ネクソン、7~9月決算も"良好"な状況続く 『アラド』や『メイプル』など長期運用タイトルが貢献 『HIT』筆頭にモバイル分野でも頭角現す



ネクソン<3659>は、11月10日、第3四半期(2016年7~9月)の連結決算(IFRS)を発表し、売上収益498億円(前年同期比11%減)、営業利益162億円(同12%減)、最終損益73億円(同60%減)と減収・減益となった。中国と韓国を中心にオンラインゲーム事業は堅調に推移したものの、韓国ウォンや中国元、米ドルに対して円高となったことが主な要因だ。前年同期に比べて、円は13~21%上昇し、売上と利益に大きな影響を与えた。

当サイトの取材に応じた同社経営企画室長の熊谷峻平氏(写真)は、「中国や韓国など海外の売上比率が9割を占めており、為替相場の影響を受けやすい。一見、弱い数字に見えるかもしれないが、ロングランのヒットタイトルをしっかりと運用し続ける力が示せた」と振り返り、ビジネスの実態は良好との見方を示した。新作タイトルについてもヒットタイトルが出始めており、「2014年の経営刷新後にまいた種が収穫期に入りつつある」という。

2ケタの減収・減益にも関わらず、「良好」と言い切るのは、為替レートが前年同期と同じだった場合を示す「一定為替レートベース」で見ると全く変わるからだ。稼ぎ頭である中国セグメントでは14%の減収から一転して7%の増収となるほか、韓国も9%の減収から4%の増収となる。相対的に地位の低かった米国や欧州その他の地域に至っては、2%増から24%増、そして14%増から32%増に増収率がアップする。
 


なお、最終損益については減益幅が大きいが、米ドル建ての現金預金及び売掛金などについて為替差損が発生したとのこと。


 
■中国と韓国で長期運用タイトル中心に好調続く

まず、稼ぎ頭である中国事業から見ていこう。主力タイトル『アラド戦記』が引き続き好調だった。一定為替レートでは前年同期比7%増の216億円となる。夏季アップデートと行ったほか、国慶節アップデートを実施し、ユーザーから好評だったそうだ。国慶節アップデートについては、この四半期で反映されたのはわずか4日間だったが、「かなり寄与した」とのこと。運営開始から8年になるが、安定して推移しているようだ。
 


韓国事業は、一定為替レートでは4%増の209億円だった。運営開始から13年になる『メイプルストーリー』と、11年になる『アラド戦記』の運営成績が引き続き好調だった。大型のコンテンツアップデートを行ったことが奏功した。特に『メイプルストーリー』は、長期間の運営にも関わらず、売上収益を伸ばしているとのことだった。モバイルは、新作『Chaos Chronicle』と『M.O.E (Master of Eternity)』をリリースし、9%の増収となった。
 


日本は引き続き苦戦し、同25%減の37億円だったが、「前四半期との比較でみたとき、売上高の低下が緩やかになってきた」という。モバイルゲームでは『ハイドアンドファイア』がアプリストアの売上ランキングでも上位に入るなど新作が寄与し始めただけでなく、PCオンラインゲームが久々に前四半期比でプラスに転じた。PCオンラインゲームの反転の立役者は、新作『ツリーオブセイヴァー』だった。今回は1カ月のみの売上計上だったが、次の四半期からフルに計上される。
 


北米と欧州及びその他の地域は、会計基準と一定為替レート双方でプラスだった。北米では『Riders of Icarus』と、モバイルRPG『HIT』が貢献し、欧州及びその他では台湾、香港、マカオ、タイ、ベトナムなどアジア地域で『HIT』の収益が好調に推移したため。「アジア地域では韓国産オンラインゲームが人気を博した経緯がある。『HIT』もその流れを汲む作品として評価されたのではないか」と熊谷氏はヒット要因を分析している。
 


 
■第4四半期の見通し

続く第4四半期(10~12月)の業績は、売上収益393億~421億円(前年同期比14%減~8%減)、営業利益81億~103億円(同21%減~変わらず)、最終利益17億~21億円(同75%増~116%増)と減収・営業減益を見込む。
 


第3四半期と同じく、韓国ウォンと中国元などの対円レートの下落の影響を受ける見通しだ。また韓国における人員増に伴う人件費の増加も減益要因となる。他方、IPタイトルに関連したロイヤリティ費用が減少するほか、前年同期に発生した減損損失の発生を見込んでいないことが増益要因となる。

各地域別の取り組みは以下のとおりとなる。
 


目立ったところでは、韓国で『三国志曹操伝Online』と『メイプルストーリーM』をリリースし、いずれもアプリストアの売上ランキングで上位に入るなど好調な出足を見せている。また、17日から開催中の韓国最大のゲームイベント「G-STAR」にもモバイルゲーム28本、PCオンライン7本を出展している。

このほか、日本国内では、PCオンラインゲーム『攻殻機動隊S.A.C. Online』を11月に配信するほか、モバイルでは『ダンジョンストライカーG』をリリースする予定だ。このほか、世界各国で大ヒットしているモバイルRPG『HIT』の日本リリームに向けた事前登録の受付も開始している。


 
(編集部 木村英彦)
株式会社ネクソン
http://www.nexon.co.jp/

会社情報

会社名
株式会社ネクソン
設立
2002年12月
代表者
代表取締役社長 イ・ジョンホン(李 政憲)/代表取締役CFO 植村 士朗
決算期
12月
直近業績
売上収益4233億5600万円、営業利益1347億4500万円、最終利益706億0900万円(2023年12月期)
上場区分
東証プライム
証券コード
3659
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