【KLab決算説明会】Aqours効果で『スクフェス』好調、第3四半期は営業益7.8倍見通し 中期的にパブリッシングと非ゲーム育成し安定した収益体質目指す



KLab <3656> は、8月4日、2016年12月期の第2四半期累計(1~6月)の決算発表を行うとともに、東京都内で証券アナリスト・機関投資家向けの決算説明会を開催した。発表した決算は、売上高88億7900万円(前年同期比14.9%減)、営業利益5100万円(同96.7%減)、経常損益7億4600万円の赤字(同16億1200万円の黒字)、四半期純損益13億4200円の赤字(同6億6500万円の黒字)となった。

また、第2四半期(4~6月)をみると、売上高が前四半期比(QonQ)で15.8%減の40億5900万円、営業損益は前四半期の7000万円の赤字から1億2100万円の黒字に転換。続く第3四半期は、売上高60億円(前四半期比47.8%増)、営業利益9億5000万円(同681.0%増)と大幅な増収・黒字転換となる見通し。ゲームのヒット状況に応じて収益が激変するのはゲームビジネスの宿命ともいえるものだが、四半期ごとの売上・利益の振幅が非常に大きい。
 


こうした状況に対して、KLabでは、自社開発ゲームだけでなく、パブリッシングタイトルと非ゲーム事業の育成を通じて、収益の安定化を図っていく考えだ。決算説明会に臨んだ真田哲弥社長(写真)は、「2020年度にゲーム事業(内部開発)、パブリッシング事業(外部開発)、非ゲーム事業による三部鼎立を目指したい」と明かした(「」内の発言は、断りがない限り、真田社長の発言)。これまで長期的とし、期限は定めていなかったが、今回はそれを明示した。ボラティリティの大きいゲーム事業への依存を減らし、安定した収益を生む企業を目指す。
 


 
■第2四半期は減収も費用抑制で営業黒字に

第2四半期の売上高は前四半期比(QonQ)で15.8%減の40億5900万円だった。主力の『ラブライブ!スクールアイドルフェスティバル(以下、スクフェス)』で、ユーザー数全世界2500万人&国内1500万人突破記念キャンペーンとμ'sic Foreverキャンペーン以降、テレビアニメ「ラブライブ!サンシャイン!!」放送開始まで売上が落ち込んだことに加え、『BLEACH Brave Souls(以下、ブレソル)』グローバル版のコアファン獲得が一巡し売上が減少したことが主な要因だった。

その一方で、売上を伸ばしたタイトルもあった。『テイルズ オブ アスタリア』が2周年記念イベントと覚醒☆6の提供を開始したことで売上を伸ばしたほか、オリジナルタイトル『天空のクラフトフリート』も他社コンテンツとのコラボが奏功し、売上が増加したとのことだった。
 


また、営業利益は1億2100万円の黒字となり、前四半期の7000万円の赤字から黒字に転換した。減収に伴い、売上総利益が減益となったものの、販売管理費の抑制が奏功した。販売管理費減少の主な要因は、『ブレソル』の広告宣伝費及び業務委託費が減少したことや、『スクフェス』の広告宣伝費が減少したことによる。
 


なお、経常損益は3億1000万円の赤字(前四半期は4億3500万円の赤字)だった。為替相場が円高に振れたことで、4億4100万円の為替差損が発生した。ここで外貨建て資産の保有方針を説明した。同社では、保有する外貨はあくまで事業活動を展開する上での決済に必要な資金で、将来も保有する外貨を円に転換する考えはないそうだ。今後、為替動向によって評価損は発生することはあっても、実損は発生しない、としている。
 


また、最終損益は9億2800万円の赤字(同4億1300万円の赤字)だった。こちらは、主に『パズルワンダーランド』と『Age of Empires: World Domination』の減損損失を特別損失として計上したことによる。運用開始当初に想定していた収益額の回収可能性は低いと判断した。
 


 
■第3四半期は『スクフェス』中心に伸び営業益7.8倍に

第3四半期(16年7~9月期)は、売上高60億円(前四半期比47.8%増)、営業利益9億5000万円(同681.0%増)、経常利益9億円(黒字転換)、最終利益5億4500万円と大幅な増収・黒字転換を見込んでいる。費用面では、広告宣伝費を増やすが、強烈な増収効果で吸収する見通し。また、先の2タイトルの減損にともなって、減価償却費が減ることも利益を押し上げる。
 


QonQでは20億円の増収となる計算だが、真田社長は、会場から増収に内訳についての質問に対して、「『スクフェス』がほとんどだ」と回答した。大型アップデートやテレビアニメ放送開始に伴い、Aqoursや課金アイテムの追加などで売上が伸びており、リリース以来、初めてApp Storeの売上ランキングで首位を獲得するなど、足元では急速に復調している。過去の傾向からアニメ放送終了後となる12月までは引き続き好調を維持する可能性は十分あるという。
 


 
■今後の展開(1) ゲーム事業

今後の展開について時間を割いて説明した。ゲーム事業については、専務取締役の森田英克氏(写真)が説明した。まず、パイプラインについては、全8タイトルで前回発表からは変動はない。ただ、内訳が変わっており、外部開発でKLabのオリジナルとしてリリースするゲームが2タイトルから1タイトルに減る一方、外部開発によるIPタイトルが1タイトル増えて2タイトルとなった。

 
▲毎度のことだが、8タイトルについてはリリースをコミットするものではないとのこと。


主要タイトルの状況だが、『スクフェス』は、すでに触れたように『ラブライブ!サンシャイン!!』との相乗効果で売上が一気に復調した。テレビアニメ放送記念ログインボーナスや、挿入曲先行配信などの取り組みに加え、Aqoursが追加されたことが奏功した模様だ。μ'sの部員カードをひととおり集めたユーザーがAqoursについても揃えようとしているという。ゲーム内で使える便利なアイテムの詰め合わせ商品も好評とのこと。こうした取り組みが功を奏し、App Store売上ランキングでも2013年のリリース以来、初めて首位を獲得する快挙を成し遂げた。

なお、海外版についてもAqoursコンテンツを準備する予定で、海外版の活躍も期待されるところだ。これ以外には、5月に東京で実施し、5万人以上の来場者を集めた大規模イベント「スクフェス感謝祭2016 ~OSAKA~」を大阪でも実施する予定。
 


『ブレソル』は、国内版は2度の大型アップデートを行い、継続率と課金率が改善傾向にあるほか、グローバル版は各国のセールスランキングで上昇するなど順調に伸びているそうだ。グローバル版についてはフランス語版を第3四半期中に追加する予定。このほか、東アジアと東南アジアでのTVアニメ『BLEACH』モバイルオンラインゲームの配信権を獲得し、現地での開発・運用・ローカライズ・パブリッシングなどを担当する崑崙社と準備を進めているそうだ。

 
 
▲ブロッコリーと共同開発を行っている『うたの☆プリンスさまっ♪Shining Live』については特に新しい発表はなく、開発状況に応じてゲーム内容などを開示していくとのこと。

 
▲アクセルゲームスタジオとの他社IPを活用したモバイルオンラインゲームについても開発中。アクセルマークの決算説明会では、プロトタイプを開発中とのアナウンスが行われている。


 
■今後の展開(2) 非ゲーム事業

ここで再び真田社長が登壇し、非ゲーム事業の展開を説明した。イベント事業や投資事業以外にも複数の事業を展開することが明らかとなり、2017年12月期中に単月黒字と収益貢献を目指すという。このなかでまず、最も早く業績に寄与してきそうなのがイベント事業だ。11月に「Classic Rock Awards」を日本で初めて開催するほか、アニソン・声優・アイドル・J-POP・K-POPをテーマにした音楽フェス「スポーツ・オブ・ハート・ミュージックフェス 2016」を開催する。第4四半期(10~12月期)に収益が発生する見通しだ。収益としては、収容人数×チケット代、そこに協賛や物販などが加わるもので、「馬鹿にならない規模」になるという。
 


このほか、KLabの開発力とIP調達力を活かした非ゲームのスマホアプリを2016年下期にリリースする予定。課金手段が多様化し、ゲーム以外のアプリでも収益が出るようになっており、チャンスになると判断したという。また分散型動画メディア事業、インバウンドメディア事業、海外展開やIP調達力を活かし、日本のコンテンツを集めた海外でのモール運営事業への進出も検討しているという。いずれもローンチをコミットするものではないので注意してほしいが、闇雲に始めているわけではなく、実績のある人材を外部から招へいし、「確度の高いものをやっている」。既にリリースされ、実績があるものを事実上、運営チームごと継承するパターンもあるという。
 
 
(編集部 木村英彦)
KLab株式会社
http://www.klab.com/jp/

会社情報

会社名
KLab株式会社
設立
2000年8月
代表者
代表取締役社長CEO 森田 英克/代表取締役副会長 五十嵐 洋介
決算期
12月
直近業績
売上高107億1700万円、営業損益11億2700万円の赤字、経常損益7億6100万円の赤字、最終損益17億2800万円の赤字(2023年12月期)
上場区分
東証プライム
証券コード
3656
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