【DeNA決算説明会】7~9月期は営業益64%増を計画 日中でIPタイトル投入し垂直立ち上げを狙う 任天堂との協業第1弾は年内リリース予定

ディー・エヌ・エー(DeNA)<2432>は、8月7日、2016年3月期の第1四半期(4~6月期)の決算(IFRS)を発表するとともに、東京都内にあるDeNA本社でアナリスト・機関投資家向けの決算説明会を開催した。

決算説明会に臨んだ守安功社長(写真)は、「売上高に注目してほしい。QonQでの増収は、前四半期で実現したが、前年同期との比較では久しぶり、 というか、ようやく増収に転じた。これが一番明るいニュースだ。」と述べた。ブラウザゲームの下落は続いたが、『ファイナルファンタジーレコードキーパー』のヒットに加え、手堅くヒットタイトルを積み上げるなどネイティブアプリでの開発・運用力も高まっている。そして、「ブラウザゲームで培った運用ノウハウがネイティブアプリでも通用することがわかった」という。また、一部で懸念されていた任天堂<7974>との共同タイトル第1弾も年内に提供する予定であることもあらためて明言した。

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■第2四半期はQonQで増収・減益

発表した連結決算は、売上収益が前四半期比(QonQ)で4%増の377億円、営業利益が同13%減の40億円となり、2四半期連続の増収・減益となった。

まず、主力のゲーム事業では、アプリマーケット経由のコイン消費が伸びたものの、ブラウザゲームのコイン消費の減少を補うことができず、引き続き減収基調 が続き、売上収益が5%減の283億円となった。ただ、スポーツ事業の売上収益が前四半期比411%増の37億円に伸びたことに伴い、全体として増収を確 保した。プロ野球シーズンが開幕し、横浜DeNAベイスターズの収益が寄与したものとみられる。
 

また、費用面では、費用対効果を勘案したコストコントロールを行い、販促費・広告費が同36%減の25億円に減らしたものの、DeNA WESTでの体制変更やポートフォリオの見直しに伴う費用として、27億円が発生したことが発生したことが響いた。この費用は一時的なもので、次の四半期 ではなくなる見通しだ。
 


 
■DeNA WESTの一時費用で減益に ベイスターズも寄与

セグメントを見る前に、セグメント変更を確認しておこう。これまでゲームやエンタメ分野をまとめてソーシャルメディア事業としてきたが、エブリスタやSHOWROOMといったエンタメ分野が「新規事業・その他」に移管される一方、ゲームが独立したセグメントとなった。また「その他」にあった野球なども「スポーツ事業」に変更した。

まず、主力のゲーム事業をみると、コイン消費は、ブラウザゲームの減少が続き、スマートフォンが9.9%減の209億円、フィーチャーフォンが12.2%減の43億円となった。スマートフォンアプリに関しては、国内は4.4%増の94億円と伸びたものの、前の四半期で大きく伸びた中国が25.6%減の29億コインと落ち込み、ブラウザゲームの減少を補えなかった。
 

会場からは中国で落ち込んだ原因についての質問が出た。守安社長は「『航海王 啓航(ワンピース)』がリリース後、売上がいったん落ち着くと想定し、第1四半期中にアップデートを行い、それに合わせてマーケティングを積極化し再度、売上を伸ばすプランだった。しかし、想定よりも売上が落ちたことに加え、中国はプラットフォーマーが多くSDK対応など技術的に手間取った部分があり、アップデート後の利用活性化が想定には届かなかった。期初想定比でコイン消費が弱含んだ。ただ、マーケティング費用を抑制する判断も行った」と回答した。

EC事業は、売上収益が3.8%減の50億円とほぼ横ばいだった。ショッピングとトラベルでの取扱高が順調に成長したという。ショッピングでは、注力分野である食品・日用品がけん引した。
 


 
■日中はIPタイトルで垂直立ち上げを狙う 『スーパーガンダムロワイヤル』に注目

同社が今後の成長イメージとして示したのが、下のグラフだ。国内既存(ゲーム・EC)事業の安定した推移の上に、海外ゲーム事業の収支改善、任天堂との協業などによる上乗せ、そして新事業育成による新たな柱の創出で利益を上乗せしていくというビジョンになっている。
 

まず、国内ゲーム事業では、「ブラウザゲームの減少傾向は避けられない」としながら、収益貢献するアプリを積み上げて、安定した利益を生み出す構造を目指していく考えだ。『ファイナルファンタジーレコードキーパー』などヒットタイトルを伸ばしていく一方、自社オリジナルタイトルからもヒットタイトル創出を目指す。

オリジナルタイトル『戦魂-SENTAMA-』は、5月のGW明けにリリースされたが、「垂直的な立ち上がり」こそないものの、順調に伸びているという。「7月中旬からマーケティングを開始した。リターンレート、継続率が高い。App Storeで最高25位で、50位前後で安定している。運用面で強化することで継続的に上げていくことが可能だ。」とコメントした。

また、複数の有力IPタイトルも育てていく。そのひとつがバンダイナムコエンターテインメントとの協業タイトル『スーパーガンダムロワイヤル』となる。すでにAndroid版ではオープンβテストを開始したという。「『ガンダムロワイヤル』や『ガンダムカードコレクション』などガンダムIPを扱って大きく育ててきたので、期待している。有力IPタイトルなので垂直立ち上げを狙う。」と述べた。
 

続いて守安氏は、日本のアプリストアの売上ランキングと、独自調査した売上の変遷を示しながら、市場拡大に伴い、50~100位で月商1.5~2億円の売上を出せるようになっていると指摘した。
 

また、AppAnnieのまとめたApp Storeのアプリディベロッパー別の売上ランキングの推移を示し、DeNAがTOP10に入れるようになったとコメントした。「TOP10には大きな変動はみられないが、2年前からスマートフォンネイティブアプリへの取り組みを強化しはじめ、TOP10に入れるようになった。トップディベロッパーへの仲間入りができた」という。
 

これを可能にしたのはアプリの積み重ねだ。開発面では『D.O.T.』や『三国ロワイヤル』、『FFレコードキーパー』、『キングダム』、『戦魂』などアプリの成功事例の技術ベースや開発ノウハウを引き継いで洗練させることで、開発力の引き上げを図ってきた。「マップやクエストなど開発・運営のノウハウを活かして開発ができている。アセット面・ノウハウ面で積み上がってきた。」という。

また、リリース後の運用については、「ブラウザ面で培ってきた運用面での強みがアプリでも使えることがわかった。長期安定して売上が維持・伸ばすことができる。アプリを積み上げられる体制になってきた。」とのこと。さらに「有力IPタイトルのパイプラインは中期的にも豊富に提供できるため、この強みを活かして、売上・利益を積み上げていきたい。」と述べた。
 

海外については、DeNA WESTでの体制面の見直し・ポートフォリオの見直しで、収益が改善した。一時費用を除くと、欧米での営業赤字は15億円から4億円に減少した。中国は『航海王 啓航(ワンピース)』を中心に想定よりも落ち幅が大きかったものの、マーケティングを抑えたので、赤字は横ばいにとどまった。
 

今後の中国市場の展開については、海外の有力IPを活用したタイトル展開を図っていく考え。守安社長は「IPタイトルを使った垂直立ち上げができているものの、中長期の貢献には課題を残している。アップデートとマーケティングの連携など改善が必要」とコメントした。また『トランスフォーマー』や『ガンダムカードコレクション』『フェアリーテイル』『銀球』など中国国内で知名度があり、ゲーム化しやすいタイトルを随時投入していく考え。「トップラインを伸ばし、構造的に中国事業で利益を出せるようにしていく」。
 


 
■任天堂との協業第1弾は年内にリリース予定

任天堂と協業で開発しているスマートデバイス向けゲームアプリについて当初の予定通り、年内に第1弾のリリースを目指すことを強調した。守安氏は(声をつまらせながら)「(任天堂の)岩田社長の訃報を受けて、耳を疑った。3月17日に一緒に記者発表を行い、これからやっていこうというところだった。さぞかし無念だったのではないかと思う。岩田社長の思いを実現し、任天堂との協業で絶対に成果をあげていきたい。」と述べた。

現在の進捗状況については、「利用するIPや足元の開発状況は公開できないが、両社とも精鋭をあてて開発を進めており、特に混乱もなく順調に進捗している。中期的には、2016年度末までに5本程度を展開する予定だ。来期から収益貢献できるようにグローバルでのトップレベルのゲームを提供していきたい」と意気込みを示した。
 

新規事業は、個別の具体的なサービスは記載していないが、規模感としては、セグメントとして、四半期で10億円程度の赤字が出ており、今後もこの規模の赤字が続く見通し。このなかで、ユーザーベースを拡大して収益化を進め、2017年度には、注力中のいくつかのサービスが利益貢献してくるのではないか、との見方を示した。
 


 
■第2四半期は大幅な営業増益を見込む

第2四半期(7~9月期)は、売上収益が前四半期比2.5%減の377億円、営業利益が同64.5%増の65億円、最終利益が同112.3%増の64億円と大幅な増益を見込む。

国内のコイン消費は、ブラウザが緩やかな減少が続き、それをアプリが補う形となり、横ばいを見込む。海外は若干の減少を奏しているという。ただ、「DeNA BtoB market」の売却益を計上するほか、前の四半期に計上されたDeNA WESTの一時費用が計上されないため、大幅な増益が見込まれるという。また、国内と中国中心にマーケティングを積極化するため、販促費・広告費は10億円増やす。
 


 
(編集部 木村英彦)
株式会社ディー・エヌ・エー(DeNA)
https://dena.com/jp/

会社情報

会社名
株式会社ディー・エヌ・エー(DeNA)
設立
1999年3月
代表者
代表取締役会長 南場 智子/代表取締役社長兼CEO 岡村 信悟
決算期
3月
直近業績
売上収益1349億1400万円、営業利益42億0200万円、税引前利益135億9500万円、最終利益88億5700万円(2023年3月期)
上場区分
東証プライム
証券コード
2432
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