【インタビュー】「顔、四角ッ!」…でも中身は硬派 世界ヒットを狙う『ポケットフットボーラー』開発秘話 現実のサッカーの世界をゲームで構築


カヤック<3904>は、8月13日に『ポケットフットボーラー』(iOS/Android端末向け)をリリースした。本作は、プレイヤーが1人のサッカー選手となり、他のプレイヤーとともにクラブチームを結成し、チームワークで世界中の強豪クラブに挑んでいく共闘スポーツRPG。また、世界配信対応のサッカーゲームとして、日本国内に続き、今後、世界各国(全10ヶ国語対応)に向けて順次配信を予定している。9月上旬現在、英語圏、香港で配信中だ。なお、本日9月10日からはスペインの英雄・イニエスタも登場のイベントを開催する。

本稿では、『ポケットフットボーラー』を手掛けたカヤックの貝畑氏橘氏にインタビューを実施し、開発経緯や同作の魅力について伺ってみた。

(インタビューはリリース前となる2015年8月上旬に実施)
 
 
 

 
 

■「顔、四角ッ!」…でも中身は硬派



株式会社カヤック 代表取締役CTO
『ポケットフットボーラー』プロデューサー
貝畑政徳 氏(写真右)
 
株式会社カヤック 企画部 所属
『ポケットフットボーラー』ディレクター
橘 俊明 氏(写真左)


――:本日はよろしくお願いします。はじめに『ポケットフットボーラー』の開発経緯から教えてください。そもそも『ぼくらの甲子園!』シリーズの流れを汲んだタイトルかと思います。

貝畑政徳氏(以下、貝畑):そうですね。『ぼくらの甲子園!』シリーズは、初代をリリースしてから5年くらい運用しているタイトルです。

おかげさまで人気も博し、いちオリジナルのスポーツゲームとして確立してきたため、これらのノウハウを活用してサッカー版を作ろうとなり、ちょうど去年の8月頃から本作の企画を立ち上げました。最初の頃は私が中心となり、後からMobage版『ぼくらの甲子園!』の開発に携わっていた橘が合流しました。


――:野球のゲームを作ってから、サッカーのゲームを作るのは、頭の中を色々切り替える必要があるなど何かと大変だと思います。そのへんはいかがでしたか。

貝畑:私はスポーツ全般好きですので、サッカーに関しても知識があったので問題ありませんでした。じつは橘のほうが……。

:正直なところサッカーの知識は乏しかったです(苦笑)。じつはもともと学生時代はバスケ部で、野球もサッカーも色々覚えながらファンになっていきました。現在のサッカーでも雑誌を買って読んだり、試合も見に行ったり、次は審判の資格も取ろうと考えています。これまでは遊びでサッカー観戦などをよくしていましたが、こうしたビジネス的な観点で真剣に見るとルールや魅力を十分に汲み取ることができ、今ではすっかりサッカーファンです。


――:続いて本作のコンセプトについて教えてください。恐らく単純に「『ぼくらの甲子園!』のサッカー版を作ろう」という安易なことではないかと思います。何か本作ならではのエッセンスをお伺いできればと。
 
貝畑:まず『ぼくらの甲子園!』シリーズの良さは変えないようにしました。たとえば、ユーザーさんが選手となり、仲間と作戦会議して、みんなで試合に臨むという根幹の部分です。そこに加えて本作では、自分のキャラクターへの思い入れをより強くしようと、アバターをこだわるようにしました。自分の顔に似せたり、好きな選手の顔にしたりと、かなり自由度が高くなっています。

また、本作はサッカーが題材ですので、当初から世界展開を決めており、日本独特のアニメ調というよりかは、世界に通用するようなクリエイティブになるよう心掛けました
 


――:なるほど。正直なところ第一印象はサッカーというよりかは「顔、四角!」でした(笑)。

:どうやっても格好よくならないアバターですね(笑)。これまでには無いアバターの仕組みだと思っています。


――:あのデザインに行き着くまでは、何度も議論は重ねたのでしょうか。
 
貝畑:じつはそんなに議論はしませんでした。というのも、世界展開を意識したタイトルということもあり、アバターをデザインする際、事前に北米やヨーロッパで人気のキャラクターを色々分析していったのです。そこから精査して、四角をベースにボディのバランスや顔の長さを整えたら、可愛くもあり、ダサくもあり、でも愛着が持てるような現在のデザインになりました。
 
:結果的にどんなキャラクターでもコミカルになるのが良いですよね。イケメン作ってもブサイクで可愛い。ある意味平等な世界ですよ。ほかの人にもキャラクターを覚えてもらいやすいので、とても気に入っています。
 
 
――:面白いのが、顔が四角なので一見して似せられないかな……と思うのですが、パーツの組み合わせ次第では好きな選手風にすることもできますよね。
 
貝畑:パーツは相当数作っています。肌の色や髪型など、世界中の人たちに受け入れられるようなラインナップで取り揃えています。弊社のアートディレクターが似顔分析を行い、どうしたら似せられるかなど、パーツの作り方を一通り研究しています。
 
:なので、やろうと思えば 有名選手の顔に似せてNPCとして登場させることも可能です。今後はどこかのクラブチームとコラボして、実在の選手をゲーム内に登場させて、プレイヤーたちが作ったクラブチームと対戦させることもやりたいですね。たとえば、日本人プレイヤーのクラブチームが欧州クラブチームのスター選手たちに挑むような…サッカーファンは燃えると思います。

 
――:いいですね。ゲームの流れは基本『ぼくらの甲子園!』同様に進んでいくのですか。
 
貝畑:はい。リーグ戦を勝ち抜いて、一部の上位チームが次の世界大会に出場できるという流れです。『ぼくらの甲子園!』と違うのは、ひとつのリーグのなかで戦うのではなく、ブロックを細かく分けています。


――:細かくリーグが分かれていることを考えると、いずれはチームによって何かしらのチャンスが巡ってきそうですね。

貝畑:ええ。トーナメントレベルやブロックを増やしているので、ある程度同ランクのチームとも当たりやすくなります。本作では海外ユーザーとも同じサーバーでも遊べるので、時間帯や国境の壁を超えて楽しめます。また、言語が異なるユーザー間でチャットが楽しめるよう、定型文を用意したり、自分のアバターがスタンプになって使えたりと、密なコミュニケーションが取れるよう配慮しました。


――:アバターの装備品はユニフォーム・ソックス・スパイクの3種類ですよね。現状、どれほどあるのでしょうか。

:まだ公開していないものも合わせれば、それぞれに約100種類、すべて合わせると約300種類ぐらいになります。もちろん今後も定期的に増やしていく予定です。


――:装備品やアイテムの企業間によるコラボも検討されていますか。
 
貝畑:そうですね。たとえば、公式にスポンサーとして、ゲームのユニフォームに企業様のロゴを入れたり、実在するクラブチームのユニフォームを使わせてもらったりなど、行く行くは様々なコラボもしていきたいと思っています。
 
 
――:その装備品にも付随してくるところですが、スキル名もなかなかユニークですよね(笑)。

一同:(笑)


――:分かりました。そして、『ぼくらの甲子園!ポケット』のインタビュー(関連記事)のときにも聞いたことですが、御社のタイトルのUIはどのタイトルでも独特だなと。例に漏れず『ポケットフットボーラー』のUIも斬新で、なかでもホーム画面がお気に入りです。
 

貝畑:ありがとうございます。ホーム画面では、クラブの仲間がいることを感じてもらうように、現在のデザインになっています。みんな色々な格好をしていますし、ほかのクラブメンバーにも見てもらう機会もあると思っています。また、ホーム画面では選手が一列に並んでいますが、これはステータスの高い順で並んでいます。頑張っている人ほど左側で手前となり、現在のクラブにおける自分の力量などがパッと見で分かるようにもなっています。
 
:最初のホーム画面は寂しかったですが、3Dアーティストに相談して、ちょっと斜めにずらしたり、カメラの方向や角度を変えたりして、格好よく見えるように微調整していくなど、本当にこだわりましたね。


――:そして、本作の醍醐味とも言うべき試合シーンです。
 

貝畑:試合は 1日7回行われるのですが、それぞれ開始30分前からクラブメンバーと作戦会議ができます。作戦会議では、相手クラブの状況を確認しながら、各メンバーと相談してポジションを決めたり、どのスキルを持っていこうかであったりと、会話を通して仲間たちと完璧な布陣を作っていきます。そして、試合は自動となります。
 
:1日7試合あるため、必ずどこかの国では深夜3時に試合が行われます(笑)。やはり世界共通のタイトルですので、日本人ばかりを有利にした時間帯にしてしまうと、ほかの国のユーザーさんが損をしてしまいます。なので、ある意味睡魔との戦いになります(笑)。
 
貝畑1日中ゲームに張り付いてもらおうということは、考えていません。あくまでも作戦会議はゆるくライトにやってもらい、試合中はフルオートで楽しんでもらえればと思っています。また、仮に作戦会議に参加しなくとも、フォーメーションは自動で決められて、試合に出場し、結果はあとでも見られます。ただ、完璧な勝利を狙うのであれば、作戦会議で密にコミュニケーションをとったほうが、勝率も上がって行きます。
 
 
――:たしかに。試合の演出も見ていて面白いですよね。あの四角い顔がピッチを走りまわっているのが、なかなかコミカルです。
 
貝畑:ミスしても、成功しても、自分が出てくると嬉しいですよね。


――:ええ。先日開催されたイベント「キック・オフ会」でも、試合シーンを見ているだけでもかなり盛り上がりましたよね。試合シーンのなかで、何か演出のこだわりはあったのでしょうか。
 

貝畑:テンポですね。実際のサッカーは、試合が長いわりに、点が入るシーンって少ないじゃないですか。開発当初は、すべてのシーンを流していたのですが、やはり冗長になってしまいました。パスとかでも「この演出さっきも見たな」となってしまうので、自分が活躍するシーンをギュッとハイライトに調整していきました。
 
さらに、そこから自分のところだけを見るボタンを付けたので、毎回試合をダラダラ見る必要がなくなり、面白いところをピックアップできるようにしました。もちろんスキップボタンも搭載していますが、試合を見てみると、どこで自分のスキルが発動したか、何故あそこでミスしてしまったのかなど、細かく確認して次のトレーニングに生かすことができます。

:そうですね。後半バテたならスタミナを上げようかなど、監督視点というよりかは、プレイヤーの自己管理的な視点で参考になりますね。今後は『ぼくらの甲子園!ポケット』のときもそうでしたが、クラブのなかで監督になりきって、メンバーに指示する人が出てくることも期待しています。ちなみに現状リーダー機能はありませんが、ステータスが高い人はキャプテンのワッペンが付けられます。
 
 
――:試合後は新聞になりますが、それぞれの評価も面白いです(笑)。

:あの評価コメントは700個ぐらい用意しています。結構厳しいことも書いてあって、社内テストしたときも「これは言葉がキツイ」と指摘を受けました(笑)。ただ、そのぐらいのほうが面白いですし、実際に海外のサッカー新聞ではこれぐらいのコメントも付いていることがありますので。
 
また、各国でローカライズしていますが、それぞれの国で通じるような小ネタやジョークも取り入れるよう心掛けました。たとえば、パスカットがすごいやつがいたら、「お前らの財布は盗まれなかったか」みたいな粋なジョークも取り入れています(笑)。
 
貝畑:当然プレイヤー自身は褒められたい人が多いと思いますが、逆に他人のコメントの場合は皮肉が入っているほうが面白いんですよね。試合は1日7回もあるため、その結果ごとの新聞で少しでもニッコリして欲しいと思っています。
 


――:ちなみにプレイヤーはひとりしか作れないのでしょうか。
 
貝畑:選手はひとりですが、今後ジョブ機能の搭載を考えています。たとえば、ストライカータイプやディフェンダータイプなど、ジョブを切り替えると大きく性能が変わるという形です。スポーツ“RPG”と銘打っておりますので、自分のキャラクターを楽しめる要素として活用してみるのもいいですね。
 
 
――:世界配信についてですが、どのようなスケジュールとなっていますか。また、何か国ごとに仕様を変更することはありましたか。
 
貝畑:海外版は最初に英語圏、香港となり、その次がヨーロッパ圏となります。仕様変更については、基本ワンバイナリーなので遊び方も含め全く一緒です。ただ、ゲームの基準時間はイギリスに合わせているため、14時に日付が変わります。そのため、日本ではデイリーボーナスが14時にもらえます。
 
 
――:海外ユーザーと日本ユーザーの遊び方の違いについてはいかがですか。
 

:各国によって人気のポジションが違うところですかね。ドイツではゴールキーパーが人気だったり、意外とフォワードじゃなかったりと、かなり国によって特色が出ます。そのため、今後イベントの企画を考える際は、たとえばドイツのユーザーが伸びてきたら、ゴールキーパー向けのスキルを出すなど、我々が持っていない視野で考える必要が出てくるかもしれません。
 
貝畑:そうですね。基本、イベントは世界共通になります。なるべく世界の人が楽しめるような共通のテーマだったり、有名なクラブチームを出したりと、色々意識して展開していきます。ただ、先ほど話にも出たとおり、何が国によって好きで嫌いかは分からないため、そうした国ごとによる分析も楽しみでもありますね。
 
 
――:それでは、最後に今後の展望について教えてください。
 
貝畑:本作は、世界中の人たちと協力して、競争していく、まさに自分自身が本当にサッカー選手になれるタイトルだと思っています。ユーザーさんはトーナメントの優勝を目指していくと思いますが、そんな毎日の練習と試合を飽きさせないような展開を行っていきたいと思います。というのも、リアルなサッカーの世界をゲームの中で構築したいと考えておりますので、それこそユニフォームにスポンサーを入れたり、何かとコラボしたりなど世界観を彩るような施策を検討していきたいと思います。
 
:TwitterやFacebookなどSNSを活用して、我々が積極的にユーザーさんたちの活躍を表に出すことも重要だと思っています。ゲーム内でひとりのユーザーさんが有名になったとして、その方をガチャのバナーに掲載させるなど、ユーザーさんをフィーチャーさせるような運営にしていきたいです。ゲーム内で本当のファンタジスタが生まれれば最高ですね
 

貝畑:これは今後のユーザーさんのニーズに合わせてですが、国籍別のワールドカップも検討しています。各国の成績の高いユーザーさんから代表を選んで、もしくはユーザー投票でもいいと思っています。日本代表とブラジル代表が対戦して、優勝した国には国籍を登録しているユーザーさん全員にプレゼントをあげる。技術的には可能ですので、ぜひ実現したいと思っています。ほかのユーザーさんは代表選手の活躍を見られたり、応援できたりと、より国ごとの一体感も生まれるでしょう。


――:それはたしかに面白そうですね! 今後の展開に期待しています。
 
(取材・文:編集部  原孝則)


■『ポケットフットボーラー』
 

Google Play

App Store



 
株式会社カヤック
http://www.kayac.com/

会社情報

会社名
株式会社カヤック
設立
2005年1月
代表者
代表取締役CEO 柳澤 大輔/代表取締役CTO 貝畑 政徳/代表取締役CBO 久場 智喜
決算期
12月
直近業績
売上高174億6700万円、営業利益10億2100万円、経常利益10億3800万円、最終利益5億1100万円(2023年12月期)
上場区分
東証グロース
証券コード
3904
企業データを見る