【イベント】異なる楽曲が混ざり合う刺激的なプログラムは”新感覚”…過去最高の動員数を記録したゲーム音楽交響楽団「JAGMO」の3月公演を取材


カヤック<3904>は、2016年3月5日(土)・6日(日)、昭和女子大学 人見記念講堂において、ゲーム音楽交響楽団「JAGMO」によるフルオーケストラ公演「伝説の狂詩曲 - The Legendary Rhapsody -」を開催した。

JAGMOは“ゲーム音楽を音楽史に残る文化に”というビジョンのもと、これまで高い芸術性を保持するオーケストラ公演を実施している。一方でカヤックは、去る2015年3月31日にJAGMOの全事業を譲受し、同社が持つコンテンツやクリエイティブの強みを活かして、JAGMOが開催した7月の夏公演をサポートし、満員御礼の大成功を収めた。本稿では、2016年3月公演であるフルオーケストラ公演「伝説の狂詩曲 - The Legendary Rhapsody -」の模様を取材(本稿は3月5日(土)夜公演の内容)。

「伝説の狂詩曲 - The Legendary Rhapsody -」公演プログラム
■『クロノ・クロス』より
「時の傷痕」
「死線」


■『クロノ・トリガー』より
「クロノ・トリガー」
「風の憧憬」
「時の回廊」
「王国裁判」
「カエルのテーマ」
「魔王決戦」
「世界変革の時」

■『サクラ大戦』
「檄!帝国華撃団」
「御旗のもとに」

■『MOTHER』より
「Eight Melodies」
「Pollyanna」
「Bein' Friends」
「Saturn Valley」
「摩天楼に抱かれて」
「SMILES and TEARS」


■『ロマンシング サ・ガ』より
「オープニング」
「四魔貴族バトル」
「四魔貴族バトル2」
「玄城バトル」

■『キングダムハーツ』より
「Dearly Beloved」
「NIGHT OF FATE」
「The 13th Struggle」
「Vector to the Heavens」

■『聖剣伝説 LEGEND OF MANA』より
「Legend of MANA ~Title Theme~」
「ホームタウンドミナ」
「滅びし煌めきの都市」
「彩りの大地」
「Pain the Universe」


■『FINAL FANTASY』シリーズより
・各公演共通
「ザナルカンドにて」(FINAL FANTASY X)
「ブリッツに賭けた男たち」(FINAL FANTASY X)
「雷平原」(FINAL FANTASY X)
「シーモアバトル」(FINAL FANTASY X)
「召喚獣バトル」(FINAL FANTASY X)

・3月5日(土) 昼公演限定
「閃光」(FINAL FANTASY XIII)
「Force Your Way」(FINAL FANTASY VIII)
「ハンターチャンス」(FINAL FANTASY IX)
「J-E-N-O-V-A」(FINAL FANTASY VII)

・3月5日(土) 夜公演限定
「ハンターチャンス」(FINAL FANTASY IX)
「J-E-N-O-V-A」(FINAL FANTASY VII)
「ビッグブリッヂの死闘」(FINALFANTASY V)
「ゴルベーザ四天王とのバトル」(FINAL FANTASY IV)

・3月6日(日) 昼公演限定
「閃光」(FINAL FANTASY XIII)
「Force Your Way」(FINAL FANTASY VIII)
「ビッグブリッヂの死闘」(FINAL FANTASY V)
「ゴルベーザ四天王とのバトル」(FINAL FANTASY IV)


 

■異なる楽曲が混ざり合う刺激的なプログラム…新感覚のゲーム音楽がここに


2015年2月に初のフルオーケストラ公演「伝説の交響楽団」、 7月には戦闘曲を中心とした「伝説の戦闘組曲」、そして10月には音楽祭をイメージした「伝説の音楽祭 - 勇者たちの響宴 -」を開催してきたJAGMO。季節毎にコンセプトを定めた”伝説”のフルオーケストラ公演第4弾のタイトルは、「伝説の狂詩曲 - The Legendary Rhapsody -」。“狂詩曲”に込められた意味合いは、実際に公演を聴いたことで解釈できた。こちらは後述していく。

さて、既存のフルオーケストラの形にとらわれないJAGMOは、オーディション形式で毎回選りすぐりの質の高いチームを作り、その確かな演奏力で、着実にリピーターを増やしている。また、ゲームユーザーが心躍るプログラム内容にも注目が集まっている。そんな前評判も奏功し、今回もチケットは早々に完売し、当日券の追加販売をするなどの盛況ぶりを見せた。
 

▲指揮者・吉田誠氏(写真右)、コンサートマスター・枝並千花氏(写真左)

開幕は、過去公演でも好評を博した『クロノ』シリーズの壮大なメドレー。本編同様、大海原の心地よい風を感じさせる『クロノ・クロス』のオープニングテーマ「時の傷痕」から始まり、美しい音色で観客を魅了した。そして、間髪入れずボス戦の曲「死線」に繋げて、フルオーケストラでしか味わえない力強い演奏力を披露。

続く『クロノ・トリガー』では、『クロス』の余韻を残しながらも、前作に立ち返るメインテーマからなるメドレーで観客の心を掴んだ。楽曲は、不安のなかも前に進まなければならない、雨の音色にも似た中世フィールドのテーマ「風の憧憬」、物語の真相にも触れる神秘的な古代フィールドのテーマ「時の回廊」、そして厳かなようでちょっぴりコミカルな「王国裁判」と『クロノ・トリガー』の世界を脳内で追体験できた。

なかでも「カエルのテーマ」と「魔王決戦」では、“編曲・演出の素晴らしさ”を早くも感じた。カエルと魔王というキャラクターは、ゲーム本編ではライバル的な存在であり、実際に戦うことにもなる。楽曲の順番としては「カエルのテーマ」と「魔王決戦」と演奏されるのだが、後者のクライマックスでは再び「カエルのテーマ」が織り交ざり、まるでふたりが戦っているようなリミックス調に演出したのだ。
 

続く『サクラ大戦』では、オープニングテーマ「檄!帝国華撃団」(『1』『2』)、「御旗のもとに」(『3』)の2曲を演奏。前者は、軍楽団を思わせる強烈な打楽器と高らかな管楽器で、大正ロマンとスチームパンクの雰囲気の原作世界に誘ってくれた。一方後者は、ハイクオリティの映像美が印象深い『サクラ大戦3』のオープニングテーマ。こちらも、ふたつの曲を織り交ぜたリミックス調に演奏。実際に『サクラ大戦4』のオープニング「檄!帝〜最終章(フィナーレ)〜」では、ふたつの楽曲を組み合わせた内容なのだが、それに近い形で演奏を披露し、古参ファンも納得であろう内容を届けてくれた。

続く『MOTHER』シリーズでは、6曲を演奏。ユニークな試みとして、演奏中に一部楽器だけで“とある一節”を奏でるシーンが随所に入っていたのだが、すべては「SMILES and TEARS」への付箋でもあった。というのも、『MOTHER 1』『2』ではメロディを集めていくゲーム展開があるように、それらの演出を実際に演奏中でも表現したのだ。その大胆な演出は、新進気鋭の音楽交響楽団JAGMOならでは、あるいはゲーム本編を知っている人だからこそできる芸当だろう。

その後、伊藤賢治氏作曲のバトルミュージックが冴え渡る『ロマンシング サ・ガ』、そして透き通るような神秘的な楽曲『キングダムハーツ』と、急がし過ぎず退屈しないプログラムの順番とスピード感で、こだわりを感じた。

また、今回は2015年10月の公演「伝説の音楽祭 - 勇者たちの響宴 -」の来場者アンケートで、「JAGMOに演奏して欲しいゲームタイトル」第3位にランクインした「聖剣伝説シリーズ」より『聖剣伝説 LEGEND OF MANA』を初演奏。壮大かつ厳かな「Legend of MANA ~Title Theme~」から始まり、街のテーマが2曲続き、ダンジョン、ボスとゲーム進行に合わせた形で披露。なかでもゲーム中は激しいヘビーメタルサウンドのボス曲「Pain the Universe」は、フルオーケストラならではの多彩な音色で魅せた。

公演の最後を飾るのは、今回も不朽の名作RPG『ファイナルファンタジー(FF)』シリーズ。各公演共通では、『FFX』の楽曲が中心に。定番の「ザナルカンドにて」「シーモアバトル」はもちろん、「ブリッツに賭けた男たち」「雷平原」など普段ゲームコンサートでは耳にできないラインナップで、意外性のある演奏が楽しめた。

ほか、「ゴルベーザ四天王とのバトル」(FFIV)と「ビッグブリッヂの死闘」(FFV)では、前述した『クロノ・トリガー』と同じくふたつの楽曲を組み合わせたリミックス調で観客を沸かせた。同様に「閃光」(FFXIII)と「Force Your Way」(FFVIII)、「ハンターチャンス」(FFIX)と「J-E-N-O-V-A」(FFVII)など、シリーズの垣根を超えた大胆かつ全く新しいリミックス調の演奏を披露。
 

▲「雷平原」の雷音は、特殊なプラスチック板(?)に衝撃を与えて演奏。
 
そして、アンコールでは『FF』シリーズの代名詞「FINAL FANTASY」が演奏。……と思いきや、なんとこれまで演奏してきた楽曲も繋げた豪華メドレーを披露。演奏内容やテンポも異なる各タイトルの楽曲を、ものの見事に綺麗なメドレーとして表現してくれた。まるで、各タイトルの楽曲を称賛したスタッフロールの如く、頭の中で今回の公演を振り返ることが出来た。一曲一曲印象深かったが、最後のアンコール演出で綺麗にフィナーレを迎えた。
 

▲曲が終わるたびに観客席からは盛大な拍手に加え「ブラボー!!」と賞賛が送られた。

公演後、JAGMO代表の泉志谷忠和氏にミニインタビューを実施し、感想や今後の展望について訊いてみた。

泉志谷氏によると、今回の公演は過去最高の動員数を記録したとのこと。また、コンセプトである狂詩曲については、「ふたつの楽曲を混ぜ合わせるという挑戦をしました。前回の公演でも実験的に行いましたが、反響が良かったので今回はメインコンセプトに据えています。編曲家も原曲からどこまで拡張できるのかが挑戦でした」とコメントし、本公演が巧みな編曲技術で構成されていることを語ってくれた。思えば公演のロゴも溶けて混ざり合っているデザインにもなっている。

また、アンコールに関しても「コード進行がおかしくならず、和声として成立するようにこだわりました。編曲も緻密です」と言葉を添えた。「JAGMOのコンセプトは、ゲームファンとして“こんなコンサートがあったら夢みたい”と思っていただくことで、まさにアンコールの演出はそれを表現したものになります」と続けた。

JAGMOの目標は、“世界一のゲーム音楽オーケストラ団体”になること。「ゲーム音楽は、実際に遊んでいた世代が演奏することが、最も素晴らしい演奏をすると思っています。演奏者は20代~30代と比較的若いほうですが、これが10年後、さらに洗練された演奏を提供できると思います。ロンドン・フィルハーモニー管弦楽団は映画音楽に精通していますが、それならJAGMOはゲーム音楽を演奏すれば世界一だろうと言っていただくようにしていきます」と力強く今後の展望について語ってくれた。

観客と同じ視点に立って旋律を奏でてくれる数少ない交響楽団「JAGMO」。次回開催は2016年5月・8月に開催を予定している。なお、あくまで構想レベルとのことだが、スマホゲーム中心の公演も検討しているとのこと。今後も「Social Game Info」はJAGMOの動向に注目していく。
 
 
▲ロビーでは、パンフレットや缶バッジなどを販売。

 
▲「JAGMOパトロネージュプログラム」の受付。会員になることで、公演の優先購入権やオリジナルグッズなど、様々な特典を得られる。
 
 
▲今回は新たな試みとして、開演前や休憩時間でのロビーコンサートを開催。JAGMO弦楽四重奏の室内楽演奏となり、全ての時間でゲーム音楽に浸れるようになっていた。

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(取材・構成:編集部  原孝則@hara_tatsu


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株式会社カヤック
http://www.kayac.com/

会社情報

会社名
株式会社カヤック
設立
2005年1月
代表者
代表取締役CEO 柳澤 大輔/代表取締役CTO 貝畑 政徳/代表取締役CBO 久場 智喜
決算期
12月
直近業績
売上高174億6700万円、営業利益10億2100万円、経常利益10億3800万円、最終利益5億1100万円(2023年12月期)
上場区分
東証グロース
証券コード
3904
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