ソーシャルゲームのメカニズムがプレイヤーに与える影響 SNSでプレゼント贈与を推奨するゲームでは社会的スキルの向上も

総合芸術と称されるデジタルゲーム。日本デジタルゲーム学会(DiGRA JAPAN)でも、文系・理系を問わず、さまざまな分野の研究者が一堂に会し、さまざまな研究発表が行われる。8月6日・7日に東京工芸大学中野キャンパスで開催された2016年夏期研究発表大会でも、数々の発表が行われた。

ここでは「セッション4 ゲームと心理(1)」から、「ソーシャルゲームの社会的要素が及ぼす影響」をレポートする。

 


 

■ソーシャルゲームのメカニズムがプレイヤーに与える影響


ソーシャルゲームの利用状況や課金行動などに関する研究は多いが、実際にゲームのどのような機能がプレイヤーの社会的行動に影響を与えるのかについて、深く掘り下げた研究は少ない。

ここに注目したのが創価大学の渋谷明子氏だ。暴力ゲーム研究の第一人者として知られる渋谷氏だが、「ソーシャルゲームでは挨拶やアイテムの交換といった社会的活動においても報酬がもらえる。より興味深い結果が得られるのでは」と考え、研究グループを立ち上げて実証実験を行った。
 

▲渋谷明子氏
 
「ソーシャルゲームの社会的要素の影響─系統的分析と縦断研究の統合─」で渋谷氏らが課題としたのは、「どのような社会的要素(SNSへの接続・競争性・協力性)が、ゲーム依存・ゲーム接触時間・課金性や、社会的スキルと関連しているのか」という点だ。全国で10代・20代のソーシャルゲーム利用者を対象に、半年間の期間をおいて2回行われた調査の結果、約1000人弱のサンプルが得られた。また、これにあわせて対象となったゲーム31本の要素分析も行われた。

それによると「他グループとの得点競争、他プレイヤーとの対戦、アイテムの交換や売買要素を含むゲームでは、ゲーム依存、ゲーム接触時間、課金額との関連が見られた」という。いわば順当な結果だと言えるだろう。その一方で渋谷氏は「SNSでプレゼント贈与を推奨するゲームでは、ゲーム依存が低く、ゲーム接触時間が短く、課金額が低い一方で、社会的スキルの向上が見られた」という、予想もしなかった結果が得られて驚いたという。
 




 
もっとも、これには人気ゲームの特徴が反映されやすく(実際に今回対象となったのは、調査者がすでに遊んでいた『パズル&ドラゴンズ』『LINEポップ』『LINEポコパン』などだった)、社会的要素についても相互に関連性があるため、留意が必要だとした。また課金要素、イベント要素、利用動機、心理状態といった、他のさまざまな視点からの分析も必要であり、今後も研究を進めていきたいと語った。
 
(取材・文:ライター  小野憲史)


 

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