​KLab決算説明会 『スクフェス』好調で3Q過去最高益に 年末の大規模プロモーションで「来年も確実に伸ばす」 「glee」開発権獲得の狙いも明らかに

KLab<3656>は11月13日、2014年12月期第3四半期(7~9月)の決算を発表するとともに、東京都内で決算説明会を開催した。発表された決算は、売上高が前四半期比で23%増の63億5400万円、営業利益が同99%増となる11億9500万円となり、大幅な増益を達成するとともに過去最高となった。主力タイトル『ラブライブ!スクールアイドルフェスティバル(以下、『スクフェス』)』が国内外で好調に推移したことに加え、コスト削減も改善に寄与した。

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決算説明会に臨んだ真田哲弥社長は、「『スクフェス』が好調に推移したことに加え、海外での売上高70%増と大きく伸びたことが主な要因。ビジネスモデルの特徴上、損益分岐点を超えると利益率が格段に向上してくる。当社もそういう状況に突入しはじめたといえる」と述べ、「ネイティブシフト」以降、本格的な収益拡大フェーズに入ったことを示した(以下、かぎ括弧内は真田氏の発言)。第4四半期では、アプリのアップデートやプロモーションを強化し、来期以降のさらなる成長につなげていく考えだ。このほか、KLabの開発手法の変更や、『Age of Empires: World Domination』の延期の経緯、「glee」のゲームアプリ開発権獲得の狙いと考え方なども明らかにされた。



■四半期売上高・営業利益は過去最高に

さて、第3四半期の状況から振り返ろう。売上高は前四半期比で23%増の63億5400万円、営業利益も同99%増の11億9500万円と過去最高を更新した。「ラブライブ!」テレビアニメ2期の放映や、8月と9月に放映したテレビCMの効果もあって、『スクフェス』の売り上げが好調に推移したことに加え、『天空のクラフトリート』が堅調に成長した。ブラウザゲームの低迷や不採算・低利益率案件からの撤退を行ったものの、主力タイトルでカバーした格好だ。
 


この結果、ネイティブゲームの売上高に占める比率が前四半期の80%から85%に伸びた。App Storeが44.4%、そして、Google Playが40%となった。ネイティブ比率の上昇は続く見通しだ。1年前と比較すると、大きく変わっていることに気づくだろう。
 

また海外については売上高が70%増と大きく伸びた。『スクフェス』が中華圏や韓国で好調だった。海外の売上比率は3%に低下していたが、11.6%に回復した。
 

これまでコスト削減に注力してきたKLabだが、費用構成に変化が見られた。まず、費用削減に関しては、外注費や人件費、賃借料、減価償却費が引き続き減少した。「社員の細かい努力、乾いた雑巾を絞るような努力の賜物」という。他方、ネイティブアプリの増収に伴い、売上高と比例して伸びる版権使用料と、プラットフォーマーへの支払い手数料が増えた。そして、広告宣伝費と試作費が増加したが、これに関しては政策的に増やしたとのことだった。試作費と広告宣伝費に関して、詳しく説明があった。
 


まず、試作費が増加した背景には、ゲーム制作のフローについて大きな変更を加えたことがあるそうだ。これまで企画と収支計画を立てた段階で開発するか否かを判断し、本開発に入っていたが、制作フローの変更に伴い、企画と収支計画の間に、ゲームアプリが遊べる状態になっている「プロトタイプの制作」を取り入れた。同社では「プロトタイプドリブン」と呼んでいるという。

真田氏は「社内審査の通った企画のプロトタイプを2、3人のチームで制作し、触ってみて面白さや楽しさ、爽快さなどを多人数で検証する。そして合格すれば次のステップに進み、再度、検証する。こうしたプロセスを2週間単位で繰り返し、面白さが確認できた段階で本開発に入る。このため、従来に比べて資産計上されるタイミングが遅く短くなり、費用計上される期間が長くなった」と説明した。

この結果、新規開発費に占める試作費は、前年同期の12%から、この四半期では41%まで上昇した。「短期的には費用を押し上げるものだが、将来の減損リスクがなくなることを考えると、必ずしも悪いことではない」と指摘した。
 

続いてテレビCMを中心とする広告宣伝費についての説明もあった。広告宣伝費は、前四半期比で30.7%増の3億8700万円に伸びた。実に1億円の増加となる。『スクフェス』に関して、8月と9月にテレビCMを出稿したことによるものだが、テレビCMを中心にかなりの露出があったので覚えている人も多いだろう。1億円の積み増しでここまで露出が増えるものかと思ったものだが、真田氏によると版権元も広告宣伝費の一定割合を分担したため、とのことだった。
 

また、会場からはアプリ開発費の高騰に関して質問が出た。これについて、同業他社の説明会でも開発費の高騰と長期化はかならず指摘される事項だが、真田氏は、「以前と比べてそれほど上がっていない」と回答した。というのは、「ブラウザゲームからネイティブアプリにシフトした当初、効率的に開発ができていなかったため、余計な工数がかかっていたが、最近になって徐々に開発効率が上がってきた。その一方で、ゲームアプリのリッチ化に伴う開発費の上昇効果がある。双方の効果が相殺している状況だ」という。

なお、貸借対照表にも大きな変化があったので触れておくと、業績の改善効果もあって、第2四半期で7億円あった短期借入金の返済も完了した。自己資本比率が70%に到達し、財務体質も健全なものとなった点も注目しておくべきだろう。
 



■第4四半期の減収減益の見込み 市場環境は3Qと同じ状況を想定

続く第4四半期は、売上高が前四半期比で5.6%減の60億円、営業利益が同74.9%減の3億円とQonQでは減収減益を見込む。不確実性が大きいため、保守的な見通しを立てたようだ。スマートフォンアプリの市場環境は、7~9月期と同じような状況を想定しているため、売上高を第3四半期の予想と同じとしたという。利益面では、年末年始にテレビCMを中心とする広告宣伝費を10億円計上する計画だ。テレビCMは、『スクフェス』を中心とする主力ネイティブゲーム3タイトルに集中する。トップセールスランキング上位を狙えるタイトルにリソースを集中させる考え。
 
 
真田氏は「テレビCMを行うタイトルはいずれもKPIがいいので、プロモーション施策によって伸ばすことができる。それに先立ち、各タイトルのゲーム内容のアップデートを行っていく。他方、『かぶりん!』は状況が良くなかったのでAndroid版の開発から撤退することにした」と述べた。そして、「年末年始の時期はテレビCMの費用対効果が高いが、遊びはじめた人はすぐにお金は使わない。収益面で効果が出てくるのは2015年12月期の上半期になるだろう」と語り、来期以降の成長に向けた先行投資であることを強調した。とりわけ『スクフェス』については、2015年に『ラブライブ!』の劇場版公開を控えていることもあり、「来年も確実に伸ばすことができる」との見方を示した。
 



■パイプラインは10タイトル…だがリリースする前提ではない

続いて新規開発タイトルだが、プロトタイプを含めて合計10タイトルになっていることを明かした。ただし、プロトタイプは、途中で中止する可能性があるため、10タイトルをリリースする計画ではないとのこと。「プロトタイプは、毎月のように新しいものを作っているため、開発がうまくいけば10タイトル以上リリースする可能性もある」という。パイプラインのうち、IPタイトルが4タイトルだ。「プロトタイプを社内で高速に回して良い作品だけをリリースする。面白くなければ勇気を持って撤退している。面白いと思って作っているクリエイターにとってはとても辛いことだが、いまの業界においては重要なことだ。心を鬼にして判断している」と述べた。
 



■『Age of Empires: World Domination』

そのパイプラインの一つである『Age of Empires: World Domination』についての説明もあった。2014年中に出すと発表していたが、2015年に延期された。「楽しみにしていただいたファン、株主、市場関係者の方々には大変申し訳ないことをした」と謝罪したうえで、「経営サイドが開発から上がってきた作品をみて、ゲーム内容を修正してブラッシュアップしたほうがいいと判断した」と語った。2015年中とリリース時期が明言されなかった理由は、修正すべきポイントを絞り込み、修正に要する工数の見積を行っていることをあげた。工数見積が確定次第、リリース時期をあらためて発表するという。
 



■人気海外ドラマglee題材のリズムアクションゲーム

決算発表当日、20世紀FOXの人気ドラマ「glee」のゲーム開発ライセンスを獲得し、2015年に予定されているシーズン6の放映に合わせてリリースする計画であるとの発表もあった。なぜ「glee」なのか。「国内ではピンと来ない人もいるかもしれないが、ゲームビジネスではIPの知名度の高さは必ずしもいいことではない。大事なことは熱心ファンがいること、そして、そうした人々が集うコミュニティにアクセスできることが重要だと考えている。20世紀FOXはだれでも知っているIPを豊富に有しているが、こうした観点から「glee」を選んだ」と説明した。

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続けて「かつて『ラブライブ!』もラブライバーと呼ばれるファンの間で知名度がある作品だった。gleeもgleeksと呼ばれる世界中に熱狂的なファンが存在しており、版権保有者がしっかりとファンでつくるコミュニティにアクセスできるチャネルを持っている。『スクフェス』はツイッターで告知するだけでダウンロードが伸び、売上ランキングも駆け上がり、徐々に他の層に広がっていた。来年、番組放送でファンが盛り上がっているタイミングにゲームを投入し、同じような展開を狙いたい。まずは欧米からになるだろう」と語った。

また、リリース時点から大規模なプロモーション活動を行わず、データに基づいたOne to Oneマーケティング、ソーシャルの要素を駆使したプロモーション活動を行っていくとのこと。加えて、ドラマに出演している俳優陣によるつぶやきなども行っていきたいという考えもあるそうだ。

「glee」の収益見通しに関して質問が出たが、「Facebookのいいね!やTwitterアカウントのフォロワーなどから計算しようと試みているが、所詮は皮算用。いま発表できるほどの精度はない。ホームランを狙っていくが、少なくとも大コケすることはないのではないかと思っている」との回答にとどめた。このほかにもハリウッドと複数の案件で交渉を行っているそうだ。
 

最後に、KLabは、第3四半期において売上高・利益ともに四半期ベースで過去最高を更新し、財務体質も健全化した。『ラブライブ!』という作品の魅力を引き出しつつ、新しいゲームアプリの楽しみ方をスマートフォンのユーザーに提案したことへの正当な報酬といえよう。そして今回の成功に満足せず、「glee」の開発ライセンスの獲得など来期以降の成長に向けた布石を着々と打っている。次の決算発表では、次期への施策もさらに明らかにされるだろう。攻め続けるKLabの活躍を期待したい。
KLab株式会社
http://www.klab.com/jp/

会社情報

会社名
KLab株式会社
設立
2000年8月
代表者
代表取締役社長CEO 森田 英克/代表取締役副会長 五十嵐 洋介
決算期
12月
直近業績
売上高107億1700万円、営業損益11億2700万円の赤字、経常損益7億6100万円の赤字、最終損益17億2800万円の赤字(2023年12月期)
上場区分
東証プライム
証券コード
3656
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