【インタビュー】タカラトミーアーツ大庭氏が振り返る『プリパラ』2年目の挑戦…「ゲーム・アニメとしてでなく"コンテンツ"として拡大した」



アーケード向けガールズ筐体『プリパラ』は、2014年7月に登場以来、爆発的なヒットで注目を集めたが、2年目となる今年はどういった取り組みを行ったのか。今回、タカラトミーアーツの『プリパラ』プロデューサーの大庭晋一郎氏にインタビューを行い、2015年の取り組みと成果、そして、今後の展開について話を聞いた。昨年に続くインタビューとなる。


 
■ドリームシアターライブは大成功、新しいフォーマットになった

――:2015年の展開をまず振り返っていただきたいのですが、いかがだったでしょうか。

プリパラのセカンド・シーズンが始まった2015年4月以降を振り返りますと、コンテンツ全体としてみると、皆様のご協力もあって、3月12日の公開される劇場版を計2回、1周年記念ライブ、クリスマスライブ、マクドナルドさまとのハッピーセットを計2回、ミュージカルという新しいチャレンジを行いました。「面」だけでなく、「ボリューム」も大きくできた年だったと思います。ファーストシーズンの時も映画やライブはできましたが、『プリパラ』というコンテンツが多くの方にご注目いただき、広い展開ができました。拡大化という目標は達成できたと思います。


――:ゲームでも「ドリームシアターライブ」の導入などチャレンジしましたよね。

まず「ドリームチケット(ドリチケ)」という、200円で大きなカードを出す仕組みを導入しました。100円で楽しめるところが筐体ゲームの大きな魅力ですが、もう100円払うと、1枚のカードに3つのコーデが入った特別なカードが出てきます。我々にとってもチャレンジでしたが、成功を収めたと思います。お客様からはドリチケが200円の価値があると認めていただき、今期のプリパラをプレイする際の目標として受け入れていただけたと思います。また、このスキームは他社さんにも注目していただいたのかもしれません。お金を入れることで、排出物の大きさが変わる仕組みを導入する動きが散見されました。新しいキッズ筐体のフォーマットができたと思います。
 


――:ゲームセンターの課題のひとつとして、客単価100円のタガをいかに外すかがあると思いますが、その意味でも重要な取り組みといえますね。ドリームシアターは段階を踏まないと遊べないものになっていますよね。いつでも遊べるようにはしなかったのでしょうか?

ご存知かと思いますが、3回ライブすると、扉が開いてドリームシアターライブができるようになります。ドリームシアターライブでは、通常のゲームプレイ以上にライブが豪華になり、非常に良いものが手に入りますが、毎回200円払うのは、お子様の経済的な負担が大きすぎるのではないかと考えました。お子様にとって、追加で100円を入れるという行為は、大人が考えている以上に重いことです。

がんばって3回ライブをしたから、ドリームシアターという扉の前に立っているという意味で、特別なライブに位置付けました。3回ライブをやって、気持ちが高ぶったところで遊んでいただきたいということです。ドリチケの希少価値を高めたかったという考えもあります。もちろん、夏休みなど期間限定で、ドリチケを最初から開放するサービスも行いました。最初に良いものだと認識していただいたうえで、今まで遊んでいただいたお客様に感謝の気持ちとして、最初からできるようにしました。



――:ドリームシアターライブは導入当初は3人ライブでしたが、途中から5人ライブになりましたよね。アニメのストーリーに合わせたのでしょうか。

ゲームが先行ですので、アニメの方に合わせていただきました。まず、5人チームにした理由を説明しますと、こちらはシンソフィアさんと打ち合わせした結果なのですが、プリパラの最も特徴的な遊び方は、トモチケ交換することで、実際の友達と一緒にアイドルチームを組んで、ライブが楽しめる点にあります。ゲームが2年目に入って、お子様に「プリパラがパワーアップしました!」という場合、なにがもっとも伝わるかというと、3人チームから5人チームになったことを示すことではないかと考えました。

ただ、このアップデートは、アニメ制作をお願いしているタツノコプロさんにとっては重要なことなんです。CGで3人チームを動かすのも大変なのに、5人チームを動かすとなるとさらに大変な仕事です。企画が固まった段階で、弊社、シンソフィアさん、タツノコプロのプロデューサーの依田さん、CGチームの方々と深く話し合いながら、ドリームシアターライブの開催頻度を決めていきました。



――:5人チームになったことで、遊び方やカードへの捉え方もだいぶ変わったんじゃないでしょうか。

5人チームにすることで、自分のキャラクターの"センター感"がよりでてきたように思います。「こういう5人チームにしたい」など、それぞれお子様が理想のアイドルチームを作って遊んでいただいているようです。トモチケの交換回数も増えますので、お子様同士のコミュニケーションも豊かになったのではないかと思います。ドリームシアターライブは、いつでも何回でもできるものでもありませんので、スキャンするときは慎重にトモチケを選ぶようです。自分を中心に友だちと一緒に描かれたカードがでてくるわけですから、思い入れをもっていただいているみたいですね。
 


 


――:引き続き「パキる」はプリパラのキー要素なんですね。ところで、ゲームセンターなどで見ていると、女子高生や女子大生もだいぶ遊んでいるように見えますね。

女子高生や女子大生の方々からもご支持をいただいています。タカラトミーグループのお家芸といいますか、リカちゃんから脈々とつながる着せ替えごっこの魅力をデジタル化できました。そして、女子高生や女子大生になると、コミュニケーションの範囲が小学生に比べて非常に広がりますよね。コミュニケーションを楽しむ手段として、トモチケ交換がより楽しめるのかもしれません。同時に、友だちとゲームをしたことを思い出として残したい方もいらっしゃるようです。また自分のマイキャラを愛している方も多いですよね。小さな子にとってのマイキャラはいわば自分の投影となりますが、女子高生や女子大生になると、自分の妹や娘に見えるようです。イメージでは、アニメでファルルに対するユニコンのように、マネージャーであり、親心で見ているような感じですね。


 
■3DS版は筐体との連動を重視 筐体未経験者にも訴求

――:ゲームとしてのチャレンジは、やはり3DSソフトを発売したことでしょうか。かなり好調のようですね。

おかげさまで非常に好評で、『週刊ファミ通』さんからシルバー殿堂をいただきました。筐体の開発を行っているシンソフィアさんが3DS版も担当されており、本当に100点満点といえる素晴らしい仕上がりだと思います。

筐体ゲームをこれ以上ないくらいの仕上がりで移植していただいただけでなく、ゲームのシステムの中に自分でサイリウムコーデをデザインして筐体に持って行くと、マイキャラに着せてライブすることができるという仕組みも入れていただきました。自分のデザインした衣装が筐体で使えるだけでなく、その衣装を着たマイキャラがプリントされて出てくるというのは、お子様にとって夢のようなことではないかと思います。夢のシステムをストレートに再現していることも評価された理由です。女の子のホビーメイク的な要素をシステムとして入れることができました。

 


――:3DSが出たことで筐体ゲームと食い合ってしまうのではないかと思ったのですが、そうでもないと。

実はそういったことは、我々も少し懸念しました(笑) いま申し上げたように筐体ゲームと連動するようになっており、最終的には施設に行ってゲームを遊んでもらえる流れは作れたと考えています。あとは、筐体ゲームは、どちらかというとお子様向けの場所で展開しておりますので、アニメを見てキャラクターは好きだけれども、筐体になかなか触れる機会のない方もいらっしゃいます。そうした方に3DS版を買っていただいているようなので、コンテンツとして人気が出てきて認知されてきていると思います。


――:運営にあたって、気をつけている点はありますか。

我々が筐体ビジネスを始めてから、10年くらいになります。そのなかで運営にあたって気をつけていることは、「お客様に感動を提供しましょう」ということです。イベントや大会を手厚く実施して、遊んでいるお客様と身近な距離で接触できる機会を大切にしています。そして、プリパラをやっているときにどうお客様に感動していただけるかを常に考えています。プリパラの好きな人が集まってコミュニケーションができた、友だちができたということもそうでしょう。筐体はプレイスビジネスですので、実際に筐体のある施設まで遊びに来ていただく必要があります。単にゲームと個人というだけでなく、そこに集まった人とコミュニケーションする楽しさもあるはずです。そのなかで生まれるのが感動だと思います。
 
▲『プリパラ クリスマス☆ドリームライブ』で行われたトモチケ交換会。プリパラガールズとして活躍するあいみぃさんがMCを担当し、トモチケ交換が活発に行われた。


――:データ分析のチームはいらっしゃるんですか?

SNSビジネスのような専門の分析チームは在籍しておらず、事業部のメンバーが出てきた数字を見ながら、実施したイベントがちゃんと遊んでいただけたのか、お客様に感動していただき、それが数字として出ているのかどうかを検証しています。


――:ゲームイベントはだいぶ頻繁に実施していますよね。

公式サイトをご覧になるとわかりますが、2~3ヶ月に1回のペースでイベントを行っています。プリパラに関しては、我々が実施するイベント以外にも、エイベックスさんや、ぴあさん、小学館さんなどが映画やライブ、ミュージカルなどを実施しています。そういった場でも、プリパラというコンテンツ全体を体感していただくため、アニメのイベントや声優さんのライブだけ行うのでなく、ゲーム大会やトモチケ交換会なども実施しています。我々とだけでなく、お客様同士のコミュニケーションも活発になっていると感じますね。


 
■台湾・香港でも「ロケットスタート」

――:話が変わりますが、海外市場でのチャレンジもはじめました。こちらも大きなチャレンジといえますね。

海外チームの活躍で香港と台湾でアニメの放送と筐体の稼動が始まりました。香港と台湾では筐体で遊ぶのは無料で、お客様にカードを別途、購入して遊んでいただく点が日本と異なっています。また、スマホのアプリを使って自分のキャラクターを育てたり、トモチケ交換を行ったりする点も異なります。面白いのは、ローカライズする際、カードの内容を全て現地の言語にするのではなく、日本語のままにしたことです。クールジャパンといいますか、日本へのあこがれのようなものがあるようですね。当社の海外担当部署が現地の状況やニーズ、価値観に合わせて仕組み全体をローカライズしています。
 


――:現地での感触はいかがでしょうか。

これも海外チームの担当から聞いたことですが、プリティーリズムは、台湾、香港でも人気がありました。日本の情報が現地にはすでに入っていましたので、プリパラへの期待値が高かったようです。デビューしたとき、「待ちに待った!」という感じで、現地の女の子はもちろん、キャラクターファンから大歓迎されました。ロケットスタートといえるかと思います。プリティーリズムからプリパラにシフトする際、日本ではつなぎの部分を用意しましたが、その事例も参考にしてもらえたようです。
 


あと韓国ではアニメはすでに放送が始まっており、筐体ビジネスに関してはこれからです。韓国でも実はプリティーリズムの人気がすごくあるんです。タツノコプロさんと、韓国のDONGWOO ANIMATIONさんというアニメ制作会社が共同で制作されており、彼らも「自分たちが作っている」という意識をお持ちです。プリティーリズム・レインボーライブのキャラクター商品は、日本よりも多く作られています。日本と同じように、プリティーリズムからプリパラへの橋渡しとなるアニメ「オールスターセレクション」を放送し、プリパラの主人公「らぁら」に感情移入してもらいながらシフトした状況にあります。


 
■今後の展開 アイドルごっこ遊びの楽しさをさらに追求

――:今後の展開を教えて下さい。

プリパラというコンテンツ全体で言うと、おかげさまでキャラクターコンテンツとして人気となるなか、従来の7~9歳のお子様だけでなく、4~6歳のファンも増えています。キャラクターものとして認知されていく中で、年齢層の低いファンも増えてきました。筐体は継続的に提供するビジネスですので、新規で遊んでいただける方も大切にしていきたいと思っています。
 


そのなかで、筐体ゲーム以外のニーズがあるのではと考えました。プリパラはもともとアイドルごっこをしようというゲームなんですが、そういったニーズを持つが4~6歳のお子様にあると考え、アイドルごっこが楽しめるマイクを発売することにしました。マイクは、アイドルアニメなので露出頻度が高いですし、「アイドルの命」といえるものです。筐体がメインの遊びなので今まではマイクへのニーズは少ないと思っていましたが、ファンの年齢層の変わり方を見て対応しました。それが「サイリウムジュエルマイク」です。

ただ、当社はガチャなどコレクションビジネスも得意としてしますので、マイクが光って音が鳴る機能に加えて、「ジュエル」というコレクション要素を導入しました。ハート型のアイテムのジュエルを入れることで、200種類以上のアイドルボイスが聞けます。レアなジュエルを入れると、アニメの変身シーンバンクとBGMが流れることもあります。ジュエルは、店頭でのパックやガチャとして発売する予定です。我々としてはマイクを買ってアイドル遊びをしておしまいではなく、低単価のコレクション軸を作って、継続的に遊んでもらうようにしました。

また、マイクには、ゲーム筐体とも連動する仕組みもあります。ジュエルの裏側にはゲーム用のQRコードがありまして、筐体で読み込ませるとゲームの中でボーナス点がもらえます。そして、ジュエルをマイクにセットしていくと、マイクのなかにパワーが貯まる仕組みもあります。パワーが一定量に達すると、8種類のレアコーデがゲームで使えるようにもなります。

 


マイクにはもうひとつ重要な機能があり、シグナル連動システムでライブなどのイベントでも使えるようにしたいと考えています。マイクへシグナルを発信すると、様々な発光パターンが楽しめます。これをイベント会場に持参していただき、ライブを応援しましょう、といった遊び方も可能です。一種のサイリウムのような使い方になりますね。これを軸に幅広い層にプリパラを展開していきたいと考えています。


――:なるほど。アニメもサードシーズンもらぁらが赤ちゃんを育てつつ、神アイドルを目指す展開になりますね。

はい。今年はゲームコンテンツだけのプリパラではなく、女の子の好きなものが全部詰まっているプリパラにしたいと考えています。アニメは、小学生アイドルのらぁらが女の子を育てるストーリーとなりますが、女の子の好きな3大要素は何かというと「おしゃれ」や「歌って踊る」に加えて、「おままごと」があります。今回、おままごとをプリパラの要素に入れました。女の子には、らぁらが赤ちゃんを育てるところに感情移入してもらいたいですし、お母さんにもみてもらえると嬉しいですね。赤ちゃんを育てることには、道徳的なものといいますか、学ぶことも多くありますから。
 


――:オリジナル映画「プリパラ み~んなのあこがれ♪レッツゴー☆プリパリ」ももうすぐ上映ですね。

はい。3月12日公開です。1月から発表しつづけたアニメ新シーズンの3人目の新アイドル発表の日でもあります。今回の劇場版はオール新作のオリジナルストーリーで今年度のプリパラ総決算となっている作品です。なので関係各社がプロモーションも含めて全力で情熱とパワーを注いでいます。特に制作現場のタツノコさんではTVアニメがクライマックスに向かう中、同時進行での作業になったのですが、関係者である自分も驚くほどのダイナミックな新ライブが作り上げられています。また、スケールが大きいプリパラアイドルの新曲、まさかと思うような新曲もあり、これらを劇場の大スクリーンで自分が観られる、お客さんに観て頂けるかと思うと今から劇場公開が楽しみで仕方ありません。

また、今回は映画公開の時期にあわせて全国のイオンモール等でプリパラを体感できるような施策を準備しております。映画だけでなくイオンモール全体でプリパラを楽しんでいただければと思います。



――:最後にゲームについてはいかがでしょうか。アニメと連動した形になるのでしょうか。

そうですね。ゲームについては、神アイドルグランプリがアニメで始まりますので、神アイドルを目指すためのシステムを入れます。詳細はまだお話できる状況ではありませんが、これから順次お知らせします。神アイドルを目指すというドキドキ・ハラハラがゲームでも体験できるようにします。ぜひご期待ください。


――:ありがとうございました。

 
(編集部 木村英彦)
  

 
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株式会社タカラトミーアーツ
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会社情報

会社名
株式会社タカラトミーアーツ
設立
1988年2月
代表者
代表取締役社長 近藤 歳久
決算期
3月
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