【グリー決算説明会】QonQで78億円の赤字→24億円の黒字転換に…LINEタイトルのKPIが『消滅都市』を凌ぐ速度で成長 新作『追憶の青』は「決定的な一本へ」


グリー<3632>は、10月29日、2016年6月通期の第1四半期(1Q、7~9月)決算を発表するとともに、東京都内のグリー本社でメディア向けの決算説明会を開催した。業績は、売上高193億800万円(前四半期比[QonQ]16.1%減)、営業利益43億8500万円(同1.7%増)、経常利益39億9700万円(同10.1%減)、四半期純利益23億9400万円(同102.1%増)となり、四半期純利益が前四半期の78億1000万円の赤字計上から黒字転換となった。

 

■QonQで78億円の赤字→24億円の黒字転換に


はじめに取締役執行役員常務の秋山仁氏が、1Qの決算概要について説明。前四半期では、2012年5月に子会社を通じて買収したFunzioに係る無形固定資産(のれん等)の減損損失を計上したことで、最終損益78億円の赤字だった。1Qでは、固定費削減、広告宣伝費の効率運用などのコストコントロールが奏功し、営業利益44億円の黒字転換に。

おもな増益のトピックスとしては、『NARUTO -ナルト- 忍コレクション 疾風乱舞』をはじめ、国内ネイティブゲームのコイン消費が直近1年で最大になったことが要因という。

また、LINEとの共同出資により設立したEpic Voyage(エピック・ボヤージュ)を通じ、「LINE GAME」として配信中のダンジョンRPG『LINE タワーライジング』のKPIが成長したほか、「東京ゲームショウ2015」で好評価を得た新作アプリ『追憶の青』を今冬にリリース予定など、期待の好材料も蓄えられている。このほか、新領域事業が着実に成長した。
 


▲8月5日時点のガイダンスでは、売上190億円、営業利益が30億円強とのことだったが、予想よりも上回った。売上は減少したものの、営業利益率はQonQで2.6ポイント増加の22.7%に。


▲営業利益分析では、コスト削減により営業利益は1.7億円増加。売上減少の大半は、国内ウェブゲーム事業が中心で、これらを変動費と固定費の削減でカバーして増益になっている。

費用合計は、QonQで18億円減少の149億円に。なかでも広告宣伝費はマスプロモーションなどの抑制で12億円と、QonQで5億円の削減となった(売上比:4Q 8.3% → 1Q 6.3%)。賃借料はサーバ費用の削減が進捗して3億円の削減、そのほか減価償却費とのれん償却額に関しては、それぞれ買収関連の償却対象資産の減少に伴い、合わせて5億円の減少となっている。
 

当日は2016年6月期の第2四半期累計(7~12月)の連結業績予想の上方修正も発表した。売上高は従来予想の365億円から370億円(増減率1.4%増)、営業利益は同60億円から70億円(同16.7%増)、経常利益は同60億円から65億円(同8.3%増)にそれぞれ修正された。修正理由について「1Qの計画比よりも堅調な決算を踏まえ、これを織り込んで上半期予想を上方修正」とした。

2Qは、ネイティブゲーム事業が既存タイトルの成長、新規タイトルの寄与ともに保守的に設定したほか、ウェブゲーム事業は過去トレンドをベースに保守的に想定。なお、10-12月にかけてホリデーシーズンに伴い、投資効果が見込まれる有力タイトルに対して適切な広告宣伝費の投下を想定している。

コスト削減としては、10月より子会社のポケラボがグリーオフィスに移転してきたこともあり、一体オペレーションによる効率化が見込めるという。また、同様にアメリカ支社のオペレーションを見直し、外注費や人件費を削減。「エンタメ業界のため、必要以上に削ってクリエイティブを阻害しないように、少しでも無駄を省いて、利益が出るようにしていく所存」と秋山氏。
 
 

■『LINE タワーライジング』が好調 新作『追憶の青』にも期待感



続いて、代表取締役会長兼社長の田中良和氏が事業概要について説明。

ネイティブゲーム事業は、1Qに『フェイタルシーカー』(国内)、『クロスサマナー』(海外)の2本をリリース。第2四半期(2Q、10-12月)では、国内で2本(協業)、海外で2本(協業)をリリース、下半期には国内6本(内製5本・協業1本)、海外4本(内製2本・協業2本)と、今期16本のタイトルを進めているという。

国内では、前述しているように『NARUTO -ナルト- 忍コレクション 疾風乱舞』がヒット(App Store売上ランキング最高7位)し、コイン消費も牽引。同社ゲーム事業の柱になりつつある『消滅都市』は、機能改善・コンテンツ拡充などに取り組みながら、利益貢献も実現。ポケラボの『戦乱のサムライキンダム』はリリース後約2年も堅調に推移、大型アップデートも計画中という。

ほか、『LINE タワーライジング』のKPIが『消滅都市』を凌ぐスピードで成長しており、「大型プロモーションも視野に入るKPI水準」と評価。実際に『消滅都市』がリリースから大規模プロモーションに踏み込むまでは、6ヵ月ほどかかっている。一方、『LINE タワーライジング』では、すでに『消滅都市』の最初の3ヵ月と比較して、「プロモーション投資して可能な水準に近づいている」とのこと。ただ、売上の絶対額やそれに基づいて決まるストア上のランキングに関しては、「まだ見えるところまでは言ってない」と課題にも触れた。
 
【国内ネイティブゲーム事業 - コイン消費の推移】

新規タイトルでは、「東京ゲームショウ2015」で発表されたラインナップが中心。直近では、各メディアから高評価を得たアクションRPG『追憶の青』のほか、パートナーと連携した協業タイトル『ガーディアンクラッシュ』と『ソウルアームズ』が今冬リリース予定だ。なかでも『追憶の青』に関しては、アクションRPGが少ないスマホゲーム市場において、「決定的な一本になれるよう、大きなサービスに育てていく」と意気込みを語った。

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▲下半期以降リリース予定の開発中タイトル。

海外ネイティブゲーム事業は、引き続き売上が減少したものの、6月に比較して7-9月は底堅く推移。なお、現在はアメリカの開発体制を一部日本に移管しており、日米の共同開発で新しく進めているという。同時にアメリカから日本にオペレーションを持っていくことで、海外ネイティブゲーム事業としては人件費など、固定費削減が進捗。

会場からはアメリカのオフィスの必要性も問われたが、開発における「難度の高さ」に言及した。「欧米市場の競争環境やトレンド・文化を理解して作るうえで、やはり現地の開発オフィスは必須」とし、今後はアメリカのオフィス、日本の本社の両軸で行っていくハイブリット型を推し進めていくという。
 
【海外ネイティブゲーム事業 - コイン消費の推移】



攻めの姿勢としては、有力タイトルの次世代版の開発や既存タイトルの欧州版を開発。

ウェブゲーム事業は、中期的な利益継続を目標にしているが、有力内製タイトルのマルチプラットフォーム展開へ向けた仕込みが進捗のほか、新規IPタイトルを2Qに複数本リリース予定。そして、引き続きサーバ台数の削減やベトナムでのオフショア運用など、運営の効率化とコストコントロールにより利益を確保していくという。
 

新領域事業では、リフォームECサービス「リノコ」の受注額が拡大中のほか、レッスンフリーパスサービス「Lespas」の加盟店舗数も増加しているなど、着実に新たな収益の柱になるべく事業の構築に努めているという。当面は、上記ふたつの事業を中心になるが、「引き続き新領域事業は探していきたい」とコメント。
 

 
 
(編集部  原孝則)
 
グリー株式会社
http://www.gree.co.jp/

会社情報

会社名
グリー株式会社
設立
2004年12月
代表者
代表取締役会長兼社長 田中 良和
決算期
6月
直近業績
売上高754億4000万円、営業利益124億9800万円、経常利益130億8600万円、最終利益92億7800万円(2023年6月期)
上場区分
東証プライム
証券コード
3632
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