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【上期総括】「エンタメは即死するもの」「荒唐無稽な破壊が必要」…スマホゲーム黎明期から開発を続ける元スクエニの安藤武博氏に訊く市場の今後

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スマートフォンアプリ業界に身を置く方々に話を伺い、2015年上期の市場動向と下期のトレンドを読み解く特別企画「ゲームアプリ市場のキーマンに訊く2015年上期振り返り」。

今回は、当媒体の連載記事「安藤・岩野の「これからこうなる!」」(関連記事)でもお馴染み、元スクウェア・エニックスの安藤武博氏にインタビューを実施。ゲームアプリ市場を黎明期から見つめてきた同氏より、これまでとこれからの流れについて話を伺ってきた。

 

■スマホゲーム黎明期から開発を続ける安藤氏に訊く「これまでの市場」


元・スクウェア・エニックス部長
現・ゲームDJ
安藤 武博 氏
 


――:本日はよろしくお願いいたします。インタビューに入る前に確認なのですが……スクウェア・エニックスをご退社されるのですね(インタビューを実施した6月末はまだ在籍)。

はい。オフィシャルにスクエニをやめる話をするのは、これがはじめてかもしれませんね。現在はもろもろの引継ぎが無事終わって、有給消化中です(笑)。あと少ししたら自分の会社をつくって新しいチャレンジをはじめます。きちんと社長とも話しして決めた円満退社ですよ(笑)。会社には、これからやりたいことにもすごく理解をしめしてもらって、あらためていい会社にいたなあ。とスクエニのすごさを実感しているところです。


――:ええ(笑)。すでに連載記事(関連記事)でもご退社の理由にも触れていますが、「新しいブレイクスルーを見つけないと今後死ぬ可能性が高い」とおっしゃっていましたね。

ゲーム業界は本当に多くのライバルがいます。むしろゲームだけではなく、人間の遊ぶ時間を奪い合うという意味で言えば、漫画を読んだり、動画を見たり、リアルイベントに参加したりと、そのほかのエンターテイメントがライバルだったりもします。

そう考えたとき、恐らくゲームだけを作っていたら、大きなブレイクスルーが起きないのではないかと思いました。それが何なのかは明快に見つかっていないので全力で探さないといけないのですが、相当新しいものでなければ突破口はありえないので、暴れる必要があります。

ですが、会社に所属したまま外で好き勝手に振舞ってしまったら、スクエニの企業というブランドにも傷をつけてしまいます。そういう意味でも、一度外にエネルギーを出してしまったほうがゲーム作りにも良いだろうし、なおかつ個人の力を強めることもできると考え、退職して起業することにしました。



――:なるほど。すぐにでも突っ込んだところをお聞きしたいですが、そこは2015年下期の展望の際に具体的な事業展開なども含めて詳しくお伺いさせていただきます。……では、ここからは2015年上期のゲームアプリ市場の話題に移りたいと思います。当媒体では、安藤さんのインタビューは今回が初めてですので、上期とは言わず、まずはゲームアプリ市場の黎明期からさかのぼっていただくほうが良いかもしれませんね。
 
じつはスマートフォンのゲームを作り初めて、2015年の末で丸7年経つんですよ。2008年12月23日に最初の作品『クリスタル・ディフェンダーズ』をリリースしたので、まだiPhoneという端末が世に出てきたその年にゲームを作っていたこともあり、世界的に見てもスマホのゲームクリエイターとしては構造上、最古参になります

そもそもスマートフォンのゲームって、2008年どころか、2010年の暮れまで本当にマニアックなものでした。「所詮、携帯電話のゲームだし」「普通にゲームなんて遊べないよね」と、ネガティブな意見もあったなかでしたが、当時はそこに真っ向から勝負を挑んで行きました。



――:それが実際にいまとなっては……。

完全なメジャーとなりました。これまでのゲーム市場は、よく「どのハードが覇権を握るのだろうか」と取り沙汰されていましたよね。当時の携帯電話のゲームは、コンシューマのスピンオフ的なタイトルとして存在することがほとんどでしたから、主従が代わったり並び立ったりすることはありえなかったと思います。いま振り返っても、スマートフォンのゲームが台頭するということは、本当に数十年続くゲームの歴史のなかでも革命的なことだったと思います。


――:周囲が「スマホゲームなんて…」と言っている当時でも、安藤さんご自身は開発を続けていったと思います。やはりそれは、今後スマートフォンのゲームが人気を博すと予想していたからですよね。

そうです。ただ、ここまで大きな規模になるとは予想もつかなかったですし、ちょっと功罪があるとも思っています。


――:功罪……ですか。

まず「功」としては、ゲームの産業自体が押し上げられたことが挙げられます。そもそものビジネススキームは、課金率100%という天井がある5800円~8800円のパッケージ販売から、課金率は10%も満たないですが天井知らずの現在のデザインとなりました。一方、そうなったところで、ファンがそのまま増えたという計算は成り立たたないため、そこに「罪」があると思うわけです。


――:盛り上がっているように見えて、思っているほどユーザー自身がゲームに付いてきていないと。

そもそもスマートフォンのゲームに、本当のファンって果たしてどれだけいるんでしょうね。

「欲しいから、好きだから全額払って買う」というパッケージゲームを購入する方に対して、「ゲームは遊ぶけどお金払うまでは…」という課金率10%ほどのスマートフォンゲームのお客様。

たしかに市場全体で売上規模は拡大しましたが、じゃあファンが作品を愛する気持ちってどこにあるの……ということです。そういう意味では、スマホゲームが文化としてエンターテインメントとして根付いているとはまだ言い難い。「やったー儲かったー」と浮ついていると、あっという間に飽きられてしまいます。



――:すると、今後スマホゲームはコンシューマゲームに並ぶほどのIPに育てていく必要がある、ということですね。

はい、絶対に求められます。「無理」とかではなくて、それをやらないとまずいんですよ。何故なら産業構造的に、超伸びるものは、超すぐ終わるのですから。


――:はい(笑)。

みなさんもご存知かと思いますが、まさにソーシャルゲームバブルのときもそうだったと思います。エンターテインメントは「一本当たったら何とかやっていけるよね」ということには決してなりません。一本当てたとしても、いつ即死してもおかしくないことを理解することが大事です。つねに即死することを自覚しながら、次の種まきをしなければならないのが、いま、2015年上半期が終わった、このタイミングです。

 

■荒唐無稽で「気が狂ったのでは?」と思われる破壊行動が必要


――:「IPを育てていく」…こちらについて安藤さんのご見解を、もう少し教えていただけますか。

お客様はお金を払っているだけではなく、ゲームに対して時間や体力も割いていただいています。だからこそ我々は、きちんと面白さやワクワクを提供していき、タイトルを好きになってもらわなければなりません。

マネタイズの仕組みで、一時(いっとき)の感情を揺さぶり、カタルシスみたいなものを演出することはできます。カタルシスの部分は否定しませんが、やはりそればかりに目を向けていると結局ユーザーは離れてしまいます。しかし、愛情はずっと続きます。

スクエニの柱となっているパッケージゲームが現在まで続けてこられているのは、ファンの皆様からの愛情以外の何物でもないです。それに支えられているからこそ、今日(こんにち)があるのです。一方で、我々が手掛けている2年~3年ほどのタイトルには、好きになってもらう活動が全然足りていないと思っています。気付いている方たちは、積極的にイベントを行うなど、お客様との距離を縮めるような施策を行っています。



――:ちなみに、 2015年上半期で印象に残っているゲームアプリはありますか。

『メビウスファイナルファンタジー』です。
 
 

スマホゲームって、あまり技術に挑戦できなかったり「そもそもリッチなものって求められるの?」であったり、様々な議論の対象だと思います。それを『メビウス』が実際にスマホゲームで実現してしまった。クリエイターとしては選択肢が増えたのかもしれませんが、一方でパンドラの箱でもあります。


――:パンドラの箱ですか。

はい。あれ、過去スクウェアから続く、要所要所で切ってくるジョーカーみたいな存在です(笑)。


――:(笑)。まあたしかに、周囲を巻き込む大きなタイミングでもありますよね。

「いよいよ、こういう戦いが始まったのか」と一気に土壌を変えていく力があるからこそですよね。ただ「そこまでお金をかけないと勝負できないのか…」という議論もあるかと思いますが、そこはアイデアの見せ所かなと思います。これから大手が有利だと言われていますけど、大手は大手で辛いでしょう。競争率が高いスマホゲーム市場において、さらに高騰した制作費のなかでクオリティの高いゲーム開発が求められていく……大手も中小も厳しい状況になっています。


――:とはいえ、『メビウス』のようなリッチなRPGが人気を博す一方で、まだまだ“スマートフォンならではのゲーム性”についても期待できるのではないでしょうか。

それで言うと、2015年下期には任天堂さんがスマホゲームに参入してくることもあり、同社は昔からインターフェイスを中心にゲームという遊びを革命させて、多くの方々を楽しませてきたので、「美麗なグラフィック」「壮大なストーリー」というのを主軸にせず、恐らくスマホゲームでも新しいアイデアで変えてくれるのではないかと期待しています。

各社、マネタイズのアレンジが本当にこなれてきましたが、そもそもエンターテインメントの世界でブレイクを起こすときって、いつもインターフェイスからアイデアが入ってきたときだと思います。



――:ええ。海外のインディータイトルも革新的なゲームを生み出して、それらが数億円の売上を記録することも多々あります。まだまだイノベーションが起こせる土壌はあるのかもしれません。

そういう意味でも、今後は「破壊者」みたいな人ではないと勝っていけないと思います。ここ数年は、フレームワークを磨き上げることで、サービス向上・お客様の満足度に繋がっていきましたが、いよいよそうではなくなると。もちろん、その磨き方によって突き抜けるタイトルは出てきますが、それらが大きく産業を変えて、多くのユーザーから支持を集めるかと言われると、決してそこには繋がらないと思っています。


――:ただ、これまでも、これからも、恐らくそういうタイトルが増えていきますよね。

増えるでしょうね。本当に頭が良い方たちが、最高のフレームワークを磨き上げているにも関わらず、何故か売れずに報われないことが、今後ますます増えていく可能性が高いと思います。僕はスマートフォンが登場した7年前からみんなで徐々にまいた種について、いまが収穫期だと感じています。特にスクエニはそうですね。

そして、これから種をまくとするのならば、みんなが耕しているところを効率的に取っていくのではなく、未開のフロンティアを前提として動いていく必要があるのです。それこそ山を削って、海を埋める。もしくは、未踏の新大陸を発見する、宇宙に飛び立つ。それほどの破壊行動をしないと。



――:具体的に安藤さんが考える“破壊行動”とは何でしょう。


他社で言うと、コロプラさんがVRに積極的に展開したり、DeNAさんがロボットタクシー事業の会社を設立したりと、こういうの、すごく良いなと思っています。明らかに今の時代でVRがスマートフォンに取って代わってプラットフォームの主戦場になるわけないじゃないですか。ですが、もしかすると、そういう未来があるかもしれない。だからこそ、今の時点で荒唐無稽で「気が狂ったのでは?」と思われるようなアクションが必要なのです。

たとえば、テレビが社会に出現した頃、街頭テレビで力道山の試合を観ている群衆に向かって「30年後ファミコンという電子玩具をつなげることで、テレビはその出力装置になるよ」「そしてそれが社会的なブームになるよ」というような未来予測とアクションを、早々に出来た方がその数年後に次の覇権を握っている……という話なんです。

その点において企業は、技術の力を信じるべき。「未来すぎる…」ということも、いずれ本当になるので。



――:そういう意味では、スクウェア・エニックス社は新しい事業として、クラウドゲームのシンラ・テクノロジーを設立しましたよね。ひとつの事業に縛られず、荒唐無稽な新しい事業を展開していくことが大事であると。

荒唐無稽なことはできると思います。何故ならば、ここ何年かでお金が儲かったからです。ただ、その儲けたお金は、スマートフォンを主語にして、どう再投資していくのかという議論になっていったのです。その売上を10%でもいいので、未だ開拓されていないフロンティアに突っ込んだところが未来の勝者です。「ここで良いんだ」と思っていると、どんどんシュリンクして、いずれは削れてなくなってしまいます。

新しい事業を走らせる勇気と度胸は、それこそゲーム開発者と経営者が一枚岩になっていくことが必要ですが、そんな奇跡的なことはなかなか難しいと思います。むしろ、そういう意思疎通は、起業していない野良集団が成し遂げてしまうことが、過去多くあったのも事実です。企業の戦略として、個々のスピードに負けないように決断できるかどうかは、今後物凄い試されるかと思います。

スクエニという会社は、ここの部分でかなりの一枚岩な、ある意味奇跡的な会社なのですが、そんな理想的な環境で思う存分自由にやらせてもらった僕が、相当思いきらないと未来がない。と危機感を抱いています。



――:スマートフォンゲーム市場が、今後も永久的に伸び続けていくかも怪しいですからね。


怪しいですね。それに今の時代、個人でも人を集めてお金を取れるという仕組みが、意外と世の中にゴロゴロ転がっています。いまある仕組みや商材を組み合わせると、じつはこじんまりとした規模であれば好きなものを作りながらそこそこ食べていける世の中だと思います。昔はゲームを作るにしても専門の道具が多すぎだったり、そもそも個人で流通することもできなかったりと色々問題ありましたが、今ではそれらが解消されています。
 
連載記事にも書きましたが、本業と副業を持つべきです関連記事)。同人誌であっても、自分が自由に生きるための選択肢のひとつなので、何かを別のところで表現することも大事になってきます。むしろ本流以外の選択肢から未来のヒットが生まれる可能性が高い。本流だけに専心していると、スマホゲームの優勢と収穫期が終わってしまったら、もう即死してしまいますよ。



――:一時のソーシャルゲームバブルとだいたい同じ感覚ですね。そういう意味でも今後経営が危ぶまれる企業がたくさん出てくるかと思います。

みなさん、本能的には分かっていると思いますが、明快なブレイクスルーが見つかっていないため、動けずにいます。ただ、企業はお金があるうちに投資しないといけないですし、個人はどこからか本業以外のところから新しい要素を手繰り寄せないと厳しいですよね。僕も長年ゲームを作ってきて、ここ数年で最も収益は上がりましたが、こんなに危機感を持ったことは初めてです。そのため2015年下期は、きちんと現場で統制を取り、今まで以上にクオリティの高いコンテンツをお客様に届けると同時に、これから別のところで生き抜いていく術を考えないといけないと思います。

 

■「エンタメは即死ぬものである」


――:そして、こうした状況下のなかで、安藤さんはスクエニを退職して、これから新しいコンテンツに挑戦していくことだと思います。
 
どうなるか分からないですけど、やってみないと分からないですからね。今後いくつか新しいことに挑戦して、もし成功パターンがいくつかでも示せたら良いと思っています。全員は行きませんが、最初に突っ込んでいく『レミングス』のように、「ここ突破できるぞ」と業界内に伝えていくのが理想ですね(笑)。


――:(笑)。具体的にどのようなことをやっていくのでしょう。

現在は、「シシララTV」(関連サイト)というサイトを立ち上げ、ここを中心に様々なことを模索していっています。ここではいくつかの機能を持っています。まずスクエニを母体として、引き続きゲームは作り続けます

やはりスクエニはノウハウもすごくあるし、僕も微力ながらスクエニの歴史の一部を作ってきたと思いますし、ここを通してゲームをお客さまに届けるということも当然やっていきたいと思っています。また、ほかの企業と一緒にやることも可能性としてはあります


そのほかゲームを様々な形でアウトプットしていくことにも実験していきます。恐らく最初は「なんで安藤は自分が作ったゲームで実況してんの?」「なんでこんなゲームつくってんの?」と思うかもしれません。

それが全然当たらなかったら「うわ、違ったー。じゃあ次これやってみるかな」とひたすら実験していくので、僕自身、今後ゲーム市場がどうなるかは未知数ですね。



――:最初はおひとりで。

まずはひとりでやっていきます。前代未聞のことを行うので、理解をしてくれるフリーランスや副業ができる人を中心に巻き込んでいこうと思っています。ゲームDJという肩書でやっていきますが、当然ゲームプロデュースは一生続けますし、僕の本業であることに一切変わりありません。メディア事業は、ゲームをよりお客様に届けやすくするための新しい方法としてスケールできればと考えています。


――:それでは、最後に安藤さんの今後の展望について教えてください。

いま時代の節目に来ていて、今後も苛烈かつ混沌になっていくことを考えると、きっと3年後は「まさか…」と思うものが天下を握っていることでしょう。だからこそ、個人的にも「シシララTV」を通して様々なことを試していきます。声を大にして言いたのは「エンタメは即死ぬものである」…ということです。

すでに死んでいるにも関わらず「生きている」とうそぶいてしがみついているのは、作り手にもファンのためにもならないので、市場を俯瞰して再度見つめ直すことが大切だと思っています。



――:本日はありがとうございました。
 
(取材・文:編集部  原孝則)


■関連サイト
 

「シシララTV」



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企業情報(株式会社スクウェア・エニックス)

会社名 株式会社スクウェア・エニックス
URL http://www.square-enix.com/
設立 2008年10月
代表者 松田 洋祐
決算期 3月
直近業績 売上高2,141億円、営業利益260億円、経常利益253億円、当期純損益198億円(2016年3月期、スクウェア・エニックス・ホールディングス連結)
上場区分 東証1部(スクウェア・エニックス・ホールディングス)
証券コード 9684

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