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ゲームの社会的地位を向上させるために 10周年を迎えたDiGRA JAPAN…夏期研究大会の基調講演でレジェンドによる鼎談を実施

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日本デジタルゲーム学会(DiGRA JAPAN)の2016年夏期研究発表大会が東京工芸大学中野キャンパスで8月6日・7日に開催され、ゲーム研究者・ゲーム開発者・学生など、約110名が参加した。

大会テーマは「デジタルゲームー10年の軌跡と未来」で、6日に開催された基調講演では学会設立10周年を記念して、初代会長の馬場章氏(元東京大学教授)と現会長の岩谷徹氏(東京工芸大学教授、元ナムコ)が登壇。学会副会長の遠藤雅伸氏(東京工芸大学教授、元ナムコ)をまじえた鼎談を通して、学会の歴史を振り返った。

 


 

■学会発足を決めたDiGRA2007の東京開催


DiGRA (Digital Games Research Association)は2003年にフィンランドで発足したデジタルゲームの国際学会で、DiGRA JAPANはその日本支部にあたる。

馬場氏はDiGRA JAPAN発足の契機として、2005年にバンクーバで開催されたDiGRA 2005で、2年後の国際大会が東京で開催されることが決まったことを上げた。その受け皿としての学会が必用になり、半ば急ごしらえで2006年に発足したのがDiGRA JAPANだったというわけだ。その後、DiGRA 2007はゲーム開発者会議のCEDEC2007と同時期に東京大学で開催され、安田講堂で基調講演が行われた。
 

▲DiGRA JAPAN 初代会長の馬場章氏(元東京大学教授)


もっとも、日本のアカデミズムの総本山ともいえる東京大学でデジタルゲームの国際学会を開催するには、並々ならぬ苦労があったという。DiGRAの発足にみられるように、欧米圏では2000年代以降、デジタルゲームの研究やゲーム開発者教育が盛んに行われるようになっていた。しかし日本では長く「ゲームは遊ぶもの」「作るもの」であり、「研究するもの」ではなかったからだ。馬場氏は東京大学ではじめて「ゲームデザイン&エンジニアリング論」を開講したとき、「ゲームの授業なんか」と学内でさげずまれたと語りながら、当時の状況を振り返った。

一方で2000年代は日本でも、さまざざまな取り組みが始まっていた。ゲーム開発者のコミュニティであるIGDA(国際ゲーム開発者協会)で、2002年に東京支部が発足(後にIGDA日本と改名)。CEDECの本格的な盛り上がり。立命館大学で1998年に発足したゲームアーカイブプロジェクト。2003年に産学協同研究で始まった「東京大学ゲーム研究プロジェクト」などだ。

関係者が重複していたこともあり、これらを束ねる形で2006年にDiGRA JAPANが発足することになる(一方、関西では一足早い2002年、大阪電通大学に事務局を構える「ゲーム学会」が発足していた)。


 

■ゲームの社会的地位を向上させるために


馬場氏は設立趣意書を引用しつつ、学会の目的として「国内のデジタルゲーム研究推進」「海外の学術団体の交流推進」「研究発表の場の確保と拡大」「ゲーム研究関連の学術情報の交換」「若手研究者の養成」「デジタルゲームに対する社会認識の形成への寄与」という7項目を挙げた。

そしてDiGRA 2005で4名からスタートした準備会が、今や300名以上の学会員を数えるまでに成長したことは感慨深いとコメント。その一方でDiGRA本体との連携が途絶えている(実際、DiGRA公式サイトの支部欄に、DiGRA JAPANは表記されていない)点を指摘し、今後の課題だとした。

http://digrajapan.org/


http://www.digra.org/



これに対して今春より第3代会長となった岩谷氏は「社会におけるゲームの存在意義を問いただしたい」と抱負を述べた。これまで2代にわたって学術界から会長が選出されてきたDiGRA JAPANで、『パックマン』の生みの親として知られる岩谷氏は、初の産業界出身の会長となる。馬場氏から「その意味でも、DiGRA JAPANの未来は岩谷氏の双肩にかかっている。閣外から応援していきたい」と奨励されると、岩谷氏は「ゲームの功罪について業界自体が理論武装できていない点がある。研究者が功罪を問いただすことで、ゲーム学の基礎を構築したい」と述べた。
 

▲現会長の岩谷徹氏(東京工芸大学教授、元ナムコ)


ゲームの社会的地位を向上させたい・・・。岩谷氏が思いを強くしたのが、1985年の風営法改正だ。ゲームセンターは「8号営業」に認定され、同じく「7号営業」とされたパチンコ・パチスロと同列に扱われた。「ゲームセンターは年齢・出店・時間制限が課せられた。すでにナムコは上場していたが、役員に薬物依存がないか医師の診断書が必用で、注射の針の跡の有無まで調べられた。当時ナムコは全国で約200店のゲームセンターを経営しており、公安委員会に店舗数分の誓約書を提出する必用があった。ゲームが風俗産業と同等に扱われ、屈辱の8号認定だった」と語った。

なお、2016年の風営法改正により、ゲームセンターは新たに5号営業に認定された。これにより、保護者同伴の場合に限り、16歳未満でも夜10時までの来店が可能になった(一部地域を除く、それまでは保護者同伴でも夜6時以降の入店が禁じられていた)。

もっとも、昨今の『ポケモンGO』を巡る社会現象にもあるように、まだまだゲームは社会的に不当に扱われていると指摘。こうした状況を改善するためには、ゲーム研究を活性化させて功罪を明らかにすることが必用で、若手研究者や産業界の支援が必要だと指摘。あわせてCEDECとの連携も強化していきたいとした。
 

ゲームと社会の関係では、馬場氏も東日本大震災で学生やゲーム開発者と被災地を巡回しつつ、ニンテンドーDSとソフトを配布してまわったエピソードをあげた。もともと「学問は人の生き死ににかかわるシリアスなものこそ王道であり、エンタテインメントの研究に対して後ろめたさがあった」という馬場氏。これに対して「復興には人命救助と生活再建だけでなく、心のケアが重要で、それができるのがエンタテインメント」と指摘されたことがあった。こうした経緯から、誇りを持って被災地を歩き、ゲーム機を手渡したという。

岩谷氏もナムコの新人研修で、デパートの屋上で電動木馬を運営した際の気づきについて語った。通常の木馬と人気キャラクターをあしらった木馬で、なぜか前者の方が売り上げが高かったのだ。木馬を楽しむ家族連れを観察した結果、木馬の選択を母親が行っており、落下しそうな木馬が、無意識のうちに避けられていたことがわかった。この経験を通して、一台のゲーム機には遊ぶ人だけでなく、保護者や運営側など、さまざまな視点が含まれていると痛感。屈託のない笑顔で木馬を楽しむ子ども達の顔を見ながら、人の笑顔を作る仕事の奥深さと、使命感がわいたと述べた。

 

■研究者は国内外の風潮と戦う必要がある


発足以来、数年間の「公開講座」開催を経て、2010年12月に初めての年次大会を開催。2012年には夏期研究大会もはじまり、年2回の大会開催が恒例行事となった。過去10年間で学生会員が研究者として独り立ちし、理事に就任するなど、世代交代も進んでいる。当初は人文系の研究が中心だったが、近年は工学系の研究発表やデモ展示も見られるなど、徐々に分野も広がってきた。もっともゲームの研究分野は多岐にわたり、まだまだ発展途上というのが実情だ。一方で新興学会の多くは10年以内に消失するため、10年の節目を迎えただけでも意味があるといえる。

ここで遠藤氏から岩谷氏に対して「東京工芸大学では首都圏で唯一『ゲーム学科』がある。学科設立の際に障害はあったか」と質問された。岩谷氏は「すでに東京工芸大学には漫画学科やアニメーション学科があり、学内における軋轢はなかった。むしろ文科省に提出する設立趣意書の作成が大変だった。ゲームとは何か・社会におけるゲームの存在意義や、大学で研究する意味などについて盛り込み、なんども文科省とやりとりをしながら書き直した」と苦労を語った。馬場氏も「文科省の頭の硬さには想像を絶するものがある」と賛同した。

これに対して遠藤氏は「日本でも、世界でも、研究者はさまざまな風潮と戦っていく必要がある」と語った。
 

▲学会副会長の遠藤雅伸氏(東京工芸大学教授、元ナムコ)


日本における風潮については前述の通りだ。これに対して世界のゲーム研究の分野でも、日本は軽んじられつつあるという。世界最大のゲーム市場はアメリカであり、ヒットするゲームの傾向が日本と異なっているからだ。もっとも、日本には非常にユニークなゲームを作る文化があり、研究を通して日本のゲームの神髄が明らかになれば、国際的なゲームのレベルも上昇すると指摘。そのためにもDiGRA JAPAN の役割は大きいとコメントした。

「国家と学問の勢いは比例している。ゲーム研究は北欧からはじまり、アメリカで拡大したが、最近は勢いの減退を感じる」という馬場氏。反対に勢いが増しているのがアジア圏だ。日本のゲーム産業における経済波及効果指数は2.3で、ITやサービス産業では一番高く(自動車産業は3.5)、これを支えるにはさらなる学問が必用だという。その先陣にいるのがDiGRA JAPAN であり、ゲーム産業に対して社会的な期待があることを実感して欲しいと語った。岩谷氏も「各自の研究が糧になって、日本のゲーム研究が発展していくように、今後も学会を盛り上げていきたい」と締めくくった。

*夏期研究大会2016の公式サイトはこちら。予稿集もダウンロードできる。
http://digrajapan.org/summer2016/index.html
 

 
(取材・文:ライター  小野憲史)
 
 
 
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