【モブキャスト決算説明会】赤字転落も『18』の初月売上は好調…韓国・中国で新作STGとサッカーゲームを開発中、海外ライセンスも新たな強みに

モブキャスト<3664>は5月14日、2015年12月期第1四半期(1Q、1-3月期)の連結決算を発表し、都内で決算説明会を開催した。売上高は8億4800万円(前年同期比23.3%減)、営業損益5000万円の赤字(前年同期1億6500万円の黒字)、経常損益5600万円の赤字(同1億4900万円の黒字)、四半期純利益5500万円の赤字(同1300万円の黒字)となった。

説明会で藪考樹社長は、ネイティブゲームへの先行投資により営業損失になったことを説明。また、「MD」のプロジェクト名で取り沙汰されていた新作アプリを2015年6月末~7月上旬リリース予定であること、さらには海外ラインセンスで売上拡大を目指すことも明らかにした。(以下、かぎ括弧内は藪社長の発言)

 

■2013年12月期4Q以来の赤字転落も、スムーズな“ネイティブシフト”を実現


業績を四半期別(QonQ)で見てみると、売上高はほぼ横ばいの3.0%の微減。1Qは、おもにネイティブゲーム『【18】』への先行投資により、営業損失となっている。前年同期(2014年1Q)では、売却したPCオンラインゲーム事業の売上(6400万円)や、子会社mobcast Koreaで閉鎖したPC及びブラウザゲームの売上(2800万円)と、併せて約1億円ほどが含まれていた。

費用の推移でも、前述しているように新作タイトル『【18】』のリリースに伴う減価償却費・外注費等が発生しており増加。次の展開に備えるため、新作のプロモーション及び人材採用等も積極的に実施したという。また、内訳ではブラウザゲームの売上がQonQで引き続き減少し、かつ『ドラゴンスピンZ』の売上がほとんどない状況のなかで、『【18】』が初月で大きく売上を出したとのこと。





1Qのハイライトとしては、当然ネイティブゲーム『【18】』のリリースが挙げられる。2015年3月12日にリリースされた本作は、ゲームクリエイターの水口哲也氏の監修のもと、『ルミネス』を手掛けたクリエイターが再集結して開発を行った思考型ジュエルパズルゲーム。3月末時点で約74万3000ダウンロード、App Storeのトップセールス(ゲームカテゴリー)で最高75位を記録した。「リリース直後から多くのユーザーに良い評価をいただけた」とコメント。

ブラウザゲームは、プラットフォーム「mobcast」の新規会員数獲得数が16万人となった。プロ野球が更新されることに伴い『モバプロ』では2015年版がリリース、『モバサカ』ではイタリアのサッカーチーム・ユヴェントスの配信が決まったほか、パートナーゲームは2タイトルが配信開始。

韓国では、日本から約2ヵ月遅れで『ドラゴンスピンZ』がリリースされ、日本版と同様に追加開発・改善を行っているという。また、韓国オリジナルタイトルの対戦型戦略シューティングゲーム『LST(仮)』の開発を1Qから開始し、4Qの10月頃に配信予定とのこと。海外ライセンスは、国際プロサッカー選手会(FIFPro)の権利を持つサッカーゲーム2タイトル、『ドラゴンスピンZ』、『【18】』などのライセンス交渉を本格的に展開中。1Qには6社よりオファーが来ている状況とのこと。

これまでの決算説明会でも伝えているように、同社の2014年はネイティブゲーム開発体制を確立させた“準備の年”となった。開発者もブラウザゲームなどを担当するプラットフォーム事業から、ネイティブゲーム事業へとスムーズな異動を行い、希望退職者を募ることなく“ネイティブシフト”を実現させた。




 

■「新作と海外ライセンスの売上拡大へ」…スマホ版『メテオス』の試案も


続いて2015年12月期第2四半期(2Q、4-6月期)の施策。現状、社内ではネイティブゲームを2タイトル開発中。不調の『ドラゴンスピンZ』は、KPI改善と運営体制が整う6月以降にプロモーションを計画しているという。
 

ユーザーから高い評価を得ている新作『【18】』は、リリース当初は7~8名だった運営体制を、20名体制に整えることができたようだ。今後は、売上拡大に向けたイベントやステージの追加、そしてダイバー(キャラクター)の大量投入を計画。「継続率は同社始まって以来の高KPIが出ている」と説明するも、「思った以上にユーザー様のやり込み度が高い」とコンテンツ消化の早さについても言及。

なお、今後における『【18】』の実施施策としては、「灰かぶりの姫」等の定期的な新ステージ・イベントステージの追加、「ロードピス」「マザーアリサ」等のイベントに合わせたキャラクターの開発とイベント/ガチャ投入、そしてゲリラダンジョンの追加(強化素材獲得) となっている。

4月30日には、大型アップデートとしてノーコンティニューステージ「月と太陽の狂宴」が追加、さらに5月末には第二弾大型アップデート、6月末には有名IPとのコラボを予定しているという。なかでも第二弾大型アップデートは、3月12日リリース後のKPIを見て、運営体制を強化した状態で準備してきた内容で「4月末の大型アップデートの比ではないほど大きな内容」とした。

プロモーションは、KPIを見極めたうえで「8月の夏商戦にテレビCMを含めた展開」などを積極的に実施していくとした。早い段階から代理店と相談しているとのことで、「世界観やパズルの気持ちよさをフォーカスした内容に」「テレビCMと連動した広告も準備」と説明。なお、現状で費用は3Qに発生する計画とのこと。

韓国では、『【18】』の日本版開発支援とローカライズを実施し、7月には韓国版が配信予定。海外ライセンスでは、『【18】』で香港・マカオ・台湾の強みを持つ中華圏大手パートナーと提携、新作サッカーゲームも世界展開に向けて中華圏の有力パートナーとの契約が完了しているという。このほか、『ドラゴンスピンZ』『【18】』などのIPをアジアグローバル展開に向けて、中華圏64社、東南アジア12社と交渉中。また、北米・欧州展開を6月のE3を皮切りに、営業を本格化するという。

なお、海外ライセンスは契約金として一時的な売上を先に取得し、それ以降はロイヤリティ収入が入ってくる仕組みとなっている。前述した『【18】』の中華圏配信、サッカーゲームの中国2タイトルは2Qで契約することで、契約金の売上を2Qに積まれて、以降はレベニューシェアの売上になっていくということだ。「2Qは新タイトルと海外ライセンスの売上拡大をどこまで伸ばせるか、モブキャストにとって重要なクォーター」と説明。
 

▲今期2Q以降の売上イメージ。ブラウザゲームの事業基盤のうえに、既存売上に加え、新作ネイティブゲーム売上及び 海外ライセンス売上が追加される計画。藪社長は「黄色・緑の売上を、できればブラウザゲーム以上の売上になるよう、今期努力していく」とした。

そして、2015年1月27日に水口哲也氏が設立したエンハンス・ゲームズと共同で、キューエンタテインメントが保有する『ルミネス』シリーズと、『メテオス』シリーズに関する知的財産権および全世界での販売権を取得し、目下開発中のスマートフォン版「ルミネス」と言える新作ゲーム(iOS版・Android版)については、「そろそろプロットができるかなというスケジュールで進めている」と現況を明かしてくれた。また、『メテオス』シリーズのスマホ版に関しても試案を検討中という。
 

▲PSP版『ルミネス』

これまで「MD」というプロジェクト名で呼ばれてきた新作タイトルが、今回の決算発表会で初めてタイトルとゲーム画面が公開された。タイトルは『爆走!モンスターダッシュ』(商標出願中)。同社の大ヒットタイトル『モバプロ』『モバサカ』を開発した国内の精鋭メンバーたちによる最新作である。

ジャンルは戦略を駆使して目の前の友達とリアルタイム対戦ができる戦略型対戦ゲーム。「これまでにない全く新しいマルチ対戦RPG。今期のモブキャストでは、一番力を入れているタイトル」と説明した。まだ具体的なゲーム概要は明かされていないが、2015年6月末~7月上旬にリリース予定。そのため本作の売上への寄与は3Q以降となる。
 

▲『爆走!モンスターダッシュ』※開発中の画面

なお、同社は、新規タイトルについての不確実性が高いことから、適正かつ合理的な数値の算出が困難であるとし、連結業績予想については開示していない。
 
(編集部 原孝則)


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株式会社モブキャストホールディングス
https://mobcast.co.jp/

会社情報

会社名
株式会社モブキャストホールディングス
設立
2004年3月
代表者
代表取締役CEO 藪 考樹
決算期
12月
直近業績
売上高33億7100万円、営業損益4億2800万円の赤字、経常損益4億3600万円の赤字、最終損益3億8000万円の赤字(2023年12月期)
上場区分
東証グロース
証券コード
3664
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