【イベント】学生向けゲーム会社合同説明会「HEAT 4th 関西」が開催 「ゲーム業界って安定していますか?」「ブラックですか?」の問いに現役社長は…


ディー・エヌ・エー(DeNA)<2432>は、4月10日(日)にゲーム会社の合同説明会「HEAT 4th 関西」を開催した。

「HEAT」とは、ゲーム企業と学生の出会いの場を提供するイベント。デベロッパーがブースを設けるだけでなく、ゲーム専門学校がブースを設け、学生の制作した作品を展示・自己アピールできる点に特徴がある。昨年5月に渋谷で初開催、7月に関西、12月に渋谷で開催し好評を得た同イベントが、今回パワーアップして関西に戻ってきた。

当日は、ゲーム会社のブース、各社の社長と新卒入社者によるトークセッション、各社のデザイナーによるポートフォリオ講評会、各社のエンジニアによるゲームコードレビュー会などを実施。各社のブースで、しっかり話をすることができるほか、過去のHEATでは、その場で面談をして、選考に進んだ学生も多数。

本稿では、「HEAT 4th 関西」の模様を取材。


 

■2度目の関西開催 コードレビュー会など新コンテンツも



イベントの冒頭では、DeNAのゲームプロデューサー 兼 ゲーム人材採用担当の馬場保仁氏が登壇し、「オープニングトーク」としてイベント開催の目的や趣旨を説明した。なお、会場はベネッセi-キャリアの協力の下、株式会社インテリジェンスの関西支社で行われた。

さて、前述しているように「HEAT」とは、企業×学校×学生、この3者で構成されるゲーム会社の合同説明会。エンターテイメント産業の中でゲーム業界は、万単位で雇用できている唯一の業界であり、企画を立ち上げた経緯として、馬場氏は「サラリーマンとして食べていける数少ない職業。魅力的な方と一緒に仕事するためにも出会いが必要」と述べた。

また、今回の関西における開催として、「地方の学生にも業界に触れるチャンスを増やしたい」と言葉を添えた。ゲーム会社の少ない地域にある学校は、東京・大阪のようなゲーム会社が多い都市に出ないと、なかなか活動するのも難しいのが実情。そこで「HEAT」では、同時に複数のゲーム会社を集めることで、学生が1度の移動で多くのチャンスをつかめるように懸念点を解消してくれるのだ。

なお、当日はゲーム企業が30社、学校が11校、300名近くの学生が参加し、まさにイベント名と同様に熱気が溢れていた。「HEAT」では、これまで延べ1,000人の学生が参加し、100人近くの内定者が出ている。馬場氏は「待っているだけでは勝ち取れない。それは、学生も企業も一緒です。ぜひ、積極的にアピールしてください」とエールを送った。




 
 
 
個別企業ブースでは、学生に向けて各社企業説明を行っていた。また、学校側のブースでは、学生の作品を展示して、訪れた企業に向けてアピールしていた。こうした双方が思い思いの立ち回りができるのも「HEAT」ならではの魅力。

 
▲今回は面談ルームが増設。企業・学生ともにじっくりと面談できる機会を得られていた。また、なかには面談ルームが空いていなく、立ちながらでも密な相談事が行われていた。
 

 
▲ポートフォリオ講評会の模様。現役クリエイターの意見をもらえる貴重な機会だけに多くの学生が並んでいた。
 
 
▲そして、今回から新たに導入された「ゲームコードレビュー会」。上記のポートフォリオ講評会がデザイナー向けとすれば、こちらはプログラマー向けとなる。プログラマー志望の学生の作品に対して、現役クリエイターが直接指導してくれた。
  
 
▲転職サイトを運営する株式会社インテリジェンスが会場だけあって、「伝説の指南書」と銘打った面接を受ける前に知っておくべき7つの心構えという資料が配布されていた。


 

■ゲーム業界って…「安定していますか?」「ブラックですか?」



そして、「HEAT」の人気企画である、ゲーム会社社長によるトークセッション「社長トーク!」が行われた。当日は横山裕一氏(アールフォース・エンターテインメント)、瀬古英司氏(クアドラエンタテインメント)、塚本昌信氏(ランド・ホー)が登壇し、ゲーム業界で必要とされる人材や、各社の採用・育成、そしてゲーム開発の今後について語られた。また、「HEAT」きっかけに入社された各社の新入社員も同席。
 

▲アールフォース・エンターテインメントの横山裕一社長(写真右)
新入社員:小澤勇太さん<エンジニア>(写真左)


▲クアドラエンタテインメントの瀬古英司社長(写真右)
新入社員:閑野立誉さん<エンジニア>(写真左)


▲ランド・ホーの塚本昌信社長(写真中央)
新入社員:新宮悠輔
さん<エンジニア>(写真左)


最初の話題は、新入社員に向けられた質問として「会社との出会いのきっかけは?」。アールフォース・エンターテインメントの小澤さんは、昨年5月に渋谷で開催された「HEAT」に参加した際、一緒に来ていた友人が同社のブースにて横山社長に泣かされたというエピソードを語った。「横山社長が友人に対して叱咤激励したようで、最初は驚きましたが、何て熱い人なんだろうと会社にも興味が沸き志望しました」とコメント。

クアドラエンタテインメントの閑野さんとランド・ホーの新宮さんも同様に、「HEAT」がきっかけで各企業の特徴を十分に理解し、それぞれ入社を決めたという。司会役を務めたDeNAの馬場氏は、「勘違いしないで欲しいのは、彼らはただ参加しただけではなく、きちんと行動を起こした人たち。だからここまで辿り着いた。スタートを切るのはみなさんです」と言葉を添えた。

続いて、社長たちへの質問「17年度新卒 どんな学生に注目している? どんな子が欲しい?」。アールフォース・エンターテインメントの横山社長は、「本当にゲームを作りたいと思っている人。“なんとなく”という人は結構です。何かをやりたいと思うことは、実際に働いていても楽しいことだと思います。また、スキルが高いことに越したことはないですが、今後も成長していく気概があるのかどうかも重要です」と述べた。

クアドラエンタテインメントの瀬古社長は、「目標をはっきり持っている方」とコメント。「ゲーム業界に入った後どうするのかを考えてほしい。また、すぐに出来なくてもいいので、積極的に質問したり、聞きに来たりする積極性も大事」と続けた。ランド・ホーの塚本社長は、「ゲームが好きな人です。仕事は肉体的にも精神的にも辛いです。そのうえで、妥協しないモノ作りが出来るかどうかは、やはりゲームの好き嫌いで変わってくると思います」と語った。
 

続いての話題は「企業の“採用面”における特徴」について。塚本社長は、応募・書類選考・面接・筆記など、通常のルートを挙げながらも、「会社説明会の場など、やはり直接会って話してそのまま採用するケースも多い」と語り、起業して間もない瀬古社長も同様に「HEATなどの出会いは大切にしている」とコメントした。

一方でアールフォース・エンターテインメントでは、インターンシップを実施しているという。さらに地方から訪れるインターン生に対しては、部屋も借りるなどの徹底ぶり。至れり尽くせりな環境の理由について、横山社長は「履歴書や手掛けた作品だけで、なかなか見えないものがある。我々としては、彼らがどういう態度で仕事に接するのかを見たいし、逆に彼らも本当にこの会社でいいのかなど試せる。大切な時間を使って就活や会社を決めるので、後悔してほしくないし、納得して入社してほしい」と学生の立場を想って答えてくれた。

次に「企業がとらえている“育成”プランや特徴的な“育成”手法」の話題に。瀬古社長は、育成OJT(On-the-Job Training、オン・ザ・ジョブ・トレーニング)をやりつつ、そのうえで各スタッフに基準を決めて、課題や目標を定めプロジェクトに配属するという。塚本社長は、新人研修を3社合同で実施しているとのこと。「同期は本当に大切です。会社間を超えた同期関係が築き上げられるのは強みかなと思います」とコメント。

横山社長は、毎年育成プランを変えるようだ。ちなみに、今年は新卒2年目のスタッフが考えたバディ制度を導入したという。「社員と新卒スタッフがバディを組んでもらいます。仕事はもちろん、それ以外のことも気軽に先輩社員へ相談できる良い制度です。何より教えたり、客観的な視点が養われたりするので、意外にも新卒スタッフよりバディを組んだ既存社員のほうが成長していますね」と思わぬ成果について語ってくれた。
 


ここで、馬場氏より学生からよく寄せられる3つの質問に関する話題に移った。最初の質問である終身雇用について。日本においては、ゲーム業界に限らず各社正社員で終身雇用前提で採用をしているものの、人材の流動化は進んでいる。そのため、「どこかの会社でゴールを迎えるのではなく、自身がスキルを磨くことで、どこででも仕事ができる人材になることが大切で、ゲーム業界はそれを学びやすいところにある」という見解を示した。

そして、何かと取り沙汰されている「ゲーム業界ブラック説」について。横山社長は「ゲーム業界がブラックと思われたら、私たちの負けですね。ブラックの代表例は、“好きを利用している”ところです。やりたいという前向きな姿勢を、実りのない形に企業がパワーを吸い取り、使い物にならない形にするのがブラックです」とコメントした。

思えば小学生が将来なりたい職業に、一時期ゲームクリエイターが1位を獲得した時代があったもの。「この業界がブラックだと思われてしまったら、夢を目指す人が減ってしまう。それはとても悲しいこと。そう思わなせないためにも、企業が努力する必要がある」と横山社長。そして、成果に対してお金を払う裁量労働制の導入を前提にも、きっぱり「ただ、徹夜だってありますよ。もちろん定時に帰ることが理想的ですが、人によってはどうしても踏ん張らないといけないときがあります。そのうえで業務時間のバランスは、企業・スタッフ同士で話し合う必要がある」と語ってくれた。

福利厚生については、退職金の積み立てやプロジェクト休暇、福利厚生倶楽部など3社ともサポートは多岐にわたるという。
 

最後に登壇した社長それぞれから、ゲーム業界を目指す学生たちにメッセージが贈られた。

塚本社長「学生にしかできないことを楽しんでほしい。これから仕事している時間の方が多いので、今しかできないことを楽しんでほしい」

瀬古社長「就職説明会で手を上げない人が多い。だからこそチャンスが転がっている。厚かましい就活生として、どんどんアピールしてください。鬱陶しいと言わせた方が価値」

横山社長「問題なのは、何がやりたいか。ゲームクリエイターになって、その後の目標が必要。そこに向かって頑張ってほしい」
 
 

▲閉会式では、本イベントの発起人でもあるDeNAのゲームプロデューサー 兼 ゲーム人材採用担当の馬場保仁氏が再び登壇し、「参加する全員がHappy&Winnerになることが『HEAT』の最大の目的。燃え尽きちゃいけない。ここからがスタート」とエールを送って、イベントを締めくくった。確定ではないが、次回開催も検討しているという。


HEAT渋谷(ゲーム会社10社・大学・専門学校8校・学生350人が集結)
HEAT 2nd 関西(ゲーム会社22社・大学・専門学校12校・学生250人が集結)
HEAT 3rd 渋谷(ゲーム会社31社・大学・専門学校11校・学生408人が集結)
HEAT 4th 関西(ゲーム会社30社・大学・専門学校11校・学生283人が集結)

 
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