【グリー決算説明会】15年4~6月期は減収・最終赤字 『消滅都市』中心に国内ネイティブ伸長も海外事業が低迷 海外の開発・運用体制を見直しへ


グリー<3632>は、8月5日、2015年6月通期の決算を発表するとともに、東京都内のグリー本社でメディア向けの決算説明会を開催した。同社の発表した第4四半期(2015年4~6月期)の連結決算をみると、売上高209億円(前四半期比[QonQ]10.7%減)、営業利益202億円(同7.0%減)、経常利益250億円(同0.8%増)、最終損益78億円の赤字(前四半期16億円の黒字)となり、最終赤字転落となった。2012年5月に子会社を通じて買収したFunzioに係る無形固定資産(のれん等)の減損損失を計上したことが主な要因だった。
 

​主力のゲーム事業は、ブラウザゲームと海外ネイティブゲームのコイン消費が減少したものの、国内ネイティブゲームのコイン消費が反転した。国内ネイティブゲームの伸びは、旗艦タイトル『消滅都市』(提供Wright Flyer Studios)が引き続き伸びたことが主な要因だ。コイン消費は第1四半期との比較で7.6倍の規模に成長した。全体的に厳しさのにじむ決算だったが、明るい材料も出てきた。

決算説明会に臨んだ田中良和社長(写真)は、「イベントやゲーム内容の改善など運用を通じて売上を伸ばすという当社の強みを活かすことができた」と述べた。また『LINEタワーライジング』も好調な立ち上がりだったという。「『LINEタワーライジング』は、リリース後の7日後継続率などKPIは『消滅都市』のリリース時よりも良好。『消滅都市』のように、運用ノウハウを駆使して売上を5倍、10倍に成長させたい」と意気込みを示した。
 


 
■4~6月期は北米事業低迷で最終赤字に

さて、第4四半期の状況を詳しく見ていこう。まず、売上高はQonQで10.7%減の209億円だった。主力のゲーム事業でのコイン消費の落ち込みが主な要因だ。全体の67%を占めるブラウザゲームでは、フィーチャーフォンが同19.1%減の59億コイン、スマートフォンが同9.7%減の130億円と引き続き減少した。さらに海外のネイティブアプリも同17.3%減の43億コインとそれぞれ減少した。『消滅都市』を中心とする国内ネイティブアプリが同6.8%の47億コインと第3四半期の水準に戻したが、全体の減収をカバーするに至らなかった。
 


本業の儲けを示す営業利益は同7.0%減の202億円だった。売上高の減少が主な要因だ。費用面では、広告宣伝費を3.2億円減の17.3億円に、人件費を1.4億円減の47.5億円にそれぞれ減らしたほか、減価償却費とのれんの償却費もそれぞれ減少し、営業利益の減少は7億円にとどまったという。もっとも減価償却費と、のれん償却費の減少は、最終赤字の要因となったFunzioの"のれん"の減損に伴うものである。他方、賃借料が増加したが、サーバー費用削減に向けた先行投資を行った結果で、一時的なものだそうだ。
 


最終損益は、78億円の赤字となった。2012年5月に子会社を通じて買収したFunzioに係る無形固定資産(のれんなど)の減損損失144億円を計上したことや、投資有価証券の評価減、固定資産の除却などを実施したことによる。Funzioは、既存タイトルの低迷に加え、新規タイトルの開発を中止したことから、将来のキャッシュ・フローによる回収可能性が認められないと判断したようだ。ただ、欧米市場から撤退するわけではなく、引き続き注力する考え。「北米と欧州のモバイルゲーム市場は成長が見込めるため、事業再構築を通じて収支回復と再成長への投資を行い、北米事業の再成長を図る」とのこと。
 


会場からは北米での低迷の理由について質問があった。取締役 執行役員常務の青柳直樹氏は、現地スタッフの離脱により、運用の水準が下がったためと説明した。シリコンバレーのスタートアップへの転職が相次いだという。外部からのメンバーの採用と日本のスタッフが運用に参加することで、人員の補充は完了し、足元は回復しているという。新作の開発中止も人員の離脱が原因だったことを明かした。「人件費の高騰するシリコンバレーで長期間のアプリ開発は難しい。安定的に人員を確保できるメルボルン(注:買収したtwiitch)や東京などで開発を行いたい」(青柳氏)。
 


 
■第2四半期は減収減益の見通し ネイティブゲームは15本開発する計画

続く2016年6月期の第2四半期累計(7~12月)の連結決算は、売上高365億円(前年同期比26.3%減)、営業利益60億円(同46.0%減)、経常利益60億円(同60.2%減)、四半期純利益35億円(前年同期42億円の赤字)と、減収・減益を見込む。今回、2016年6月通期の業績予想は開示されなかった。
 

注力中のネイティブゲームの新作については、国内と海外でそれぞれ3本リリースする計画。そのうち、国内が内製で1本、協業で2本、海外では内製で1本、協業で2本制作する。下期は国内で7本、海外で2本リリースする予定で、年間を通じて15本リリースする計画だ。

既存タイトルは、主力の『消滅都市』を引き続き伸ばしていくとともに、『LINEタワーライジング』に注力する。『LINEタワーライジング』は、7日後継続率など各種KPIで『消滅都市』よりも良好なスタートとなっていることから、ゲーム内容の改善やイベントなどの施策を実施し、売上拡大を目指していく。
 

また、ポケラボとセガゲームスの『ポイッとヒーロー』と、Wright Flyer Studios『パズクエ』については、それぞれアプリの改善を行っているという。『ポイッとヒーロー』は、リリース後、3度のアップデートで7日後継続率がリリース時に比べて30%強の改善となっており、今夏には大型アップデートを実施し、新規ユーザーの拡大に取り組む。他方、『パズクエ』もKPIの改善に向けた施策を行っており、今夏には売上拡大に向けた施策を導入する予定だ。
 
 
▲ネット資金は542億円から764億円に、自己資本比率は76%から81%に上昇するなど財務基盤の強化が進んだ。
 
▲新しい事業領域である「リノコ」の4Q売上高が1.5倍、「Lespas」も加盟スタジオが300店舗を突破した。


また、会場からは業績予想は保守的ではとの質問がでた。田中社長は、「国内のネイティブアプリは反転している。海外ネイティブ部門も下がっているので早期に反転させ、ブラウザゲームの減衰をカバーして伸ばしていきたい。年度内に実現したいが、次の四半期で反転させることが目標だ。」と述べた。


 
■日本の運用スタッフが海外ゲームアプリの運用に参加

海外事業については、新しい取り組みを行っていく。北米でヒットしている『War of Nations』の次世代版を年内にリリースする計画だ。さらに、オーストラリア・メルボルンに拠点を置くゲーム開発会社twiitchを子会社化し、開発力の強化も進めた。twiitchは、『KartWorld』や『Heroes of War: Orcs vs Knights』といったミッドコアゲームの開発を行っている会社で、今後、海外で展開するゲームアプリの開発の一翼を担う。
 

もうひとつ興味深い試みとして、日本のブラウザゲームの運用チームが北米版ゲームアプリの運用にも携わることも明らかになった。円安とシリコンバレーの人件費高騰に対応したもので、東京の拠点から北米など海外で展開するゲームの運用を行うことで、人件費削減と運用力向上を図ることが目的だ。なお、必要なときに海外の拠点に出張するもので、チームを北米に移転させるものではないとのこと。

このほか、ネイティブゲームの中国展開にも注力する。『NARUTO-ナルト-』を題材にしたスマートフォンゲーム『火影忍者』はパートナーと連携して、マーケティング展開を行っているほか、『クロスサマナー』もApp Storeの売上ランキングで上位に入ったそうだ。またすでにアナウンスのあったように『消滅都市』も今秋、「上海東方明珠迪爾希文化伝媒有限公司」(OPD2C)と組み今秋にも配信する予定。
 
 
(編集部 木村英彦)
グリー株式会社
http://www.gree.co.jp/

会社情報

会社名
グリー株式会社
設立
2004年12月
代表者
代表取締役会長兼社長 田中 良和
決算期
6月
直近業績
売上高754億4000万円、営業利益124億9800万円、経常利益130億8600万円、最終利益92億7800万円(2023年6月期)
上場区分
東証プライム
証券コード
3632
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