【上期総括】馬場功淳氏が語る上半期のVR市場とコロプラの取り組み 「来年、再来年を見据えて技術・経験・ノウハウを積みたい」



スマートフォンアプリ業界に身を置く方々に話を伺い、2016年上期の市場動向と下期のトレンドを読み解く特別企画「ゲームアプリ市場のキーマンに訊く2016年上期振り返り」。今回はコロプラ<3668>の馬場 功淳 社長にインタビューを行い、上半期のVR市場と同社としての取り組みを振り返ってもらうとともに、下半期の展望について語ってもらった。



――:まだマーケットといえるほどの状況ではないかと思いますが、VR市場の動きを振り返っていただきたいのですが。

新しいハードウェアが登場する時の現象が見られます。ハードウェアメーカーとソフトウェアメーカーがそれぞれ一生懸命にプロダクトを作っている中、メディア各社がVRを新しい概念として取り上げはじめ、それを見たユーザーさんが少しずつ購入する。アーリーアダプターを中心にハード・ソフトともに少しずつ広がる、という状況です。あるべき姿ともいえ、ほぼ予想したとおりです。


――:現在、出荷されているデバイスを使用してみて、どう評価されていますか?

私自身、HTC Vive、Oculus Rift、PSVRなど一通り使用してみましたが、それぞれ特徴があって面白いですね。HTC Viveは最もトラッキング精度が高く、歩くという体験ができる点が魅力です。Oculus Riftは座った状態でのVR体験が非常に素晴らしいと思いますが、Oculus Touchがリリースされてからが本番となるでしょう。VR空間でも手の感覚は重要なので、手を使えるというのが非常に大きな意味を持つためです。Gear VRは、モバイル端末で体験できるVR専用ヘッドマウントディスプレイ(以下、HMD)としては最高の完成度ではないでしょうか。
 


――:現時点で有望と感じるものはありますか。

それぞれの端末が持つ意味合いが違うと思います。私の推測ですが、デスクトップにおいてはこの1年はHTC Viveが出荷台数を圧倒的に伸ばすのではないでしょうか。Oculus RiftはOculus Touchが出てきてからが注目ですね。

そうこうするうちに、10月にはPSVRが発売されます。PSVRは世界的に広がっているPlayStation 4というプラットフォームに載せられるので、こちらも相当なスピード感で広がっていくと見ています。以上のことから、ハイエンドなHMDが全て出揃うのは来年以降になるのではないでしょうか。

モバイルにおいてはGear VRの品質が非常に高いですが、最近では中国のメーカーが低単価でたくさん発売してくるとの見方が広がっています。以前スマートフォンを製造していたメーカーが次のデバイスを探しているらしく、その流れでVRに着目しているようですね。中国のメーカーは生産能力も世界一ですし、それを支える内需もありますから存在感を高めてくるのではないでしょうか。



――:VRのコンテンツも少しずつ出てきましたが、馬場社長個人として気になっているコンテンツはありますか?

そうですね、たくさんありますが、社内で流行っていたものを挙げると『Holopoint』というVive向けのコンテンツです。これは弓矢を的に当てるシューティングゲームなのですが、ちょっとでも的を外すとものすごい速さで矢が跳ね返ってきます。ですので、それを避ける必要があります。これまではユーザーに速い動きを要求しない、いわば”優しい”VRが中心でしたから、これまでのゲームとは大きく異なっている点で面白いと注目しています。
 


――:ゲーム以外では何かありますか。

当社とコロプラネクストが設立した「Colopl VR Fund」の投資先にもありますが、画像認識や画像処理系の要素技術に注目しています。投資をやっていると、世界中の新しい動きをいち早く知ることができるのでいいですね。

また、他社さんが展開されているものですが、バンダイナムコさんがやっておられる「VR ZONE Project i Can in お台場ダイバーシティ」はいいですね。このVRコンテンツ黎明期において、あれだけの数のコンテンツを集め、あれだけの規模の施設を出せるのはすごいと思いました。日本でVRのコンテンツを最も体験できる施設といっていいでしょう。



――:コロプラの取り組みを振り返って

ゲームに関しては、パズルゲーム『Fly to KUMA』とスポーツアクションゲーム『VR Tennis Online』、それ以前に『白猫VRプロジェクト』など、全部で5本のタイトルをリリースしています。正直に申し上げて、いずれもあまりインストールされていません。端末の普及が遅れていることが主な要因と思われますが、これからでしょうね。ですので、現状収益の上がるビジネスとは言えません。当社としてはあくまで来年、再来年以降を見据えた取り組みと位置づけています。

ゲームは引き続き、ハイエンドな端末への展開に注力していくつもりです。Oculus RiftやHTC Viveなどのハイエンドな端末を通して高品質なゲーム体験を提供するとともに、技術開発の意味も込めてやっていきたいと思っています。映像分野に関しては、当社100%子会社の360Channelを通じて360度動画配信サービスを展開しています。こちらはOculus Rift に加え、Gear VRでも楽しめます。今後ほかのVR端末にも展開していく予定ですが、現状Gear VRが手軽で、映像との相性も一番いいですね。

 


――:VRのゲームの課金システムはどうなっていくとお考えですか。

スマートフォンゲームやPCゲームと同じだと考えます。売り切り型の場合もありますし、アプリ内課金の場合もあるでしょう。iPhoneなど、登場した当初は有料アプリがメインだったけれど、アプリ内課金へと徐々に移行していった経緯がありますが、それをイメージしていただくといいかもしれません。


――:どのくらい遊べるように開発しているのですか。

VRゲームは30~40時間を一つの基準としています。一方で、通信対戦を入れている場合は無限に遊べると言っていいでしょう。


――:360Channelの視聴状況はいかがでしょうか。

こちらは、VR端末のみならずPCでもモバイルでも見られるようにしていることもありますが、思ったより視聴状況はいいですね。コンテンツで言うと、ANAの機体工場見学が予想以上に人気です。正直、こんなに伸びるとは思いませんでした。工場見学は普段なかなか入れない場所を体験できるので、見てみたいという需要があるようですね。

360Channelもゲーム同様、今はまだ収益については考えておらず、とにかく面白いコンテンツをたくさん作って、できるだけ多くの方に見ていただくことが大事だと思っています。我々としてもいまのうちに、360度動画の制作体制を整えるとともに、企画や撮影、制作に関する研究を進めていきたいと考えています。

 


――:従来の動画とは作り方が違いますね。

撮影するカメラからして従来の動画とは違います。撮影方法も特殊ですし、外注しようにも受けてくれるところがありませんので、番組制作は全て内製で行っています。我々もまだ十分に捉えきれていないのですが、試行錯誤を繰り返しながら動画制作のノウハウを日々蓄積しています。


――:下半期のコロプラの取り組みを教えて下さい

下半期の取り組みは、上半期の活動の延長ということでご理解ください。現在いくつかのコンテンツを作っているので、まずはそれらをしっかりとリリースしていきます。ゲームは年内に2~3タイトルは出したいですね。そして、360Channelはもっと番組を作り、Colopl VR FundはVR関連企業への投資を引き続き積極的に行っていく。以上に尽きます。

コロプラはVRへの取り組みにおいて、やれることはできている状況だと思います。コンテンツを作って提供しているし、投資活動も順調に進んでいます。ですが、どちらも成果はこれからです。成果を出していけるよう、いずれも早めに取り組み、経験とノウハウを積んでおくことが重要だと思っています。



――:ありがとうございました。

 
(編集部 木村英彦)
株式会社コロプラ
https://colopl.co.jp/

会社情報

会社名
株式会社コロプラ
設立
2008年10月
代表者
代表取締役会長 チーフクリエイター 馬場 功淳/代表取締役社長 宮本 貴志
決算期
9月
直近業績
売上高309億2600万円、営業利益28億5800万円、経常利益32億7600万円、最終利益18億9300万円(2023年9月期)
上場区分
東証プライム
証券コード
3668
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