調査発表を実施
累計調査回答数は73.8万人以上、国内最大規模の調査
(2). 調査手法 2008年より慶応義塾大学と産学共同研究を実施
LSD法(多重比較法)を採用
(3). 調査票の作成 事前調査によって顧客満足度評価軸を精微に抽出
抽出された実績評価軸を組み込んだ調査票を設計
(4). 調査の実施 各サービスにおける実利用経験者(他社差別化ポイント)
(5). 影響度の設定 事前調査で抽出された“サービスを利用する上で重視する項目”が
総合点に与える影響を大きくウエイトを設定
(6). 総合点数の決定 論理矛盾や極端な回答を排除し、精度の高い総合点数を算出
・スクリーニングロジック:誤回答/なりすまし回答の除去
・データクリーニング:ストレート回答者等/外れ値(上下2.5%)の除去 etc

対ユーザーには、実際にサービスを利用した73.8万人以上に調査を行い、実利用ユーザーの声だけを集計して、消費者本位・信頼性の高いランキングを作成していくようだ。目に見えないサービスを可視化することで、ユーザーにとってはサービス選択の手助けに繋げていくとのこと。

対企業には、調査結果に紐づく順位・優良設定をオリコンのランキングバリューが支援。定員/定性データで顧客満足向上を促進するほか、経営判断の一翼を担う指標の提供や広告宣伝にも利用することができるという。

このように“学術的・統計的見地”に基づいた独自ロジック、さらには透過性・公平性を確立することで、本当の意味でのユーザー目線顧客本位な“評価の可視化”を満足度調査が実現するようだ。

「エンタテインメント色が強く柔らかいイメージのオリコンですが、ランキングに関しては皆さんがご想像される以上に真剣にやっている」と染谷氏は言葉を添えた。
 
 

■ゲームに対して顧客満足度を使った新しいKPI


KPI(重要業績評価指標)と一口に言ってもDAUや継続率など、数値で表現されるものが大多数。

しかし、オリコンの顧客満足度は、当たり前のように「何故そのアプリを選んだのか?」「課金しようと思った瞬間は?」「辞めたいと思ったきっかけは?」など、ユーザー行動ログが数値として指し示すKPIだけでは分からない、“定性情報”を可視化(数値化)することで、「新しいKPI(定性データの指標化)」が実現できるとのことだ。

さらに、同じ軸で競合がどれだけの点数を獲得しているのかを見ることも可能
 

▲調査項目イメージ


▲ランキング調査発表部門・項目(予定)


以上のような多彩な調査項目をもとにKPI分析していくことで、詳細なプロダクトの改善をはじめ、新商品企画開発、事業戦略企画、プロモーション方針の検討などに役立てられると染谷氏はコメント。顧客満足度調査で可視化されたユーザーの声(=定性データ)が、従来のKPIに加わる新たな指標として、アプリ企画開発にフィードバックされて、ユーザー満足度も上がり、製品企画・ブラッシュアップの方向性が明確になるようだ。

さらに、これからはアプリに「オリコン調べ1位」というブランドが付くことも染谷氏は言葉を添えた。広告宣伝・販促活動として、新規・休眠ユーザーへの強力なプロモーション手段としても機能する考えだ。「とある塾では、オリコン1位獲得後のビラを配った際に、問い合わせ件数が130%アップする事例もあった」と実績を付け加えた。

加えてアナリストによる調査分析レポーティングもオリコンの強みのひとつ。集まったこれらの定性データをオリコンがデータ分析、解析ノウハウをつぎ込み調査分析レポートも作成して、ゲームにフィードバックしていくようだ。

さて、今後のオリコンの取り組みをまとめると、下記の項目が挙げられる。

■新指標としての顧客満足度ランキング
・顧客満足度というこれまでにない切り口のスマホゲームランキング
・従来のKPI計測では取得できないデータを指標化
・オリコンのランキングブランド独自の分析解析ノウハウ
・新たなKPIの活用、プロモーションの選択肢


最後に染谷氏は、「本当に面白いモノを測るKPI“顧客満足度”を提供する。ユーザーは自分にあったプロダクト選択のきっかけとなり、開発者様はユーザー満足度を高め、プロダクトの質の向上に繋がる。これから市場全体、産業全体の活性化をオリコンが支援していく」という力強い言葉で講演を締めくくった。

オリコンが提供する顧客満足度を用いた「スマートフォンゲームアプリランキング」は、2014年冬発表予定で企画開発中とのこと。講演後、染谷氏との質疑応答では「ランキングの更新は四半期ごとを予定」とコメントした。まだ詳細なサービス概要が決定していないため、今後の動向に「Social Game Info」も注目していきたい。