【ドリコム決算説明会】オリジナル路線からIPタイトル中心に転換進む 「投資局面から収益化局面へ」 12月単月黒字、4Qは営業黒字の見通し

ドリコム<3793>は、1月28日、第3四半期累計(2015年4~12月期)の決算発表を行うとともに、東京都内で証券アナリスト・機関投資家向けの決算説明会を開催した。

発表した決算は、売上高48億8800万円(前年同期比13.2%減)、営業損益3億1900万円の赤字(前年同期3億2400万円の黒字)、経常損益3億2200万円の赤字(同3億0700万円の黒字)、最終損益6億8900万円の赤字(同1億2700万円の黒字)だった。

また、第3四半期(10~12月期)をみると、売上高15億5800万円(前四半期比QonQ11.2%減)、営業損益2800万円の赤字(前四半期8500万円の赤字)、経常損益2200万円の赤字(同8900万円の赤字)となり、減収・営業赤字幅が縮小した。

最終損益は前四半期の6400万円の赤字から4億7100万円の赤字に拡大したが、これは『崖っぷちバスターズ』と開発中のオリジナルタイトルについて減損処理を行ったことによる。これはIPタイトルを中心にしたタイトル展開を行う方針に転換したことに伴うものとなる。開発中のタイトルがIPタイトルに転用できるかどうかは検討中とのこと。
 

決算説明会に臨んだ内藤裕紀社長(写真)は、「このタイミングで減損を行うと判断したのは、ポジティブな面ではポートフォリオが見えてきたことがある。相手のあることなので具体的なタイトルは出せないが、次の本決算では何からの情報が出せるかもしれない」と述べた。前回の決算発表時にIPタイトル中心に転換すると表明して以来、すでに取引実績のあるIPホルダーを中心に「お話をいただくことが増えた」という。次の本決算では何らかのアナウンスが出るかもしれない。加えて12月が単月黒字、第4四半期も黒字見通しとなるなど明るさのみえた決算だったようにみえる。


 
■12月単月の営業黒字化 オリジナルタイトルの減損で最終赤字幅拡大

第3四半期の状況を中心に決算を見ていこう。

まず、売上高をみると、売上高がQonQで11.2%減の15億5800万円だった。従来予想を下回ったという。ブラウザゲームが安定的に推移したものの、『崖っぷちバスターズ』を中心とするオリジナルのネイティブアプリや、『ジョジョの奇妙な冒険 スターダストシューターズ』、『ONE PIECE トレジャークルーズ』といった他社配信タイトルの売上が低下したようだ。
 

また、営業損益は2800万円の赤字と、前四半期の8500万円の赤字から大幅に縮小した。2015年12月に単体・連結の双方で単月黒字を達成したという。「外部委託業務の内製化や業務プロセスの見直しなど、小さなコスト削減の積み重ねを徹底したことで収益を改善した」とコメントした。こうした取り組みがフル寄与する第4四半期においては四半期ベースでの黒字転換が見込まれるとのこと。
 

この1年ほど、オリジナルタイトルの開発と、広告事業への投資を行ってきたが、この二重の投資に伴い収益性が悪化してきたことがみてとれる。ゲームに関してはオリジナルタイトルからIPタイトルへのシフト、そして、広告メディアについても投資フェーズから収益フェーズに移行する計画で、第4四半期以降、「収益を伸ばす局面に入ってきた」。
 

最終赤字は前四半期の6400万円の赤字から4億7100万円の赤字に拡大した。オリジナルタイトルからIPタイトル中心にする方針転換した同社だが、これに伴い、『崖っぷちバスターズ』で1億4500万円、そして、開発中の新規オリジナルタイトル2本(合計2億1400万円)の減損処理を行ったという。さらに、第4四半期にはプロジェクト整理費用として8000万円程度を計上する予定。
 


 
■IPタイトル中心にタイトル展開に 開発体制も変更

説明会では、IPタイトルの獲得状況への質問が目立った。具体的なタイトルは明示できないとのことだが、内藤社長は、2017年3月期の第2四半期以降にリリースするIPタイトルが揃いつつあることを示唆した。「IPタイトル中心の路線に変更すると発表して以来、既存のパートナーを含む様々なIPホルダーからスマートフォンゲームの取り組みへの打診が増えている」「だいぶ良い形で進捗している」という。2017年3月期の第2四半期以降、リリースしていく考えだ。

また開発体制も大幅に変更する。自社開発をメインで行っていく体制から、外部の開発会社と組んでいく考え。「昨今、開発費やマーケティングコストが高騰していることはIPホルダーも強く認識している。このため、どちらかが開発費とマーケティングコストを全額負担するのではなく、お互いにリスクを分担していくようになるだろう」と述べた。『崖っぷちバスターズ』に関しては、第4四半期から開発リソースの新規IPタイトルへの移行を行う。

このほか、IP獲得条件の変化への質問も出た。IPタイトルへの注目度が上がる中、かつてのように獲得費用が高騰しているのではないか、という質問だ。これに対し、内藤氏は「IPホルダーは、必ずしも収益性が最大化することを望んでいない。それよりも、長くIPを育てるかという観点を重視している面もある。金額より、作品に愛を持って一緒に作っていける会社かどうかも評価ポイントになる。」と回答した。ドリコムは、ブラウザゲームの時代から手がけてきた実績もあり、「その点はポジティブにとらえてもらえている」と述べた。
 


 
■トピックス

『フルボッコヒーローズ』に関しては、『GOD EATER』と『鋼の錬金術師 FULLMETAL ALCHEMIST』とのコラボなどを実施した。不定期にコラボを行ってきたが、運用体制の整備が進み、毎月コラボが行える体制が整ってきたそうだ。2月から始める『Fate』とのコラボについては、同社でも期待をしている。
 

動画広告サービス「DreeVee」については、順調に立ち上がっているという。動画広告サービス「poncan」をリニューアルしたもので、これにともない、様々な手法での動画広告掲載が可能となり、従来の主要サービス提供先であったEC・通販企業をはじめ、アプリデベロッパーなど、幅広い広告主へのサービス提供が可能になったという。また広告の視聴回数も移行後、回復してきたことがわかる。
 

学習サービスについては、『えいぽんたん』については、200万ダウンロードを突破した。これを機会にユーザーアンケートをとったところ、TOEICを受けた人は平均で95点アップしたほか、1週間使い、その後、半年使い続けたユーザーは64%と驚異的な数字となった。単語の習得数も3000語となった。高校3年間で習得すべき単語に相当するものだ。

「英語教育に投資しているわけではなく、スマートフォンを使った新しい教育に投資してきたと思っている。これが確立し、いろいろな教科、ターゲットに拡販していけるフェーズに入ったのではないかとみている。楽天との合弁会社でやっているが、より多くのユーザーに売り込んでいきたい」と述べた。今後、リスニングアプリ『きこえ~ご』も強化する。
 

また、マーケティング・プラットフォーム「アソビフェス」の展開も準備しているという。ドリコム内部で使うために開発してきた、ゲームアプリのプロモーションに使えるツールを外部に開放するという。「レイドキャンペーン」、「投票キャンペーン」、「アンケート」の3つのキャンペーンをパッケージ化して無料で提供し、リリース後は拡張していく予定。ゲーム運営会社がウェブと連動したキャンペーンが簡単に打てるもので、「マーケティング担当者のいない会社や、リソースの少ない会社に利用していただきたい」。




 
(編集部 木村英彦)
株式会社ドリコム
http://www.drecom.co.jp/

会社情報

会社名
株式会社ドリコム
設立
2001年11月
代表者
代表取締役社長 内藤 裕紀
決算期
3月
直近業績
売上高108億円、営業利益22億8100万円、経常利益21億9200万円、最終利益11億5900万円(2023年3月期)
上場区分
東証グロース
証券コード
3793
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