【ネクソン個別取材レポート】中国版『アラド戦記』好調、韓国も『FIFA』中心に堅調 4Q以降『攻殻機動隊』や『FFXI』『HIT』など続々



ネクソン<3659>は、11月13日、第3四半期累計(2015年1~9月期)の連結決算(IFRS)を発表したが、同社経営企画室長の熊谷峻平氏が当サイトの個別取材に応じた。同社の発表した決算は、売上収益1444億円(前年同期比11.1%増)、営業利益519億円(同12.4%増)、最終利益507億円(同50.0%増)となり、2ケタの増収増益を達成した。
 
第3四半期(7~9月期)の業績をみると、売上収益498億円(前年同期比9%増)、営業利益184億円(同22%増)、最終利益191億円(同41%増)と増収増益だった。前四半期(QonQ)の数字と比較しない理由は、第2四半期と第4四半期に売上が伸びるなど、季節変動が大きくなるためだ。特に中国でその傾向があるとのことだった。今回の記事では、第3四半期の状況を中心にまとめていく。
 

 
熊谷氏(写真)は「中国と韓国における主力PCオンラインゲームが好調だった。モバイルゲームについては、韓国で提供中の『FIFAオンライン』シリーズも、ワールドカップで特需的に良かった前年に比べると落ちるが、依然として高い水準を保った。既存オンラインゲームも伸びたほか、韓国版『DomiNations』が絶好調だった」と振り返り、全体としては良好だったと述べた。続く第4四半期以降、仕込んでいた新作が続々と世に出るなど、来期以降の成長に向けた取り組みにも力を入れる。


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■地域別の状況:中国と韓国が好調

続いて地域別の状況を見ていこう(前年同期との比較は、断りがない限り、会計基準ベース)。

主力市場である中国だが、売上収益は前年同期比で29%増の202億円と好調だった。『アラド戦記』は、7月2に夏季アップデート、9月22日に国慶節に備えたアップデートを行ったことが奏功した。アバターの販売が好調だったという。また、MAU(月次アクティブユーザー数)と課金ユーザーが対前四半期で増加したとのこと。『メイプルストーリーポケット』の配信を9月下旬より開始した。
 

 
韓国の売上収益は同1%増の201億円だった。最も収益を稼いだのは『EA SPORTS FIFA Online 3』のPC版とモバイル版だった。前年同期は、ワールドカップが行われたこともあり、特需的に好調だったが、今年も前年に比べると落ちるが、依然として堅調だったという。『アラド戦記』や『サドンアタック』、『メイプルストーリー』といった既存のオンラインゲームも運営開始から長い年月が経過しているが、成長したそうだ。このほか、モバイルゲーム『DomiNationsm』も好調なスタートで収益を押し上げる要因となった。

なお、PCオンラインゲーム『メイプルストーリー2』もリリースした。こちらは「PCカフェの人気ランキング(韓国でオンラインゲームの人気のバロメーターになる)で4位に入るなど初動は良かった。その後、ジリジリと順位を下げており、足元は20位前後で推移している」とのこと。ゲームの中で不足している要素などは判明しており、半年から1年をかけて修正を行い、再度アクセルを踏む考えだ。
 


日本の売上収益は、同31%減の49億円と心配な状況だ。PCオンラインゲームに加え、gloopsの展開するモバイルゲームが苦戦しているという。ブラウザゲームは健闘しているものの、下落トレンドから逃れることができておらず、ネイティブアプリについてもヒットタイトルが出ず、売上収益がジリジリと落ちているとのこと。こうしたなか、モバイルゲームは、『メイプルストーリーポケット』は初動が良く、『DomiNations』は継続率は良好だったとのこと。
 

 
最後に、北米、欧州及びその他の地域だが、北米が同44%増の20億円、欧州及びその他の地域(アジアも含む)が同83%増の23億円だった。Socialspielによるモバイルゲーム『レガシークエスト』のソフトローンチを開始したほか、台湾、香港、マカオで『DomiNations』『メイプルストーリーポケット』をリリースした。特に台湾では『DomiNations』と『メイプルストーリーポケット』の調子がいいという。
 


 
■第4四半期の業績見通し

続く第4四半期(10~12月期)は、売上収益400億円~428億円(前年同期比7%減~変わらず)、営業利益96億円~118億円(前年同期7億円の赤字)、最終利益77億円~95億円(同44億円の赤字)と黒字転換を見込む。
 

売上収益はマイナスとなる見通しだが、これは中国での『アラド戦記』の売上減が見込まれるため。「昨年はアイテム販売を行うアップデートを第4四半期に行い、売上が伸びた。今年もアップデートを行う予定が、売上を大きく押し上げるようなものではない」という。

また、利益面では、前年同期に実施したgloopsの減損損失が今期はないため、黒字転換となる見通しだ。、『アラド戦記』の償却が完了し、償却費が減ることも増益要因となる。他方、例年よりも多くの新作タイトルをリリースする計画があるため、広告宣伝費が増える見込みだ。さらに、モバイルの比率がアップしたことにより、プラットフォーマーに支払う手数料なども増える。
 
 
▲地域別の状況。中国は前述のとおりマイナスとなる見通し。韓国では、ターン制タクティクスゲーム『ファンタジーウォータクティクス』や 『HIT』などをリリースする。いずれも「相当力を入れてプロモーションする」。日本では、ヴァルハラゲームスタジオのFPS『Devil’s Third Online』のパブリッシングを行うほか、『ファンタジーウォータクティクス』、『マビノギデュエル』、gloops『LAPLACE LINK』を提供する予定。

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▲パイプライン。先に行われた「G-STAR2015」で、PC7タイトル、モバイル8タイトルの合計15タイトルを出展した。期待のタイトルとしては、『Need for Speed Edge』や『攻殻機動隊 STAND ALONE COMPLEXオンライン』、『LawBreakers』、『野生の地:Durango』、『LAPLACE LINK』、『ファイナルファンタジー XI』などをあげた。『ファイナルファンタジー XI』については、PC版と同様、本格的なMMORPGがモバイルで楽しめるようになるという。

 
▲『攻殻機動隊 STAND ALONE COMPLEXオンライン』は、クローズドβテストを欧米・オセアニアで実施した。「当初4日間の予定だったが、非常に好評で、1日延長した。FPSとしても出来が良く、参加者からのフィードバックを踏まえてゲーム開発を進めていきたい」。

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(編集部 木村英彦)
株式会社ネクソン
http://www.nexon.co.jp/

会社情報

会社名
株式会社ネクソン
設立
2002年12月
代表者
代表取締役社長 イ・ジョンホン(李 政憲)/代表取締役CFO 植村 士朗
決算期
12月
直近業績
売上収益4233億5600万円、営業利益1347億4500万円、最終利益706億0900万円(2023年12月期)
上場区分
東証プライム
証券コード
3659
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