【発表会】セガネットワークスは今期売上高527億円を目指す…「Noah Pass」は1億ユーザー突破、ユーザーが自由にイベントを作れる新機能も発表


セガゲームスは、2015年6月9日、都内で「セガネットワークス カンパニー メディアカンファレンス 2015 Summer」を開催し、同社の提供するマーケティング支援ツール「Noah Pass(ノア・パス)」の今後の戦略と新サービスについて発表した。

カンファレンスでは、はじめにセガゲームス 代表取締役社長 CEO 里見治紀氏が登壇し、現状のセガネットワークスにおける業績について説明。同社と言えば、2015年4月1日に大規模な組織再編が行われたことも記憶に新しい(関連記事)。

そして、直近の業績(2015年3月期)では、目立った新作タイトルはリリースされず、既存タイトルを引き続き運営していく形で、事業計画をやや下回る売上高284億円に着地したことを明らかにした。なお、利益は事業計画を上回った。

一方で、今期(2016年3月期)は売上高が前期の倍近い527億円にも及ぶことを説明。この予想に里見氏は「マーケットの競争が激化している昨今、中途半端なタイトルではヒットしないため、前期は作り込みを含めて仕込みの年でした。おかげさまで、今年は複数の新作タイトルが続々リリースされます」と、新作が売上に大きく寄与することを言及した。

確かに同社は、国内で『オルタンシアサーガ』(4月リリース)、『モンスターギア』(5月リリース)と2タイトル続けて好調な初速を記録している。同社では、『チェインクロニクル』や『ぷよぷよ!!クエスト』、『ガンダムコンクエスト』(提供:バンダイナムコエンターテインメント)などが、いわゆる月商5億円タイトルと呼ばれているが、新作2タイトルについても「しっかり5億円を超えるタイトルに育っていくと思う」と意気込みを語った。

また、同社は海外市場の展開にも余念がない。米国Demiurge Studiosの買収、Space Apeとの資本業務提携、直近では台湾のスマートデバイス向けゲーム会社のAuer社と業務資本提携も発表した。このようにグローバルでのタイトル開発・提供体制の強化拡大を推進していくと同時に、海外タイトルの売上寄与にも期待感を示し、提示した今期売上高527億円を目指していくとした。
 


【当日は新生セガグループのグループミッション映像も公開】


 

■「Noah Pass」のユーザー数とMAUがわずか1年で倍増に

 

続いて、セガゲームス セガネットワークス カンパニー COO 岩城農氏が登壇し、「Noah Pass」の現状、新サービス、収益化について発表した。

そもそも「Noah Pass」とは、アプリ間の相互広告・送客を主軸としたマーケティング支援ツールのこと。自社ゲーム内で他社ゲームの広告を掲載した場合、掲載回数と同じ回数を相手のゲーム内で掲載できる仕組みを持ち、かねてから「無料」「OPEN」「効果的」という3つのコンセプトで展開してきた。

はじめに「Noah Pass」に関する直近の数字についてを公開し、ユーザー数が1億349万(前年比215%)、MAUが1119万(前年比226%)と、わずか1年で倍増したこを明らかにした。また、海外企業との取り組みも増加しているとのことで、参加社数は100社、タイトル数は462に成長。
 

ただ数が増えただけではなく、その効果も非常に高い。バナー広告のCVR(コンバージョンレート)は他社のアドネットワークと比較して3倍、翌日の継続率も有料リワード広告と比較して3倍、そして投資効率では有料リワード広告を1としたときに、「Noah Pass」では8~32倍までの成果があることを説明。ちなみに実際に32倍の効果に繋がったのは、『チェインクロニクル』とのこと。
 

このように、高い効果を持つマーケティング支援ツールとして着々と成長していく「Noah Pass」。そして、今後はゲーム会社が本業に集中できる環境を実現するために、多種多様な新サービスを展開していく。
 
 

【新サービス①】多種多様な機能を拡張した「Dashboard」



ここからは、「Noah Pass」における新サービスについて発表。まず4月1日よりβ版を開始している、「Noah Pass」の機能を拡張した追加サービス「Dashboard」(ダッシュボード)について。同サービスは、各社が持つ内部ツールに加えて、「Noah Pass」が独自で行ってきたレポート・分析・サービスを組み合わせることで、効果的なマーケティング施策の一助になってくれるという。では、具体的に「Dashboard」で何が出来るのか。

■ユーザータイプ分析
市場(マクロ)、「Noah Pass」実装全タイトル、個別タイトルのタイプ分布を可視化できる。タイトルユーザーのタイプの偏りを知ることで、どのようなペルソナを持つユーザーに受け入れられているのかを把握できる。

■ユーザータイプ推移
ユーザータイプ分類の分布の推移を時系列で確認できる。プロダクトのライフサイクルを把握し、適切な各種施策を検討可能。たとえば、テレビCMのタイミングや、どのようなライフスタイルを持っているユーザー層に訴求していくかなど、具体的なフォーカスを整えることができるという。

■マーケット分析
メタップス社のデータ分析メニュー「Metaps Analytics」を取り入れ、各タイトルのストア上でのランキングの動向などマーケット分析が可能。ランキング推移のほか、説明文の独自性評価や男女比、レビューに書かれているテキストの出現率などを確認できる。

■インタレストランキング
ライフスタイルタイプ別の「興味・関心」をTwitterのつぶやきの内容からランキング化するサービス。たとえば、ライフスタイルタイプを選択すると各ユーザータイプの接触している番組、雑誌、食べ物、飲み物をランキング形式で表示する。定期的に更新し、様々なランキングを提示していく予定。

■ゲームスタイル研究所
このほかスマホゲーム市場及びスマホでゲームをプレイする人にフォーカスし、生活実態や価値観を徹底調査を行い、解体新書のアップデート、リサーチブログ、リサーチレポートを展開。

 

ここで実際に「Dashboard」を用いた事例を紹介してくれた。タイトルは『サカつくシュート!』。同作では、予算が限られていたため、効率的に優良ユーザーを獲得したい背景があった。そこで「Dashboard」を活用し、まずはユーザー分布を確認し、さらに各タイプでの市場分析と該当タイトルの分布を比較して、”タイトルが好まれている”傾向を分析。また、独自レポートなどを参考に仮設を設定し、狙うユーザータイプにフォーカスして広告を出稿した。その結果、同時に実施していた広告と比較して、コスト-34%、回収率1.8倍、継続率1.17倍という成果を収めた。

「Dashboard」は、6月9日より「Noah Pass」参加企業各社に案内を開始(※ユーザータイプ分類サービスは6月10より受付開始)。そして、7月1日より「Dashboard」を正式リリース(※ユーザータイプ分類閲覧はタイトルごとに順次対応)。8月には広告ID連携出稿機能も提供開始。なお、「Dashboard」は、「Noah Pass」参加パートナーであれば無料で提供するという。

 

【新サービス②】ユーザー自らがゲームイベントを簡単に開催できる「PARTY」 



ふたつ目の新サービスは、前述した「Dashboard」とは打って変わって、スマホゲームの新しい遊び方の提案について。「キーワードは当たり前のことをちゃんとやる」と前置きした岩城氏は、友だち/家族を誘って自身でオリジナルのイベントを簡単に開催できるサービス「PARTY」(SDK)を発表した。
 

ユーザーは、「PARTY」でイベントのルールを設定し、友だちを誘い、時間を決めて、実際にイベントを開催出来るという。ランキングで友だちや家族と競うことができるほか、ゲーム内インセンティブの付与も可能。とはいえ、岩城氏は「ユーザーは報酬が目的ではなく、勝った・負けた、あるいは嬉しい・悔しいの体験を何回も楽しむことができるのがポイント」と言葉を添えた。
 

コミュニケーションの活性化に繋がるだけではなく、「PARTY」は場所と時間を問わず様々な用途で利用できるのも特徴。たとえば、学生はわずかな休み時間の10分間、旅行者は新幹線に乗車している2時間など、それら暇を持て余した時間に対して、適度なイベントを開催することができるのだ。岩城氏は「PARTY」を導入して、継続率・新規流入集の増加に貢献していくとした。

「PARTY」は今秋よりサービス開始(複数有力IPタイトルを投下予定)。以下、「PARTY」の概要。

【簡単導入】
・実装形式はSDK形式
・デザイン変更も可能

【トラフィック活用】
・「Noah Pass」ユーザープールを有効活用
・メールアドレスでのログインによりアプリ横断で利用可能

【無料提供】
・初期費用無料
・月額費用無料

 

■「Noah Pass」収益化 広告流通規模約100億円への成長を見込む



最後に「Noah Pass」の収益化について説明。岩城氏は、収益化にあたり「広告収益化のモデルの導入」、「掲載広告はNoah Passエコシステムを崩さないゲーム以外のみ」、「獲得した広告収益はNoah Pass参加企業へ分配」と3つの前提事項を挙げた。そのうえで提示した販売するメニューは、「Noah Pass」に参加している各ゲーム画面上に表示されるバナー広告と、来店連動型広告(O2O広告)の2種類。バナー広告では、「Noah Pass」新機能上の広告枠として販売。
 

また、異業種の企業にも「Noah Pass」の広告枠を活用してもらうために、主要メディアとの連携数が日本最大級を誇るアドテクノロジー事業「F.O.X」(提供:CyberZ)や、スマホ向け広告効果測定システム「PartyTrack」(提供:アドウェイズ)と連携したことも発表した。


ここで、株式会社サイバーエージェントの執行役員 インターネット広告事業本部 統括 伊達学氏が登壇。今回の取り組みについて「「F.O.X」の技術力はもとより、サイバーエージェント社が保有する広告の営業力で、「Noah Pass」を猛進させていただきます」と語ってくれた。

また、岩城氏はO2O広告により収益化を加速していくことも明らかにした。過去の事例として、『ぷよぷよ!!クエスト』×「ケンタッキーフライドチキン」とのコラボ企画では、1000円程のセットが約2週間で数十万個売れた成果を紹介。岩城氏は「ゲームにおけるトラフィックと、そこにインセンティブをつけてお客様に紹介する仕組みは、すでに成功が証明されています。そのため、これから異業種様と繋がれる環境を作っていく」とO2O事業の立ち上げ経緯を語った。

具体的には、GMOコマースのサービス「GMOチェックイン」と連動し、ゲームアプリからの店舗送客を展開。
 

今回の取り組みについて、GMOコマース株式会社 代表取締役社長 山名正人氏が登壇し、意気込みを語ってくれた。

山名氏は「「Noah Pass」のユーザーがご満足いただけるよう、我々も今後チェックイン店舗を1万店舗に拡大していきます。生活に密着していくことで、各アプリ事業社はアクティブユーザー数の向上、店舗側は新規顧客の囲い込み、ユーザー様はアイテムを獲得といったように、誰もがハッピーになれるサービスを展開していきます」とコメント。

「Noah Pass」新機能上の広告枠は秋以降、「Noah Pass」フィーチャー枠は8月、そしてO2O広告は10月の導入を予定している。

岩城氏は、販売開始後約1年間で広告流通規模100億円への成長を見込んでおり、ここでの収益は広告掲載面を提供する「Noah Pass」参加アプリの運営会社間で分配していくことも発表した。また、連携する広告影響範囲では最高300億円にものぼるとのことだ。
 

 
(取材・文:編集部  原孝則)


■セガネットワークス
 

©SEGA
株式会社セガ
https://www.sega.co.jp/

会社情報

会社名
株式会社セガ
設立
1960年6月
代表者
代表取締役会長CEO 里見 治紀/代表取締役社長執行役員COO 内海 州史/代表取締役副社長執行役員Co-COO 杉野 行雄
決算期
3月
直近業績
売上高1916億7800万円、営業利益175億3900万円、経常利益171億9000万円、最終利益114億8800万円(2023年3月期)
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