【gumi決算説明会レポート】来期回復への燭光が見えた3Q クロスプロモーションと新作、海外パブリッシングがカギ 国内『ブレフロ』は1月は過去最高に

gumi<3903>は、3月10日、東京都内で15年4月期第3四半期の決算説明会を開催した。業績予想を下方修正し、営業赤字となる見通しとなるなど厳しい結果となったものの、国内のネイティブアプリの足元の状況や、今後の開発中のリリースタイトルの出来栄え、そしてマーケティングの効率化・合理化余地の大きさなど、来期(2016年4月期)以降の業績回復に向けた"燭光"がみえた決算説明会であった。今期は、文字通り先行投資が終了する期とすれば、来期は本格的な収益拡大期に入るための期という位置づけになるのかもしれない。
 
説明会の冒頭、國光宏尚社長(写真)は、「下方修正について、心よりお詫びしたい」と謝罪した。そして、「パブリッシングの立ち上がりの遅れや海外言語版『ブレイブフロンティア』のMAUの弱含んだことなどにより、2月の月次業績が予算対比で大幅に下振れたため、下方修正を行った」と理由を説明しつつ、中長期的な事業戦略に変更はないことを強調した。「ハイリスク・ハイリターンである自社オリジナルタイトル、中リスク・中リターンのIPタイトルとLINE向けタイトル、低リスク・低リターンのパブリッシングサービスでポートフォリオを組み、安定した収益基盤を築きたい。今回の下方修正を受けて、グループ内でも協議を行い、打つべき施策も確定した。今後、施策を着実に実行して早期に業績を回復させ、株式市場の信頼が回復できるよう経営陣一同、誠心誠意努力したい」と語った(以下、カッコ内は断りがない限り、國光社長の発言)。
 
 
 
■第3四半期はQonQで減収・赤字に
 
まず、発表した決算(14年11月~15年1月期)を振り返っていこう。売上高66億2400万円(前四半期比QonQ3.8%減)、営業損益が7億4100万円の赤字(前四半期3億3600万円の黒字)、経常損益が7億7300万円の赤字(同2億8900万円の黒字)、最終損益が6億8300万円の赤字(同1億5900万円の黒字)となり、QonQでは減収・赤字転落となった。
 
 
QonQで減収となった要因は、『ブレイブ フロンティア(以下、ブレフロ)』海外言語版が弱含んだことがあげられる。同社の売り上げに占める海外言語版の比率は44%に達しており、その影響が特に大きかった模様だ。さらに海外パブリッシングタイトルの遅れや、ソーシャルゲームプラットフォームで配信しているブラウザゲームの落ち込みも響いた。他方、明るい材料として、国内版『ブレフロ』をはじめ、『ファントムオブキル』や『ドラゴンジェネシス』、『ソード・アート・オンライン コード・レジスタ(SAO)』といったネイティブアプリ群は堅調だったことがあげられる。
 

 
営業赤字となった要因については、売上高の減少に加えて、『ブレフロ』日本語版と海外版の積極的な広告宣伝を実施したことに伴い、販売管理費が膨らんだことだ。『ファントムオブキル』など、新規タイトルのリリースに伴う広告宣伝費も発生。また、海外拠点の拡充に伴う開発費(人件費・外注費)の増加も収益を圧迫した。
 

 
 
 
 
■通期業績予想を下方修正
 
2015年4月期の連結業績予想を下方修正し、売上高を309億7200万円から265億円に、営業損益を13億2900万円の黒字から4億円の赤字に、経常損益を12億7700万円の黒字から6億円の赤字に、最終損益を8億0800万円の黒字から損益ゼロにそれぞれ引き下げた。
 
 
売上高予想を引き下げた理由として、3つの要因があげられる。『ブレフロ』海外版のMAU(月次アクティブユーザー数)とARPPU(Average Revenue Per Payed Users)が弱含みで推移し、売り上げは計画を下回ったことがひとつ。ふたつめは、海外でのパブリッシングサービスの遅れ。3つめは、海外向け新規タイトルが売上計画を下回ったことだ。

利益面の下方修正については、売上高の下振れに加えて、海外拠点への先行投資に伴って発生した固定費用が増加したことによる。最終損益のみ赤字ではなく、ゼロになるが、繰延税金資産の計上により法人税等調整額がプラスに寄与するため。
 
 
なお、第4四半期(15年2~4月期)は、売上高が58億7900万円(前四半期比11.3%減)、営業損益が8億2000万円の赤字(前四半期7億4100万円の赤字)、経常損益が8億9300万円の赤字(同7億7300万円の赤字)、最終利益が2億2500万円(同6億8300万円の赤字)となる見通し。
  
 
 
■既存タイトルと新規タイトルの開発状況
 
続いて、今後の収益回復のための取り組みについての説明があった。
 
 
まず、主力ゲームアプリの状況と新作タイトルだが、主力タイトル『ブレフロ』については、国内では新規施策の積極投入と年間スケジュールに基づく安定した運用を行っていく方針。1月の日本語版の月商は過去最高を記録するなど好調に推移するなど足元は好調だ。海外言語版は、足元のMAUに弱含みが見られ、日本語版で奏功した施策の投入と適正な広告投下によりユーザー基盤の拡大を図っていく。
 
 
またフジ・メディア・ホールディングス<4676>との合弁会社Fuji&gumi gamesが提供する『ファントムオブキル』についても、App Storeの売上ランキングでもTOP30に入るなど足元順調な推移となっている。第4四半期中にテレビCMを放映し大規模なユーザー獲得とさらなる売上拡大を目指す考え。
 
 
『ドラゴンジェネシス』は、少人数運営の高収益モデルを継続する。また、バンダイナムコゲームスとの共同開発タイトル『SAO』は、好調な滑り出しであり、新規施策の積極投入で売上拡大フェーズ入りを目指していくとのこと。
 
 
続いて開発パイプラインの状況も明らかにした。15年1月末時点で開発承認を受けたのは18タイトルで、そのうち、4タイトルのデモムービーが披露目となった。披露されたのは、事前登録の受付を開始したアクションゲーム『忍ツク!』、アクションRPG『Project Blazing(仮称)』、RPG『Project Crystal(仮称)』、子会社エイリムとスクウェア・エニックスと開発している『ファイナルファンタジー ブレイブエクスヴィアス』だ。あくまでプロモーションムービーだったため、ゲームに関する情報は限られていたが、派手な演出が特長でゲームとしても目を引く内容だった。関連記事をご参照いただきたい。

【関連記事】
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このほか、開発力強化を図るため、『ロックマン』シリーズや『鬼武者』シリーズ、『LOST PLANET』シリーズなどを手がけた稲船敬二氏率いるcomcept、『ストリートファイター』シリーズや『デビルメイクライ』シリーズなどヒットタイトルを手がけた中川 裕史氏率いるアングーと資本業務提携も行った。ここ最近、コンシューマゲームで勇名を馳せたクリエイターがスマートフォンアプリでも活躍しているが、「社外の優秀なクリエイターと組むことでヒット率を高める」ことが狙い。外部の有力ディベロッパーやクリエイターとの提携は、今後も継続的に行っていく。

 
 
■『スリングショットブレイブス』と『白猫プロジェクト』は徹底したローカライズを
 
パブリッシングサービスは、予定よりも立ち遅れが観られるものの、受託タイトルの増加に伴い、売上が着実に拡大傾向にある。立ち上がりが遅れた要因であるIPホルダーとの調整も進んでおり、「新コンテンツ・新システムを投入することで早期の収益化を図る」という。『ブレイブフロンティア』の海外市場での成功は、同じグループ会社同士のため、スムーズにコミュニケーションがとれたが、社外の企業と連絡を取るため、当初の想定よりもはるかに多くのコミュニケーションロスが発生したとのことだった。
 
また、國光氏によると、パブリッシングサービスの立ち遅れた理由のひとつは、日本と欧米、韓国と中国市場のユーザーの相違だ。例えば、欧米のプレイヤーは、子供の頃、コンシューマゲームに慣れ親しんだ人が多いという。日本と同様、大人になると、ゲームで遊ぶ時間のないため、スキマ時間に遊ぶことを前提とした、日本のスマートフォンゲームが受け入れられやすいという。これに対し、韓国や中国のプレイヤーは、PCオンラインゲームで遊んでいるうえ、年齢層が若く、ゲームで遊ぶ時間が豊富にある。このため、日本のゲームを提供する場合、長時間プレイを前提としたゲームサイクルに変更する必要があるそうだ。こうした相違を踏まえ、コロプラ『スリングショットブレイブス』を韓国で、『白猫プロジェクト』を中国で配信する。「現地向けに徹底的なローカライズ・カルチャライズを行ったうえでリリースする」。
 

 
 
 
■開発人員の増強は一服、クロスプロモーションにも積極姿勢に
 
最後に、コストに関する取り組みも説明した。ひとつは、開発費の合理化だ。ネイティブシフトが完了しただけでなく、国内外でのネイティブアプリの開発ラインの増強を行ったため、開発人員とそれに伴う開発費の急激な増加が続いていた。しかし、第3四半期で人員の増強はほぼ一巡したため、今後は緩やかな増加となる見通しだ。
 
 
広告宣伝費の合理化も課題だろう。これまで国内外でユーザー基盤の拡大とマーケティングノウハウの蓄積のため、広告宣伝費を積極的に投じてきたが、「今後、効率的な広告宣伝を行っていくとともに、自社タイトル間のクロスプロモーションを実施し、広告宣伝比率を20%台から15%への引き下げる」とのこと。同業他社に比べても広告宣伝費を使いすぎている印象で、このあたりはかなり削る余地があるという印象を受けた。
 
 
特に広告宣伝費の効率化で大きな役割を果たすのがクロスプロモーションだろう。アプリストアのランキング上位にアプリを提供するディベロッパーのなかには、自社タイトルからの誘導を行い、大きな効果を上げているが、gumiでも今後、注力するとのこと。いままで積極的に行っていなかったのが不思議なくらいだが、国内外の『ブレイブフロンティア』を中心としたクロスプロモーションの実施を通じて、既存タイトルはもちろん、これからリリースする新作の事前登録やリリース時のスタートダッシュに寄与することが期待される。
 
(編集部 木村英彦)
株式会社gumi
http://gu3.co.jp/

会社情報

会社名
株式会社gumi
設立
2007年6月
代表者
川本 寛之
決算期
4月
直近業績
売上高160億0900万円、営業利益4億4700万円、経常損益1900万円の赤字、最終利益4億4500万円(2023年4月期)
上場区分
東証プライム
証券コード
3903
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