【インタビュー】「RAGEをモバイルe-Sports大会の先駆けにしたい」 CyberZ山内社長がイベントの振り返りと今後の展望を語る



2016年のスマートフォンゲーム業界の注目テーマとして、「e-Sports」をあげる人は少なくない。昨年来より、e-Sportsの大会が散発的に開催されるようになっているなか、先日開催された『Vainglory(ベイングローリー)』のe-Sports大会「RAGE」がひときわ注目を集めた。イベントの規模やMOBAゲームのイベントであることなどもさることながら、本格的な格闘技興行のようなイベント運営と盛り上がりとなったのだ。今回、イベントの企画・運営を行ったCyberZの山内 隆裕社長にインタビューを行い、イベントを終えての振り返りや、今後の展開について話を聞いた。


 
■大会を終えての感想

――:まず、先日開催された「RAGE」ですが、非常に大きな盛り上がりをみせました。まず、イベントを終えての感想をお願い致します。

初めての開催でしたので、良かったところと今後に向けての改善点があったと思います。まず、良かったところをあげておきますと、選手にフォーカスしたムービーや、イベント中の演出にこだわったことで、かなり洗練した雰囲気にできていたかと思います。僕ら自身もゲームが好きですし、会場にも『Vainglory』の好きな方に集まっていただき、非常に一体感が出て盛り上がりました。

一方、改善点としては、我々自身が大規模なイベント運営に不慣れなところがありましたので、ところどころ間延びしてしまうところがあった点です。間延びしたことによって、会場の盛り上がりの波を十分につくれないところもありました。何か予定外のことが起きるとオペレーションの判断に迷い、対応が遅れてしまうことがありました。今回の改善点は次にいかし、今後もエンターテインメントの空間としてより良くしたいですし、より洗練されたものにしていきたいと考えています。

 


――:なるほど。会場に物販スペースがないなと思ったんですが。

会場のスペース問題もありますし、初めてのイベントでオペレーションにも不安がありましたので、今回はあえて設置しませんでした。次回以降、導入していきたいと思っています。


――:お考えはあったんですね。とはいえ、経験としては非常に役立ったのではないでしょうか。

当社ではe-Sports大会の運営経験がないので、今回様々なパートナーさまと一緒にやりましたが、非常にいい経験ができました。本当はもう少し会場に人が入れるようにしたかったんですが、初めてのイベントでしたので、まずはあの規模にしました。当日は、会場の外で「OPENREC.tv」にて試合の様子をご覧になっていた方も多かったので申し訳ないと思っています。次回はもう少し大きな会場でやりたいと思います。


――:参加されたチームと、大会の観戦者はどのくらいだったのでしょうか。

予選には60チームが参加しました。秋葉原の決勝大会にコマを進めたのが4チームで、特別ゲストが1チームです。準決勝と決勝戦については観客など200名弱にお越し頂きました。定員は150名を見込んでいましたので、当初の予想を上回る方に来ていただきました。初めてのイベントでチャレンジとなりましたが、やってよかったなと思います。社内の運営メンバーも本当によく頑張ってくれました。


――:日本の選抜チームが、エキシビジョンマッチで『Vainglory』の世界王者と対戦して勝ったようにトップクラスのレベルは高いものがありました。全体的なプレイヤーのレベルはどのくらいにあると見ていますか?

プレイヤーのレベルは、とても高い水準にあります。ただ、世界レベルと比較すると、まだまだ伸びしろが大きいと感じています。プレイヤーの強さで重要なのは、スキルと経験、マインドの3つだと我々は考えています。

スキルに関しては、まだ世界レベルには及ばない印象です。局面を判断して集団戦で一気に攻勢をかけるといったことや、ある種の「狡猾さ」が足りないかもしれないと感じます。経験に関してももっと増やしていく必要があります。先に1勝したのに、連敗して試合を落とすといった場面もありました。多くの人が集まる現場で、冷静に、普段どおりプレイするには、ある種の"場慣れ"が必要です。日本では、e-Sports大会のように人に見られながらゲームをプレイする機会がまだ少ないので、当然かもしれません。「RAGE」を継続的に開催することで、プレイヤーのスキル向上や経験を増やしていく場を提供していきたいです。

また、マインドについてはとても強いものを持っています。エキシビションマッチとはいえ、日本の選抜チームが世界王者に勝利しました。途中まで押されていて、私も内心どうなるかと思いましたが、一気に逆転しました。日本人でも世界で勝負できるという自信を持てたのではないでしょうか。

 


――:エキシビションマッチは、序盤、日本側が不利な状況でしたが、集団戦で形勢逆転したのは印象的でしたね。あと、そもそもですが、どういう経緯で『Vainglory』で大会を実施することにしたのでしょうか。

『Vainglory』は、モバイルのMOBAゲームとして世界的に人気になりつつあるのは確認しており、きっかけは開発元のSuper Evil Megacorpのユン・テウォンさんとお会いしたことです。後日、私もSuper Evil Megacorpの代表ボー・デイリーさんとお会いし、ゲーム開発にかける情熱や考え方をお聞きする一方、当社もゲーム業界に対する情熱をお伝えし、そして『Vainglory』を「RAGE」の初回タイトルとしてやろうと決めました。「RAGE」を成功させるためにはゲーム側の協力体制やe-Sportsに対する熱量も重要だと考えていたので、Super Evil Megacorpとは良いチームをつくれたと思っています。


――:「RAGE」について、Super Evil Megacorpからどんな感想を聞いていますか?

今回のインタビューのために感想をお聞きしておきました。
 
日本で『Vainglory』の成長が見られ、とても嬉しく思っています。常に各国のコミュニティに寄り添う努力をしてきたからこそだと思っています。ローンチ以来『Vainglory』は成長し続け、「RAGE」が日本の競技シーンに大きな貢献となったことはとても幸いです。e-Sportsが認知されるには時間がかかることは承知しており、日本ではその旅が始まったばかりです。これからも日本のコミュニティやe-Sportsパートナーと共に歩み続け、日本での成長を続けたいと考えています。


――:ゲーム業界の方も会場にいらしていましたが、反響はいかがでしたか。

イベント開始前は、CyberZが何かイベントをやるという感じの雰囲気だったように思いますが、実際に会場に来ていただくと、「こんな感じでやるんだ。これはスポーツだね」「どこか内向的で、閉ざされたゲームのイメージを払しょくする大会で、ポテンシャルを感じた」という声をいただきました。


――:試合前のビデオもすごく凝っていましたよね。格闘技興行に近い手法で、ここまでやるのかと驚きました。e-Sportsの普及に関しては、大規模な大会が注目されがちですが、草の根の取り組みも重要になると思います。その点に関する取り組みは。

この点はまだ行っておらず、今後の課題です。「OPENREC.tv」の開発スケジュールをお話しますと、今年の春頃から一般ユーザーの方が動画投稿をできるようになります。その際、大会の開催を推奨していく予定です。申請していただければインセンティブがもらえるようにしたり、当社から賞金を出したり、といったことも考えています。あとは、メーカーの方やスーパープレイヤーを招いて、オフ会なども行って盛り上げていきたいですね。一般ユーザーの方との接触する機会をできるだけ増やしていきたいと考えています。


 
■e-Sportsの経済効果

――:ここで少しビジネス寄りのお話になるのですが、広告代理店である御社がなぜe-Sportsに乗り出そうとお考えになったのでしょうか?

確かによく聞かれますね(笑) 当社はスマートフォン広告の代理事業が主力ですが、ゲームアプリのシェアが高く、取引関係にあるゲーム会社さまも多いです。当初は、広告代理業をメインにしてお付き合いをさせていただきましたが、次第に実況主を使ったイベントや、原宿にあるAmebaスタジオを使った放送などをやらせていただくようになり、社内にもゲーム動画に精通する人材が増えてきました。社内にはエンジニアやクリエイターも在籍していますし、代理事業だけではもったいないと思い、ゲーム動画配信プラットフォーム「OPENREC.tv」を開発しました。非常にいいサービスができたのですが、配信するコンテンツが少ない状況でした。そこで、世界的に有名な格闘ゲームの大会などの日本大会なども考えたのですが、あえて自前で「RAGE」を立ち上げることにしました。


――:e-Sportsの収益モデルに関してはどういった形になるのでしょうか。まだ収益はほとんど出ていない状況かと思いますが...。

そうですね。今回は第一回目だったので試験的な側面もあり、収益よりは大会のクオリティを重視していました。今後は収益の上げ方として、チケット収入、物販、スポンサー、他メディアでの放映権収入などが考えられると思います。「RAGE」の開催を通して色んな企業さまからお声掛け頂いているので、黒字にすることはそんなに難しくないかなと考えています。

ただ当社としては、「RAGE」単体で、大幅な売上や利益を出していくといよりは、「OPECREC.tv」の一コンテンツとしてトラフィックを増やしたり、e-Sportsやゲーム業界の盛り上がりに貢献したいと考えています。e-Sportsが盛り上がり、市民権を獲得すれば、当社だけでなく、全ステークホルダーにもメリットが出てきます。その一助になれればと思います。



――:ゲーム会社にとってのメリットはどういった点にあるでしょうか。

ゲームアプリのクオリティが高度化し、開発期間が長くなり、開発費が高騰しているのが現状です。また、ユーザーも色んなゲームに触れているため、新作をだせばある程度売り上げが立つという時代ではなくなりました。そうなると、戦略として、以前のようにいくつもタイトルを出すのではなく、長くゲームを運営しないと回収できない状況になりつつあります。ユーザー同士のつながりを作って、ユーザーの動きを活性化しつつ、その"渦"を広げていくことが重要です。

その意味で、オフラインでのつながりや、ゲームの動画を見てコミュニティで話し合うといったことも今後、大きな意味を持ちます。ゲームアプリの会社は、今年は自前でイベントをするところが増えてくると思うのですが、「RAGE」はハイスペックでクールな空間を用意していますので、ぜひご利用いただければと思います。当社は、アメリカ・アジアに支社があり、海外の企業ともお付き合いがありますので、海外で何か大会をやる際もお手伝いできます。



――:「RAGE」の今後の展開を教えて下さい。

今年は「RAGE」の開幕年度で、3ヶ月に1回の頻度でやろうと思っています。『Vainglory』だけでなく、格闘ゲームやFPS、スポーツ、パズルなど、MOBAに限らず、色々なジャンルのゲームで実施したいと考えています。さらに、年末にはグランドファイナルという形で大きな大会をやりたいですね、ぜひご期待いただければと思います。今回の「RAGE」をご覧になり、ゲーム業界の方々からのお問い合わせが増えました。固定概念にとらわれず、新しいことにチャレンジしたいと思っています。
 


――:e-Sports向けのゲームも増えてきましたからね。

そうですね。e-Sports向けの新作ゲームをリリースする会社が今年は多いとお聞きしています。オンラインでの同時対戦に慣れてくるでしょうから、e-Sports普及へのトリガーになるかもしれません。


――:最後に読者へのメッセージをお願い致します。

当社は今年をe-Sports元年にしたいと考えています。ゲーム関係のオフラインのイベントで、スポーツのような大会はありませんでした。「RAGE」は、その先駆けになりたいと考えています。今後、「OPENCRC.tv」での配信に関しても、様々なゲーム、番組を配信する予定です。ゲーム業界全体を盛り上げられるような取り組みをどんどんやっていきます。ぜひご期待いただければと思います。


――:ありがとうございました。
 
(編集部 木村英彦)


 
■関連サイト
 

RAGE公式サイト

株式会社CyberZ
https://cyber-z.co.jp/

会社情報

会社名
株式会社CyberZ
設立
2009年4月
代表者
代表取締役社長CEO 山内 隆裕
決算期
9月
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