【シリコンスタジオ説明会】コンテンツ事業は新タイトルへの収益シフトの端境期…今期はあと2タイトルをリリースへ 「Mizuchi」は映画・建築業界からも引き合い


シリコンスタジオ<3907>は、4月17日、東京都内で上場後会社説明会を開催した。今回の記事ではその説明会の中から、主に4月13日に発表された2015年11月期第1四半期(12~2月)の連結決算の説明についての部分を中心に取り上げて紹介したい。

説明会では、寺田健彦代表取締役社長(写真)がまずは説明を一通り行い、その後に質疑応答が行われた。質疑応答では、今後の成長に向けた考え方や、今期リリース予定の新作についてなどの質問が行われた。そうした内容も踏まえつつ、会見の様子をまとめてみた。
 

■前年同期比で減収減益も2Q進捗では順調な数字に


まずは、13日に発表された第1四半期決算の内容をあらためて振り返ってみると、売上高18億4700万円、営業利益8100万円、経常利益7700万円、四半期純利益5000万円となった。初の四半期業績開示のため、比較すべき前期数字がなかったのだが、今回の説明会では前年同期の数字を開示しており、売上高は前年同期比7.6%減、営業利益は同74.5%減、経常利益は同75.2%減、四半期純利益は同72.8%減となっている。ただ、第2四半期累計(12~5月)業績予想に対する進捗率で見ると、売上高が45.6%、営業利益が98.8%、経常利益が105.5%、四半期純利益が113.6%となり、もともと下期偏重型の予算であったと言え、進捗状況としては順調と評価することができそうだ。
 

さらに下の表は販売費及び一般管理費の内訳となる。上場に伴う管理体制の強化や開発体制の強化などを目的とした人員の増加などで大きく費用が膨らむ形となっている。
 
 

■コンテンツ事業は新タイトル端境期で減収減益


続いてセグメントごとの状況を見てみよう。まずは開発推進・支援事業からとなるが、ここで前提条件として記載しておかないといけないのが、開示された数字はセグメント間の内部取引消去前のものとなる。そのため、数値を合算しても全体業績とイコールとはならないので、その点はご了承いただきたい。

さてでは、開発推進・支援事業の第1四半期の実績値を見ると、売上高は7億2400万円(前年同期比4.0%増)、セグメント利益は2億1700万円(同7.3%減)となる。この第1四半期期間(12~2月)は新製品のリリースがない中で、「OROCHI3」など既存のミドルウェアソフトが新規案件を7件獲得するなど順調に推移したほか、新規分野のアドテクノロジーも小規模ながら売り上げを計上することができたとしている。

一方で、利益率が低下しているが、「これは前期に利益率の高い大型案件があったためで、特に気にしてはいない」(寺田社長)とのことだ。
 

次に人材事業の状況が下のグラフだ。売上高は1億9900万円(同22.1%増)、セグメント利益は6000万円(同11.1%増)での着地となった。上場による知名度向上を活かし、登録者の拡大を推進したことなどが順調に成果として表れているといえよう。
 

最後のコンテンツ事業となるが、ここは売上高が9億2400万円(同18.8%減)、セグメント利益1億5800万円(同44.8%減)と減収減益に終わっている。新タイトルへの収益シフトの端境期であることが大きく、新作『WONDER BLOCKS』も2月26日リリースであり、「『WONDER BLOCKS』は数日分なので1Qに関しての影響は大きくない」(寺田社長)としていた。ちなみに『WONDER BLOCKS』はその後、50万DLを突破(関連記事)するなど順調な推移を見せているが、収益化には課題を残しているとのこと。これについては後ほどあらためて触れたい。
 
 

■通期見通しは売上高が前期比15%増、経常利益は7%増


さて、今度は2015年11月期通期の予想を見てみたい。下のグラフは2015年11月期予想も含めた4期分の連結業績推移となる。今期は積極的な投資を行うことで、売上高は前期比15%の伸びを見込むが、経常利益は7%の増益見込みとなっている。なお、この業績見通しの為替前提は1ドル=100円とのこと。参考までに記載しておくと第1四半期期間は、直近の為替推移の影響で差益が「5600万円影響した」(寺田社長)ともしていた。
 

また、第2四半期累計と2015年11月期通期の連結業績予想は以下の通り。質疑応答では、各セグメントごとの業績予想についての質問もあり、通期の売上高は「開発推進・支援事業が40億7900万円、コンテンツ事業が42億7200万円、人材事業が9億2500万円」(寺田社長)が会社計画となっているという。
 
 

■今期は第3四半期以降に2タイトルをリリースへ


同社の今期の重点戦略のうち、コンテンツ事業に関するものを続いてはまとめてみたい。まずは直近リリースのネイティブアプリの状況ということで、2014年9月に配信を開始した『刻のイシュタリア』は、今年に入って売り上げが減少傾向にあるが、コンテンツ投入などの施策による継続率の向上や、広告投下による新規ユーザーの獲得に注力しているという。

また、2月26日にリリースした新作『WONDER BLOCKS』は、同社として新しいユーザー層の開拓や新しいマネタイズの方法の確立を目指して開発したが、当初の想定以上に無課金で楽しめてしまうため、課金率に課題を抱えているもようだ。そのため、今後は各種施策を講じ、課金率の向上に取り組んでいくとしている。

さらに今期は『WONDER BLOCKS』以外にも2タイトルのリリースがほぼ確定したという。「2タイトルとも第3四半期以降のリリース」(寺田社長)のもようだ。
 

■新レンダリングエンジン「Mizuchi」は映画・建築業界から引き合いも


一方、開発推進・支援事業の重点戦略は、アドテクノロジーの展開に注力するほか、今夏発売予定のレンダリングエンジン「Mizuchi」の拡販に取り組んでいくとしている。「Mizuchi」は、既存製品のユーザーへのアプローチを中心に進めているが、映画・建築業界からも引き合いがあるという。

また、スマートフォン用ミドルウェア「PARADOX」は、高級言語であるC#を採用したゲーム開発用ミドルウェアとなるが、現在はオープンソースでの無償提供を行っており、「収益化は来年以降を見込む」(寺田社長)としていた。
 

■リアルタイム3D技術を活かしたスマホゲームの登場に期待


昨今のスマホ向けゲームの高度化を見ていると、同社のリアルタイム3D技術がスマホ向けゲームで活躍することは十分に考えられる状況といえよう。さらに欲を言えば、同社自体がそうした技術を活かしたタイトルをリリースすることができれば、コンテンツ事業の成長、リアルタイム3D技術の普及の両面でプラスの効果をもたらすことも期待できるのではないだろうか。
 
(編集部:柴田正之)
 
シリコンスタジオ株式会社
http://www.siliconstudio.co.jp

会社情報

会社名
シリコンスタジオ株式会社
設立
2000年1月
代表者
代表取締役社長 梶谷 眞一郎
決算期
11月
直近業績
売上高45億5400万円、営業利益2億3800万円、経常利益2億4600万円、最終利益2億円(2023年11月期)
上場区分
東証グロース
証券コード
3907
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