【インタビュー】無課金で早1年…コンテンツの力が証明された『Tokyo 7thシスターズ』が、ついに大型アップデートを経て本格始動。開発会社・Donutsのキーマンたちに今後の展望を直撃


Donutsは、スマートフォン向けアプリ『Tokyo 7thシスターズ』(以下、『ナナシス』)で大型アップデートを実施した。2014年2月にリリースされた同作は、アイドル戦国時代と呼ばれる現代とは対照的に、アイドルがいなくなった時代<西暦2034年>を舞台にした新世代アイドルコンテンツ制作プロジェクト「Project 7th」から発信するアイドル育成リズム&アドベンチャーゲーム。

ヤンキーが登場する大ヒットモバイルゲーム『単車の虎』を開発したDonutsが、まさかのアイドル育成ゲームを展開することにあたり、発表当初は業界内でも脚光を浴びていたものの、どうもリリース後は派手な施策が目につかなったのも事実。

本稿では、2014年秋に実装予定の大幅リニューアルの概要を紹介すると同時に、記事の後半からは、『ナナシス』の現状と今後の展望、そしてIPとしての成長やメディアミックス展開などを聞いてきた、同作のプロデューサー陣インタビューをお届け。

 

■音ゲーとアイドルの個性がキラリと光る…大幅リニューアル概要


今回の大幅リニューアルでは、おもに音楽ゲームの仕様をはじめ、アイドルたちの個性を大事にしたUIや要素が十二分に詰まった内容を実施。ここからは、それぞれの変更・追加された箇所について紹介していく。
 

■マイページのレイアウトを大幅変更


マイページでは、よりアイドル(キャラクター)を前面に推し出して、ユーザーとのコミュニケーションが取れるような作りになった。スタイリッシュになったレイアウトデザインも見所という。

①マイページトップキャラクターの選択が自由に。さらに全キャラクター専用ボイスを収録、最大7種類台詞パターン有り。タップすることで喋るのだが、放っておいても喋りだす
②ティッカー追加、リアルタイムでユーザーへ情報の提供が可能になった
③各メニューへ遷移する「グローバルナビ」を廃止、マイページに集約
④マイページ背景のカスタマイズが可能になる(開発中)


▲旧レイアウトでは、六咲コニーのみだった
 

■リズムゲームも進化! 育てたカードが音ゲーパートで活きる
リズムゲームも仕様が大幅変更。今まで画面のあらゆる箇所から出現するタップアイコンに対し、リズムに併せてタップをしていくものだったが、リニューアル後は真円状のレール上部よりタップアイコンが出現し、真円下部に到達するタイミングで画面左右に設置した「L Touch/R Touch」ボタンをそれぞれタップするプレイスタイルとなる。それでは、ここからそれぞれの画面について解説。

◆リズムゲーム(曲選択画面)

①楽曲ジャケット。プレイ後はスコア、コンボ、プレイ回数ランクがアイコンとして表示
②難易度はEASY、NOMAL、HARDの計3種。各難易度クリアによって開放(楽曲は一定レベル到達で開放のほか、イベントでの開放を予定)
③通常楽曲とは別に「スペシャル楽曲」ページを用意。イベント時などに使用
④各楽曲に属性を設定。属性は「ボーカリスト」「ダンサー」「モデル」「プレイヤー」「バラドル」の計5種類。1曲に対し複数の属性が設定されることもある
⑤プレイには今まで「ソロステージチケット」を使用していたが、廃止。リニューアル以降はCP(カリスマポイント)を消費し、プレイができるようになる。


◆リズムゲーム(ゲスト選択)

フレンド、または他ユーザーを助っ人として設定することが可能。3枚1セットとなる9枚デッキの1stリーダー、2ndリーダー、3rdリーダーが選出される。直接リズムゲーム内には登場せず、ライブリーダースキルが適用される。

ちなみにライブリーダースキルとは、1stリーダー、2ndリーダー、3rdリーダーが使用できる特殊技能。自属性と同じカードに対してATKに常時倍率がかかる。


◆ユニット確認

画面左部のユニットを左右へスワイプすることで、最大5つまで設定できる各ユニットへ変更が可能。また、リーダーカードアイコンを長押しで所持リーダースキルの確認が可能。
※リズムゲーム開始後は、一定時間ごとに1st、2nd、3rdが入れ替わりで表示され、各隊列のATKの合計値がスコアに反映されるようになる。


◆In Game画面

①スコア、及びスコアランク表示
②Tension(ライフ)ゲージ
③Sisters Point:Great、Perfect判定以上で%が上がり、100%に達すると、スコアがより多く入る「Sisters Time」に入る
④タップポイント。★にアイコンが重なるタイミングでL、R Touchをそれぞれタップ。種類にはシングルタップ、同時押し、長押しのアイコンが存在
⑤隊列が切り替わる毎に順番にスキルの発動抽選が行われる



▲よりアイドルが推しでたIn Game画面は『ナナシス』ならでは!


◆リザルト画面

リズムゲーム後は、スコア結果に合わせて各アイドルに親密度ポイントが振り分けられる。親密度は上がると、カードステータス(HP、ATK)に補正値が入り、よりゲームを有利にすすめることができるようになる。


■課金要素

そして、たくさんのユーザーからの要望で課金要素もついに実装となった。本来はじめから実装されている課金要素ではあるが、一体なぜ今回の大幅リニューアルから実装という運びになったのか。

これに関しては、次の開発者インタビューで聞いてみた。

 

■「まずは“コンテンツの力”を証明させること」…開発陣に訊く


株式会社Donuts
『Tokyo 7thシスターズProject-7th』総監督
茂木 伸太郎

『Tokyo 7thシスターズ』プロデューサー
中川 尚人


――:本日はよろしくお願いします。はじめに『ナナシス』におけるおふたりの役割について教えてください。おふたりともプロデューサーという立場なのでしょうか。

茂木氏:もともとの企画は、僕ひとりで立ち上げました。当初は僕がゲーム+コンテンツの開発を見ておりましたが、中川が入って僕がコンテンツ制作に集中して、開発や宣伝、マーケティング含めた、IPとしての成長を目指すプロデューサーという立場になります。


――:今回大幅リニューアルを実施しましたが、少し振り返って開発当初のこともお聞かせいただければと思います。そもそも『ナナシス』はどのようにして誕生したのでしょうか。

茂木氏:じつは当初からソーシャルゲームの開発ではなくて、「コンテンツ(IP)を作ろう」という考えのもと企画を立ち上げました。それは今のアプリ開発業界を含む、アニメ・ゲーム・音楽・漫画などのエンタメ業界情勢がどうとかそういうことではなくて、どの業界どのプラットフォームであろうと、ちゃんと人の脳と心に届きうるものを作ろうという意志でした。

作り方の方針としては、イラストはこの会社さん、ゲームはこの会社さん、シナリオはこの会社さん、音楽はこの会社さん、で「はい、お願いします」ではなくて、コンテンツとして全体統一を図りつつ、すべてを一つの意志の元で会社間を超えてチームとして制作していこうという、ある意味お金も時間も非常にかかるやり方を選んだわけです。

しかし、今回の大幅リニューアルはもちろんですが、これからもゲーム内のコンテンツを拡充していくことを考えると、次第にCD化やライブ展開などのメディアミックスツ施策が僕ひとりでは持ちきれないという心配が出てきました。これはやってみるとわかったんですが、時間がかかるなんてものじゃない(笑)。特に「こうしたい」という意志があると余計にです。


――:なるほど。そうして中川さんに白羽の矢が立ったということですね。

中川氏:はい。ちょうど大幅リニューアルの開発中に私が合流しました。私の『ナナシス』に対する役目としては、茂木が集中してコンテンツ制作を行えるように、ゲーム開発やマーケティング、運営周りに務めることだと思っています。


――:途中から合流したとのことですが、実際に運営の立場になる前と、なった後で『ナナシス』に対する印象はどのようになりましたか。

中川氏:やはりコンテンツのクオリティに関しては、入る前から本当に素晴らしいものだと感じていました。もちろんゲームとして見ると色々と“惜しい”と思うところもありましたが、実際に中に入って全員が試行錯誤しながら開発・運営をしている姿を見たら、いい形で広げていきたいと感じましたし、外部の方との連携やメディアミックスを創りたいと思いました。そうして、私がプロデューサーとして関わることになったのです。


――:中川さんの合流はタイミング的にも素晴らしいと思っています。というのも、はじめから課金要素を導入していないことにも繋がりますが、あくまでも『ナナシス』はユーザー動向を丁寧に見つつ、確実性のある運営方針を貫いているような気がします。そのため、今回“大幅リニューアル”と称していますが、恐らくここからが『ナナシス』の本当の“正式リリース”と考えてもいいのではないでしょうか。

茂木氏:まさに、その通りだと思います。課金要素を導入しなかったのは、リリース直前で弊社代表の西村(Donuts代表取締役)が、「まずはコンテンツがどう受け入れられるのか見てみたい」と発したことからになります。今年のお正月頃でしたけど、二人で何時間も話したのを覚えています。最終的には目先の利益や数値に目を奪われないために、という覚悟ができました。


――:たしかDonutsさんの作品では、『単車の虎』もリリース当初は課金要素を導入していなかったと記憶しています。

茂木氏:そうです。この課金要素に関する施策が、恐らく西村のこだわりなのだと思います。サービスとして利益のことを考える前に、まずはユーザーさんに通用するコンテンツやサービス(ゲーム)なのかを線引きしているのかもしれません。


――:そのうえで、しかるべきタイミングでコンテンツに投資をして成長させていくのでしょうね。ただ『ナナシス』のリリースから現在に至るまで、ユーザーからも「課金したい」という声が上がっていることから、結果的に“コンテンツの力”が証明されたと思います。

茂木氏:嬉しいことにアクティブユーザー数は減っていません。“ユーザーが減らない”ということは、少なくとも『ナナシス』の今後に期待していただいているという証拠だと思います。そこに対して我々は、きちんとコンテンツとして素晴らしいものを提供しなければならないと思い、結果的に今までユーザーさんをお待たせしてしまいました。


――:ちなみに、大幅リニューアル前のユーザーからのご意見は、どんなものが寄せられていましたか。

茂木氏ほとんどが「音ゲーの改修」でした(笑)。それ以外はほぼありませんでしたね。当初『ナナシス』は音ゲー部分をメインにした作りではなかったのですが、ユーザーさんからの期待感もあって、今回のリニューアルを通して上手くシフトできたのかなと思います。


――:分かりました。さて、ゲームも大幅リニューアルされたことで、ここから本格的に『ナナシス』のIPとしての成長が期待できると思います。中川さん、今後どのように『ナナシス』を展開していくのでしょうか。

中川氏:直近では徳島県で開催されるイベント「マチ★アソビ」に参加するのですが、じつのところすでに夏コミ(コミックマーケット)にも出展するなど、着々と施策をうってきました。夏コミでは、実際にゲームのなかでも数字が動いたり、ユーザーさんが増えてくれたりなど一定の効果が見えたほか、ツイッターによる拡散力もすごかったです。

なにより、初出展で商品が完売したこともあって支配人の皆様のパワーをこれでもかと感じました。社内でも「これはいけるね」と次第に色々な判断も進むようになりました。


――:リアルイベントとの相性は良さそうですね。

中川氏:ええ。リアルイベントはまだまだやれると思っています。ただ、先輩コンテンツと比べたら我々はまだ生まれたばかりの赤ちゃんで、これから世の中に出てコンテンツとして成長していかなければならない段階です。ただそれと同時に、今まで我々が触っていなかったものには、逆に今では触れても良いということにもなります。


――:たしかに。これまで時間や人員、コンテンツ成長のタイミングなどで出来なかった色々なメディアミックス展開が、今では解禁されている、ということですね。

中川氏:中途半端に小さい施策をずっと続けているよりかは、今回の『ナナシス』のように万全の準備が整ったうえで展開するほうが、かえって良いのかもしれません。その上で、大小様々な展開は考えています。『ナナシス』を身近に感じてもらえるようなイベントもやりたいですね。


――:それでは、最後に『ナナシス』の今後の運営目標などを教えてください。

茂木氏:先ほどもお話しましたが、マーケティングや運営周りを中川が担当してくれることで、僕は本当にコンテンツ側に集中できるようになりました。みなさんも早くCDの発売やライブ展開などを楽しみにしているかと思いますが、僕もみなさんに喜んでもらえるように、高いクオリティでコンテンツ制作に努めていきます。そして、みなさんが『ナナシス』に期待してくれている限り、ずっと「良い」と確信できるものを作り続けていくだけです。

中川氏:ひとりでも多くの方に「これ面白いね」「このキャラ可愛いね」と思ってもらうために、チーム全体でパワーアップしていく必要があると思っています。音楽ひとつとっても、ただCD化された楽曲を聞くだけではなくて、ゲーム内でその楽曲をプレイすることによって新たな楽しみを感じてもらえるなど……。そういう意味では、導線としてまずはゲームからファンになってもらいたいと考えています。ファンが増えていくことで、『ナナシス』というコンテンツ自体も次のステージに上がれると思っています。


――:本日はありがとうございました。


■『Tokyo 7th シスターズ』
 



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