【インタビュー】アプリゲームのキャラ評価に特化したサービス「Expi」とは…各ユーザーのレベルに合わせた攻略法を誰でも見やすく分かりやすく提供

 
セガゲームスとランサーズは、8月1日、企業のデジタルマーケティング支援を目的とした合弁会社 クロシードデジタル株式会社を新設した。
 
クロシードデジタルは第1弾サービスとして、キャラクター情報データベースサービス「Expi(エクスピ)」を展開。Expiは、ゲームのキャラクター情報や評価をまとめて見たり、ユーザーがコメントを投稿できるウェブサービス。ゲーム内のリンクから直接アクセスできるため、ゲームを中断することなくスムーズに利用できるのが特徴となっている。
 

Expiサービスページ

※スマートフォンWEBのみ対応。

 
今回は、クロシードデジタルの取締役でもある、セガネットワークスの伊藤真人氏と、ランサーズ 取締役COOの足立和久氏に、クロシードデジタル新設の狙いや、Expi開発のきっかけ、今後の展望について伺ってきた。
 
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▲セガネットワークスの伊藤真人氏(写真左)と、ランサーズ 取締役COOの足立和久氏。
 
 
――:まず始めに、Expi開発のきっかけをお伺いしてもよろしいでしょうか。
 
足立和久氏(以下、足立):弊社では、コンテンツマーケティング支援を行っているのですが、半年ほど前にセガさんからマーケティング支援サービス「Noah Pass(ノアパス)」(※)に関する事業を拡大していくというお話をいただき、お互いに情報交換を始めたのがきっかけでした。
 
※Noah Pass(ノアパス)
セガネットワークスがスマートフォンゲーム企業向けに展開している相互送集客、データ分析などのマーケティング支援サービスの総称で、現在参画しているゲーム企業は135社、ゲームアプリは784タイトル、累計接触端末数は1億4,534万台、月間ユーザー数は約1,236万人(2016年6月末時点)。このユーザープールを活用して、非ゲーム企業向けにアドネットワークをはじめとする有料広告事業の展開も開始している。
 
――:期間としては、かなり展開が早いですね。
 
足立:サービスの内容についてはセガネットワークスの方で構想自体があって、そこから弊社と話をしていく中で会社を新設しようという話の流れになりました。
 

▲デジタルマーケティング支援を目的とした合弁会社として設立。
 
伊藤真人氏(以下、伊藤):会社を新設したのは、今後も本サービスにとどまる事なく、新たなサービスを展開し、ゲーム会社としてではなく、マーケティング会社という立ち位置でゲーム企業様、非ゲーム企業様に対しマーケティング支援を広げていきたいと考えたからです。
 
――:事業内容についてはいつ頃から決まっていたのでしょうか?
 
足立:マーケティング支援事業という点は最初から決まっていました。
 
伊藤:サービスの構想については1年ほど前から考えていて、家庭用ゲームソフトが主流だった時代、攻略本を見ながらゲームを攻略していくというユーザー体験がスマートフォンゲームでも再現できないか、というところが最初の着想でした。現在でも、攻略メディアは多数存在しますが、そもそも攻略記事で掲載されているキャラクターが一部のキャラクターのみだったり、人によってはハードルが高く感じることもありますよね。そこで、スマホゲームの特性に合わせた攻略本というものを再定義して考えたときに、ユーザーごとに攻略法が異なって然るべきだという結論が出ました。そのうえでまず何が必要かを考えたとき、ユーザーがキャラを手に入れたとき、そもそも「このキャラを他の人たちはどうやって使っているんだ」という部分は1番知りたいところなのではと思ったんです。そこで、ユーザー投稿型のキャラクター情報サービスという形式で、ゲーム内のユーザーランクに応じてキャラの使い勝手や使用感を見られるようにと考えたのがExpiの始まりになります。例えば、キャラによっては、上級者にとっては使いやすいけど、初心者には使いにくいものもあると思うんです。現状では、そういったユーザーの熟練度には関係なく「○○点」という評価が出てくるので、ゲーム会社がどういった想いを持ってキャラを提供しているのかという部分が伝わり辛くなっているのではないかと思っています。Expiでは、そういった部分をしっかりと届けたいなと。

 
 
▲キャラ情報や評価に特化したサービス「Expi」。
 
伊藤:業界全体としても新規ユーザーの獲得が難しくなってきており、如何に既存ユーザーをファン化していくかが課題として挙がっていたりします。私たちが調査したアンケートによると、ゲームを始めた時点で操作方法やルールがよく分からずに止めてしまう人が多く見られたので、そういった部分の橋渡し的な役割も果たせればと。ゲーム内にナビやヘルプを出すという方法もありますが、ゲームの中はあくまでもゲームを思う存分に楽しんでいただく場所なので、外にそういった場所を用意した方が良いと考えました。いわゆるコアユーザーと呼ばれる方々は、自身で攻略法を調べたり分析してゲームの面白さを感じていただけているのが分かっていますので、今はどれだけライトユーザー層にゲームの面白さを伝えられるかが重要だと思っています。
 

▲投稿者のゲーム内ランクや評価値、コメントが見られるので、自分の状況に近い人の意見を参考にできるのがポイント。
 
――ちなみに、ページはタイトルごとに用意されているのでしょうか?
 
伊藤:はい、そうです。さらにExpiでは、各タイトルのトップページにゲーム内から直接移動することができるので、わざわざゲームを閉じてブラウザを立ち上げてから検索するという面倒な動作が必要ないのも他のサービスと大きく異なるポイントです。ガチャを引いたときや新キャラが導入されたとき、すぐにそのキャラがどういったキャラか分かるページにアクセスできるようになっています。ページへの遷移を、ゲーム体験を行う一連の流れの中に組み込みたいという想いがありました。ゲーム会社としては、ユーザーの利便性向上による満足度アップや、継続率の向上が期待できます。


▲ゲーム画面内にExpiに推移するボタンを用意し、シームレスな体験を実現。
 
――:キャラに特化したメディアサービスというのは他にはない発想ですね。
 
足立:攻略メディアとも少し違いますし、そうなりますね。
 
――:今後、他社のタイトルで本サービスを採用する際の費用などはどうなる予定でしょうか?
 
伊藤:キャラクターデータをはじめ、ゲーム内のデータを提供いただく必要はありますが、基本となるキャラクター紹介データサービスは無償でご提供しようと考えています。これは、数々のサイトにユーザーが流れてゲーム体験を損なうのであれば、まず個々のタイトルから直結させたサービスを作り、それがスタンダードになるようにしたいと考えたからです。費用面に関しては、そのほかの記事制作やゲーム紹介、既存ユーザー向け動画制作といった部分での回収を考えています。また、Expi上には広告枠もありますので、ゲーム以外の異業種からの広告掲載で収入にすることも考えています。
 
――:なるほど、そういった記事の制作など、コンテンツの拡充を行うのがランサーズの役割になるわけですね。
 
足立:そうです。ゲームに対して熱量の高いライターさんに記事をアップしていただくほか、弊社には、一般企業向けの集客メディアやコンテンツマーケティングの制作や運用に関する知見がございますので、YouTubeでの拡散やFacebook広告運用などに関してもお手伝いできる部分があるのではないかと考えております。
 
――:ランサーズが個々のライターさんに依頼するメリットはどういったところにあるのでしょうか?
 
足立:弊社ではプラットフォームでフリーランスの方とクライアント様がマッチングするサービスの他に、今回まさにセガさんと協業させていただいたように、ソリューションをワンストップで引き受けるサービスを行っています。各ライターの書いた記事がどのくらいSNSで拡散したか、100%読了したのか、他の記事も読んだのかなど、マーケティング効果を可視化してデータを溜めているので、上位ライターを組織化しリッチな制作体制が提供可能です。今回、このソリューションサービスを協業サービスとして提供していく予定です。
 

 
――:そのほか、サービス面にはどういった特徴がありますか?
 
伊藤:自分が参考になったコメントをブックマークしておける機能があります。ブックマークすると、ブックマークされた事がコメントを投稿した人に通知されるようにもなっています。また、Expiはウェブサービスなので、ゲームから遷移する際にユーザーのゲーム体験を損なわないように、例えばサイトの読み込み速度や、どれだけシームレスにページを開けるかというところにはこだわって制作しています。
 
――:今回、本サービスを始めるにあたって、ユーザーからの需要はどういった部分で感じられたのでしょうか?
 
伊藤:弊社が配信している海洋冒険バトル『戦の海賊』にはキャラクター図鑑が搭載されているのですが、多くののユーザーがこのページを見ているといった実績があります。他のメディアを見ても、キャラに関する記事が多いというのもありますね。
 
――:コンシューマーゲームではテクニックに関する攻略が求められますが、スマホのゲームではキャラのデータや属性相性が重要になることが多いというのが要因として考えられそうですね。
 
伊藤:各クエストをクリアする際にどのキャラを使用したかというデータが溜まっていけば、将来的に自分の持っているキャラを組み合わせてクリアできる幅が広がっていくと思います。ユーザーさんが自分の持っているキャラクターを深く理解して使うことで、よりゲームを楽しみ、「さらに新しいキャラクターを手に入れたい。レベルアップしたい」と感じていただくことで、ユーザー体験としてより良質なものを提供できるようになるのではないでしょうか。
 

▲キャラごとのページでは、より詳細な評価を閲覧できるようになっている。
 
――:ちなみに、本サービスは御社のタイトル全てに対応するのでしょうか?
 
伊藤:順次対応していく予定です。他社のタイトルについては、少しずつお声がけをしている段階ですね。まずは、弊社のタイトルに導入し、どういった効果が出たかもご覧になっていただければとも思っています。
 
――:現時点で課題に感じている部分はございますか?
 
伊藤:ユーザー投稿型という部分を、懸念されているゲーム会社が多いのではないかと思っています。現に、App StoreやGoogle Playのレビュー欄で否定的なことを書かれた経験がある方もおられるでしょうし。ただ、弊社のタイトルにはコメントを書ける場が用意されているようなものがあるのですが、ゲームと近いほどネガティブなことを書きにくいというユーザー心理が働くのか、あまり酷いコメントは見られない傾向にあるんです。そういった経験があるので、弊社としては心配しておらず、むしろ、キャラクターに特化したサービスなので、非常に熱いメッセージを投稿してくださる方が多いのではないかと思っています。我々としては、適切なユーザーに適切なタイミングで適切な情報を提供し、ゲーム会社のゲームにかける想いをしっかりとユーザーに伝えられる、そんな環境を提供出来ればと考えていますので、その懸念を如何に払拭するかを課題として感じています。


 
――:今回のサービスに対して、ゲーム運営側の反応はいかがでしょうか?
 
伊藤:非常に前向きに受け止められていると感じています。実際、私たちが感じているように、ゲームに入ったばかりのユーザーをどうやってファン化していくかという課題は、開発チームも同じように抱えており、Expiはそういった課題に対する適切なソリューションになりえるのではないかと思っています。あとは時間的な問題で、掲載する情報となるキャラクターのデータベースが整理されていないタイトルなどもありますので、開発工数からタイミングを相談して調整している段階です。
 

 
――:最後に、Expiについてメッセージをお願いします。
 
足立:企業のデジタルマーケティング制作や運用支援をする中で、一般消費者がスマートフォンを持つことで企業が活用できるデータが物凄くリッチになってきたと感じています。ゲームアプリそのものは対ユーザーに対するマネタイズ領域ですが、Expiはウェブサービスですので一般企業とコラボレーションをする間口が広いと思っています。Expiでは、ゲームユーザーと一般ユーザーのデータを掛け合わせたクロスプロモーションによって、一般企業のマーケティング支援を行うことができればと思っています。
 
伊藤:元々、本サービスを企画した際に、ゲーム会社が良質なゲームを制作しているにも関わらず、ユーザーにその魅力が伝わっていないと感じる部分がありました。Expiを通して、ゲームの遊び方や楽しさが適切に伝えられるサービスを提供していきたいと思います。
 
――本日は、ありがとうございました。

 

Expiサービスページ

 
 
株式会社セガ
https://www.sega.co.jp/

会社情報

会社名
株式会社セガ
設立
1960年6月
代表者
代表取締役会長CEO 里見 治紀/代表取締役社長COO 杉野 行雄/代表取締役副社長 内海 州史
決算期
3月
直近業績
売上高1916億7800万円、営業利益175億3900万円、経常利益171億9000万円、最終利益114億8800万円(2023年3月期)
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