【インタビュー】Facebook広告は質・量を実現する広告商品~gloops『スカイロック』の事例から~継続率1.5倍、ROAS2倍など類似オーディエンスのターゲティング機能が効果

スマートフォン端末と通信環境の進化とともに、モバイルゲームアプリの広告メニューが進化・多様化しつつある。そのひとつとして注目を集めているのが、Facebookのモバイルアプリ向けの広告メニューだ。今回、gloopsの『SKYLOCK(スカイロック) - 神々と運命の五つ子 -』のプロモーションを担当した鈴木恵慈郎氏、桂翔氏、Facebookの日高久美子氏にインタビューを行い、Facebook広告の特長と効果を聞いた。アドネットワークの2倍以上のユーザーがとれただけでなく、ROAS(Return On Advertising Spend)や継続率などの指標も良好となるなど、量と質を実現できたという。



■2つの"山"を目指した『スカイロック』のプロモーション活動
 
 
―――:本日はよろしくお願いします。まず、『スカイロック』のプロモーションに関してですが、全体的な動きを振り返っていただきたいのですが。
 
鈴木氏:リリース前のプロモーション活動ですが、2014年10月にタレントのローラさんを迎えてプレス発表会を開催し、同時に事前登録の受付を開始し、そこで16万5000人のお客様にご登録いただきました。この段階からFacebook広告を活用していました。
 
リリース後に関しては、Facebook広告やリワード広告、ノンインセンティブCPI広告、リスティング広告などWeb広告を中心にプロモーションを行い、11月半ばからテレビCMにあわせて、Webプロモーションの強化、並行して交通広告や声優の下野紘さんを起用したラジオなど多面的な展開を行いました。

 
 

12月には女優の本田翼さんを招いてプレス発表会を実施し、再度テレビCMを展開しました。プレス発表会、テレビCM、プレス発表会、テレビCMという2段階でプロモーションを展開し、2つの山を意図的に作り出しました。

 
 
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―――:事前登録もかなりの規模だったかと思いますが、ダウンロード数も相当な規模だったのではないでしょうか。
 
鈴木氏:そうですね。ダウンロード数は、1カ月経たずに100万件、そして、1カ月半で200万件となりました。現段階では約280万件で、そろそろ300万件が見えてきたところです。
 
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―――:一連のプロモーション活動ではどういった目標を設定していたのでしょうか。
 
鈴木氏:App StoreのランキングでTOP10に入ることが目標でした。その目標からブレイクダウンすると、2014年内に300万ダウンロードに到達している必要がありました。そのため、テレビCMや交通広告、ラジオなどマス広告で認知を獲得し、Web広告でダウンロードを促すというオーソドックスなアプリプロモーションを基本方針としました。他社のプロモーションとの違いは、短期間で集中的にダウンロードを伸ばしていくための仕掛けが必要だったことです。
 
この短期間で目標ダウンロードを達成するには、2回のプレス発表会をきっかけに2度のプロモーションの山を作り、区切られた期間の中で圧倒的な露出量を狙うという考え方がありました。弊社では2段階加速型のプロモーションと呼んでいます。これにより限られた予算で集中的にダウンロード数を伸ばすことができたと考えています。

 
―――:目標には少し到達しませんでしたね。
 
鈴木氏:はい。300万ダウンロードが目標でしたが、12月からは短期間で費用対効果が見合う広告展開にシフトしたためです。費用対効果より目標達成に重点をおけば、300万ダウンロードは達成できない目標ではなかったと思います。ダウンロード数の観点で振り返ると、プロモーションに関しては概ね成功だったと考えています。



■Facebook広告は質と量を実現した広告メニュー

 ―――:Facebook広告を活用したのは今回が初めてだったのですか?
 
鈴木氏:いえ。Facebook広告は、『欧州クラブチームサッカー BEST☆ELEVEN+』でも利用していました。獲得できるユーザーの質がよく、継続率や課金回収率は他のアドネットワークよりも良かったです。『スカイロック』でもWebプロモーションのメインになる存在という位置付けでした。
 
―――:Facebookの広告に関しては効果に賛否両論あるようですが、御社ではうまくいったと。
 
鈴木氏:Facebook広告の特長は、ターゲティングがかなり細かくできることにありまして、使い方次第で大きな効果が出ます。利用した弊社タイトルでは良好な結果がでています。早い段階からFacebook広告に取り組んでいましたので、ノウハウの蓄積が進んでいたことも大きかったと思います。
 
Facebook広告では、『スカイロック』の公式サイトに訪れたユーザーと類似したユーザーにリターゲティングすることができますし、『スカイロック』を遊んだことのあるユーザーと類似した人をターゲットにすることもできます。ターゲティングするオーディエンスセグメントの作り方次第で、広告効果に大きな違いが出ます。細かく設定すれば大きな効果が出る分、うまく設定しないと効果が出ないこともあるかもしれません。

 
―――:Facebook広告で獲得できたユーザーの質はそんなに良かったのですか?
 
桂氏:獲得単価は他媒体と変わらないですが、アドネットワーク広告と比較して、リリース翌月の2014年11月の実績では2倍のダウンロード数があり、ダウンロード後のKPIは継続率が1.5倍、ROAS(Return On Advertising Spend)は200%という非常に良い数値でした。『スカイロック』は、RPGの好きな方にリーチしたいと考えていましたので、キャンペーン設計がうまくいっていたと考えています。



■効果があったのは類似オーディエンス
 
―――:Facebookでも様々な広告メニューがあるかと思いますが、一番良かったのは何でしょうか。
 
鈴木氏:Lookalike Audiencesと呼ばれる類似オーディエンスのターゲティング設定を使った広告です。弊社のCRMデータから抽出したカスタムオーディエンスと趣味趣向が類似するユーザーのうち、上位1%、3%、5%などと選ぶことができ、その度合いによって広告キャンペーンを分割し、割り当てる広告予算を変えていきました。例えば、スカイロックの公式サイトに訪れたユーザーデータを元に、Facebookのユーザーから類似していると思われるユーザーの類似度ごと(1%、3%、5%ごと)に広告を配信する、というイメージです。
 
桂氏:Facebookは、性別、年齢などのデモグラフィックデータを保有しています。『スカイロック』だと20~40代男性のRPG好きが主なターゲットでしたので、当社のCRMデータとFaceboookの保有するデモグラフィックデータを組み合わせて、類似ユーザーにセグメントを絞ることで、質量ともに良好な結果になりました。一般的にセグメントを細かくするとダウンロード数が取れないと言われているのですが、数万件単位のダウンロードがあったことは驚きでした。他のWebプロモーション施策に比べると際立って高い効果です。
 
日高氏:Facebookでは、セグメント分けについては、性別や年齢、趣味・関心だけでなく、使っているモバイル端末機器のOS、さらには携帯電話の機種別のセグメントまでも行えるようになっており、かなり細かいセグメントに分けて広告が出せるようになっています。
 
桂氏:そうですね。OS別、年齢別、ジャンル別、類似オーディエンスを使って数千個のキャンペーンを作り、それを運用しながら精査して効率性を高めていきました。そしてセグメントが狭くなってきたら、さらに新しいキャンペーンを追加して、再度、精査してターゲットを絞って効率性を高めるというプロセスを繰り返しました。
 

初期のキャンペーンの設計だけでなく、運用フェーズに入った後もPDCAを高速で行い、広告効果が上がるように注力しました。RPGは人気ジャンルですから、他アプリ広告との入札競争によってどうしても単価が上がってしまいます。そこでクリエイティブとキャンペーンを常にリフレッシュしていくことで、無用な競争を避けつつ、自分たちの出したいユーザーに広告を出していきました。
 
―――:広告ですと、クリエイティブも大きな影響を持ったかと思いますが、そのあたりは。
 
桂氏:クリエイティブでも工夫したことが大きかったと考えています。かなりの数のクリエイティブを用意しました。数えていないですが、500は用意したと思います。ユーザー分析を行ったうえでタイミングを考慮した掲出を心がけました。また、生活に密着したSNSですので、同じクリエイティブが何度も出ないようにしました。さすがに1日10回同じクリエイティブが出たら、逆に嫌われてしまいます。これを実現するための体制づくりとして、社内のデザインチームや広告代理店のクリエイティブチームと連携し、素早くPDCAを回せるようにもしました。
 
―――:Facebookがうまくいった要因は。
 
桂氏:うまくいった要因は、自分たちの考えをきちんと固めたうえで、Facebook社の担当者、広告代理店の担当者と事前に相談して、キャンペーンの設計を共有・改善することができ、オーディエンスの区切り方など細かくできたことが大きいと考えています。弊社としても初めてのオーディエンスの区切り方をしたところもありましたが、非常に良好な結果となりました。



■ターゲティングを強化、動画広告の強化も
 
―――:ブラウザゲームとはプロモーションのやり方が全く変わっていますね。
 
桂氏:はい。ブラウザゲームでは、弊社は、多くのユーザーを抱えていましたので、そこをフックに短期間で一気にボリュームを取ることができました。初動の重要性は、ブラウザゲームもネイティブアプリも変わりません。ネイティブアプリのプロモーションでは、ブラウザゲームで持っていた強みを活かすことが難しいため、そこを補うべく、今お話したようなプロモーションを行ないました。
 
―――:かつてアプリのプロモーションでは、リワード広告を出しておけばOKといった風潮がありました。そんな昔でもないのに、大きく変わったと感じますね。
 
鈴木氏:リワード広告隆盛の時期から、様々な広告プロダクトが出てきました。そして様々なプロダクトのなかでも多様なメニューが生まれてきています。プロモーションの設計とその後の運用をいかに行うかで広告の成果が全く変わってくると感じています。特にここ1年では広告メニューの数が非常に増えました。広告会社や媒体社が新しいメニューをどんどん開発・リリースしています。Facebook広告でも、ターゲティング機能の追加や動画広告など様々なアップデートが行われました。
 
日高氏:FacebookはもともとデスクトップPC用に開発されたサービスでしたので、モバイル向けの広告メニューは用意されていない時期もありました。2012年よりモバイルファーストを掲げ、様々なモバイル中心の広告メニューを開発してきました。その時最初に生まれたのは、モバイルアプリダウンロード広告です。
 
当時、ゲーム会社は、アプリストアで自分のアプリが埋もれてしまうという悩みを持っており、そちらの課題を解決すべく生まれた、モバイルニュースフィードの中に配信され、「ダウンロード」ボタンをクリックするとアプリをダウンロードするページに誘導することができる 広告商品です。その後出てきたモバイルアプリ広告という商品は、すでにアプリをダウンロードされた方向けの広告で、ゲームアプリでしたら「ゲームをプレイ」、音楽アプリだと「音楽を聴く」といったボタンがあり、それぞれのアクションを取れるアプリ内へ誘導する広告です。
 
同時に、ターゲティング機能も強化してきました。広告主が持つCRMをFacebookの利用者と照らし合わせ、既存の顧客にFacebook上でリーチできるカスタムオーディエンスというターゲティング設定や、ウェブサイトのカスタムオーディエンスはウェブサイトの訪問者にFacebook上でリーチできるターゲティング設定などがあります。また年齢や性別、趣味・関心、モバイル端末の機種、OSだけでなく、モバイル端末の接続速度なども使えます。例えば3Gの方には静止画を配信し、4Gの方には動画を流すといったこともできます。
 
 
桂氏:Facebookもですが、我々もIDFAやAdvertising IDを用いた広告展開を強化しています。アプリをダウンロードはしているけれども、プレイしなくなったお客様は非常に多くいらっしゃいます。そういったお客様に私たちのアプリにいかに触れていただけるかが課題で、それを解決するためにIDFAやAdvertising IDを用いた広告展開に取り組んでいるところです。
 
―――:マーケティング活動上、抱えている課題を教えてください。
 
鈴木氏:昨年のTVCMのプロモーションを通じて、『スカイロック』を多くの方にダウンロードしていただきました。今後、そういったユーザーデータをいかに活用していくかが課題です。社内のデータ分析チームと連携しながら、どういうセグメントのユーザーにゲーム内外でどうアプローチしていくか、という点がポイントになってくると考えています。
 
桂氏:1回ダウンロードしていただいた後、プレイしなくなってしまったお客様へのアプローチとして、セグメントをあまり細かくしない形でリターゲティングを行ってきました。ただ、ここ最近では、社内の分析チームと連携し、ゲーム内のレベルや戦闘力など、より細かいユーザーデータを元にダイナミックリターゲティング広告を配信していく、といったやり方に取り組み始めています。
 
プレイしなくなってから1週間以内の方と、その期間以上に間が空いてしまった方とでは前者の方が広告効果が良い、といったこともわかってきました。また例えば、レベル20に到達した後にプレイしなくなった方には新しいイベント情報を発信する、レベル50以上のある程度やりこんだ方には進化素材がもらえるイベント情報を発信する、といったこともやりたいと考えており、データを詳細に分析することで、より効果的なリターゲティングを行いたいと考えています。

 
―――:最近、動画を使ったプロモーションも積極的に行われていますよね。
 
鈴木氏:はい。直近注目している広告メニューですと、動画系のメニューとデータを使ったメニューに大きく分かれます。当社は、動画系のメニューに関しては、実施してはいるものの、アドネットワークなどに比べると獲得件数が少なく、継続率やROASの面でもそれほど効果が出ていません。大きく投下するフェーズではないですが、少しずつ動画広告が右肩上がりになっているのは事実ですので、今後、取り組みは強化したいと考えています。
 
日高氏:Facebookでは、昨年より動画広告の提供を開始しました。オーガニックで投稿されている一人当たりの動画投稿件数が2014年は前年比で75%伸びています。動画コンテンツが当たり前になりつつあり、閲覧している方もオーガニック・広告を問わず、動画コンテンツを求める方が増えています。
 
動画広告を出稿される会社をみていると、テレビCMなどで使った動画をそのまま利用するのではなく、Facebookというメディアの特徴にあった広告コンテンツを用意して配信するのが効果的という認識が徐々に広がっています。
 
Facebookとしては現在、動画広告に関しては、視聴傾向を把握できるようレポートを強化しています。動画再生数だけでなく、ユニーク動画再生数や、動画の平均再生時間、 そしてオーディエンスのリテンション、どのように効果的な動画の制作やプロモーションにつなげていくための指標を提供していくかが課題です。

 
―――:ありがとうございました。
 
(編集部 木村英彦)
株式会社gloops
http://gloops.com/

会社情報

会社名
株式会社gloops
設立
2005年8月
代表者
李 仁
決算期
12月
上場区分
非上場
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Meta(Facebook)

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