【年始企画】ブシロード広瀬氏インタビュー 14年の市場拡大の原動力は女性ユーザー 15年は「カテゴリーキラー」探しが中心に IP×カジュアルゲームにも注力


スマートフォンアプリ業界に身を置く方々に話を伺い、2014年の市場動向と2015年のトレンドを読み解く特別企画「ゲームアプリ市場のキーマンに訊く2014-2015」。

ブシロードは、独自の切り口でスマートフォンアプリ市場に切り込み、その存在感を高めている。KLabとの共同開発タイトル『ラブライブ!スクールアイドルフェスティバル』が2013年に続いて大ヒットを遂げ、『クレヨンしんちゃん 嵐を呼ぶ 炎のカスカベランナー!!』も400万人を突破した。さらに『トイズドライブ』や、『ヱヴァンゲリヲン バトルミッション』といった話題作を年末にリリースするなど2015年の成長に向けた布石を着々と打っている。今回、同社取締役でブシモ事業を指導している広瀬和彦氏にインタビューを行い、2014年のスマートフォンゲーム市場とブシモの取り組みを振り返ってもらいつつ、2015年の見通しについて語ってもらった。

 

■14年は女性ユーザーの広がりが市場拡大に寄与

 
株式会社 ブシロード
取締役
広瀬和彦 氏
 
 

――:本日はよろしくお願いします。まず2014年のゲームアプリマーケットをどうご覧になっていますか。
 
当社の立場でえらそうなことは言えないのですが、2014年は市場規模が引き続き拡大したとみています。いろいろな見方があるでしょうが、女性ユーザー層の広がりがポイントだったとみています。スマートフォンゲームでは、これまで男性向けのゲームが先行していましたが、スマートフォン端末の普及や女性も楽しめるゲームが増えたことに伴い、女性ユーザーは人数の面ではもちろん、マネタイズの面からも市場拡大に大きく寄与したのではないでしょうか。ただ、その動きも徐々に落ち着いており、2015年は、これまでのような高い成長は期待しづらくなっていると思います。
 

――:女性ユーザーの広がりですか。
 
はい。スマートフォンの普及した当初、カードゲームやバトルゲームが多かったですが、女性ユーザーには訴求しづらい部分がありました。端末の普及とともに提供されるゲームアプリが多様化し、女性もゲームアプリで楽しめるようになってきました。例えば、『LINE:ディズニーツムツム』や『キャンディークラッシュ』のヒットが象徴的です。当社の『バウンドモンスターズ』や『スクフェス』などは男性だけでなく、女性にも遊んでいただいているようです


――:2014年で気になったタイトルはありますか。
 
今年のマーケットを象徴するタイトルとしては、やはり『LINE:ディズニーツムツム』を挙げたいですね。いままで市場にいなかった人々を市場に呼び込んだという意味で、市場の拡大に大きく貢献したと思います。他にも『LINE ポコパン』シリーズや『キャンディークラッシュ』、『黒猫のウィズ』、『アナと雪の女王:Free Fall』などもこうした流れに寄与したのではないでしょうか。
 
 
▲『LINE:ディズニーツムツム』
 

あとは、『Clash of Clans』が日本でもヒットしましたが、Machine Zoneさんの『Game of War』がヒットしたのも特徴的です。カルチャライズはしていないですし、ゲームの内容もかなりコアですよね。私は以前、コンシューマーゲームの仕事をしていたのですが、海外のゲームが日本に浸透するのは時間がかかるうえ、非常に難しいことを実感していました。しかし、ユーザー数が格段に多いスマートフォンではあり得る事象だと感じた次第です。
 

――:私も海外でリリースされた時、話題になっていたので遊んでみたのですが、日本でヒットするのかどうか半信半疑でした。ですから驚きました。
 
もちろん広告の出稿量がものすごいですし、強力なプロモーションによって支えられている部分が大きいとみていますが、とはいえ、売上ランキングで上位に入るということは、実際にゲームで遊んでお金を使っている方も多いということを意味していますから。

 

■コンシューマーゲームに近づいた


――:毎年のように開発費やマーケティングコストの高騰が指摘されていますが、実感としてはいかがですか。
 
 
正直な印象では、かなりコンシューマーゲームに近い業界になってきたと感じています。具体的な数字は申し上げらないのですが、当社が参入した2012年にリリースしたタイトルの開発費と比較すると、倍以上になっています。とはいえ、コンシューマーゲームの感覚でみると、開発費はそんなに高くないという印象も持ちます。
 
マーケティングも同様です。コストが上がっているのはもちろんですが、その手法もコンシューマーゲームのそれに近づいています。ネット広告やマス広告を組み合わせつつ、各メディアにアプローチして事前に情報を出して期待感を高めていくか、という考え方です。これまではリワード広告や、プラットフォーム内で広告を出稿することが効率的でしたが、コンシューマーゲームで使われていたプロモーション・マーケティング手法が導入され、それにともない費用感もそれに近づいてきた、といった印象です。

 

――:発売前に情報を出していくのはコンシューマーゲームではよく行われていますよね。
 
これまでのソーシャルゲームやスマートフォンゲームは、リリース前よりもリリース後が勝負であるといわれてきました。リワード広告の効果が落ちてきたことを補完する意味で事前登録が始まりましたが、現在ではリリース前にゲームへの期待を高めるためのプロモーションや情報公開を行っていくという考えが強くなっています。


――:市場の競争は以前以上に厳しくなっていることが背景でしょうか。
 
一言で言えば、そうなるかと思いますが、競争の質が変わってきたと思います。以前と異なり、開発費はもちろん、プロモーション費用などを含めて大規模タイトルでないと市場で勝負ができなくなりつつあります。小粒なタイトル同士の競争からビッグタイトル同士の競争に移り変わってきました。
 
マーケティングの手法も変わってきました。以前はネット広告に絞るやり方でしたが、全方位になってきましたね。ただ、当社の場合、逆にネット広告にはあまり力を入れず、テレビCMを使うことが多かったです。ですから当社と協業している会社様からは「本当にテレビCMは効果があるのか」などと聞かれたものでした。


 

■『スクフェス』が引き続き好調 IP×カジュアルゲームの成功例も


――:御社としての2014年を振り返るといかがですか。
 
当社としては大きく2つの方針で取り組みました。ひとつは、年末にリリースした『トイズドライブ』や『ヱヴァンゲリヲン バトルミッション』のように、ある程度規模の大きいタイトルをしっかりと作って出して運営していくことです。
 

 

ふたつめは、IPを活用したカジュアルゲームを含む小規模なゲームアプリを出すことです。「ガンダム」や「ONE PIECE」などマネタイズに成功する作品がある一方、知名度や人気はあるのにマネタイズが難しい作品が多くあります。大きなビジネスにはならないけれども、IPを使って小規模なゲームアプリを出して、しっかりと収益を出していくという考え方です。その第1弾となったのは「クレヨンしんちゃん」を使ったゲームアプリでした。

 
 『クレヨンしんちゃん』のゲームアプリをひとつの成功事例となった


スマートフォンのゲームユーザー層が広がり、「ゲームアプリでは遊ぶけれども、多くの時間やお金を費やしたくない」という方も増えているはずです。そういった方が継続的に楽しめ、かつ運営している側のビジネスも成り立つ仕組みを考えました。「クレヨンしんちゃん」のゲームの特色は、版権タイトルでありながら、広告が入っていることです。広告収入は、いわゆるアイテム課金の収益に匹敵する規模となっています
 

――:「クレヨンしんちゃん」はファンも多いですからね。
 
「クレヨンしんちゃん」は、お子様から大人までファンを抱えているため、幅広い方に遊んでいただいています。作品の性質を考えると、強い課金要素は望ましくありません。また、ゲーム性も比較的簡単にして、根を詰めて毎日遊ぶものではなく、時々起動して手軽に遊べるものにしました。実際、たまに思い出して遊んだり、お子様が週末に親御さんから端末を借りて遊んだりすることが多いようです。そしてこういうゲームに広告を掲載することでビジネスが成り立つのであれば、積極的に取り組むべきだと考えました。
 
当社も版権ホルダー様とお付き合いすることが多いので、IPと小規模なカジュアルゲームの組み合わせをご提案しています。かつてカードゲーム全盛期にソーシャルゲームにすれば儲かるという風潮が広がりました。その結果、作品に合うかどうかも疑わしいカードゲームが量産され、成功を収めたのはごく一握りでした。
 
その作品の特長や世界観に合ったカジュアルゲームを出すことで、ユーザー様も無理にお金を使わなくても楽しめますし、ビジネスとしても成り立つ…そんな仕組みを試しました。もちろん、これは「クレヨンしんちゃん」という国内トップクラスの視聴率を誇る作品だからこそ成り立つ部分でもあります。ひとつのビジネスのモデルとしては形ができたので、今後、取り組みを強化したいと考えています。

 

――:なるほど。またKLabさんと展開されている『スクフェス』も非常に伸びましたよね。
 
そうですね。今年は大きく伸びました。まさにKLabさんの決算報告のとおりです(笑)。『スクフェス』は、「ラブライブ!」のファンの方に主にご支持いただけたのかなと思っていますが、逆にゲームをきっかけに「ラブライブ!」というプロジェクトを知ってファンになったという方も多かったようです。また海外展開をスタートしまして、全世界でユーザー数が1000万人を突破しました。国内だけでも600万人を突破しています。
 
 

■2015年はビッグタイトル同士の争いに


――:大きな成果があったと。続いて2015年の展望をお聞きしたいのですが。
 
すでに申し上げたように、2015年は爆発的な市場の伸びは期待しづらくなってくると見ています。そして、ビッグタイトル同士の争いがより激しくなっていくでしょう。ですから、当社としては、開発費もプロモーションコストも大きなタイトルで勝負していくことになります
 
前提となる市場に関しては、コンシューマーゲームと同じような流れになると見ています。つまり、規模の大きいタイトルと、小規模なカジュアルゲームに二極化していくと見ています。コンシューマーゲームでも、フルプライスのゲームと、低価格のゲームに大きく分かれましたよね。運営型のゲームになるとその傾向が強くなり、中間的なタイトルがなくなっていくと見ています。当社はその二極化した市場の両方に焦点を当てていきます
 
また、どこの会社もおっしゃると思いますが、お客様が様々なゲームアプリに触れたこともあって、これまで以上に多種多様なゲームアプリが出てくると思います。正直申し上げて『スクフェス』のリリース時、ネイティブの音楽ゲームという形式があそこまで人気になるとは思いませんでした。当時流行だったパズルRPGやソーシャルゲームとは異なり、2分間、画面から目が離せないですし、かつヘッドフォンが必要でした。当社も早い段階でこうしたゲームに着手させていただきましたし、引き続き新しい遊びのご提案を行っていきます。

 

――:注目されている技術要素やジャンルはありますか。
 
ご質問の趣旨とは少し異なりますが、ある種のカテゴリーキラーを取りに行く展開がより意識されてくるだろうとみています。これまでのゲームアプリ市場を振り返ると、あるカテゴリーのトップタイトルにユーザーが集中して「一強」となり、同じジャンルの他のタイトルが苦戦する状況になっています。
 
例えば、クイズですと、コロプラさんの『クイズRPG魔法使いと黒猫のウィズ』、音ゲーに関しては、幸い『スクフェス』が集客や売上の面でトップに立つことができています。また、パズルやRPGに関しては、ユーザーが幅広いため、そういった状況になっていませんが。
 
したがって、2015年に関しては、トップを取れるようなカテゴリー探しを各社が意識的に始めると見ています。色々なカテゴリーのゲームにチャレンジしてトップを取ろうという動きが強くなるかもしれません。スマートフォンゲームとしては、いままでにない、新しいカテゴリーにチャレンジしたゲームも複数出ていますよね。当社もそういった動きが重要と考えています。

 

――:御社としての展開は。
 
「クレヨンしんちゃん」のモデルを活かして、2タイトルをリリースする予定です。「クレヨンしんちゃん」とは違った軸で知名度や人気のある作品のタイトルを出します。そこが2015年の目玉になります。2015年の春にはなんとか出したいですね。幅広い方々から支持を集めているIPを使った作品となりますので、ぜひご注目いただきたいと思います。また大型タイトルに関しては、『スクフェス』はもちろん、gloopsさんとの共同タイトル『トイズドライブ』、そして、『ヱヴァンゲリヲン バトルミッション』が柱になっていくでしょう。


――:分かりました。本日はありがとうございました。
 
(編集部 木村英彦)

 

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会社情報

会社名
株式会社ブシロード
設立
2007年5月
代表者
代表取締役社長 木谷 高明
決算期
6月
直近業績
売上高487億9900万円、営業利益33億8500万円、経常利益45億300万円、最終利益20億5000万円(2023年6月期)
上場区分
東証グロース
証券コード
7803
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