【大手ゲーム決算まとめ】6社中5社が営業増益 バンナム・コナミ・スクエニの好調目立つ スマホゲームが成長のカギ 異色は家庭用ゲーム好調のコーエーテクモ

2015年3月期の決算発表シーズンが終わったが、今回は、家庭用ゲームソフト大手6社の15年3月期決算をまとめておこう。まず、本業の儲けを示す営業利益が前年同期を上回ったのは6社中5社だった。

前の期(2014年3月期)で増益となったのは6社中4社だったことを考えると、全体的には良好な状況であったといえるだろう。唯一減益となったセガサミーHDも、ゲームを手がけるコンシューマ事業に限ると売上高が11%増の1117億円、営業利益が93%増の40億円と大幅な増益となった。アプリストアのランキングの上位占有状況から、大手ゲーム会社の強さが指摘されていたが、業績の面にも反映されている。

各社の業績は以下のとおり(持株会社は、社名から「ホールディングス」はHDとした)。

 
【大手ゲーム会社の業績比較】
(注1)コナミはSEC基準のため、経常利益はない。
(注2)前期比で%表記のないものは前期実績である。
(注3)各社決算資料より作成。


最も目立ったのは、営業利益が87%増と驚異的な伸びを達成したコナミだろう。前期の大幅減益の反動という側面もあるが、家庭用ゲームソフトの売り上げが低下したものの、「実況パワフルプロ野球」や「ワールドサッカーコレクション」シリーズをはじめとするモバイルゲームが堅調に推移したという。スポーツゲームに強い"コナミらしさ"がでたといってもいいだろう。

またスクウェア・エニックスHDも55%と大幅な増益を達成した。オンラインコンテンツ全般が好調で、HDゲームに匹敵する規模に成長した。『戦国IXA』や『ドラゴンクエストモンスターズ スーパーライト』が引き続き好調に推移したほか、『スクールガールストライカーズ』『ファイナルファンタジー レコードキーパー』『乖離性ミリオンアーサー』『ファイナルファンタジーXIV』と『ドラゴンクエストX』なども貢献した。

異色なのは、経営統合以来の過去最高業績を達成したコーエーテクモHDだ。こちらは他社と異なり、家庭用ゲームソフトが業績拡大をけん引した。オンラインコンテンツももちろん伸びたが、無双シリーズや「討鬼伝 極」「影牢 ~もう1人のプリンセス~」といったタイトルが好調だったという。



■バンダイナムコHDが他社を圧倒…売上高・営業利益の比較

続いて売上高と営業利益を比較してみよう。売上高・営業利益が飛び抜けて大きいのは、玩具事業なども持つバンダイナムコHDである。営業利益にいたっては2位以下の3倍以上の規模になっている。

 
【大手6社の売上高比較(単位:億円)】
 (注1)各社決算資料より作成。


【大手6社の営業利益比較(単位:億円)】
(注1)各社決算資料より作成。


さらにガンホー・オンライン・エンターテイメント<3765>、ミクシィ<2121>、コロプラ<3668>を追加したものが以下のグラフとなる(ガンホーとコロプラは、14年4月~15年3月期の数字を集計)。特にガンホーとミクシィは、売上高では首位のバンダイナムコHDには遠く及ばないものの、営業利益になるとガンホーが首位となり、ミクシィも肉薄したことがわかる。コロプラも営業利益ではバンダイナムコHD以外の5社を上回っている。

 
【大手6社+3社の売上高比較(単位:億円)】
 

【大手6社+3社の営業利益比較(単位:億円)】
(注1)各社決算資料より作成。
(注2)ガンホーOEとコロプラは、14年4月~15年3月の実績を集計した。



■スマートフォン・オンラインゲームは成長のけん引役に

大手ゲーム会社におけるオンラインゲームやスマートフォンアプリ、ソーシャルゲームの位置付けをあらためて確認したい。下の表は、6社のネットワークコンテンツの売上高と前の期からの変化率、会社全体の営業利益率を示したものとなる。なお、コナミは開示されていない。

これをみると、サンプルが少ないが、高い増益率を達成したスクウェア・エニックスHDのネットワークコンテンツの売上高が43%と高い成長率を示しているほか、バンダイナムコHDも20%を超える伸びだった。繰り返しになるが、2ケタの伸びとなったセガサミーも会社全体としては減益だが、ゲームソフトなどを手がけるコンシューマ事業は93%の大幅営業増益となった。ネットワークコンテンツの伸びが会社の好不調を左右するようになっている。例外はコーエーテクモHDで、売り上げの伸びは1ケタ台にとどまったものの、家庭用ゲームソフトが伸び、大幅な増益を達成した。

 
【大手ゲーム会社のネットワークコンテンツの売上高と会社全体の営業増益率】
(注1)各社決算資料より作成。コナミは非開示だった。情報開示の関係上、PCオンラインゲームが含まれているものもある。



■各社の状況(市場コード順)

各社の決算の状況を以下のようにまとめた。

(1)コーエーテクモホールディングス
売上高377億円(前の期比0.6%増)、営業利益96億円(同35.2%増)と経営統合以来の過去最高業績を達成した。無双シリーズや「討鬼伝 極」「影牢 ~もう1人のプリンセス~」といった主力家庭用ゲームソフトが業績拡大をけん引した。ダウンロードコンテンツなど利益率の高い商品が伸びたという。このほか、オンライン・モバイルコンテンツが安定的に伸びたほか、乙女ゲームと関連イベントの収益も大きく改善した。

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【コーエーテクモHDの四半期売上高の推移(億円)】



【コーエーテクモHDの四半期営業利益の推移(億円)】


(2)セガサミーホールディングス
売上高3549億2100万円(前の期比6.1%減)、営業利益176億900万円(同54.3%減)と減収減益だった。遊技機事業とアミューズメント機器・施設の不振が響いた格好だ。ただし、ゲームやアニメなどを手がけるコンシューマ事業に限ると、売上高が11%増の1117億円、営業利益が93%増の40億円と大幅な増益だった。『ファンタシースターオンライン2』や、『ぷよぷよ!!クエスト』『チェインクロニクル ~絆の新大陸~』などの主力タイトルのほか、『アンジュ・ヴィエルジュ ~第2風紀委員 ガールズバトル~』『サカつくシュート!』などの既存タイトルが業績拡大に寄与した。

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【セガサミーHDの四半期売上高の推移(億円)】



【セガサミーHDの四半期営業利益の推移(億円)】


(3)バンダイナムコHD
売上高5654億8600万円(前々期比11.4%増)、営業利益563億8300万円(同26.1%増)だった。国内のトイホビー事業において、新規IP商品や定番IP商品が好調に推移したほか、コンテンツ事業のネットワークコンテンツと映像音楽コンテンツ、欧米のゲームソフトが好調に推移した。モバイルゲームでは、ソーシャルゲームやスマートフォンアプリの主力タイトルが安定的に推移するとともに、『ONE PIECE トレジャークルーズ』『ドラゴンボールZ ドッカンバトル』などの新規タイトルが伸びた。

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【バンナムHDの四半期売上高の推移(億円)】



【バンナムHDの四半期営業利益の推移(億円)】

 


(4)スクウェア・エニックスHD
売上高1678億円(前の期比8.3%増)、営業利益164億円(同55.8%増)だった。アミューズメント事業が減収減益となったものの、ゲームソフトや出版、ライツ事業が好調だった。オンラインコンテンツ全般が好調で、HDゲームに匹敵する規模に成長した。『戦国IXA』や『ドラゴンクエストモンスターズ スーパーライト』が引き続き好調だったたほか、『スクールガールストライカーズ』『ファイナルファンタジー レコードキーパー』『乖離性ミリオンアーサー』が収益に寄与した。またMMORPG『ファイナルファンタジーXIV』と『ドラゴンクエストX』の運営も好調だった。

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【スクエニHDの四半期売上高の推移(億円)】



【スクエニHDの四半期営業利益の推移(億円)】


(5)カプコン
売上高642億7700万円(前々期比37.1%減)、営業利益105億8200万円(同2.7%増)と減収増益だった。パチスロ新型機の発売延期などに加え、前期に大ヒットした『モンスターハンター 4』の反動減も重なって、売上高は大幅な減収で着地したものの、ダウンロード販売による収益力アップや経費圧縮等の収益改善策が奏功した。モバイルコンテンツも『モンスターハンターポータブル2nd G for iOS』など、一部を除いてヒット作には恵まれなかったが、収益構造の再構築が奏功したことにより採算性は向上したという。アミューズメント施設とアミューズメント機器はいずれも大幅な減益だった。

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【カプコンの四半期売上高の推移(億円)】



【カプコンの四半期営業利益の推移(億円)】


(6)コナミ
売上高及び営業収益2181億円(前の期比0.3%増)、営業利益144億円(同87.8%増)だった。家庭用ゲームソフトの売り上げが低下したものの、「実況パワフルプロ野球」や「ワールドサッカーコレクション」シリーズをはじめとするモバイルゲームが堅調に推移した。主力のゲームソフト以外では、健康サービス事業や遊技機事業の収益改善も増益に寄与した。

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【コナミの四半期売上高の推移(億円)】



【コナミの四半期営業利益の推移(億円)】

 
(編集部 木村英彦)