【インタビュー】技術力だけではなくブレーンの役割も求められる…バンダイナムコゲームスのネットワークエンジニア・仁木氏が語る理想のスタッフ像


現在バンダイナムコゲームスは、スマートフォンアプリ/ソーシャルゲームのネットワークエンジニアを募集している。

一口に「ネットワークエンジニア」と言っても、その業務の内容は企業によってさまざまだ。ネットワークインフラの設計・構築や運用管理という前提は変わらないものの、ネットワークを利用するコンテンツがどんな内容なのか、どれほどの規模なのかによって必要となる知識も違う。バンダイナムコゲームスのように、何十ものタイトルを同時に運営している企業であればなおさらだ。

今回、バンダイナムコゲームスでネットワークエンジニアとして活躍する仁木貴之氏に話を伺い、どのような業務を行い、活躍しているのかを聞いた。今やゲームには欠かすことのできないネットワークだが、それを作り上げるスタッフが脚光を浴びることはあまりない。その中で、どんなスタッフが活躍出来るのかを知ることができる貴重な機会となった。

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■ネットワークエンジニアの理想のスタッフ像とは


――:本日はよろしくお願いします。まずは、仁木さんが現在どのような仕事をしているのかを教えてください。

メインで行っているのがソーシャルゲームで使用するサーバーの構築・運用です。ソーシャルゲーム以外でも、フィーチャーフォン向けの月額サイトであったり、弊社のコーポレートサイト、バンダイナムコIDの管理なども業務に入っています。ゲームに限らず、ネットワークに関するあらゆる仕事を幅広くこなす部署ですね。


――:新たなソーシャルゲームが開発されたら、順次そこへ投入されるイメージなのでしょうか。

そうですね。ソーシャルゲームの企画が立ち上がった段階でチームの中から誰を投入するかを考えます。ときには、開発チームとのミーティングにも参加しながら共に作り上げていくイメージです。


――:コーポレートサイトなどのお話もありましたが、ゲームだけでなくネットワークに関するさまざまな業務を行っているのですね。

はい。さらにはコンシューマタイトルもあり、最近ですと、海外で『DARK SOULS II』というタイトルのサーバーに関する業務も行いました。『DARK SOULS II』にはランキングをウェブ上で見るシステムが搭載されているのですが、このときはクラウドサーバーを利用しながら快適な運用をできるようにしていきました。


――:一言で「エンジニア」といっても会社によって業務内容はさまざまだと思います。バンダイナムコゲームスならではの業務もあるのでしょうか。

サーバーの構築・運用といっても、すべてを自分たちの手で作業するわけではありません。弊社は同時に運用する案件が非常に多いので、自分たちだけで行うとなると何百人ものスタッフが必要になります。そのため業務を委託するケースも多く、他の会社さんのブレーンとして、柔軟に指示を出すことは大きな仕事になってきます


――:現在でも1人のスタッフが複数の案件を掛け持っているのですか。
 

今のところ1人で数十のタイトルを担当している状態です。さらにソーシャルゲームの場合は作りながら運用して、運用が軌道に乗ったあとも作り続けて…という繰り返しなので、コーポレートサイト等のサーバー構築とは違った難しさがありますね。とはいえ、ゲームの完成直後はバグが目立ち不安定なこともありますが、安定軌道に入ればそこまで手がかからないので、複数の案件を同時にこなすことができています。


――:現在ネットワークエンジニアとしてバンダイナムコゲームスで働いている方々は、どのような経緯で入社したのでしょうか。

元々別の会社でエンジニアをやっていた人が多いのですが、以前の会社では「自分の業務の成果が何の役に立っているのか分からなかった」という話をよく聞きました。ものを作っても、果たして意味があったのか、役に立っているのかを実感できなかったそうです。

そして「どうせなら直接お客様に届けられるものを作りたい」と考え、弊社に興味を持ったという流れですね。私自身も同じで、元々技術系の仕事をしていましたが、どうせ作るなら面白いものを作って、いろいろな人に楽しんでもらいたいという気持ちは常にありました。

そのほか、コンシューマタイトルのプログラマーやITコンサルタントなど、幅広い経験を持つスタッフが集まっています。



――:スタッフごとに、得意分野も変わってくるのですか。

以前の職業でガラッと変わりますね。プログラマー出身ですとアプリケーションに強く、ゲームに不具合が起こってもすぐさま対処してくれます。データセンターで作業していた人であれば、プログラムの知識がなくとも、ネットワークのどこで不具合が起きているかを見つけ出すのがとても早いんです。それはプログラムに強くても絶対に分からないことなので、得意分野の違う人が組むことで運用はうまく回るようになります。


――:バンダイナムコゲームスの技術面の特徴はなにかありますか。

弊社の組織規模はかなり大きく、部署によって長けている技術も異なるため、一概には言えません。私が所属するチームという意味では、自分たちで手を動かして作ることはせずに、さまざまな協力会社さんと組んで案件に取り組むスタンスをとっているので、吸収できるノウハウがとても多いのです。そして吸収したノウハウを別の機会に活かせることは、良いところだと感じています。


――:別会社とのコミュニケーションが生まれるのは強みですね。

逆に言うと、技術力が高くてもコミュニケーション能力に乏しい人には辛い部署かもしれませんね(笑)。ときには、協力会社さんと意見が食い違うこともあるので、特に重要な能力です。

弊社では標準で使うミドルウェアなどをある程度決めています。しかし、以前たまたまお願いした会社さんは外国人のスタッフが多く、弊社標準とはまったく違う制作環境だったのです。そのときはお互いが得意とする環境をいかに混ぜあわせるかに苦労しましたね。



――:海外へ向けた展開も多いと思いますし、グローバルな視点も大切なのですね。

海外向けのシステム構築は、まだ私たちのチームではあまり行われていないのですが、当然今後は考えていかなければならないですし、実際に話も何件か来ている状態です。海外での展開となった場合、運用でもっともネックになるのが時差です。構築自体はできるものの、仮に止まってしまった場合、現地が昼間でもこちらは深夜で、復旧に時間がかかるケースが想定されます。


――:コミュニケーションという点では、会社内で別の部署の方と打ち合わせをする機会も多いと思います。

立場が変わってくると、ものの見方が変わってきます。自分の見方だけでは良いものは作れないので、相手がどのような考えを持っているか、そしてなぜその考えを持っているのかをしっかり理解することが大切だと思います。もちろん、こちらにも譲れない箇所はあるため、相手の意見は尊重しつつ、互いが納得して進められることを心がけています。


――:日々の業務の中で、技術向上へ向けた研究はしているのですか。

実際にサーバーを作るのは別会社さんなので、自分たちで新しい技術を研究することはあまりありません。ただ、それだと最新の技術を知らない状態ですので、外部の方をお呼びして講演を開いたり、ワークショップ形式の研修をしたりと、頻繁に勉強を行っています

社内での勉強会も盛んで、特にクラウドサーバーの技術などは積極的に学ぶようにしています。クラウドサーバーでは次々に新しい技術が生まれてくるため、定期的に学んでいかないと単語すら分からない状況に陥ってしまいます

私が個人で外部の勉強会に参加することもありますが、それだとどうしても私だけの知識になってしまい、間接的に他のスタッフへ教えても、すべてを知ることは難しいのです。そういうときに知識のある方を直接招いて、教えてもらうようにしています。そのほうが絶対に響きますし、私が伝えるよりも説得力が生まれますから。



――:現在求人も行っていますが、仁木さんが所属するチームの構成はどのような形になっているのですか。

私たちと同じことをしているチームがもうひとつあり、それぞれ5人ずつのメンバーで構成されています。年齢層は20代から30代前半、そして40歳前後のスタッフがほとんどです。若いスタッフでも意見は尊重したいと考えており、積極的に発言できる環境になっています


――:実際の業務を考えますと、やはりコミュニケーション能力は大きく左右するのですか。

極端な話、技術力が高くて黙々と作業する人よりも、企画の頃から打ち合わせに立ち会い、さまざまな人とコミュニケーションを取れる人のほうが弊社では活躍できると思います。もちろんエンジニアとしての技術を持ち合わせていれば最高ですが、これは働いていく過程で自然と身に付くものなので。


――:制作環境を見たときに、バンダイナムコゲームスならではの特徴はあるのですか。

さまざまなパートナーさんの環境に合わせて開発を進めることは特徴ではありますね。Javaが得意な会社さんではJavaで、PHPが得意ならPHPでと、臨機応変に対応しています。一方で、環境がバラバラのものが乱立すると運用の面でリスクが高くなるので、こちらがやりやすいようにコントロールしている箇所もあります。
 
▼バンダイナムコゲームスの社屋


 

――:では、仮にネットワークに詳しくない会社とやりとりする場合、仁木さんのチームから提案することもあるのですか。

あります。ネイティブアプリがリッチになってきた中で、これまでコンシューマタイトルを開発していた会社さんが参入してくるケースも増えました。しかしオフラインゲームの開発がメインだった会社さんですと「サーバーってなんですか?」と話してくることもあります。

そんなときは、私たちの方からサーバーの構成からリソースのあり方まで教えながら、最適な環境を整えていきます。運用に入ってからも、他の会社さんであればすぐに解決できることもトラブルとして連絡が来る場合があるので、スタッフは特に気を使うところですね。



――:ネットワークの運用となるとトラブルは付きものだと思いますが、やはり苦労も多いのでしょうか。

アプリの配信前ですと、どうしてもチューニングを十分にできないので、バグを始めとしたトラブルは出てきますね。間違ってなかったとしても、負荷によるトラブルもありますし。最初に大ヒットタイトルを担当したときは、金曜に配信されてからすぐに人が集まり、土日を削って対応に追われました。


――:イベントやアップデートでも、同様の苦労はありそうですね。では、それを踏まえた上で今後の課題、目標などはありますか。

弊社ではまずまずのヒットタイトルも現れてきましたが、もっと大きなタイトルを生み出せるとも感じています。私たちとしてももっと大きなタイトルの運営に携わりたいと思いますし、実現できるだけの力を付けていきたいです。アプリのヒットはなかなか読めないもので、当たるときは突然当たります。なので、今のうちからしっかりと準備をしておきたいです。


――:その準備として、現在求人を行っていると。

スタッフはもう少し欲しいところですね。しかし、チーム内でもまだ非効率な部分はあるので、まずはシステマチックな体制を築き、無駄を省くことが直近の課題と言えます。


――:なるほど。では、今後入る方のためにもお聞きしたいのですが、ネットワークエンジニアとして、必要なことは何だと思いますか。

現状に満足しないことです。新しい技術やサービスは次々に生まれてきますので、常に見聞きすることは何よりも大切です。また、自分たちは次にどこへ行くのかを見定めながら、そこへフォーカスして必要な知識を事前に察して、実際に行ったときにはすでに準備ができている。このような自己研鑚も大切ですね。


――:分かりました。最後に、読者へ向けたメッセージがあればお願いします。

これからもいろいろなソーシャルゲームタイトルをリリース予定ですので、私たちが大変な思いをするくらい、じっくりと遊んでもらえると嬉しいです。


――:ありがとうございました。
 
株式会社バンダイナムコエンターテインメント
https://www.bandainamcoent.co.jp/

会社情報

会社名
株式会社バンダイナムコエンターテインメント
設立
1955年6月
代表者
代表取締役社長 宇田川 南欧
決算期
3月
直近業績
売上高2896億5700万円、営業利益442億3600万円、経常利益489億5100万円、最終利益352億5600万円(2023年3月期)
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