「プレイヤーのストレスを脳波で計測」…ゲームの習熟者と未習熟者でどのような変化が出るのか

総合芸術と称されるデジタルゲーム。日本デジタルゲーム学会(DiGRA JAPAN)でも、文系・理系を問わず、さまざまな分野の研究者が一堂に会し、さまざまな研究発表が行われる。8月6日・7日に東京工芸大学中野キャンパスで開催された2016年夏期研究発表大会でも、数々の発表が行われた。

ここでは「セッション4 ゲームと心理(1)」から、「3Dビデオゲームにおける脳波を用いたストレス評価に関する研究」をレポートする。

 


 

■プレイヤーのストレスを脳波で計測する


「ゲームのおもしろさを客観的に計測する」ことは、ゲーム業界人の長年の夢であり、課題でもある。そのため、これまでさまざまな手法で人間の生体信号を計測し、これを役立てる研究が行われてきた。こうした中、脳波に着目したのが皇學館大学の小孫康平氏だ。

小孫氏は「3Dビデオゲームにおける脳波を用いたストレス評価に関する研究」で、ゲーム中のプレイヤーの脳に流れるα波とβ波の比率について計測した結果について報告した。
 

▲小孫康平氏


良く知られているように、脳波にはα波、β波、θ波があり、このうちα波はくつろいでいる時、β波は集中していたり、考え事をしている時に増加する傾向がみられる。またβ/α波の値がストレスや集中度合いを測る指標に利用できるとする先行研究もみられる。

これらをもとに、小孫氏はゲームの習熟者と未習熟者で、ゲームプレイ中のβ/α波の変化を計測。インタビューとあわせて分析した。なお被験者は5名で、ゲームにはニンテンドー3DSの『NEWスーパーマリオブラザーズ2』が用いられた。また計測手段として小型無線式脳波計「Vital Brain WVB-01」(TAOS研究所)が使用された。

結果は未習熟者(2名)と習熟者(3名)で大きな違いが見られた。

未習熟者はプレイ中の平均β/α相対値がプレイ時間に応じて増加していき、習熟者は反対に低下していったのだ。ここから小孫氏は「未習熟者はゲームを進める家庭で、次第に次のワールドに行けないなどの焦りや不安が生じ、ストレスが増加していったのだろう。反対に習熟者はボタン操作や攻撃方法といったゲーム中の振る舞いを理解しており、ストレスが低い状態が維持できたのだろう」と考察した。
 




これらの結果から小孫氏は「脳波の平均β/α相対値は、ゲームプレイヤーのストレス評価の指標になることが示唆された」と結論づけた。より大規模な被験者での実験や、複数の生体信号を組み合わせての計測など、さらなる研究が期待される。
 


*夏期研究大会2016の公式サイトはこちら。予稿集もダウンロードできる。
http://digrajapan.org/summer2016/index.html

(取材・文:ライター  小野憲史)


 

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