【インタビュー】日本で独自の盛り上がりを見せる『ホウチ帝国』…コミュニケーションを中心にした進化、そして今後の展望を訊いた

中国のデベロッパー・COM4LOVESが開発したスマートフォンアプリ『ホウチ帝国』が、日本でも着実に人気を集めている。本作はRPGをベースにした放置ゲームで、アプリを起動していなくても自動で戦闘が行われ、レベル上げやアイテムの収集を行ってくれる。手軽さを強みにする一方で、他プレイヤーと対戦する闘技場やランキングも存在し、さらにはそれらをつなげるチャット機能も盛んに使用されている。
 


中国で本作は2016年夏に日本でも配信が始まると、じわじわと人気を集めている。一体本作のなにが日本のユーザーに受けているのか、そして今後はどのような方向へ進化していくのか。日本運営の担当者にインタビューを行った。
 
 

日本独自の使われ方をするチャット機能……コミュニケーションが人気のカギ

  
――本日はよろしくお願いします。まずは本作を開発・運営することになった経緯から教えてもらってもいいですか。
 
『ホウチ帝国』は約3年前に中国のCOM4LOVESが開発したアプリで、中国や台湾ではユーザーさんからの人気も非常に高い作品です。一切触らなくてもいいというゲームシステムは空いた時間を利用して遊ぶ日本のユーザーさんとも相性が良いと考え、日本での展開を決定しました。リリースは6月末に行われて、KPIも当初の想定通りに進んでいます。
 
 


――日本で展開するにあたってブラッシュアップをかけた部分もあるのですか?
 
デザイン面は以前から分かりにくい箇所があると感じていたので、日本展開に合わせて修正を行っています。またイベントを打ち出すタイミングも日本のユーザーさんの趣向に合わせて調整しています。
 

――リリース前のプロモーション段階での手応えはいかがでしたか。
 
まずローカライズが5週間程度と、非常にスムーズに完了できたことが大きく、事前登録などのプロモーション展開も円滑に進められました。事前登録に関しては予約トップ10など各サイトを合計すると約5万人のユーザーさんを獲得できました。そのころから、日本でも成功するのでは、という期待感はかなり感じていましたね。
 

――それでは、リリースされてからの反響はどうですか?
 
本作の大きな特徴として、ゲームをプレイしながらチャットも楽しめる設計になっています。ゲームのイベントのことはもちろん、「今日はなにを食べるか」「どこで遊ぶか」といったまったく別のことを話題にしている人も見受けられます。これが非常に好評で、ゲーム自体への人気にもつながっているようです。
 
 
▼本作のチャット機能はゲーム内での用途の他にコミュニケーションツールとして活用されている


――雑談を楽しめるというのは、コミュニティとして珍しいですよね。
 
そうですね。バトル時の操作が必要ない代わりに、その時間が手持ちぶさたになりがちです。それをユーザーさんが上手く利用してくれているのです。ゲームの起動時間も、他作品と比べて10%ほど高いデータも出ています。そして独自のコミュニティが形成されたことで、翌日や1ヶ月後の継続率も高い傾向にあります。
 

――やはりチャット機能には、相当なこだわりを持っていたのでしょうか。
 
日本展開の前はまだまだ不完全な部分が多かったのですが、日本で配信してからの半年間でかなり使いやすくなったと思います。今ではLINEといったチャットアプリと同じ感覚で利用できるまでになっています。スタンプ機能もありますし、会話以外でもさまざまな表現ができるように進化しています。日本のユーザーさんからは、ゲームシステムよりもチャットに関する要望のほうが多くいただいているくらいで、参考にさせてもらっています。
 

――もちろんゲームの攻略にもチャットは役立ちますよね。
 
例えばギルドメンバーとともに強力な敵と戦うGvEでは、積極的に議論が交わされていますね。GvGは1週間に1回のペースで楽しめるのですが、そのときも相手のギルドを調査したり、戦う順番などを検討したりと、積極的に使われていますね。
 

――なぜ日本で独自の盛り上がりを見せていると考えていますか?
 
先程も話したとおり、やはり日本人はなかなかゲームをする時間が取れません。本作の場合チャットを見るだけで、ゲーム内でなにが起こっているのかを把握でき、ゲームに参加できるのが強みだと思います。またゲーム内イベントに関しても、1、2回ボタンを押すだけで進行できるのも魅力なのでしょう。
 

――ちなみにチャット画面は、日本向けの改修は行ったのでしょうか?
 
インターフェイスはもちろん、見た目も日本向けに変更しています。元々の中国版はゲームの世界観に合わせて、全体的に暗い雰囲気を持たせていました。しかし日本版では明るい雰囲気に変え、より参加しやすい見た目にしています。
 

――既存のユーザーさんはチャットを存分に活用しているというお話ですが、これから始める人に対して、おすすめの遊び方はありますか?
 
本作のキャラクターは通常のRPGと同じく、経験値をためてレベルを上げることで強化されていきます。しかし普通にプレイしていてはレベル上げに時間がかかります。そこで1日2回「高速戦闘」という機能が使用でき、これを有効に活用すれば戦闘がスピーディに終わり、効率よくキャラクターを強化することが可能です。「高速戦闘」を使っているユーザーさんは意外と少なくて、これさえ知っていれば既存のユーザーさんにも追いつけると思います。
 
 

また本作は無課金でも十分に遊べることも知ってもらいたいですね。他のRPG作品だとある程度ゲームを進めるとガチャがどうしても必要になってきますが、本作だとレベルを上げるたびに特別なアイテムがもらえるのです。このおかげですべてのユーザーさんが等しく進行できるため、2ヶ月間の継続率が、他作品の1週間継続率とほぼ同じなのです。

 
――課金した人だけが強くなるシステムだと、モチベーションを維持できないですからね。
 
当然課金していただければ、ランキングでも有利になります。しかし無課金のユーザーさんでもギルドの一員として勝つことはできますし、その中で主役になることもあります。チャットの盛り上がりも合わせて、今の環境を続けていきたいと思っています。
 

――課金についてはどのような考えをお持ちですか?
 
これは我々と中国のデベロッパー共通の考えとして、1人に多くの課金をさせるのではなく、多くの人から少しずつ課金してもらいたいという気持ちがあります。中国ではリリースから2ヶ月位まではハイペースで課金してもらうものの、その後すぐに廃れてしまうケースが多々あります。これは課金したユーザーさんが強くなりすぎて、無課金のユーザーさんがいなくなってしまうことが原因なのです。
 

 

キャラクターを華やかにする翼、まったく新しいランキングも実装予定

 
――ゲームシステムも独特ですが、運営をするうえで苦労することはありますか?
 
サーバー周りは常に気を使っていますね。ユーザー数が順調に増えているため順次サーバーを追加していますが、それでも負荷は相当なものです。またユーザーさんによってはサーバーが複数に別れることを敬遠する方もいます。どのタイミングで、どのくらいの規模感でサーバーを増やしていくかは、かなり慎重に検討しています。
 


――サーバーに関しては、ユーザーさんによって意見がまったく違うと思います。
 
おっしゃるとおりで、快適に遊ぶために「サーバーを早く増やしてほしい」という方もいれば、現在の環境に慣れ親しんでいるため「サーバーを増やさないでほしい」という意見もあります。正反対の意見があるため、線引きが難しいですね。
 

――今後ゲーム内で、どんな取り組みを行っていく予定ですか?
 
新しい機能をいくつか開発中で、ひとつはキャラクターが装備できる新アイテムとして、翼を追加するというものです。日本のユーザーさんは能力だけでなく、ビジュアルにもこだわりを持つ方が多いです。翼はそんな日本向けのアイテムで、見た目が一層華やかになると尾もいます。もちろん装備すれば能力も強化することが可能ですので、実装されたらぜひ利用してもらいたいです。
 
もうひとつはサーバー間で戦闘できる大規模な新システムの導入です。これまではギルド間が最大でしたが、今まで以上に大人数のプレイヤーを巻き込んでの戦闘が楽しめます。この機能はユーザーさんからの要望が大きかったもので、特に「他のサーバーの状況を知りたい」という方が非常に多かったのです。どのサーバーが強いのかが分かるという意味でも、盛り上がってくれると期待しています。

 

――アップデートに関しては、すでに動き始めているのですね。
 
他にも検討中のものとして、まったく新しいランキングを作りたいと考えています。現在は闘技場で対戦し、それがランキング化されますが、どうしても課金をしているユーザーさんのほうが強い傾向にあります、新しく検討しているランキングは、成長スピードに順位をつけるというもので、他人と比較するだけでなく、過去の自分との競争にもつながるのです。成長スピードであれば課金の有無に影響されませんし、特に無課金のユーザーさんには注目してもらいたいですね。以上の3つの機能は、すべて年内に実装することを目標に掲げています。
 

――すべて年内に実装というのはすごいですね。アップデートのスピード感も意識しているのですか?
 
そうですね。デベロッパーであるCOM4LOVESは中国のアプリ市場でも常にトップ10に入るメーカーで、現地では開発力の高いことで有名です。スタッフの人数も北京と深センのスタジオを合計すると400人規模になります。それだけのメーカーですので、開発スピードにも自信があるのです。
 

――日本のユーザーさんの意見を取り入れるケースは、今後もあるのでしょうか。
 
もちろんです。日本のスマートフォンゲームは他国に比べて長い期間楽しまれる傾向にあります。例えば中国だと約半年のサイクルがありますが、日本だと平均すると2年というサイクルになります。それは日本のメーカーがユーザーさんの意見を積極的に取り入れていることが大きな要因で、私たちも同じように愛されるゲーム作りを目指します。意見はゲーム内のお問い合わせフォームから送ることができるので、ぜひ利用してもらいたいです。
 

――分かりました。それでは最後に、読者へ向けてのメッセージをお願いします。
 
以前の日本だと、海外産のスマートフォンアプリに参加しにくい印象がありましたが、現在のランキングを見ると徐々にその空気が変わってきたと感じます。私たちもそんな波に乗り、さらに日本産と海外産の壁を取り払えるように頑張っていきたいです。作られる国によってゲームの魅力は変わってきますが、『ホウチ帝国』はもちろん海外のゲームならではの魅力を伝えられるよう努力していきます。
 

――ありがとうございました。

 



■ホウチ帝国
 

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