VRボードゲーム『モニャイの仮面』濱田氏とスーパーミステリーマガジン「ムー」望月氏による、オカルティックブレスト&インタビューその2


では前編に引き続き、後編もギフトテンインダストリ代表の濱田隆史氏と、月刊ムー編集部の望月哲史氏に話を伺う。後編はもう少しVR的な視点に加え、それに伴うオカルティックな側面をお届けする。(前編はこちら
 

ギフトテンインダストリ株式会社
代表
濱田 隆史 氏 (写真右)

月刊ムー
編集部
望月 哲史 氏 (写真左)

――:唐突ですが、お二人ってオカルト体験あったりします?

濱田氏:二十歳くらいの時に腹膜炎をやって、死にかけました。手術の後、ずっと調子が悪かったんですが、ある朝突然元気になったんです。それまでは痛すぎて辛すぎて何も考えられない状態だったにも関わらず急に頭が冴えて、当時受験生だったので「これで勉強できるぞ」と考えたその日に、爺ちゃんが死んじゃってたんです。それが深夜で、僕は早朝に痛みが消えた。

その時期が重なっていて急に元気になりました。だから爺ちゃんが痛みを連れて行ったのかなあって……。それから不思議な事は信じるようになったし、信じざるを得ませんでした。

望月氏:私はあまり無いんですが、学生時代に映画の「リング」を怪しいレンタルビデオ屋で借りて、もう「これは本物では……」と思わせるようなボロッボロなVHS。

それを借りて深夜に一人で観ちゃって、真田さんのシーンが終わって最後に「ガコッ」ってビデオが出てきた時に妙に怖くなっちゃって……映画のままのテンションで「これは電話がかかってくる前に返しに行かないと!」と。

一人暮らしで入り込んじゃったんでしょうね。返しに行こうとして駅前の怪しいレンタルビデオ屋に向かう途中にコンビニがあって、これは本当に偶然なんですけど……その横を通ったその時に、コンビニの公衆電話が鳴るっていう体験をしました。

濱田氏:めっちゃ怖い! 電話取りました?

望月氏:取りませんでした(笑) 取ったら死んでたかなあって。もちろん公衆電話にも番号が付いているから間違い電話で鳴りうるんですけど、「このタイミングで鳴るかあ!?」って。今はVHSも公衆電話も無いんで、状況として若い人達には伝わりにくい体験ですね(笑)

――:凄いタイミングですね。そんな恐怖体験、神秘的な体験について、「VRホラー」ではなく、「VRでオカルト現象」は起こると思いますか?

濱田氏:あったら超怖いと思いますよ。一言で言うとあれです。「お風呂でシャワーを浴びて髪の毛を洗っていている時間中に、妄想で怖い事を考え続けて目を開ける」という怖さのキーとなるような事が、きっとVRに起こるんです。それを体験した時に、怖くてHMDを外せない、みたいな

望月氏:VRって個人的な体験になりますからねえ。もしバグでも心霊現象でも、似たような事が起きた場合に誰も検証できませんから。
 

濱田氏:それは『アニュビスの仮面』の時にも起こったんです! 一回試作レベルのもので凄い事がありまして。どんな事かって言うと、部屋の一部が赤くなっているんです。

遊んでいる人は「赤いの見えてる!」と騒ぐんですけど、僕は「赤いのなんて作ってねえ!」って(笑)しかもチカチカしていて、もう本当に怖い。調べてみてもその人しか見ていないから検証もできなくて再現不能なんです。

種明かしをすると、実はその当時ゴールが階段で、階段の裏を間違えて赤くしていて透けて見えていただけでした(笑)

――:コミュニケーションVRで複数同時プレイ中に、自分には見えているのに相手にはそれが見えていないとか怖いですよね……変なものを見たとか。

濱田氏:それから考えるとホラー作品の可能性は大きいですね。新しいメディアが出た時ってホラーが出やすいと思っていて、「リング」はビデオテープが出た時くらいから始まった、発生したのかなあとも思っています。

あれには劣化やダビングの概念がありましたから。今後はVR単品のホラーじゃなくて、VRの恐怖体験を題材としたホラー作品・ミステリー作品は増えそうですね。

望月氏:例えば『モニャイの仮面』を作っている時にスタッフの誰かが事故にあって、ゲームで遊んでいるとその人の声が聞こえてくる……とか、壁のレリーフがその人の顔になってるとか……不謹慎な例えですが(笑)

濱田氏:そういうのもありましたよね。「ゲームの開発チームが全員死んだ!」みたいな。
 

濱田氏:実は初めて作ったゲームがホラーだったんです。任天堂のインターンみたいなものがあって、チームを組んで「今回はホラーだ」と。ディレクターとして取り組んだんですが、途中のネタには色々なオカルティックなものを試してみました。

DSの画面に指を置くと血が「ジワァ……」と流れてくるとか、その後にパネルを押して心拍を与える。そうすると血が固まって人形になるんです。ホラーって言うより気味が悪いと言われてしまいましたが(笑) 「赤人形」ってものでした。

――:その時点で少しボードゲーム、アナログゲームの要素が入ってますよね。

濱田氏:以前からそういうものを作るのが好きだったかも知れないですね。熱を加えて息を吹き込む、マイクから息も分かるので、それに合わせてピクピクって動いたり(笑) 最終的には一個の部屋をモデルにDSを縦に持って、扉のノックの回数とかお呪いをする事で過去の部屋の中が見えるってものを作りました。

賃貸って過去は違う人が違う事をやっていますよね? 人が死んで呪われている部屋でお呪いをすると、当時の住人が壁に頭を打ちつけているのが分かって今もそこに染みが残っている、痕跡の理由が分かって怖いと。

HTC Viveのコンテンツに『PARANORMAL ACTIVITY』というものがあるのですが、「実際に赤ちゃんのようにハイハイして中に入って品物を取らないといけない」という場面の後で「闇」がじわじわと後ろから迫ってくるものがあります。

その闇の進むスピードたるや超スロー。あれはただゲームをやっただけだと味わえないでしょうね。その場所にいた、体感したという感覚が残っています。闇に吸い込まれる、よく分からないものが着実にやってきているというのが本当に怖かったですよ。
 

――:映画の「スウィートホーム」みたいですね。よく分からないからこそ想像力がかき立てられるし、怖いものも面白いものもそこから出てくる。

濱田氏:色々想像力を働かせるのは面白いですよね。先ほどのイースター島の話じゃないですけど、「どうしてモアイはあんな途中で止まってるんだろう?」「その理由ってなんだろう」って考えるのは凄く面白いし、モニャイの海底神殿も僕の体験なんですけど、イースター島みたいな小さいところに文明が築かれたのではなく、実はたくさんあったと。

たくさんあったけど全部沈んじゃったよっていうのがモニャイのストーリー。あれしか残ってないから、そこが謎の答えになっています。
 

――:ムーさんは最近コラボを多くやられていますが、あれってきっかけはあったんですか?

望月氏:なぜか、お声がけいただく事が増えましたね。コラボ案件をまとめる部署ができた事も大きいんですが、どうしてこんなに注目されるようになったのか……。ムーが好きだと言いやすい時代になったんでしょうか。

――:2016年は「君の名は。」もありましたね。ちなみに「オカルト学院」の頃はムーにいらっしゃったんですか?

望月氏:いませんでしたね。「君の名は。」は東宝さんから打診をいただきました。ちゃんとムーという雑誌として出ていてびっくりしました。

濱田氏:誰かがやっていれば「あ、俺もやってもいいんだ!」っていう感じで連絡できますよね。

――:オカルト的・ミステリー的なVRコンテンツの可能性ってどうでしょう?

濱田氏:先日ある企業さんへお邪魔してめっちゃ遊ばせてもらったんですが、そこに弓矢で射るコンテンツがあって、面白いのは現物が無いのに筋肉痛になった事。人間の想像力って凄くて、「弓矢を射るんだ」と思うと弓矢を射るように筋肉が働くんですよね。そのVR体験のリアリティは圧倒的でした。

望月氏:アトラクションなら、オカルト事件現場の再現とか。それかスピリチュアルな方向、霊的なものや神秘的なものにするか。

濱田氏:「ブレードランナー」の原作である「アンドロイドは電気羊の夢を見るか?」の中に、宗教マシンのような「VR体験機」みたいな機械があって、キリスト的な立場の人がいじめられている瞬間をみんなで体験して、その痛みを分かち合う事で一個の宗教が成り立っているという場面がありました。そういうものは可能性があるかも知れません。

「VR宗教」みたいな(笑) 臨死体験や奇跡体験みたいなものは面白いかも。歴史に絶対残ると思いますよ。臨死VR!

――:臨死VR……大霊界的な響き。本日はありがとうございました!
 


■3mの宇宙人遭遇VRとかやりたい感じのまとめ

ホラーとオカルトは似て非なるものであり、都市伝説とコンテンツ化されたものは全くの別物だ。オカルト方面から見たVR空間が今後どうなるのか気になるし、古くは映画「TRON」のような、または「JM」のような科学的なオカルトだって体験するかも知れない。VRコンテンツを作っているクリエイターの中には、「未来世紀ブラジル」「rain」を思い浮かべる方もいるだろう。

思いの外真面目な内容となったこの企画。蓋を開ければ知識と経験を活かすブレストになった事を喜びつつ、2017年のVR業界、そしてオカルト業界が盛り上がっていくよう努力したいと気持ちを新たにした。

また、前半でも触れたが『アニュビスの仮面』は増産しないようなので、もし購入を考えている方がいらっしゃったら、早めの購入をおすすめしたい。

https://gift10.co.jp/collections/frontpage/products/maskofanubis

(取材・文:ライター  平工泰久)