フォトリアルなVR映像生成とゲームエンジンを使った仮想空間 NVIDIAとEPICが創る新たな世界

 

NVIDIAは、10月18日、東京・赤坂の自社オフィスにおいて、プロフェッショナルグラフィックス&VRソリューションと題したプレス向けの体験会を行った。

体験会では、同社のプロフェッショナルGPUでPascalアーキテクチャを搭載した「Quadro」の紹介や、「IRAY VR」と呼ばれるフォトリアルな描画を可能にするレンダリングエンジンの説明、そしてUnrealEngineのゲーム以外での使用事例の紹介が行われた。
 


▲最初に登壇したのはNVIDIAの田中氏。より強力になったQuadroの紹介を行ってくれた。


Pascalを搭載した「Quadro P6000 / P5000」は、従来より大きく性能がアップしていることや、メモリがGDDR5Xという帯域幅の広いものへ変更されたことや、CUDAのコア数の増加。ディスプレイポートが1.2から1.4へ変わったことなどを説明。また同製品の使用を想定している例などが紹介された。

▲Quadroが使用の想定される利用エリア。

 


▲一番右が最新のQuadro。対比は前モデル、前々のモデル。非常にパフォーマンスがあがっていることがわかる。

 

同社が持つレンダリングエンジンについて話が移る。レンダラーを幾つか所有する同社だが、その中でも今回フォーカスするのは「IRAY VR」だ。同レンダリングエンジンはRAYと名のつく通り、Ray Tracing(レイトレーシング)が中心。このIrayのVR向けレンダリングソリューションが「Iray VR」となる。
 


▲NVIDIAの柿澤氏。耳に馴染みのあるDirectXやOpenGLといった既存のレンダラーではフォトリアルな絵は描けないと語る。

 


▲建設中のNVIDIAの社屋をIRAYでレンダーし、VR空間で歩いたものだ。非常に精密にできた仮想空間にて新社屋を体験をすることができる


▲実際に体験できたVRデモの画面。パターンは限られているものの、時間帯による陽の入り方を体感することができた。

「Iray VR」で制作された映像は非常に美しい。おそらくは、VR-HMDの解像度のほうが追いついていない可能性すらあると感じた。ただ注意点としては、「Iray VR」の制作にはプラグインさえあれば可能だが、そのためのレンダーマシンとして、「Quadro VCA」や「DGX-1」といったものに限られてしまうとのことだ。
 


▲「IRAY VR」に必要な「Quadro VCA」「DGX-1」


現時点では、制作には大きなハードルがあり、国立競技場やオリンピックの施設といった大規模なものが対象となりがちだが、数年以内には、個人の家やマンションといったものにも採用されるだろうと締めくくった。


■今後の制作されるゲームの数は減っていく?ゲーム以外での「Unreal Engine」の使用例とは
 


Epic Game Japan 代表の河崎氏が、ゲーム以外のUnrealEngine4の利用について説明してくれた


開発者ではなくとも、ゲーマーなら誰もが知っている「Unreal Engine」。新たに発表された任天堂の新ハード「Nintendo Switch」にも対応が発表された同エンジンは、元々ゲーム制作用のエンジンではあるものの、クオリティの高いインタラクティブなCGコンテンツを"リアルタイム"で描画できることから、近年ゲーム以外での利用が増えてきている。

PS4は売れているものの、大作化が進んでおり、ゲームの本数は減っていくのではないかと同氏は語る。そこでゲーム以外のビジネス開拓というのを重要な課題として捉えており、その大きな一部としてエンタープレイズ案件に取り組んでいるという。先日の東京ゲームショウ2016で、発表された新規IP『Project LayereD』のティザームービーは同エンジンで制作されていると説明してくれた。


▲バンダイナムコエンターテイメントとサイバーコネクトツーによる新規IP。ティザーの制作はポリゴンピクチャーズとヒストリアによるもの

同ムービーの制作についてだが、3Dのキャラクターやオブジェクトを2D書かれた背景にコンポジット。そこにエフェクトを加えるという制作方法だ。今までの制作方法との違いに関しては納期が短い期間ことによる速さだという。今まで別のツールで1フレーム5時間〜10時間程度かかっていた作業が、同エンジンを使用することで、遅くとも1秒で5フレーム〜10フレーム程度出せるようになったこと、トライ&エラーの速さ、ファイナルに近い形でのプレビズができるといった点が評価されての採用になったと説明した。

また劇中のモブはプロシージャルによるプログラムでの配置をしたという。


▲「Unreal Engine」のゲーム以外での海外採用例。自動車メーカーも目立つ。


日本での興味深い事例としては、大手自動車メーカーの自動運転のAI開発によるものだ。自動運転はざっくり言ってしまうと、カメラからの画像を認識をして危険を判断をするが、コースを使用してのテストには環境も含めた制限が大きく限界がある。そこで、同エンジンを用いて、仮想的に街を制作しAIのシミュレーションを行っているというものだ。

このように「Unreal Engine」は、クオリティの高い3DCGモデルの出現によって、アニメーションの制作や、より質の高い仮想空間などを構築できる環境になってきている。数十年先には、映画「マトリックス」のような世界を構築するベースとして同エンジンが使用されていても不思議ではないとすら思える進化をしている。

フォトリアルと呼ばれている高品質なオブジェクトを作るNVIDIAのハードウェアと、前述したような仮想世界をも構築できるEpic GameのUnreal Engine。これらが作る世界が、筆者が生きている間にどこまで進化していくのか、非常に楽しみな発表会となった。
 

NVIDIA公式サイト

 

UnrealEngine公式サイト

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