【インタビュー】『アイドリッシュセブン』の膨大なイラストデータを管理する「Save Point」の力 プロデューサーの下岡聡吉氏、根岸綾香氏に聞いた


現在MUGENUPが提供を行っているプロジェクト管理ツール「Save Point(以下、セーブポイント)」は、大規模なクリエイティブの管理に特化したクラウド型ツールとして、さまざまなゲーム会社へ浸透しつつある。コストの削減や一括管理による効率改善、スタッフの負担軽減などの魅力が挙げられており、特に制作進行で悩みを抱えているメーカーにとっては待望のツールといえるだろう。

今回Social Game Infoでは、「セーブポイント」を導入しているバンダイナムコオンラインの『アイドリッシュセブン』開発チームより、エグゼクティブプロデューサーの下岡聡吉氏(写真中央)と、プロデューサーの根岸綾香氏(写真左)、さらにMUGENUPのプロジェクトマネージャー・杉田裕明氏(写真右)を交えた3名にインタビューを実施。導入することになった背景や魅力、MUGENUPとの取り組みなどを聞いてきた。
 

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『アイドリッシュセブン』
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■採用の決め手はスマートフォンでの使い心地


――:本日はよろしくお願いします。まず、『アイドリッシュセブン』がどのような作品なのか、あらためて教えてもらってもいいですか?
 

根岸氏:『アイドリッシュセブン』は昨年の8月20日にリリースした、バンダイナムコオンライン初の女性向けスマートフォン向けリズムゲームアプリとなります。本ゲームではIDOLiSH7というアイドルグループに所属する7人が、ライバルグループであるTRIGGERの3人と切磋琢磨し、成長してゆく姿が描かれます。女性向けといっても恋愛的な要素はなく、アイドルの世界を題材にしたスポ根に近い作品ですね。配信開始から約4ヶ月で、ダウンロード数は70万を超えています。

下岡氏:彼女にはゲーム全般を担当してもらっています。とはいえゲームの中にも音楽が収録されていますし、小説もゲームのシナリオとリンクしているため、あらゆる場面で深く関わってもらっています。元々ゲーム以外にも展開するつもりでプロダクトはスタートしていて、すでにコミックス・ノベル・CDのメディアミックス、グッズ化などが行われています。

大きなコンテンツに育てようという思想があったので、ゲームでもフルボイスになることは最初から決まっていて、またイラストの数も膨大になることは予想できていました。そのため、「セーブポイント」のような管理システムを探していたのです。


――:『アイドリッシュセブン』で「セーブポイント」を利用することになった経緯を教えてください。

下岡氏:もともとアイドリッシュセブンのイラスト制作に付随して「セーブポイント」をご提案いただいたのがきっかけです。MUGENUPさんを含め、複数の会社からイラスト制作のプレゼンをしていただきまして、その中でも求めるクオリティに達しつつ、イラストの管理にも長けていると感じたので決めました。

開発開始当初はMUGENUPさんでは、「WORK STATION」という「セーブポイント」の前身に当たるシステムでリソースの管理を行われており、その流れもあります。ただ、「WORK STATION」はあくまでもPCメインであり、スマートフォン向けにカスタマイズはされていませんでした。使い心地はそこそこ良かったものの、やはり外出中などいざというときに使いづらく、当時はMUGENUPさんに要望を送ることも多かったのです。


――:スマートフォンで利用する機会が多い、下岡さんならではの不満があったと。

下岡氏:送られてきたデータの中身を見るには、まず間違いなくPCが必要でしたからね。「WORK STATION」でもスマートフォンでデータを確認することはできたのですが大変でした。このような不満を伝えていたら、MUGENUPさんの当時の担当者さんから「もうひとつシステムがあるんです」と言われまして、それがサービス開始直後の「セーブポイント」だったのです。

――:「セーブポイント」を導入する決め手になったのも、やはりスマートフォンで活用できる利便性にあったのですか?

下岡氏:スマートフォンでは確実に使いやすくなりました。PCでやり取りするときと遜色ないレベルです。あとは、連絡も格段にやりやすくなりましたね。「WORK STATION」のときは更新をメールで教えてくれるものの、目当てのページにたどり着いて確認するのが難しく、結局探す手間ができてしまいました。ひとつの作品につき、確認したいイラストは膨大な数になります。その中で目当てのものを見つけるのは、相当な苦労がありました。

半面、「セーブポイント」に関しては、未読バッジがついて、今どれを見なければいけないのかがひと目で判断できるようになっています。また、特に緊急性の高い案件については、コメントを付け加えることで、その内容も合わせてメールで教えてくれます。何より、メールのリンクから直接確認すべき画像へ飛べるようになって使い勝手は向上しましたね。

 
 
 

――:抱えるタスクが増えれば増えるほど、活かせる場面も増えそうですね。

下岡氏:私は『アイドリッシュセブン』以外にも複数のプロジェクトを抱えていますが、まったく違う作品でも苦労はしなくなりました。多いときは1ヶ月に何十枚ものイラストを確認してそれぞれに指示をすることもあり、とても助かっています。加えて、これまでは会社でしかできなかった作業を外に持ち出せるようになったのも心強いですね。

――:では、スマートフォンを含めて使い心地はいかがですか?

根岸氏:オンラインストレージなどでのやり取りだと期限が切れてしまうケースも多いので、古いデータがしっかり残っているのはありがたいです。進捗管理も楽ですね。管理自体は「WORK STATION」でもできましたが、「セーブポイント」ではラベル分けして、複数の作業が分かりやすくなっています。ただの画像閲覧サービスではなく、全体を監修できるサービスとして、日々出来がよくなっていることを感じます。
 

杉田氏:私からもひとつ聞いてもいいですか。他社さんとやり取りしていると、違うシステムを利用しているところも多いと思いますが、使っているなかで気付いたことはありますか。

根岸氏:他社さんとのやり取りとなると、やはりオンラインストレージが多いですね。あとは弊社が用意している専用ストレージにどんどんデータを入れてもらい、管理はExcelというケースもあります。

下岡氏:Excel管理に比べたら、履歴が自動で残る「セーブポイント」のほうが断然使いやすいです。納品済みのPSDデータだけを抽出することも可能なので、自分のPC内を探すよりも、「セーブポイント」で検索したほうが楽なくらいです。

根岸氏:あとは、どんなデータ形式であっても、プレビュー機能ですぐに確認できるのも嬉しいです。レイヤーが何枚も重なっていて、容量が大きくなっているケースもあるじゃないですか?「セーブポイント」ではそれもすぐに確認できるので重宝しています。それ以外にも便利な機能はたくさんあるんです。


――:では、これは役に立っているという機能はありますか?

根岸氏:特定のデータに目印を付けられるラベル機能は特に便利ですね。これもMUGENUPさんの制作担当者の方から教えてもらい、使うようになった機能です。

杉田氏:具体的に、どんな場面で使っていますか?

根岸氏:今は『アイドリッシュセブン』のシナリオ第2部を制作中ですが、イラストを検索すると第1部のものもまとめて出てきてしまうんです。そこをラベルで管理して、第2部だけを抽出するようにしています。

下岡氏:「WORK STATION」では使いにくさを感じていた機能も、使いやすくなりましたね。投稿されたデータを画面サイズに合わせて拡大・縮小して見られる機能もありがたいです。

杉田氏:あとは「見たよボタン」もぜひ使ってもらいたい機能ですね。

下岡氏:「見たよ」も便利です。メッセージスレッドに入ると「見たよ」というボタンがあり、わざわざコメントを書かずに確認したことを伝えられるのです。さまざまな人と連絡を取り合うので、助かっています。監修中や確認中、納品済みといったステータス管理もでき、誰がどこまで終わっているかがひと目でチェック可能です。

 

――:ひと目でチェックできるのは、メールにはない魅力ですね。

下岡氏:そうですね。メールだと過去の文面も追わなければいけませんし、返信する一手間も加わります。「見たよ」のマークを見た時点で、こちらは必要以上に追わなくていいという感覚で使っています。

――:逆に使いにくさを感じる部分はありますか?

根岸氏:正直なところ、まだ見にくいところはあります。例えば画像を一覧で見るとき、横にズラッと広がるのですが、そこでの使いづらさは感じます。

下岡氏:「セーブポイント」のすごいところは、不満点をMUGENUPさんに伝えると、早い時には数日後には改善されているんです。杉田さんをはじめ担当者の方は積極的に意見を聞いてくださるので、積極的に要望を送るようにしています。


――:そのような不満点を定期的に汲みとってもらう機会は作られているのですか?

下岡氏:私の場合は頻繁に要望を送っていて、ちょっとした不満が見つかっただけでも、気軽に連絡させてもらっています(笑)。

そのおかげもあって、個人的には不満はほとんど潰れましたね。だからこそ今後は、他で使われている方にもいろいろな意見を挙げてほしいです。


――:イラストデータのやり取りとなると、他の会社や外部のイラストレーターも関わってくると思います。

下岡氏:また、外の会社さんにADをお願いするケースもあるのですが、外部スタッフも私たちと同じ感覚で「セーブポイント」を利用してもらっています。メールの件数が減ったことは私たちとしてもありがたいですね。「セーブポイント」に備わっているメッセージ機能と、さかのぼりやすいログや検索機能のおかげで、全体が効率化した印象です。

――:メールの手間が省けるというのは、効率化を目指すうえでもかなり大きかったのですね。

下岡氏:メッセージの履歴はメールで送られてくるので、受信トレイは結局溜まっていくんですけどね(笑)。

とはいえ、弊社の専用ストレージでデータを送受信する場合は、メールか、あるいはSkypeなどのソフトを利用して細かい発注を行なわなければいけません。「セーブポイント」だとデータを見ながら、その場で会話ができるので、かなり楽になりましたね。また個人的には、フォトショップなど他のソフトを立ち上げる必要もないので、デスクトップがスッキリしたまま作業ができるのも嬉しいです。



 

■迅速な修正対応も魅力のひとつ


――:「WORK STATION」から「セーブポイント」に切り替える際、苦労した点はありましたか?

下岡氏:使い方が変わった部分は覚え直す必要があったものの、データの移行という意味ではとても簡単でした。「WORK STATION」と思想が似ていることはもちろん、MUGENUPさんも移植作業をがんばっていただいたおかげで、スムーズに作業に入れました。

――:当時からMUGENUPさんの導入支援があったのですね。

下岡氏:ええ。当時は杉田さんではなく、イラスト制作部門の方でお世話になっていた大崎さんという方でしたね。とても熱心に関わっていただき、導入時にかぎらず熱心に意見を聞いてくれましたので、苦労はまったくありませんでした。

杉田氏:弊社では「セーブポイント」の提供のほかに、制作の面でも携わらせていただいています。

下岡氏:制作の中でも「セーブポイント」を熟知している人がいるおかげで、分かりやすさも格段に上がっています。そういう意味では、知らず知らずのうちにMUGENUPさんのフォローを受けているケースがあるのかもしれません。


――:『アイドリッシュセブン』の中では、具体的にどのような場面で「セーブポイント」が活躍しているのですか?

根岸氏:背景や立ち絵、イベントスチルなど多岐にわたります。もちろん、立ち絵の表情もすべて「セーブポイント」を介して制作されています。担当の方とも二人三脚で制作しましたね。


メインストーリーの部分では、ほぼすべてで「セーブポイント」が関わっています。会話のシーンでは当然表情に変化がありますが、喜怒哀楽のほか、シーンによっては涙を流したり、頬を染めたりと細かいところまで手を加えることができました。
 

――:ほぼすべてとなると、管理するデータの数も相当なボリュームになりますよね。

根岸氏:物量としては登場人物が約15人、背景も全20章の中で大阪や名古屋といった地方から自室まで、さまざまな内容があります。かなりの量なので、セクションごとに「セーブポイント」内でラベルを分け、それぞれにADを付けて管理するようにしています。

扱うイラストの枚数が多ければ、チェックが煩雑になりがちなので、大型のプロジェクトであればあるほど便利になるツールだと思います。


――:今後はグッズ展開ですとか、ゲーム以外でも活用できるのではないでしょうか。

下岡氏:『アイドリッシュセブン』の場合は印刷物も多いので、最終的には実際に刷ったものを見る必要があります。しかし、その途中で色の位置などを指示するときには使えそうですね。

根岸氏:ゲームでも使用している立ち絵はすでにグッズでも展開しているので、その意味では、最初からグッズでも活躍していると言えるかもしれません。

 

――:ここまでのお話でも不満点が話題に出ていましたが、今後のアップデートではどんなことに期待したいですか?

下岡氏:細かいところで改善すべき点はあるものの、私個人としてはかなり役立っています。また、これからも良くなり続けていくことは十分分かるので、これからも使っていきたいです。

根岸氏:大きな使い方としての不満点は、確かにほぼなくなった印象です。あとは本当に細かい部分を修正してもらいたいですね。

杉田氏:細かい部分については、近いうちにまだ活用しきれていない機能のご紹介と合わせてヒアリング会を開いて意見を伺えたらと思っています。

下岡氏:私みたいに監修をするだけなら不満がなくても、より頻繁に使うADだと、職種ならではの意見が出てくるかもしれないですからね。

杉田氏:根岸さんから「とっても使いやすくなりました!」と言ってもらえるようにがんばります(笑)。


――:普段から不満点や意見は伝えていると思いますが、どのくらいのペースで直してくれるのですか?

下岡氏:結構なハイペースですし、こちらが言う前に直してもらっているものもあるくらいです。以前あったケースとしては、ToDo管理機能を表示すると、閉じれない…。閉じるボタンがなかったんですね。これを伝えたところ、ちょうどリリースタイミングだったようで3日後には修正が入り、右隅に閉じるための×ボタンが付いていました。
 

杉田氏:基本的には2週間に1度のペースで何らかの改修を行っています。それとは別に、新機能を追加する大幅なアップデートも近々計画しているところです。

――:知らない間に良くなっているイメージなんですね。

下岡氏:その点に関しては、私たち以外も意見を言っているおかげなんだろうと思います。また、便利な新機能が追加された際にはしっかり伝えてくれて、それは自信がある機能なんだなと思いながら見ています(笑)。

杉田氏:細かい改修内容はお伝えしないようにしないと、逆にすごいボリュームになってしまうので(笑)。最近は対応の速さがお客様に浸透してきたのか、どの会社さんもどんどんご意見を伝えてくれるようになりました。本当に嬉しいことです。

これは下岡さんと根岸さんも同じです。 また、弊社のイラスト制作チーム誰に聞いてもそんなお二人と一緒に『アイドリッシュセブン』の開発に携われることが楽しい、やりがいがあると言っています。今後も「セーブポイント」もイラスト制作も、お二人とチームとして作っている意識のもと、がんばっていきたいです。

下岡氏:今後も息の長い付き合いになると思いますし、私としても一緒にがんばっていきたいですね。その分、文句をいう機会もあるかもしれません(笑)。


杉田氏:よろしくお願いします!
 
(取材・文:ライター ユマ)


 
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