クリーク・アンド・リバー社<4763>は、7月23日、同社麹町制作ルームで「元祖 シナリオ塾」を開催した。
これは現役で活躍するプロから、シナリオ制作現場の話やシナリオ制作のコツ、業界の最新事情に関する話が聞けるセミナーで、当日はクリーク・アンド・リバー社プロデューサーの石川学氏、クリーク・アンド・リバー社文芸監督の武田正憲氏のほか、スペシャルゲストとして『クリスタル オブ リユニオン』プロデューサーの結城基氏、アニメ監督の水島精二氏が登壇した。
本稿では、クリーク・アンド・リバー社文芸監督の武田正憲氏と、『クリスタル オブ リユニオン』プロデューサーの結城基氏にインタビューをお届けする。
▲武田正憲氏(写真左)、結城基氏(写真右)
――: 武田さんは一定の規制の中での作業になりますが、実際のアイディア提案などはあるのでしょうか。
武田:もちろんありますね。作品になかったものをわりと好き放題に提案しています。
結城:武田さんにはシナリオ優先で、と言っていますが、そのシナリオの根幹にはキャラクターがありますよね。キャラクターがいて、それをどう最大化させるか。ここは私と非常に近いと思います。
武田:そうですね。でも、この考えってソーシャルゲームがそういう考えなんですよ。私はここ1,2年でその考えになりました。起承転結のストーリーがあって、そこにキャラクターが生まれることがあるのですが、そこには絵素材が必要になったりと、作れないこともあるんですよ。じゃあ1体のキャラクターだけの魅力でどこまで戦えるのかっていうのがあると思うんです。『クリユニ』は6キャラ+αですが、これが100キャラだったりもよくあるので、そういう意味では自由にやっていますね。
結城:自由どころか、ここにキャラクターが欲しいって要求をしてくるようになりましたよね。
武田:最近は「これぐらいなら作ってくれるんだ」というのが分かったので、要求しています。
――: 武田さんも戦略MMOのユーザーとして、『クリユニ』に触ったとのことですが、ストーリーもあることで斬新だったと思います。ユーザーの反響などはどうでしたか。
結城:『クリユニ』はユーザーのほとんどが戦略MMOをやったことのない人です。キャラクターが好きでやっていたり、声優が好きで始めたり。「ストーリーを見るためにやっていたら、ゲームも楽しかった」という声もあり、間口を広げて色んな人に遊んでもらいたかったんですよ。ただ1個だけ海外産の戦略MMOに勝てないところがあって、『クリユニ』は全世界で戦えないんですよ。なので日本で勝ち抜くためにも、ストーリー、キャラクター、世界観は大事にしています。もちろん世界での戦いも視野に入れています。
――: チュートリアルが非常に丁寧だったので、間口を広げたというのはよく分かりますね。
武田:チュートリアルは特にこだわったので、何度もリテイクを行いました。次のステップに進むときに追加でシナリオを組み込んだり、6キャラ分それぞれにチュートリアルを作ったり、自分の首を絞める形になりましたが、とにかくこだわりましたね。
結城:もう武田さんは開発者として携わっている感覚ですよ。
武田:ストーリーの部分からですが、一から作っているような感覚でやっていますし、今後のキャラクター展開もできています。『クリユニ』はプロデューサー、シナリオディレクター、制作などで連携がきちんと取れているのが特徴です。
結城:コミュニケーションは重要視していて、私のプロデューサー持論に上も下もないんですよ。ものづくりを一緒に楽しむというところに武田さんと巻き込めたかなと思っています。チュートリアルはパーツみたいなものも決まっていますし、そこを考えるのもなかなかない経験だったかなと思います。
とにかく『クリユニ』は縦で物語を言うことができないんですよ。そこはキャラクターで世界観を補填していって、色々とやることで世界が分かっていく。キャラクターだけでも駄目だし、わざわざ6パターンを用意したのは戦略MMOという少ない世界観との関わりを少しでも多くしてキャラクターと触れ合ってほしかったんです。
――: 比較的新規の人が入りにくいジャンルのイメージが強いですが、その点『クリユニ』は遊びやすい印象を受けました。
結城:ありがたいことに『クリユニ』を遊んでくれた人は、継続して遊んでくれてるんです。これもスタートの手取り足取り間を絶妙なバランスで調整できたのかなと思っています。ただ、この手のゲームに正解はないと思っているので、改善を重ねる点があれば今後もしていきたいですね。
――: 戦略MMOのシナリオということで、意識をした点などはありましたか。
武田:シナリオの形が決まった時には、そこに入れられる面白さだけを追求しましたね。最初に作ったストーリーが戦略MMOという部分に囚われて普通のものになってしまったので、システムを侵す内容でもいっそのことシステムを変えられませんか? くらいのすっとんでいるような、キャラクターの魅力を引き出すものを練りましたね。ゲームであることを忘れて、それを最終的に当てはめていく形が多かったです。
――: ここは『クリユニ』ならでは、という点はありますか?
武田:2,3日前のプロット全没とかですかね。信頼関係だと思うですが、「ボツになったから新しいものを出してよ」みたいな。全部書きあがってから、やっぱり変えようかってことも。シナリオを書き始めてからは、そんなに修正はないんですが、プロットの段階では特に多くて、他の案件とは全然違いますね。メインとなるキャラクター数がそんなに多くはないので、その分こだわってシナリオを書いています。
――: 他の案件とはやはり違うのでしょうか。
武田:作品との関わり方が違いましたが、何よりも世界観の資料を私たちが作るというのが違いましたね。その資料もまだまだできていない状態です。今後出てくるために用意をしなければいけないものを、実際の作業と同時並行で作らなければいけないので、大変ではありますが楽しくもあります。
結城:ゴールを作って、そこへの直線のシナリオがあればいいんですが、『クリユニ』はそれがない。新しいキャラクターが増えたときに、変えなきゃいけない場所もでてくるかもしれないんですよ。仕様書を後から作っていることをシナリオでもやりはじめて、それが日々増えている状態です。
――: お気に入りのストーリーなどはありますか。
武田:ヘラクレスが好きで彼女のストーリーや、ルル、ナナの掛け合いは、「どけ俺がやる」みたいなことはあったりしますね。男性キャラに関しては、チーム内にそういう人がいるので、全体のバランスも取れているかなと思っています。
結城:いち作家だけじゃなくて、ある種のオムニバスみたいな雰囲気にもなるのは、いいスタイルだなと。当然ユーザーの趣味嗜好は全然違いますが、そのどこかには気に入ってもらいたいですね。人気がないな、と思うキャラクターも特にいないですし、ちょうどいいなと思っています。
――: 『クリユニ』とってのシナリオとはなんでしょうか。
結城:『クリユニ』にはストラテジーという素晴らしい土台があるので、ストーリーって見たくない人は見なくてもいいんですよ。言ってしまえば導入要素のひとつみたいなものです。
武田:ストーリーって、ただ日本語が並んでいるだけですからね。その癖に時間は取られる。絵や音楽であれば見たり聞いたりするだけで終わりますが、ストーリーは長い上に想像までさせられる。だからこそ肌触りは非常に重要なんですよ。そこで今回は邪魔なままにしているんです。邪魔かもしれないけど、面白いですよと。邪魔は邪魔なままでいながら、主張していこうと。
結城:『クリユニ』では見なくてもいい人のためにスキップもつけています。でもゲームが面白くて、ストーリーも面白ければ2倍じゃないですか。
武田:異物ではあるんですが、その異物感が気持ちいいって言われている声もあって、狙った通りになったかなと思っています。
結城:ストーリーを見ている間は、ゲームができないですからね。見ていたら城が燃えてる、なんてこともあると思います。それとストラテジーってどうしても時間が空いてしまうじゃないですか。その間に見てもらえば「案外面白いな」って思えるだけのものは作ったつもりですし、今後も作っていきたいと思います。
――:ありがとうございました。
これは現役で活躍するプロから、シナリオ制作現場の話やシナリオ制作のコツ、業界の最新事情に関する話が聞けるセミナーで、当日はクリーク・アンド・リバー社プロデューサーの石川学氏、クリーク・アンド・リバー社文芸監督の武田正憲氏のほか、スペシャルゲストとして『クリスタル オブ リユニオン』プロデューサーの結城基氏、アニメ監督の水島精二氏が登壇した。
本稿では、クリーク・アンド・リバー社文芸監督の武田正憲氏と、『クリスタル オブ リユニオン』プロデューサーの結城基氏にインタビューをお届けする。
■少しでもキャラクターと多く触れ合ってほしかった
▲武田正憲氏(写真左)、結城基氏(写真右)
武田:もちろんありますね。作品になかったものをわりと好き放題に提案しています。
結城:武田さんにはシナリオ優先で、と言っていますが、そのシナリオの根幹にはキャラクターがありますよね。キャラクターがいて、それをどう最大化させるか。ここは私と非常に近いと思います。
武田:そうですね。でも、この考えってソーシャルゲームがそういう考えなんですよ。私はここ1,2年でその考えになりました。起承転結のストーリーがあって、そこにキャラクターが生まれることがあるのですが、そこには絵素材が必要になったりと、作れないこともあるんですよ。じゃあ1体のキャラクターだけの魅力でどこまで戦えるのかっていうのがあると思うんです。『クリユニ』は6キャラ+αですが、これが100キャラだったりもよくあるので、そういう意味では自由にやっていますね。
結城:自由どころか、ここにキャラクターが欲しいって要求をしてくるようになりましたよね。
武田:最近は「これぐらいなら作ってくれるんだ」というのが分かったので、要求しています。
――: 武田さんも戦略MMOのユーザーとして、『クリユニ』に触ったとのことですが、ストーリーもあることで斬新だったと思います。ユーザーの反響などはどうでしたか。
結城:『クリユニ』はユーザーのほとんどが戦略MMOをやったことのない人です。キャラクターが好きでやっていたり、声優が好きで始めたり。「ストーリーを見るためにやっていたら、ゲームも楽しかった」という声もあり、間口を広げて色んな人に遊んでもらいたかったんですよ。ただ1個だけ海外産の戦略MMOに勝てないところがあって、『クリユニ』は全世界で戦えないんですよ。なので日本で勝ち抜くためにも、ストーリー、キャラクター、世界観は大事にしています。もちろん世界での戦いも視野に入れています。
――: チュートリアルが非常に丁寧だったので、間口を広げたというのはよく分かりますね。
武田:チュートリアルは特にこだわったので、何度もリテイクを行いました。次のステップに進むときに追加でシナリオを組み込んだり、6キャラ分それぞれにチュートリアルを作ったり、自分の首を絞める形になりましたが、とにかくこだわりましたね。
結城:もう武田さんは開発者として携わっている感覚ですよ。
武田:ストーリーの部分からですが、一から作っているような感覚でやっていますし、今後のキャラクター展開もできています。『クリユニ』はプロデューサー、シナリオディレクター、制作などで連携がきちんと取れているのが特徴です。
結城:コミュニケーションは重要視していて、私のプロデューサー持論に上も下もないんですよ。ものづくりを一緒に楽しむというところに武田さんと巻き込めたかなと思っています。チュートリアルはパーツみたいなものも決まっていますし、そこを考えるのもなかなかない経験だったかなと思います。
とにかく『クリユニ』は縦で物語を言うことができないんですよ。そこはキャラクターで世界観を補填していって、色々とやることで世界が分かっていく。キャラクターだけでも駄目だし、わざわざ6パターンを用意したのは戦略MMOという少ない世界観との関わりを少しでも多くしてキャラクターと触れ合ってほしかったんです。
――: 比較的新規の人が入りにくいジャンルのイメージが強いですが、その点『クリユニ』は遊びやすい印象を受けました。
結城:ありがたいことに『クリユニ』を遊んでくれた人は、継続して遊んでくれてるんです。これもスタートの手取り足取り間を絶妙なバランスで調整できたのかなと思っています。ただ、この手のゲームに正解はないと思っているので、改善を重ねる点があれば今後もしていきたいですね。
■『クリユニ』には直線のシナリオがない
――: 戦略MMOのシナリオということで、意識をした点などはありましたか。
武田:シナリオの形が決まった時には、そこに入れられる面白さだけを追求しましたね。最初に作ったストーリーが戦略MMOという部分に囚われて普通のものになってしまったので、システムを侵す内容でもいっそのことシステムを変えられませんか? くらいのすっとんでいるような、キャラクターの魅力を引き出すものを練りましたね。ゲームであることを忘れて、それを最終的に当てはめていく形が多かったです。
――: ここは『クリユニ』ならでは、という点はありますか?
武田:2,3日前のプロット全没とかですかね。信頼関係だと思うですが、「ボツになったから新しいものを出してよ」みたいな。全部書きあがってから、やっぱり変えようかってことも。シナリオを書き始めてからは、そんなに修正はないんですが、プロットの段階では特に多くて、他の案件とは全然違いますね。メインとなるキャラクター数がそんなに多くはないので、その分こだわってシナリオを書いています。
――: 他の案件とはやはり違うのでしょうか。
武田:作品との関わり方が違いましたが、何よりも世界観の資料を私たちが作るというのが違いましたね。その資料もまだまだできていない状態です。今後出てくるために用意をしなければいけないものを、実際の作業と同時並行で作らなければいけないので、大変ではありますが楽しくもあります。
結城:ゴールを作って、そこへの直線のシナリオがあればいいんですが、『クリユニ』はそれがない。新しいキャラクターが増えたときに、変えなきゃいけない場所もでてくるかもしれないんですよ。仕様書を後から作っていることをシナリオでもやりはじめて、それが日々増えている状態です。
――: お気に入りのストーリーなどはありますか。
武田:ヘラクレスが好きで彼女のストーリーや、ルル、ナナの掛け合いは、「どけ俺がやる」みたいなことはあったりしますね。男性キャラに関しては、チーム内にそういう人がいるので、全体のバランスも取れているかなと思っています。
結城:いち作家だけじゃなくて、ある種のオムニバスみたいな雰囲気にもなるのは、いいスタイルだなと。当然ユーザーの趣味嗜好は全然違いますが、そのどこかには気に入ってもらいたいですね。人気がないな、と思うキャラクターも特にいないですし、ちょうどいいなと思っています。
■「ストーリーって邪魔なんですよ。でも、面白いんですよ」
――: 『クリユニ』とってのシナリオとはなんでしょうか。
結城:『クリユニ』にはストラテジーという素晴らしい土台があるので、ストーリーって見たくない人は見なくてもいいんですよ。言ってしまえば導入要素のひとつみたいなものです。
武田:ストーリーって、ただ日本語が並んでいるだけですからね。その癖に時間は取られる。絵や音楽であれば見たり聞いたりするだけで終わりますが、ストーリーは長い上に想像までさせられる。だからこそ肌触りは非常に重要なんですよ。そこで今回は邪魔なままにしているんです。邪魔かもしれないけど、面白いですよと。邪魔は邪魔なままでいながら、主張していこうと。
結城:『クリユニ』では見なくてもいい人のためにスキップもつけています。でもゲームが面白くて、ストーリーも面白ければ2倍じゃないですか。
武田:異物ではあるんですが、その異物感が気持ちいいって言われている声もあって、狙った通りになったかなと思っています。
結城:ストーリーを見ている間は、ゲームができないですからね。見ていたら城が燃えてる、なんてこともあると思います。それとストラテジーってどうしても時間が空いてしまうじゃないですか。その間に見てもらえば「案外面白いな」って思えるだけのものは作ったつもりですし、今後も作っていきたいと思います。
――:ありがとうございました。
(取材・文:間浩人)
会社情報
- 会社名
- 株式会社gumi
- 設立
- 2007年6月
- 代表者
- 川本 寛之
- 決算期
- 4月
- 直近業績
- 売上高160億0900万円、営業利益4億4700万円、経常損益1900万円の赤字、最終利益4億4500万円(2023年4月期)
- 上場区分
- 東証プライム
- 証券コード
- 3903