"買収と再生のオンリーワン企業"マイネットが初の決算発表 売上高2.9倍・営業利益72倍と急拡大 リビルドのノウハウとCroProを活かし高成長を狙う



マイネット<3928>は、2月10日に2015年12月期の決算を発表し、売上高29億6400万円(前の期比2.9倍)、営業利益1億4500万円(前の期比72倍)、経常利益1億3100万円(同231倍)、当期純利益9500万円(同9.4倍)と大幅な増収・増益を達成した。売上高・利益とも昨年11月の新規上場時に開示していた業績予想を上ブレての着地となった。今回、マイネットの上原仁社長(写真)が当サイトの取材に応じ、「投資家や市場関係者の皆さんとの最初のお約束(業績予想)を果たすことができて嬉しい。次のお約束もコミットしている」と述べ、2016年12月期の業績予想に達成に意気込みを示した。
 


マイネットは、2012年9月にmixi版『ファルキューレの紋章』をリリースし、ソーシャルゲーム・スマートフォンゲーム市場に参入した。その後、複数の自社開発のモバイルゲームの提供を行いつつ、2014年からは現在の主力事業となるスマートフォンゲームのリビルド事業を開始した。リビルド事業では、すでに運用している他社のスマートフォンゲームの権利を買い取って運用し収益をあげていくほか、レベニューシェアなどの形で協業で運用を行っていくという。直近の業績拡大は、このリビルド事業がエンジンともいうべき役割を果たした。


 
■買収型タイトルが伸び大幅増収増益に ほぼすべてのタイトルが利益を生む

まず、決算の状況から見ていこう。売上高は、同2.9倍の29億6400万円だった。この期では、13タイトルの運用を開始し、合計19タイトルの運用を行った。新規タイトルのうち、8タイトルが買収案件だった。1タイトルあたりの売上高は大ヒットとはいえないが、「ミルフィーユ」のように積み上げることで大きな売上を実現した。特に好調だったのは買収型タイトルだ。マイネットは「運用」を強みとし、運営移管後、安定した売上を出しているという。『ファルキューレの紋章』と『エンジェルマスター』といずれも長く運営してきたタイトルだが、四半期ベースでの安定した売上となっている。
 



【リビルド事業の主要タイトル】
・レジェンド オブ モンスターズ
・リバース・ドライヴ
・神姫覚醒メルティメイデン
・ドラゴンジェネシス
・幻獣姫
・騎士姫
・ドリランド 魔王軍vs勇者!
・ボーダーブレイクmobile


また、営業利益については、同72倍の1億4500万円となった。「先行投資が終了し、利益の出せる体質となった」という。運用タイトルの増加に伴い、GoogleやAppleに支払う使用料、外注費、人件費などが増えたものの、増収効果で吸収した。上原氏によると、運営する19タイトルのうち、実に18タイトルで利益が出ているそうだ(利益の出ていない1タイトルは、エンディングに向けて運用を行っているという)。また、このような利益体質を実現したのは、アプリ相互送客ネットワーク「CroPro(クロプロ)」の貢献も大きいとのこと。

「CroPro」とは、アプリ間で相互にユーザーを送り合うネットワークで、セガゲームスの「Noah Pass(ノアパス)」に似たサービスだ。特徴としては美麗系・美少女系ゲームに強いことがあげられる。SDK(ソフトウェア開発キット)をアプリに組み込まなくても利用できる点も特徴で、2月16日現在、68のアプリ開発会社が参加しているという。参加会社のアプリ内に広告を掲載し、参加企業同士でユーザーを送り合う。当然、マイネットも参加しており、1.6億円もの広告宣伝効果があったそうだ。この結果、売上に対する広告宣伝費の比率は0.4%と、同業他社に比べて著しく低いものとなっている。スムーズに運営移管・再生・運用するというだけでなく、自前の集客手法を持っている点が競争優位性となっているのだ。
 
▲運営タイトルの増加に伴い、PF使用料や外注費、人件費などが増えた。こうしたなか、広告宣伝費が前年比で減少しているのは特筆事項だろう。売上高に対する広告宣伝費の比率はわずか0.4%である。

 


ちなみに、ゲームの運営を終了するタイトルについては、マイネットでは、単にゲームの運用を数カ月前に予告してサービスを終えるというわけではなく、ゲームのストーリーをきちんと終わらせ、大団円を迎えてから終了するというポリシーだそうだ。だからこそ、「終了」ではなく、「エンディング」といっているのであろう。ゲームがエンディングを迎えた後も引き続き「CroPro」で提供しているゲームで遊んでもらいたいという意図もあるようだ。
 
▲買収タイトルの増加に伴い、固定資産が822%増の532億円に急拡大した。


 
■2016年12月期も売上・利益倍増を計画

続く2016年12月期通期の業績については、売上高60億円(前期比2.0倍)、営業利益3億円(同2.0倍)、経常利益2億9000万円(同2.2倍)、当期純利益2億円(同2.0倍)と引き続き大幅な増収・増益を見込んでいる。前の期に移管したタイトルがフル寄与するほか、目安として月1回ペースで買収を行い、一定規模のグロスのある運用タイトルを中心に増やしていく考えだ。また、他のスマートフォンゲーム会社と異なり、新規タイトルの開発は行わないとのこと。上原氏は、ここで上場したメリットを強調した。「ビジネスの性質上、先行して買収するのに資金が必要になる。今回の新規上場で資金調達が行えただけでなく、上場によって信用も上がり、負債を活用しやくなった」という。
 


このほか、相互送客ネットワーク「CroPro」のマネタイズへの取り組みについて聞くと、直接的に売上を生むサービスではないものの、当面、有料化などは行わない考えを示した。あくまで収益は、ゲームの運営で稼いでいく、というわけだ。マイネットでは、「CroPro」について、あくまでアプリ開発会社同士の「互助会」的な性質を持つサービスととらえており、引き続きアプリ開発会社の参加を促していくことに注力していくという。実際、有料化は行わなくても、15年12月期の決算を見てわかるように、広告宣伝費を抑制することで、"営業利益を生み出している"ともいえるわけだ。

「買収と再生のオンリーワン企業」ともいえるマイネットだが、近年、オルトプラスやグリーなど「セカンダリー市場」に参入する企業が増えるなど、競合が増えている状況にある。こうした状況に対し、上原氏は、「市場規模が急拡大しており、当社だけでカバーできる市場でもないため、一緒に市場を盛り上げていきたい」と歓迎の意を示した。ただ、すでに運営しているゲームの運営を引き継ぐことは、新規でアプリ開発を行う以上の難しさがあるため、「ユーザーの信用を失わないためにも、やる以上は片手間ではなく、エース人材を割り当てるなど本気で取り組んでほしい」とコメントした。

他社に先んじて参入し、モバイルゲームの「セカンダリーマーケット」の創出に貢献したマイネットだが、リビルド事業で蓄積してきたノウハウと、「CroPro」の集客力という強みを活かして引き続き高成長を狙う。
 

▲スマートフォンゲームで生み出す営業利益4億円のうち、1億円を新規事業に投資する。ただし、具体的に投資する内容についてはまだ決まっていないとのこと。


 
(編集部 木村英彦)
株式会社マイネット
http://mynet.co.jp/

会社情報

会社名
株式会社マイネット
設立
2006年7月
代表者
代表取締役社長CEO 岩城 農
決算期
12月
直近業績
売上高87億1700万円、営業利益1億6800万円、経常利益1億2500万円、最終利益1億4300万円(2023年12月期)
上場区分
東証プライム
証券コード
3928
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