【インタビュー】業界に一石を投じる“運営型のアニメ”…前例の無い施策がもたらすアニメ『モンスト』の内容・効果とは プロデューサーに直撃


現在ミクシィ<2121>の「XFLAG™ (エックスフラッグ)スタジオ」では、今後の事業拡大のため、様々な職種で採用面に力を入れている。

同スタジオの代表作『モンスターストライク』(以下、『モンスト』)は、直感的な操作性はもとより、友人たちと集まってわいわい遊ぶマルチプレイなど、口コミを通して若年層を中心に広がり、瞬く間に日本を代表する大ヒットゲームアプリへと成長した。そして、10月10日より『モンスト』のアニメがYouTubeにて全世界同時配信されている。

今回「Social Game Info」では、『モンスト』のアニメに携わるプロデューサーの鈴木洋平氏にインタビューを実施。アニメ化の経緯や狙いをはじめ、求めている人物像などについて聞いてきた。

■ミクシィ
 
 

■アニメをYouTubeで配信する意義とは



株式会社ミクシィ
エックスフラッグスタジオ メディアミックス部
鈴木 洋平


――:本日はよろしくお願いします。はじめに鈴木さんのご担当とアニメ化に至る経緯について教えてください。

アニメ『モンスト』では、プロジェクトのマネージメントを担当しています。アニメ化の話が具体的に動き始めたのは、去年の夏頃にスタートした『モンスト』ニンテンドー3DS版の企画に向けた事前調査や漫画連載などの周辺展開を考える過程で、アニメ化のアイデアが出てきたことがきっかけです。

以前からユーザーアンケートを通じて、『モンスト』には中学生や高校生のユーザーが多いことを把握していたのですが、詳細に調べてみると、非常に高い割合の中高生が遊んでいることや、実はスマホを持ち始めた小学校高学年くらいの層も『モンスト』に高い熱量で接してくれていることがわかってきました。

同時に、中学生くらいの世代は、我々が思っている以上にテレビを意識して見ていないことや、雑誌に触れていないことを知りました。スマホの中にあるコンテンツに時間を割くようになっていたんですね。アプリのゲームをしたり、YouTubeで動画を見たり、LINEなどで友達とコミュニケーションをとったりと。



――:なるほど。

一方で、漫画やアニメに触れなくなったということはなくて、それぞれが好きな作品を楽しんでいました。ただし、作品の傾向は結構分散しており、アニメに関しては中高生向けに作られている作品がなく、視聴しやすい時間帯の放送枠も限られているため視聴する機会自体が減っていました。

アニメは小学校4年生以下を対象にしたいわゆるキッズ向けのアニメか、ターゲットを明確に絞り込んだ大人向けの深夜帯アニメしかないんですよね。

こういった状況を見て、ゲームの『モンスト』だけでなく、中高生に向けた王道バトルとしてアニメ化したら面白いのではないか、あるいは連動したモンスターやクエストを用意して同時に体験する遊び方もできるのではと、イメージが膨らんでいったんですね。

それから、アニメ化の話を本格的に始動させていきました。ちょうど去年の10月から11月頃ですね。



――:10月10日に放送されることを考えると、(企画から制作まで)一年経ってないですよね……。

経ってないですね。


――:驚異的なスピードですね……(苦笑)。

テレビで放送しないという決断をしたことも大きいです。テレビの枠を押さえるとなると、そもそもだいぶ先まで枠が埋まっているという……。仮にどこかの枠が決まったとしても、テレビアニメの制作スケジュールでは2016年4月の放送開始が妥当でした。


――:昨年の時点で2015年の放送はマストだったのでしょうか。
 
質の高いアニメを製作したかったので、無理に2015年中に放送するという考えはなかったです。ただ、『モンスト』の2周年にあたる2015年10月というタイミングは意識していました。これまでにない新しい『モンスト』の楽しみ方を提供することになるので、節目のタイミングに合わせてお披露目するのが良いだろうと。


――:そして、最終的に動画投稿サイト「YouTube」での配信という形で決まりました。テレビではなく、ネット上で大人気アプリのアニメが公開されることに大変驚きました。改めてYouTube配信の経緯について教えてください。

中高生やモンストのユーザーに最もリーチできる手段として、ネットを利用することが必須であると当初から考えていました。一時期、テレビでの放送も検討していましたが、その際も同時ネット配信を前提として話を進めていたくらいです。また、ゲームとアニメをシームレスに連動させるためにもネット配信は欠かせない手段だと捉えています。最終的には幾度か調査も実施しながら、YouTubeで配信することを決めています。


――:調査では、具体的にどのようなことが分かりましたか。

中学生男子を対象にした定量調査では、1週間のうちに“YouTubeを見ている割合”が“テレビを視聴している割合”に迫る数値であることがわかりました。お茶の間にいれば何となく見てしまうテレビとは違い、YouTubeは自ら能動的に行動しないとたどり着かないメディアなのでこれはすごいなと。

同時に、YouTubeに費やしている時間や頻度も質問しているのですが、完全に彼らの生活の中に根付いているのだと確信を得ることができました。ただ、これは数値で見るよりも実際に彼らにコミュニケーションをとってみたことで、得られた気づきも多かったです。というのもYouTubeの話を切り出すと、急に笑顔を見せて、無邪気に話しをしてくれたりするんですよね。ほんとに好きなんだなと感心しました


 

■アニメ業界の新たなフォーマット…“運営型のアニメ”


――:「本編1話7分」で展開するとのことですが、こちらの意図はいかがでしょうか。


視聴する側がYouTubeで動画を楽しんでいる感覚に合わせたいという意図がありました。参考にしたのは人気YouTuberの動画です。多くは10分未満で飽きないように上手に工夫されているんです。そもそもYouTubeでの配信になるためフォーマットも自由ですし、スマートフォンで視聴される割合も高くなるので、従来のアニメフォーマットに捉われずに決めています。

加えてアニメ『モンスト』は“運営型のアニメ”として考えており、ゲームと同様にユーザーと一緒に作り上げていくコンセプトがあります。1話7分にすることの恩恵ですが、アニメの制作期間を短くすることで、ゲームとの連動要素や謎解きなどの仕掛けを入れやすくしている側面もあり、企画の幅を広げています

7分という尺は、実際に視聴していただくとわかりやすいのですが、例えば週刊少年ジャンプで好きな漫画を一週間心待ちにしながら読む感覚に近いのではないかと思います。一見短いようにも感じますが、十分物語を楽しめるし、毎週少しずつ連載を見続けること自体も慣れている自然なリズムなのではないかと思います。



――:細かい話で恐縮ですが、放送曜日が土曜日ですね。これにも考えがあるのですか。

毎週土曜19時に配信を行います。中高生や『モンスト』の利用層が最もオンタイムで視聴できて、かつ連動したクエストを楽しむ余裕がある曜日や時間帯を意識しました。テレビの概念でも、週末のゴールデンタイムというのは価値ある枠ですよね。YouTubeなら制約もないですし、無料です(笑)。もちろん、調査でもチェックしてベストな結論を出しました。
 
第1話「これが始めのストライク!」【モンストアニメ公式】


――:また、日本語のみならず、英語や中国語、韓国語などに対応して11言語で世界配信するとのことですが、世界のアニメファンにはかなり響くのではないかと思っています。
 
そうですね。モンストは海外でもアジア圏の台湾や香港を中心に人気が出ていますし、まだ配信されていない国や地域もありますが、日本のアニメの訴求力は強いので期待しています。

最近、海外にいる知人に『モンスト』のアニメを紹介してみたところ、「アニメ好きの友人に伝えたら興奮していた」というリアクションがありました。海外のアニメファンにとっては、“日本のオリジナルアニメが世界に向けて同時配信を行う”ということ自体がサプライズで、感激してくれたようです。今回、日本語版をベースに10言語分の翻訳を行っており、大変な労力ではありますが、こうして『モンスト』を世界に拡げられるのであれば、価値のある試みではないかと思っています。



――:そして現在御社では、新しい人員を募集しているとのことですが、どのような人物像を求めているのでしょうか。

前例がないことにチャレンジすることを楽しめる方です。スマートフォンゲームやインターネットという舞台は、ユーザーの嗜好も変化を続けていきますし、新しい遊びを提供できる余地が常にあるはずです。実際にXFLAGスタジオではアニメを含め前例のない試みに次々と挑んでいます。試行錯誤しながらも、自分たちが楽しいと信じられるものをユーザーに届けることができるのは非常にエキサイティングです。

XFLAGスタジオには、ユーザー視点で考え判断する、顧客思考を徹底する精神が共通認識としてあります。考え方の軸があるので、ユーザーにとってこれは面白いというアイデアがあれば、周囲の協力も得やすく、実現しやすい環境だと思っています。新しい試みにチャレンジするには苦労も絶えないですが、挑戦する意思のある方はぜひ応募してみてください。

 


――:分かりました。それでは、最後にアニメ『モンスト』の展望について教えてください。

本編1話7分ですが、決して内容の薄いものではなく、見応えのある脚本とクオリティの高いアニメーションを凝縮しています。ゲームアプリとの連動はもちろん、アニメの中に「謎解き」なども仕込んでいるため、かなり濃密で面白い体験が味わえると思っています。我々としては、毎回ユーザーさんからの反響も楽しみにしていますし、一緒に作り上げていきたいと考えています。


――:ちなみに……どこまで続くのでしょうか。

以前、XFLAGスタジオ総監督の木村が「30年」と言っていました(笑)。結論は時間が経ってみないとわからないですが、長く続けていけるようなコンテンツにしていきます。


――:楽しみにしております(笑)。本日はありがとうございました。
 
(取材・文:編集部  原孝則) 


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